クラシック級の最後の挑戦であるエリザベス女王杯は、グラつきが無くなって抜群の走りを見せたアルヴを正面から降し、スティルインラブがシニア級のウマ娘を纏めて抜き去った。
中目標の『トリプルティアラ』は達せられた。そして大目標が『スティルがラブを認めること』なのであれば、より注目の集まる舞台でラブに祝福を与えられるのがいいだろう。
提案したのはグランプリたる宝塚記念と、二連覇をかけたエリザベス女王杯。ローテーションにしてはスカスカだし、獲りたいレースが他にないのか聞いてみたけど……
『その、ラブはナツメさん以外に心躍るような方が思い浮かばず……私も貴方に捧げるのであればそのふたつが良いと思っていたので特には……』
とのことだったので、春の様子見で金鯱賞だけ組み込んでおいて暫定の未来図となった。ちょい物足りない気もするけど、スティルインラブが望むならそれで構わない。
さあ、
――初詣
新年の挨拶を終えて、折角ならどこかへ行こうという話の結果、スティルのおすすめで有名ホテルのラウンジを訪れた。季節にちなんだアフタヌーンティーを楽しめるらしく、正月の空気を感じられるお菓子に舌鼓を打ちながら穏やかな時間を過ごす。
「ふんふん、スティルの好みはこんな感じ……」
「――ナツメさん。良い機会ですし、よければ貴方のことを教えていただけませんか?日常の中で、ナツメさんのことをもっと知ろうと注目しているのですが……恥ずかしながらほとんど掴めず終いなんです」
「別に恥ずかしがらんでも。プライベートなこと?住所とか?学園から歩いて十数分の……」
「あ、それは知っています。そういうコトではなく。好きなものや趣味などの内面的なものを知りたいです」
「あぁ住所知ってんだ『しょ、書類の記入時などにお見掛けしまして!』なんも疑ってないよ!うーん、悪いけど好みとかそういうの無いんだよな。だからこそトレーナー業に全部つぎ込めるというか、そうしないとこの歳でここまで来れなかったというか」
「なるほど、そうなんですね……」
「あ、そうだ!スティルが納得するかどうかはともかく、答えられるわ」
「私が納得?はい、些細なことでも教えてほしいです」
「好きなもの、スティルインラブ。趣味、スティルインラブ。以上」
「!――――ハァ、あんまりスティルをからかうものじゃないわ」
「あけましておめでとうラブ。なに、スティルが照れたらバトンタッチするシステムなの?」
「あの子が引っ込んだらワタシが出るしかないでしょう。もう戻るから、あとはごゆっくり――――ナツメさん、あまり驚かせないでください……」
「ごめーん。まあ、俺のことは掘り下げても仕方ないし、スティルのこと聞きたいな。好きなものはお菓子と読書、特に時代小説だろ?小説家のお母さんの影響か?」
「まあ、よくご存知で『た、担当するにあたって色々調べただけだから!』何も疑ってなど……それ、弁明になっていないような?でも……興味を持っていただけるのは嬉しい、です」
――福引チャンス
商店街でトレーニング用具を買った帰り道、賑やかな福引の前でスティルが止まる。
「どしたん、なんか欲しいの?福引券あるよ」
「いえ、私は……ナツメさんこそ気になるものは無いですか?」
「んー……特にない。ラブはなんもいらねーの?」
「ワタシ?そうね……欲しいのはぁ、ナ・ツ・メ♪――――も、もう!ナツメさん、どうかお気になさらず……」
「あはは、可愛らしくて結構。そんじゃテキトーに引いてきな」
「ナツメさんのお買い物でもらった券ですから、ぜひナツメさんが」
