ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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13 とんびってカイトなんだって

 

 

 

 

 

「魔法も、魔道具も、現在多くの知識が残念ながら失われています。逆火現象(バックファイア)が怖すぎて魔法の開発・再発見も亀の歩みというのが現状らしいですね」

「バックファイアか、そんなに恐ろしいものなのかい?」

 

 ダスティンに頷く。

 

「はい。例を挙げたらキリがないです」

「でもよ、なんでもかんでも爆発するってなら確かに怖ぇけどよ、回復魔法ですら危険なのか?」

 

 サビラの言葉に例をあげることにした。

 

「昔、四肢の欠損すら治す【大治癒】の再現に臨んだ人がいました。しかしあえなく試みは失敗。その場では何事もなかったけど、後日、自身が負ったどんな傷も瞬く間に治ってしまうことに気が付いた。それこそ、致命傷を負っても死なない」

「なんだそりゃ。すげえじゃねぇか」

「不老不死?」

「いいえ。代わりに彼は傷を負う度に老いていった。いえ乾涸(ひから)びていったというのが正確なようですけど。ほんのちょっとの切り傷やアザができただけでもどんどん治って、どんどん乾いていく。でも死なない。どんなにカラカラになっても。シワシワカラカラになって、歩けば簡単に足が折れたけどやっぱり治った。(カラダ)が乾いていく音がする。気が狂う。もういっそ、とみんなが考えた。殺すことが救いになるのではと。しかしそれでも彼は死ななかった。切り刻んで燃やしても。頭部すら生えてきた」

「どうなったんだ、そいつ。まさかまだ生きてるなんて言わないよな」

「通常の治癒魔法であっさりお亡くなりになったみたいです」

「……そりゃあ、迂闊に試せないよな」

 

 サビラがガシガシと頭を掻いた。

 

「と、まー、逆火の危険性を知っていただいたところで話を本筋に戻しまーす。多くの知識が失われた中、最も多く情報が残っているのが【火射(ファイアショット)】の魔法です。攻撃魔法といえばまずはこれ」

「確かにな。魔道士で使えない奴はいねえし、冒険者で見たことない奴もいないだろうなあ」

「はい。ということでまずは魔法陣から」

 

 レムは一歩進み距離を置いて土の山に向かう。

 

 調息。

 目の前に魔法陣が一瞬広がる。すぐに収縮すると炎の塊になって射出された。

 ボンと土の山にぶつかって炎が飛び散った。

 

「次は呪文いきまーす」

 

【フォーアロストゥーウィズアロスシー】

 

 一言ごとに目の前に魔法陣が描かれてすぐに炎の塊が飛び出した。

 ボンと土の山にぶつかって炎が飛び散る。

 火射の魔法は爆発はしない。炎も着火でもして追加効果が得られたら運がいいくらいのもので、この魔法の本質は魔力による強打である。

 たとえばキリンは喧嘩するとき首を振り回してぶつけ合うが、それを人がまともに喰らえば十mくらい吹っ飛ぶそうだ。それくらいの衝撃。

 

「どっちも速くないですか?」

「発動な、俺もそう思った」

 

 ダスティンとサビラがレイグを見る。

 

「どいつも魔法陣を描くのに気を使うが、魔力の操作と結果の想像が滑らかに出来ていればこのくらい余裕なんだとさ」

 

 レイグが肩をすくめ、二人が唸った。

 

「次が皆さんが見慣れてる方法だと思います。いきますよー」

「え?」

「は?」

 

【フェイタル】

 

「は──や!」

 

 ほとんど魔法陣は視認できなかった。

 炎の塊が、ボンと土の山にぶつかって炎が飛び散った。

 

「【火射】の魔法は、基礎を学んだらすぐに今のやり方を練習するのが現代の魔道士(メイジ)みたいです。〈省略法(ノタリクス)〉という呪文の短縮術です」

 

 かつて呪文という言葉は使われていなかった。比較的新しい言い回しである。

 魔法の知識が失われ、逆火現象の恐ろしさが知られるようになってからの言葉じゃないかと、レムは推測する。

 呪文も魔道語印も、どちらも昔は構成源素(ノタ)と呼ばれていた。

 魔法の〝速唱(はやとな)え〟をノタリクスと呼んだのだ。

 

