ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます 作:そこの角にいる
「おいおい、ずいぶん盛り上がってんなあ! そんな面白い勝負だったのか?」
「あそこのほら、あのちっこいのが勝ったんだ」
「子供同士の決闘か? 珍しいな」
「違ぇよ。相手はあっちの男だ」
「……冗談よせよ。それともなんかのショーか?」
「冗談なんかじゃねえ。あの男〝
「はあ……? マジかよ。なら暴力には慣れてるワケだな……の割に、どっちも大したケガもしてねぇようだが」
「ああ。あの子が完璧に封殺して見せたからな」
「おいおい……どこのガキだよ」
「さあ、知らねえ」
「んん……あれか。あーアイツら」
「知ってんのか?」
「ありゃあ〝風の剣士団〟だな」
風の剣士団なんて言葉がいくつか聞こえ、レムは首をひねった。
「父様、ウチは〝ヴィントベルク男爵の剣士団〟じゃ?」
「うん、なんつーかいつの間にか風の剣士団で広まっちまったなあ」
「ふうん。父様、あの子たちは?」
レムは決闘を最前列で見ていた子供たちを見た。彼らもまだこっちを見ている。
「ウチの団の子供たちだ。以前にも顔を合わせたことあるはずだぞ」
「え、そうだった?」
風の剣士団は、棟続きの西洋長屋で固まって暮らしている。その方が何かと都合がいい。
レイグ一家も今の家に引っ越すまでは同じところで暮らしていた。
「あの子たちと遊んでいくか?」
「ううん、今日は魔道具屋さんに行きます」
レムは子供たちに手を振って別れを告げると、ギルド門通りの公有地を後にした。
特に武具は象徴的で、人々の憧れや伝説に語られ、値段もまた一線を画す。
魔道具店に入ってすでに一時間が経過していた。
店は魔道具店というよりは、生活用品店だった。
魔法の力を秘めた道具は確かにあるが、錬金術師が作るマジックアイテムが多い。
(あれ? マギアってなんだっけ?)
店の奥、ショーケースのベルベットに安置されている剣や盾を見つけ、レムのテンションが戻ってきた。
良ければ買う、かもしれない。とレイグが店長に金を握らせ、『炎の剣』を試させてもらう。
レムには重過ぎるので、レイグが付与された魔法を発動させた。
「おお!」
レムが歓声を上げる。
剣に刻まれた溝がレイグの魔力に反応してぼんやりと光る。
すぐに剣の切っ先に向かい、魔法陣がスライドしていく。
「おお⁉︎」
魔法陣を形成する
スライドしていくに従い、炎っぽい模様が宙に渦を巻いたり、一部が弾けて小さな花火がキラキラと輝いたり。
余計なものというか、意図した演出なのだろう。
こんなこともできるのかという驚きは確かにある。あるけれど……。
剣が炎を纏うまで6秒。
そして炎が薄い。
店長を確認すると満足そうに頷いている。
(え~……)
レイグを見ると、レムの言いたいことを察して言った。
「貴族用だな」
「何をおっしゃいますか⁉︎ ちゃんと剣として実用できるものですよっ」
「鋼の剣の100倍するんだが、実戦においてこの炎に意味はあるのか?」
「アチッてなります!」
臆さない店長だった。
「ああ……そうだな」
レイグが優しく店長の肩を叩いた。
「いやしかし、装飾は確かに貴族様用でございますが、炎の剣自体はどこもこんなものですよ?」
「ええっ⁉︎ そんなっ」
「も、もちろん遺跡で見つかる魔道具なら強力な物もありますが、ウチみたいな店に置いてあるわけないでしょう⁉︎ この剣だって無理して買ったのに、集客には繋がらないし……」
「なんか、ごめんなさい」
「ついでに風の短剣も見ていかれますか?」
「ええ⁉︎ あるんですかっ」
「……」
懲りない店長だった。
モジャ先生から届けられた壊れた魔道具をガチャガチャ弄っていると、母に呼ばれた。
玄関まで行くと喋る声が聞こえ、母の
「あれ?」
「こんにちは」
背の高いいくらか年上と思われる少年が爽やかに言う。
その少年と手を繋いだ女の子がかすかに頭を下げた。
「こんにちわっ」
次に両側を結んだ髪をピョコピョコ跳ねさせて元気に女の子が手を上げた。そして流れるような動きでそのまま横の男の子の頭をはたいた。