「無理、俺が引くと温泉旅行当たっちゃうから。流石に旅行するヒマはない、スティルが使わないなら腐っちゃうし」
「それは……さすがに頂けませんね。足を止めてしまってすみません。では、行きましょ『もしかして、スティルインラブさんですかい!?』きゃあ!は、はい」
福引祭りの会場を通り過ぎようとしたところで、係のおっちゃんから声をかけられる。自分から話しかけても反応されないことが多かったスティルは、いつのまにか呼び止められるほどの存在になっていた。いい傾向だ。
「急に申し訳ねぇ、娘がえらく憧れてるモンで!最初は……な、つめ?さんのファンだったみたいだけど、
おい、なんか知ってるかもしれんその子。オークスでガヤ飛ばしてたろ、ほんとにスティルの追っかけしてるじゃん。いいけど、スティルが愛されてるのは嬉しいけど。
「それは……応援ありがとうございます。ふふ、どうぞよろしくお伝えくださいませ」
「スティル、はい福引券。折角だ、何あたってもいいから引いちゃえ」
「ナツメさん……分かりました。おじさま、お願いいたします」
「はいよ!さあ気合入れてガラガラしてくれ~!」
「ぇぃ―――――え?」
「……で、でました
「えええぇぇぇ!?すご、マジで!?」
俺だけじゃなく、
――バレンタイン
バレンタイン当日の休養日、スティルに誘われ公園へと足をのばす。
そのままお話しするワケにもいかず、結局トレーナー室へ戻ってきた俺たちはバレンタインのお菓子を交換した。スティルからは、複数のカカオをブレンドしたオリジナルのチョコレート。すごい。
「ありがとうスティル!じゃあ俺からは、こちらをどうぞ」
「ナ、ナツメさんからも?ありがとうございます。これは……格子状の生地の奥に赤いジャムの焼き菓子。もしかして、リンツァートルテですか?」
「さっすが詳しい!スティルとラブをイメージして、赤い実のジャムを使ったモンを作ってみた」
「――ふふ、赤を包み隠すデザイン。なるほどですね。早速いただいても構いませんか?」
「もちろん。はいお皿とフォーク」
「ああ、すみません。ではいただきます――――――!美味しいですっ。アーモンドを含んだ心地いい食感でザクザクほろほろの生地から、香り立つシナモンやクローブのスパイス。中の赤いフィリングはラズベリーですね、この甘味と酸味が香辛料と絶妙なバランスで共存して、とても芳醇な余韻です……はぁ、美味しい」
「……うん。練習したから嬉しいんだけど、なんか急に恥ずかしくなってきた。そんな良いように言ってもらえるとは思ってなかったわ」
「何を仰るのですかっ。今こそいつもの自信を持ってください、本当にお上手です。さあ、ラブもどうぞ――――律儀ねぇ、気持ちだけ受け取るわ」
「そう?もしかして、ラブの好みとはズレてた?」
「フフ、スティルから胸やけするくらいの幸福感が流れてきて、お腹いっぱいなの。ワタシのことは気にしないで、また満月の夜にアナタをチョウダイ――――ラブ、ことあるごとに私を辱めるのはやめて……」
「はいよ、また夜に会おう。あ、スティルのチョコいただきます」
「え?はい、どうぞ――――なんで泣きそうになっているのですか?」
「メッチャ美味しい、甘くて奥深い味わいなんだけど……気の利いた食レポが出てこねぇ!俺もスティルみたいにこの感動を伝えたいのに、練習しとけばよかった!」
「わ、私のは勝手に出てしまうだけですから……!途端に早口になってしまって、少し自制したいくらいですっ」
――金鯱賞
勝利。両輪の走りは健在だが、やはり完璧には見えない。場数を踏んでどうにかなるものでもなさそうだ。
