六月某日──その日は朝から雨だった。
入学から二ヶ月ほど経過し、高校生活にも慣れてきた頃合い。
既に当初の新たな環境に浮ついた雰囲気と、知らぬ環境に対するちょっとした緊張感は無くなっていた。
最初は全員が真面目な態度で授業を受けていた生徒たちも段々と肩の力を抜いて授業に当たる様になり、いつの間にか真面目に勉学に打ち込む生徒と勉強にそれほど力を入れていない生徒で二分されている。
真面目な側は相変わらず教師の言葉に耳を立てて真面目にノートを書き取る優等生だが、さほど勉強に関心が無い側の生徒たちは話半分に授業を聞いて別のことによそ見をするか。或いは授業についていく気もなく居眠りをするなど、中学生時代からの延長を展開している。
斯く言う巽もどちらかと言えば後者の側。年老いた教師が抑揚のない声で話している単調とした歴史の授業を意識の端で聞きながら、巽は窓際の席から茫洋と雨を眺めていた。
雨が好きか嫌いか──その辺り巽は特にこだわりを持っていない。強いて言うなら雨だとカメラの取り回しが少々不便になるので、趣味に出歩けないという意味では、雨は好きじゃないと言えるかもしれない。
ただ、こうして室内から雨音に耳を澄ませ、時折混じる小鳥の音色に耳を傾けることは割と好きだったりするので……まあ結局、好きか嫌いかで問われれば、どちらでもないという灰色返事が無難になる。
「なあなあ、巽」
「──ん?」
不意にちょんちょんと肩を突かれる。教師に見咎められない程度に首を動かすと、声を潜めながら後ろの席に座る男子生徒が話しかけてくる。
友人、とまではいかないが席が近いため偶に話す相手だ。
片手で口元を隠しながら、彼は密やかに巽に問いかける。
「巽ってさ……朔月さんと付き合ってんの?」
「なっ──!」
思わず声が出かけた。慌てて抑える。
……どうやら、教師には気づかれなかったようで退屈な授業は続行している。
「……何処から生えて来た勘違いなんだよそれは。別に俺は朔月さんと付き合ってなんかないぞ」
「んあ? そうなのか? でも偶にホームルーム終わった後に楽しそうに話してんじゃん。お前以外の男子とそんなことになってるの見たことないぞ、朔月さん」
「単純に友達として話してるだけだよ、朔月さんとは」
「……ふーん?」
疑うような知人の視線は消えない。
その誤解に苦い顔をしながら、巽はチラリと廊下側の前列の席……朔月聖花の方を見る。授業中に小声で話す不真面目な自分たちとは対照的に、彼女はサラサラとノートを取りながら真面目に授業を受けていた。
「その、友人になるのだって結構難しいわけだが。巽クンはどういう魔法を使って近づいたんだよ」
「何だよそれ」
「何だよって……お前も知ってんだろ? 我らが教室の姫君は女子連中のスクラムによって堅く堅く、それは堅く守られておられる。俺たち男子がおいそれと近づける相手じゃないだろうが」
「……それはまあ、確かに」
「だろ?」
朔月聖花──新宿御苑で巽が出会った、同い年の不思議な女子はなんと同じクラスに所属する、同じ学校の生徒であった。
何でも引っ越しの都合がどうたらで最初の一週間は学校に出てこれず、巽が休日を終えた翌週からようやく学校に出席することが出来たのだとか。
まさかの同じ学校のクラスメイトという事実に驚く巽だったが、それ以上に騒ぎになったのは巽の周りのクラスメイト達だった。
なんせ、学校中を見渡しても一、二を争うだろう美少女である。しかも態度や言動からして良い家に生まれただろうお嬢様。
当然、色々な意味で飢えているだろう男子生徒たちは遅れて来た美少女クラスメイトに大盛り上がりの様相を呈したし、それを受けての女子生徒たちは人当たりの良い淑やかなご令嬢を守らんとして、団結した。
その結果、本人がどう思っているかは置いておいて朔月聖花はあっという間にみんなにとっての高嶺の花と化した。