ぼーっと明後日の方を見ていた男の子はようやくこちらを見ると、おざなりに片手を上げて下ろして言う。
「よ」
レムも軽く片手を上げた。
「こんにちは」
四人は遊びに来たらしい。
とりあえずレムの部屋に上がってもらった。
改めて自己紹介。
一番年上のロアンが10歳。
ひっぱたかれていた男の子、アンディ6歳。
女の子二人は共に7歳。
ロアンの妹・イロア。
アンディの姉・シェリン。
「ねえ、知っていた?」
元気娘シェリンが両サイドを結んだ髪をぴょこぴょこさせて言う。
「むかしはレムもあたしたちと一緒のとこに住んでいたのよ。パパたちが冒険に行ってるあいだ一緒に待ってたんだって!」
「へー、そうなんだ」
「おぼえてる?」
首を横に振る。
実際のところは覚えている。
冒険に出ている団員の子供たちを、留守を預かる者らが持ち回りで面倒を見ているのだ。そのため子供が一人という状況がほとんどない。
ただレムは2歳くらいまでのことだったので、誰が誰だったかなんていう区別はついていない。
引っ越してからは距離の問題で一緒に預けられることはなくなり、母にあまり面倒をかけるのもアレなので、レムは一人でごろごろしていた。途中からは魔法に夢中になっていたし。
「だからね! あたしたちは家族もどーぜんなのよ?」
レムは素直に頷いた。
「だからおねえちゃんって呼んでもいいよ!」
どうやらこれが言いたかったらしい。
同い年だが。
期待に鼻をふくらませているシェリンに、またレムは頷いて言った。
「わかったよ、おねえちゃん」
「むふー」
シェリンには実の弟がいるものの、それこそ今、真横にいるものの、団の子供たちはシェリンより年下の子がほぼいないことに物足りなさがあったらしい。
「それで、レムは今日なにしていたんだい?」
ロアンがシェリンに苦笑しつつ、部屋を見回し、木箱に目をとめた。
レムはその木箱から魔道具の残骸を取り出して見せた。
「魔道具」
「わかるの?」
「わからないから調べてる」
「そうか、すごいね、レム」
ガチャガチャという音に目を向けると、アンディが木箱の魔道具を漁っていた。まんま玩具箱をかき回す子供の図だ。
「あ、アンディダメだよ。レム?」
「だいじょぶ。危険な物はないから。アンディ、足に落としたりしないようにね」
「ん」
アンディがこくりと頷いた。
ロアンが机に目を向け、その周りに山と積まれた紙の束を指差した。
「見ていい?」
「どうぞ」
本棚を眺めていたシェリンとイロアも近寄ってきた。
「むつかしいご本ばっかりね!」
イロアもこくこく頷いている。
「あー、ごめんね? 二人は好きなお話があるの?」
「あるわ! あたしは〝ドレイもん〟!」
「…………ん? え?」
「わたし……は、〝ドラゴボ〟」
「はい? ご、ごめん。知らないやたぶん」
「ええー⁉︎」
二人が目を丸くして驚いた。
聞けばどうやら『
なんだそりゃ。
「あたしは家族で劇を観に行ったの」
「劇があるんだ……」
心優しいヘタレ王子トビアスが、暗殺の危険から逃れ、ひょんなことから心を通じ合わせた
もう一つは、ごく普通に育った少年が竜の力に目覚め、ある日、王女を助けたことで学園に通うことに。そして二人はやがてどんな願いも叶うという竜珠の伝説をめぐる争いに……という物語のようだ。
近々、この二つの物語のクロスストーリーが発表されるらしい。
「そ、そうなんだ。今度、読んでみるよ」
「それがいいわ! それに次のお話も目をつけてるんだから! ね、イロア」
「うん、すごく、面白い」
どうやら彼女たちはお話好きで集まり、読み合ったりしながら次に〝クル〟ものを探しているらしい。
「ちなみになんていうの?」
「ほんとは秘密なんだからね? あたしたちの弟だから特別なんだからね? わかった?」
「わかった」
なぜかシェリンだけでなく、イロアの弟にもなってしまったらしい。
「題名は『新しい顔』」
「へー、渋いタイトルだね」
「?」
「しぶい?」
(サスペンスかな? サイコホラーとか?)
そんなわけがなかった。
心を獲得したゴーレム『
「……」
遠くを見ていたらロアンに呼ばれた。
「レムは魔法が使えるの?」