――ファン感謝祭
スティルの『障害物競走』への参加申請は
そんなスティルを見ながら、俺はなんとなく安心を感じていた。なんとなく『スティルインラブは
物心がついてからずっと付き合ってきた第六感が、俺にそう囁いている。
そして『これ以上俺がスティルインラブにしてやれることは無い』ことも、教えてくれた。
スティルとラブの両輪の走りは、俺が完成させるモノではないらしい。同調を完璧にする最後のピースは、俺が見つけられる場所にはない。
あとは彼女たち自身が、
「まあ、竜胆ナツメの務めは果たせたってことかな」
残すはもう、彼女たちに負けないよう走るだけ。負ければ呑まれる。そして俺への執着で燃え尽き、ともに墜ちてしまう。『竜胆ナツメが手に入ったからもういいや』となってはダメだ。
彼女たちがこれからも歩くために、俺は俺自身を最大の
「――ほーんと、何言ってんだってハナシだよ」
飛躍した道筋だ。愛するモノを生かすために、愛するモノの傷になる。結末を知っていなければ、傍から見たら何のこっちゃ。
でも別にいい、道理なんて。魂だ運命だを大真面目に喰い合っているんだ、もとより
「ナツメさん、ただいま戻りました。なんとか一着ですっ――――フフ、興味がないから見ていたけれど、少し愉しそう。次は参加しようかしら」
「はい、おかえり!お疲れさ~ん」
あとはもう、駆け抜けるだけだ。
――宝塚記念
勝利。ファン投票のグランプリレースを制し、より多くの祝福に包まれた。
――エリザベス女王杯
勝利。愛を知ったアルヴからはもう敵愾心を感じず、真っ当に互いを尊重したうえで競い合った。
――ジャパンカップ
勝利。エリ女を観たメジロラモーヌからの挑戦を受けて立ち、スティルインラブは見事に差し切った。
「惜しいわ。十全な貴方の愛を感じたかった。けれど今の貴方はナツメにも劣らないくらい……素敵」
――クリスマス
『月を見たい』というスティルとともに、俺たちの運命が始まった高台へとやってきた。丸く大きな月、でもまだ満ちてはいない。今年の
「もうすぐ、行ってしまわれるのですね」
「そうだな、俺が居られるのはハタチまでだから。行き先も言えなくてごめんな」
「良いのです。本当は、よくありませんけど……貴方を困らせたくはないですから」
「……そっか」
暫しの沈黙が続く。やがて雪が降り、聖夜を白く飾りつける。
「――ナツメさん。少し長い話を聞いてくれますか?」
「いいよ」
「……私、貴方と過ごしたおかげで、
「――俺も、隣に居られて幸せだった」
「ふふ、ありがとうございます……あっ。ラブから伝言で――『ワタシは2日後に、言葉じゃなくて走りをブツける』と……」
「ああ、分かった。2日後が、最後の日になるな。スティルインラブの全部、受け止めるよ」
――12月27日
今年最後の満月の夜。
「スティルインラブが一番強い距離……2000、右回りだ。準備はいいか?」
「フフ……今回は『
「もう言えねぇよ……なあ、ラブ。クリスマスプレゼントの代わりにさ、俺に勝ったら
「まあ!そんなこと、言ってしまっていいの!?後悔しても知らないから!」
「分かってる。ただし、俺が勝ったら我儘を聞いてもらう」
「ええ、構わない……覚悟はできてるのね」
「はは……今更俺に覚悟を問うのか」
勝った時のお願いなんて決まってる、『どこにも行かないで』と言えば幸せな日常が続くのだから。それに負けてしまったって、どうせ彼からの最後のお願い……何を言われても叶えてあげなくちゃ。そうでしょう?