常に女子に囲まれている朔月に対して男子はおいそれと近づけなくなった。
何人かの勇気ある猛者は女子のスクラムを潜り抜けて、彼女に近づいたそうなのだが、下心を気取られたのか、或いは令嬢とだけあって異性との友好に慣れていないのか、ごめんなさいの一言を前に玉砕したのだとか。
そういうわけで、彼女に近づける男など、彼女に相応しいスーパーハイスペック勝ち組男子でもない限り不可能なのではないかと男子たちの間で諦めムードが漂っていたのだが……ここに、
「それで、お前は姫にどんな反則を使って近づいたんだ? ん? みんなには黙っておくから教えてくれよ。……俺だけに」
「別になんもないよ。強いて言うなら、その……休みの日に偶然出会って、そこで意気投合した……みたいな……?」
本当のところは無断で彼女を撮影するという暴挙に出た挙句、失言に失言を重ねたところを何とか許してもらった仲……だとは流石に言えない。
誠実さ、正直さを大事にする巽であるが、口に出せば最後、己の学生生活が終わると確信できる真実を話すほどの覚悟はなかった。
時には嘘も必要なのだ。これは仕方のないことである。
「んな馬鹿な! そんなまるっきりナンパな接触であの姫様が陥落するわけないだろ! あのギャル男、慎二ですら素気無く振られたんだぞ!」
小声調のまま叫ぶという器用な様で反論する知人。
ちなみに慎二とは言動が何処となく軽薄なこと以外は二枚目のイケメンである。一部の女子に人気であるため、女子のスクラムを突破して朔月に近づくことには成功したものの、当人に敢え無く振られ、食い下がろうとしたところを朔月の友人である月姫蒼香のローキックで物理的に排斥された男子生徒である。
ワカメみたいな青髪が真っ白に燃え尽きてたのが印象的だった。
「近づくだけでも難しいのに、そんなナンパみたいな対応で仲良くなるなんてありえないだろ!」
「そんなこと俺に言われても……それに周りの女子たちはともかく、普通に話せば普通に対応してくれるぞ朔月さんは。別に男嫌いって感じじゃないし、この前も図書室で小説の話をしたけど、普通に話してくれたぞ」
「……かッー! これだから持ってる男はよ。クソ、これからの時代は文系隠れイケメン草食男子だってのかよ! 認めねぇ……認めねぇぞ! 俺はッ!」
「おい、そこ! 授業中に何を話している!」
「「す、すいません!」」
興奮する知人の声で流石に教師に見咎められる。
鋭い叱責に、巽は知人と一緒になって慌てて謝る。
幸い、それ以上の注意は無く、滞りなく授業は続行された。
「……おい、怒られたんだが」
「お前が大きな声を上げたせいだろ。後、最初から話しかけて来たのもお前だ」
「なんて友人に冷たいんだ……おのれ、イケメン死すべし」
「友人って程仲良くはないだろ。後、それは誰のことを言ってるんだ……俺は別にそんな──」
と──不意に視線を感じて、巽は気配を追う。
気づけば、真面目に授業を受けていた朔月が軽く首を動かしてこちらを見ていた。
視線が合うと彼女はふっと困ったように笑いかけ──。
“授業中は静かにね、巽くん”
口パクで、声無く言葉をなぞった後、軽く手を振って前を向いた。
「…………馬鹿な」
今のやり取りを見ていたらしい知人は、その言葉を最期に机に突っ伏し、動かなくなってしまった。……勘違いを正すことは出来なくなったが、取りあえず余計な対応をする必要はなくなったので良しとするべきだろう。
会話を無かったことにして巽は前を向く。先生にも友人にも注意されたとあっては、流石に授業をサボるわけにはいかない。
学生としての本分を果たすべく、巽は前に向き直って真面目に授業を受けることにした。
キーンコーンカーンコーン──。
小学生の頃から聞きなれたチャイムが鳴る。
