スキルを自作できるようになった俺、好奇心で世界をリセットし続けたら人類悪になっていた   作:パラレル・ゲーマー

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番外編 スキル神の断り文句(対:黒田)

 黒田さんが涙ながらに土下座して「スキル神様、どうか我々に、いや私一人にでも結構です! 世界を繋ぐための翻訳スキルをお与えください!」と懇願してきたら、スキル神はどう断るか。

 彼のキャラクター性(超越的な観測者、人間の物語を好む、安易な介入はしない)を踏まえて、いくつかの断り文句を考えてみました。

 

 スキル神の断り文句(対:黒田)

 舞台設定: IARO本部、事務総長執務室。言語統一が失われた数日後。絶望に打ちひしがれた黒田の前に、スキル神が姿を現す。

 

(黒田)

「……スキル神。なぜです。なぜ、あのような完璧な世界を、あの邪神は奪い去った……。そして、なぜ貴方はそれを止められなかった! このままでは、世界は以前よりも酷い憎悪と不信の渦に沈む! どうか、我々をお助けください。せめて、私にだけでも結構です。世界と対話するための『翻訳の力』を……!」

 

(スキル神)

『……うむ。お主の嘆き、無理もない。一度楽園の味を知ってしまった魂が、再び固いパンを噛みしめるのは、これ以上ない苦痛であろうな』

 

 スキル神は、悲しげに、しかしどこか楽しむように目を細めて続けます。

 

『じゃが黒田よ。お主はまだ、あの邪神の本当の恐ろしさを、そしてワシがなぜ直接手を下さぬのかを、理解しておらんようじゃな』

 

【断り文句パターンA:『物語』の所有権を問う】

 

『翻訳スキルじゃと? 良いか黒田。ワシがお主にそれを与えるのは、赤子にミルクを与えるのと同じくらい簡単なことじゃ。じゃが、ワシはそれをせん。断じてな』

 

『なぜか分かるか? あれは、もはやお主たちの『物語』ではないからじゃ。 邪神が与えたあの『黄金の一ヶ月』は、あまりにも甘美な毒リンゴじゃった。一口かじれば、もう自らの手で果実を育てる苦労を忘れてしまう。お主たちは、あの奇跡を一度経験してしまった』

 

『今ワシがお主に同じ力を与えればどうなる? 人々は、お主という新たな『奇跡』にすがるだけじゃろう。困難にぶつかるたびに、「黒田様がなんとかしてくれる」「スキル神が助けてくれる」と。そうして、自らの頭で考え、足で歩むことを完全にやめてしまう。……それは、ワシが見たい『人間の物語』ではない。それは、ただの神のペットじゃ』

 

『邪神がしたことは、楽園を与え、そして奪うことでお主たちに絶望を与えたこと。ワシが今お主に力を与えることは、再び楽園を与え、お主たちから『自立』を奪うこと。……結局は、同じことなのじゃよ。 ワシは、あやつと同じ土俵には立たん』

 

【断り文句パターンB:『免疫』と『成長』を説く】

 

『黒田よ。考えてもみよ。病を克服するためには何が必要じゃ? 外部から与えられた完璧な無菌室か? 違うな。自らの力で抗体を作り出すことじゃ』

 

『邪神がばら撒いたのは、世界を一度崩壊させるほどの強力なウイルスじゃ。そして、あの『黄金の一ヶ月』は、そのウイルスの症状が最も激しく現れた熱病の期間に過ぎん』

 

『今、お主たちの世界には、僅かながら『免疫』を持つ者が生まれておる。お主たちが『レムナント』と呼ぶ者たちじゃ。彼らは、あの熱病を乗り越えた証。不完全で、僅かで、そして深い傷を負うてはおるが、確かにお主たち自身の力で獲得した抗体なのじゃ』

 

『ワシが今ここで万能薬を与えてしまえば、そのか弱いが尊い免疫は全て無意味と化す。そして、次にまた邪神が同じようなウイルスをばら撒いた時、お主たちは今度こそ何の抵抗もできずに滅びるじゃろう』

 

『ワシは、お主たちを助けたいのではない。ワシは、お主たちが『強く』なることを見たいのじゃ。 この絶望的な病を、自らの手で乗り越え、より強靭な種へと進化する。その物語こそが、ワシの好物でのう』

 

【断り文句パターンC:(少しだけヒントを与える)悪戯な神の貌】

 

『まあ、そう絶望した顔をするでない。ワシも鬼ではない。ただ突き放すだけでは、お主があまりに哀れじゃからのう。一つ、ヒントをくれてやろう』

 

『邪神が残した呪い……いや、置き土産は『レムナント』だけではないぞ。もう一つ、あったはずじゃ。あの黄金の一ヶ月に生まれた、全ての赤子たち……『混沌の子供たち』がな』

 

『彼らは、生まれながらにしてあの楽園の言葉を話す、新しい人類じゃ。彼らは、お主たちの失われた過去ではない。彼らは、お主たちがこれから紡ぐべき、未来そのものじゃ』

 

『失われたものを取り戻そうとするな。新しく生まれたものを、どう育み、どう理解し、どう共存していくか。 そこにこそ、お主たちがこの暗黒期を乗り越えるための鍵がある。……ワシが言えるのは、ここまでじゃ。あとは、お主たち自身の物語じゃよ。せいぜい、ワシを楽しませておくれ』

 

 解説

 これらの断り文句のポイントは、「助けない」ことが、スキル神にとっての最大の「助け」であり、彼なりの「善意」であるという理屈を提示することです。

 

 物語の主体性の尊重: 神が介入しすぎると、それはもう「人間の物語」ではなくなってしまう。スキル神は、あくまで観客であり、舞台に直接上がって主役を演じる気はない、というスタンスを貫いています。

 

 長期的な視点: 短期的な救済(翻訳スキルを与える)よりも、人類がこの困難を乗り越えることでより強く進化するという、長期的な視点(神の視点)を提示しています。

 

 邪神との差別化: 「安易な奇跡を与える」という行為そのものが邪神と同じ土俵に立つことになり、自らの信条に反するという論理です。

 

 希望の提示: ただ突き放すのではなく、「レムナント」や「混沌の子供たち」という新たな希望の存在を示唆することで、黒田たちに次の行動目標を与え、物語を前に進ませる役割も担っています。

 

 この断り方は、黒田にとってはあまりにも理不尽で残酷に聞こえるでしょう。しかし、それこそが人間と神との間にある、決して埋まらない絶望的な価値観の差であり、この物語の根幹を成すテーマの一つだと思います。

 

 このような問答を通じて、黒田は「神に頼るのではなく、やはり我々人間の手で、この地獄を乗り越えるしかない」という覚悟を、より一層固めていくことになるのかもしれませんね。

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