発走まで、10秒。さあスティル、同調して。アナタが捧げたい勝利はここには無いでしょうけれど、勝てばまだ一緒に居てくれるかもしれないわよ。
「スティルインラブの全部、見せてくれ」
「――そっくりそのままお返しするわ」
スタートは同時、ナツメはいつも通り先行策……じゃない。ワタシの隣でペースをキープしている。すぐそばで甘美な熱を放つ彼に今すぐ飛びついてしまいたい、けれどダメ。今日はナツメにすべてを見せてあげたい、そして彼のすべてを見たいから。
スティルと心を添わせて、だんだんと嚙み合っていく。フォームが、呼吸が、ストライドが、飢えが、猛りが、闘争心が、スティルインラブのカタチを成していく。
トゥインクルシリーズで燦然と輝く栄光を手にし、身に余るほどの祝福に包まれ、きっと勝つべきだった勝者をも喰い破ってきた、ナツメのために編み出した走り。
冷えた夜風を切り裂いて、白く熱い吐息は軌跡を残す。中盤を越えて、ナツメを喰らうためにスティルとともに駆けていく。
ワタシたちの持つ全てを重ね合わせている、引き出せる全てを曝け出している、それなのに――
――どうしてそんなに、悲しそうなの。
終盤に入り、スパートのタイミングはナツメと同時。一瞬深く身体を沈み込ませ、ゴールに向けて飛び出すその刹那。
「じゃあな。これが俺の――全部だ」
隣で感じていたナツメの熱が、苛烈なまでの狂熱を迸らせる。彼の灰色の瞳に宿っていた狂った覚悟が、烈火となって轟々と燃え爆ぜる。
夜の闇の中で煌々たるその炎、
「――あ。あぁ……!あああアアアぁぁぁぁァァァァ!!!」
ナツメは命を燃やしている、これから先のことなどは微塵も思考になく、今走れるならそれでいいと。ただ、
ダメだ、その走りは。その炎には
そして、ワタシたちは
イヤだ!イヤだ!!イヤだ!!!今はアイとかそんなのどーでもいい!
ひとりで死ぬなんてユルサナイ!!!
「止まって……!そんなのダメ……!墜ちるなら、
走って、ただ走って、走って走って走って。ナツメに手を伸ばす。あとちょっとで追いつく、追い抜く、突き放せる。
再び隣に並ぶ、ナツメがワタシたちを見る。少し驚いて、悲しげだった彼は――陽だまりのように柔らかい笑顔になった。
「――最期に見せてくれて、ありがとな」
ワタシたちを振り払う再加速で、ナツメは遠ざかる背中を見せつける。転がり込むようにゴールするナツメを追いかけて、すぐさま駆け寄る。
うずくまってむせる彼は、白く荒い息と同時に、赤とも黒ともとれない血を吐き出す。それでも笑って、息も絶え絶えのまま言葉を残す。
「はぁ、はぁっ……ははっ!俺の、勝ちだ。我儘、聞いてもらう……」
――
♢
それから、俺にとっては飛ぶように流れた日々だった。
スティルインラブの運命は定まり、3年に及ぶ誰も知らない勝負は俺の勝ち。
そして契約は解消され、彼女は姿を消した。ちゃんと学園には在籍しているし、辞めないという確信が俺にはある。
俺は退職の手続き、お世話になった方々への挨拶などを早急に消化していく。随分と無茶をした、故にあまり悠長にもしてられない。
中でも取材対応はしんどかった。おしかけてくる記者なんかもいてそれなりの件数を学園に対応してもらったし、ほんますんません。
駆け足で進めた段取りも何とか片付き、とうとう学園を去る間近の日。未だ乾いた寒さの冬、その夕暮れ時。
自腹で揃えた家具の数々は破棄して、学園の備品である机やソファをもとに戻したトレーナー室。
ソファに身を沈め、3年ぶりの合皮の感触を懐かしむ。俺たちの痕跡は漂白され、また別の誰かがこの場所から夢を始める。少しだけうらやましい
スティルインラブはこの先トレーナーを替え、俺だけがはじき出されてしまった。決まっていたこととはいえ、叶うならもう少し、道の先を見たい気持ちがある。
「……契約、満了だな」
未練を断ち切るようにトレーナーバッジを外して、少し変形したケースに収める。これを学園に返して、竜胆ナツメはそれで終わりだ。
あまり動く気になれず、部屋に射しこむ夕日をぼーっと眺める。