終業の合図。
今日も面倒な授業の一日を消費した生徒たちはホームルームを終えて、それぞれの放課後に向かうべく喧噪の中にバラバラに分かれていく。
部活へ向かう者、委員会の仕事に向かう者、何かしらの用事で残る者、そして大人しく帰路に着く者。
巽の学校は都立校。進学校ほどとは言わずとも、私学よりは勉学に重きを置いてるこの学校において部活は強制的なものじゃない。だから、放課後に予定が無いものはそのまま帰るし、残る理由がある生徒なら残るし、何もない生徒は普通に変える。
巽は特に部活動にも委員会にも所属しているわけでもないので何も帰る者だ。
「巽くん」
「あ、朔月さん」
下駄箱。帰ろうと靴を取り出したタイミングで朔月に話しかけられる。いつもいる取り巻きの女子生徒たちの姿は無く、一人。
何か理由があって離れたのか、単に一人になることを断ったのか。どちらかは知らぬものの、普段から巽に話しかけるときは大体一対一なので、特に不思議がることもなく巽は応じる。
「朔月さんも帰りか? 部活は?」
「茶道部? 今日はお休みよ。巽くんも帰り?」
「ああ。特に用事はないんで、俺も帰ろうと思っていたところなんだけど……」
「なら、駅まで一緒に帰りましょうか」
「……ん、分かった」
不自然がられぬ程度に周囲を観察する。
……どうやら顔見知りの生徒は近くにはいないようだ。
ほう、と息を吐く。
共に帰りは同じ駅を利用する都合上、別に彼女と一緒に変えること自体は珍しくはないが、クラスメイトに見つかると色々とあることないこと面倒なことを囃し立てられるので、どうも反射的に警戒してしまう。
例えばそう、先ほどの授業中の時のように。
「大丈夫よ」
「え?」
「周り、そんなに気にしなくても。ちゃんと配慮してから話しかけているわ。行きましょ」
「あ、ああ」
さらりと微笑して歩き出す朔月。……どうやら小心者の行動心理などお嬢様には見抜かれていたようだ。
傘を差しながら歩き出す背中を慌てて追って巽は並び歩く。
「私としては、普通に学校生活を送りたいのだけれど、どうも周りが勝手に騒ぎ立ててしまって。結果的にとはいえ、巽くんには申し訳ないことをしているわね。ごめんなさい」
「い、いや、謝られるほどのことじゃあない。俺が勝手に意識しすぎてるだけだから」
「そう? でも授業中、お友達に絡まれていたわ」
「アレは──まあ、男子の軽いノリみたいなやつだからさ。朔月さんは気にしなくていいよ」
「そうなの? なら、良かった。面倒事にばかり巻き込んでしまって巽くんに嫌われてしまうのじゃないかと思っていたから。私、貴方に嫌われるのは少し辛いわ」
「えっと……それはどういう意味で──」
意味深な言動に思わず尋ねる。
少しだけ、巽の鼓動が緊張に弾んだ。
ささやかな期待、だが問われた彼女は何てことのない様に。
「だって似たような趣味で話せる友人は巽くんの他にクラスにはいないから。貴方は野鳥観察、私は植物観察。ね? こういうの、趣味仲間って言うでしょう?」
「ああ、そういう……」
確かに巽たちの時分において、趣味と言えば大抵は流行の音楽やファッション、テレビのアイドルの追っかけに、ニッチなサブカルチャーをという者たちばかりで巽や朔月のように公園なんかに繰り出して、散歩がてらに観察……という些か年老いた趣味に走る者は珍しい部類だ。
巽が知る限り、朔月を除いて他に覚えはないし、それは朔月側から見てもそうなのだろう。
偶然に知り合った同じ趣味の友人同士──偏見を除いた二人の正しい関係を称すのであればそれが正しい。
尤も──少しだけ本音を語るのであれば、巽としてはもう少し踏み込んだ関係になってみたい気持ちもあるが。
「巽くん?」
「いや、何でもないよ」
平静を装って、巽はこちらの顔色を伺う朔月に軽く首を振る。