「俺らが知ってんのと違うんだが……?」

 

 魔道士たちはもっと一音一音しっかり発音し、さらに炎が飛び出すまで一拍の間がある。

 レムのように聞き取れるかわからないほどの早口なんて普通ない。

 

「基礎は大事ですね」

 

 今の魔道士たちはもしかしたら、ゆっくりの〈省略法〉以外では上手く発動できないのかもしれない。

 

「それじゃあ、次で最後です」

「まだあるのか?」

「そうなんですよ。魔法陣、呪文、省略法ときて、結ぶ印の形も判明しています。情報が残ってるというのはありがたいですね」

「つまりこれからやるのは印契(いんげい)発動か」

「見たことあります?」

 

 ダスティンがサビラとレイグに訊ねた。

 

「……昔、……何度か……?」

「ああ」

 

 レイグが頷いた。

 

「あれ? そうなんですか?」

 

 レムが首を傾げた。

 

「使ってたアイツ、どうしたっけ?」

「いつの間にか消えてたな」

「印を結ぶ発動の仕方はあまりないのか……もしかして【飛ん火(トンビ)】や【火射飛(カイト)】の呼称は他国の呼び名だったのかも。まあいいです、そんなことは。でもこれこそ団のみんなに覚えてほしいです」

「俺たちにか?」

「そうです。なんといっても印が簡単、片手で済みます。盾を使わず片手を空け易い我々グナト流に向いていると思うんです。牽制に使うもよし、不意を打ってもよし、柔らかい敵ならこれだけで討てるかもしれません」

「ほーお」

 

 サビラが興味を引かれたようだった。

 

「魔力の扱いが繊細なのでそこが難しいです。ヘタを打つと逆火で手が吹っ飛びますので、気をつけてくださいね」

「おいおい」

「大丈夫です。力任せに魔力を注ぐような雑なことをしなければこれは起こりませんから。じゃあ実際に見せます」

 

 レムは右手の親指、人差し指、中指を立てて、目標に向けた。

 

「顔の前で印を結んでもいいですけど、最初から構えた方が速いです。魔力を印に集めます。結果の想像を明確に。印を組み替えます。人差し指と親指をたたみ、魔力を注ぎます。人差し指を伸ばします。これで揃えた人差し指と中指を目標に向けた状態になりました。魔力を注いで準備完了です、これで任意でいつでも撃てます。撃ちます」

 

 炎の塊が指先から飛び出し、ボンと土の山にぶつかって炎が飛び散った。

 

「通常、一つの魔法陣は一つの魔法を生み出します。【火射】の場合、魔法陣が炎に変化して飛び出していくので、次また撃とうと思ったら魔法陣を再び描くことになります。慣れれば一瞬とは言え、思考や意識はどうしてもそちらに持っていかれます──が、印の場合は少し違います。三つの動きがあるので、陣の構築や短縮呪文よりはともすれば遅いかもしれません。しかし、印の場合、一度撃って印を維持したまま、人差し指をたたみ、伸ばすと、また撃てます」

 

 炎の塊が指先から飛び出し、ボンと土の山にぶつかって炎が飛び散った。

 

「何度でも」

 

 連続で炎が飛び出し、土と炎を撒き散らす。

 レムは乱れた呼吸を整えながら続ける。

 

「動きを一つ省略できる上に、印を維持している限り、以降の魔力操作は雑でいい。しかもグナト流において剣の把持は左手の小指と薬指が最も重要で、右手のしかも人差し指と中指なんて添えるだけと教わります。そういう意味でもこの印はやり易い。どうですか、すごくないですか?」

 

 レムが目を輝かせて言う。

 

「おおー」

 

 ダスティン親子三人がぱちぱちと手を叩く。

 

「たしかに覚えておいて損はなさそうだが、俺にできるか? 若坊ちゃん」

「もちろんできます。必ず発動するやり方がわかっているんですから。それはとても大きい。練習あるのみ。まずは書き取り練習からですね」

「ぅげ。おいレイグ?」

「俺はもうできる」

「あ! ずりぃぞ」

 

 

 

 

 

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