「ちょっと疲れたか」
「――どこか痛むのですか?」
「ぴゃあああぁぁぁ!?」
「きゃあ!」
全くの意識外から飛んできた声に、ソファがガタリと揺れる。見れば部屋の扉を開けて佇むスティルの姿があった。
最後に走ったあの日以来、顔を合わせることのなかった元担当。元気そうとは言えないものの、露骨に顔色が悪いということもない。
「あ、悪いスティル……ぼんやりしてたわ」
「いえ……急に話しかけてしまったのは私ですから……」
おずおずと話すスティルは、トレーナー室に入ってよいものか葛藤しているようで、少し不安げに俺を見る。
正直、話なんてするべきじゃない。今の俺はボロを出すかもしれないし、教育者と生徒という立場を超えた言葉が出る可能性は十二分にある。大人しく、そして大人らしく別れるのなら招き入れないのが正解だ。
――でもそれは、
「いいよ、こっち来てくれ。隣あいてるから」
「……よろしいのですか」
「うん、スティルがいいなら」
俺はスティルを呼び、すぐ隣に座らせる。未だどう振舞うべきか戸惑っている彼女は、きっと衝動的にこの場を訪れたのだろう。自分の本心と、俺が被る迷惑を天秤にかけて、それがずっと揺れ続けている。
俺もそうだから、分かる。伝えたい愛と、それを阻む良識。
本当に、今更な話じゃないか。
「えいやっ」
「!――ナツメ、さん?」
縮こまるスティルを、逃がさないようにしっかりと胸に抱く。誰がどう見ても友好のハグなんかじゃない、肌を通じてただ愛を伝えるための抱擁。
今まで散々、真っ向から愛をブツけあってきた。そうすることでしか俺たちはあり得なかった。誤魔化すことも飾り付けることもできないほど剥きだしの愛で、運命を変えてきた。
ならばこの期に及んで、心根を覆い隠す必要がどこにあるのか。
「学園に居る事は分かってたけど、こうしてちゃんと確かめられると安心する」
「……はい、
スティルも、俺の背に手を回す。互いの体温を、息遣いを、拍動をちゃんと感じる。重ねられるのは今だけだ、俺の方はあと少しでなくなってしまうから。
そう思うと、ホントに浅ましいことに……もっと深く、もっと強く求めてしまう。華奢で儚い彼女の身体を、より強く抱きしめてしまう。
「ぁ――」
「ごめん、苦しい?」
「いいえ……っ、いいえ。もっと、貴方を感じたいです――壊れるくらいに抱いて、離さないでください……!」
「はは……俺がここで壊しちゃったら、全部水の泡になっちまうよ」
スティルの声に涙が滲む。壊してはあげられないし、離さないとも言ってやれない。
これ以上強く刻むことはできないから、残るのはもう言葉だけ。
残す側から残される側へ、ひどく残酷で痛い想い。
お兄さんの俺が渡すべきじゃない、まだ幼い彼女には重い十字架であり……それと同時に求められている言葉。
「スティルも、ラブも……一生愛してる」
「……ナツメさん、どうかお元気で――――フフ、二股宣言?最後まで素敵だわ……
♢
トレセン学園から竜胆ナツメの名が消えてから数週間。
白で埋め尽くされた部屋、俺の身体から伸びる数々の線、一定間隔で鳴る小さな電子音。
レース界で見てきた華々しいゴールとは違う、地味で無色の終着点。
身辺整理は問題なし、母親への挨拶も済ませた、未練も後悔もない。
明るくて楽しくて、輝いて温かくて、濃密で瞬く間の人生だった。終わりが分かっていたからこそ、俺は竜胆ナツメに成れたと思う。
すぐソコまで迫っている死の予感はきっと外れない。14年前の事故から放たれた、命中が決定している魔弾のようなもの。
第六感で動き出した運命は、第六感で幕を下ろす。
「あれ、俺の始まりってどんなだっけ……」
いつの間にか忘れてしまった、一番最初の感覚。たしか、天使にも悪魔にも似た囁きだった気がする。まあいいか、思い出せないならもう関係ない。
終わり際に本当に想うのは、ひとつだけ。
「どうか、スティルインラブの未来が幸福でありますように」
―――――――――――――――――――――――。
電子音は静寂を示し、墜星は暗路を行く。