知り合って二ヶ月程度の相手。
今はまだ、単なる友人として付き合うだけで満足だ。
下心程度の本音を語る必要なんてないだろう。
『──れで、先生。実際に世界の終末とは、一体どのようなものになるとお考えですか』
「ん?」
ふと耳に入ってきた不穏な単語に顔を寄せる。
よくある街の家電量販店。
その街頭に飾られたテレビから流れてくる音声だった。
テロップに軽く目を通せば、話題は『終末予言の謎を解明!』という如何にも胡乱気な内容の検証番組。
最近巷を騒がせている『ノストラダムスの大予言』に関する内容をインタビュアーが外国にある何処ぞの大学先生に追求している場面だった。
「終末予言か」
何かと世間を騒がせてる話題だ。巽もニュースを通じて何度か耳にしたことがある──きっかけはある小説家が出した一冊の本から。
2000年の世紀末に世界は終わる。
かつてフランスに存在したという伝説の予言者がそう残したのだとか。
最初は一部のいわゆるアングラな趣味人たちの知る人ぞ知る、みたいな内容だったのが、いざ予言の年に近づくにつれテレビ番組などにも取り上げられるようになってから瞬く間に広まったと記憶している。
丁度、オカルトとかサイケデリックブームとか……そういう真偽の怪しい話題で盛り上がっていたから、というのもあるだろう。
大抵の人はつまらない日々を面白くする娯楽程度にしか捉えていないし、巽も特に重くみていないのでそう思うが、本気で予言を信じているものも確かにいる。記憶に新しい、日本が災害によって滅ぶ映画の影響もあって、世紀末に訪れる世界の終わりというのはリアルな想像力を掻き立てるのだ。
「フランスの占星術師、ノストラダムスね。本職は医師で、体系化した魔術による予言というより、エジプトやギリシャなんかで行われていた神託……いわゆる神がかり、いえ、この場合はインスピレーションかしら──に近い形で予言を残したらしいけど、巽くんも終末予言を信じている人?」
ひょこ、と軽く覗き込むように朔月が尋ねてくる。
巽の独り言を聞いての発言だろう。
だが、それよりも気になったのは、
「……詳しいんだな、朔月さん」
巽の発言から詳細に辿る朔月の意外性であった。
「別に詳しいってほどじゃないわ。テレビとか、本とか、新聞で説明されている程度のことよ。まあでも、気になって軽く原本を呼んだ限り、そもそも誤解やこじつけのような気がしないでもないけど……日本語訳、間違ってたし」
「え──読んだのか? その、外国の大予言の本を」
「うん。といっても本としてではなく、内容だけ送ってもらった形にはなるのだけれど」
「……いや、それでも凄いんじゃないか? それは」
「……そうかしら本好きなら、これくらいは……巽だって結構、本は読む方でしょう?」
「いやいや、俺も本は読むけどわざわざ海外のまでは……っていうか、英語とか読めないし、俺」
確かに読書は趣味だし、同世代に比べれば巽は色んな本を読みはする。とはいえ、巷間で話題だからという理由だけでわざわざ外国の本に手を出すことは無いし、そもそも海外の文学を読み解けるほどの頭脳もない。
それに原本に触れられるような海外の伝手を巽はそもそも持っていない。
……何かの雑談で神戸の歴史ある家系の出であるとは聞いていたものの、改めて本当に良家のお嬢様なんだなと納得する。
些細な所で庶民との生まれの違いを漂わせる。
「……そう、なのね。それが普通……うん、ありがとう。巽くん、これからは気を付けるわね」
「は──いや、何か気を付けるように言ったか俺」
「聞き流して頂戴。少し感覚の辻褄合わせをしただけだから。そうよね、予言だなんて、普通はその程度のことだわ。うん」
巽の言葉を聞いてしきりに頷く朔月。
何に対して納得したのは分からないが、聞き流してくれと言われたのでそれ以上特に踏み込まない。大方、庶民感覚とのズレを内心で片づけた、そんなところだろう。
「んん、話が逸れてしまったわね。話題を戻すけれど……巽は例の予言とかは信じているのかしら?」
「いや、どうだろ……改めて聞かれるとよく分からないっていうのが正直なところだ」
朔月の問い直しに巽は正直に返す。
実際の所、数年後に世界が終わると言われても巽にはピンとこない。
今日も昨日も、多分明後日も、巽を取り巻く環境はいつも通りに回る。
朝起きて、学校へ行って、授業を受けて、友達と駄弁ったり過ごしたりして帰路について寝る。少なくとも、この先三年間はこの平和な円環が続くはずだ。
だから、いつも通りに回る世界が終わるだなんて言われても、首を傾げるしかないのが正直なところ。
「でも──そうだな」
……もしも、本当にもしも、その予言が的中するというのならば。
「それは、嫌だな。好きじゃない。うん──予言が当たるかどうかは分からないけど、もしもそれが本当だったとして、それが止められるのだとしたら……止めたいと思うかな、俺は」
「────」
なんてことのない平和、なんてことのない日常。
巽はこの日々をそれなりに気に入っている。
東京──小さな出会いと別れを繰り返し、慣れ親しんだ人々が住まう、自分の街。
この街がある日突然滅びるというのならば──それを止めたいと、守りたいと巽は思う。
「って──あ、ごめん! 全然話と関係ないなこれ! あーっと、止めたいって言うのはその手段があるなら、みたいな? 別に俺がこの街を守ってやるぜみたいなアレではなく──」
自分が口にした言葉を反芻して、我ながらなんて恥ずかしいことを慌てる巽。思えば彼女を前にすると我知らず、似合わないことを口にしてしまう傾向がある。
やはり、下心から彼女の前では格好を付けたくなるのだろうか。
なんて浅はかな。これでは友人を笑えない。
急いで弁明の言葉を連ねるが、意外なことに朔月の反応は笑うでも馬鹿にするでもなく、何か──心底驚いたと言わんばかりの反応だった。
「え、えっと……朔月さん?」
「驚いたわ。世界には同じ顔が三人いるとはいうけれど、いるところにはいるのね、同じような性格の人は」
感心する様に朔月は深く頷いた。
一人で納得する朔月に巽は「えっと……」と返す言葉に迷って頭を掻く。
不意に、初めてであった頃のような鮮やかな笑みを巽に向けて朔月が言った。
「叔父さんそっくり──貴方、『正義の味方』なのね。ふふっ、やっぱり面白い人ね。巽は」
「────」
揶揄うでも馬鹿にするでもなく、納得したような朔月の言葉。
それがどういう意味でどういう意図の発言なのか巽には分からない。
分からないが──何となく、褒められた気がした。
「それなら、もしも私に何かあった時は、巽に助けてもらおうかしら。ねえ、どうかしら? 正義の味方さん」
「あ──」
「ふふ……冗談よ。気にしないで。さっきの続き、大したことのないもしもの話よ」
問いに、何かを返そうと口を開くが、それよりも先に朔月が撤回する。
気づけばいつの間にか駅前の雑踏。
並び歩いていた朔月は巽から一歩抜き出て、駅に背を向け、くるりと巽の方へと向き直って別れを告げる。
「ここまでね。じゃあね! 巽、また明日!」
「え──あ、ああ。また明日」
気の利いた返しなど考える暇もなく、呆然としてる間に笑顔で手を振って駅の雑踏に消えていく朔月の最中。
暫し、その場に立ち尽くして見送った後、巽は誰に言うでもなく呟く。
「正義の味方、か──」
──それはなんて。
子供の頃、何処かで落としてきた宝物のような。
懐かしい響きであった。
ワカメ? 知らない単語ですね(すっとぼけ)
クラスメイトの名前に特に深い意味はないのであしからず。
プロトタイプ時空におけるイフの別人の同姓同名的なアレ。