ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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17 いつか変身ベルトを

 

 

 

 

 

 襟巻きを首に巻き、魔力を流すと光の線が輝き走る。

 左胸から肩にかけて『ソード・グナト』の文字が浮かび上がった。

 

『おおっ』

 

 続けて金属の襟留めに手を当て魔力を流す。

 光の渦が頭上に立ち昇り、光り輝く盾を描き出す。

 自由に動き回るいくつもの光の線は風を表している。

 風が彩る輝く盾の紋章。

 レムが木剣を胸の前で立てて掲げるグナトの『刀掲礼(とうけいれい)』に合わせて──実際にはタイミングを見てレムが合わせて──風が螺旋を描いて剣に絡みつく。

 一際輝いて一瞬の間──。

 木剣を右下段に振り下ろす。

 描き出された紋章が砕け、同時に周囲に光と風が撒き散らされた。

 

 誰からともなく拍手が起こった。

 ショー感覚だ。実際ショーなので間違ってない。

 

「と、まーこれを決闘の最初にやってもらいたいと思いまーす」

「え? いまのを俺らがやんの?」

「そだよ」

「そだよ、って……」

「魔力を流すだけだから簡単です。あ、全員分のマフラーあるから心配しないでね」

「ぉ、おう」

 

 

 

 配られた襟巻きをなんだかんだ楽しそうに身につけているおっさんたちを眺めていると、バンが横に並んだ。

 

「あの意匠も(ぼん)が考えたのか?」

「うん。あ、嫌だった?」

 

 バンは首を横に振った。

 

「少し懐かしくなった」

「そう」

「にしても、よく知っていたな」

「ま、ね」

 

 輝く盾とは、北から魔の領域の半分にフタをする『輝く盾の山脈(グレアリング・シールド・マウンテンズ)』を指している。

 その山脈の麓が旧男爵領であり、風が彩る輝く盾は男爵の紋章だった。

 

「はい、バンチョーのマフラーもありますよ」

「あ、ああ……」

「マフラーに魔力を通してみてください。バンチョーのにはちょっとした仕掛けがあるんです」

 

 バンは少し困惑した顔で言われるまま魔力を流した。

 光の輝線がぐるりと走り『ソード・グナト』の文字が浮かぶと──。

 

 ──副長(ヴァイスロイ)!──

 

 不思議に響く声が上がって、バンの肩がびくりと跳ねた。

 レムは滅多に見られないバンの姿に笑みを溢す。

 

「音を仕込んでみました。うまく魔力を制御しとかないと不意に叫び出しますからね。ヴァイスロイ! 気をつけて」

「…………」

 

 ふと気づくと、向こうで訓練していた若いグループの何人かがレムを睨んでいた。

 レムは首を傾げたが、はしゃいでるおっさんたちに呼ばれてそちらに向かった。

 

「なあ、若坊ちゃんよお、炎の剣イジっていいスか?」

「いいスよ。気をつけてね」

 

 ボッと音を立てて剣が炎を纏う。

 

「アチッ⁉︎」

「もっと離れろよ」

「火力がすげえ……」

「それに炎を纏うのも一瞬だ」

「持ってる方は熱くねぇんスなぁ」

 

 そう言って彼は炎に手を近づけた。

 

「あぢゃあああっスッ⁉︎」

「バカ」

「……バカ」

「…………バカ」

「代わる代わる言うんじゃねえス!」

「【火射】も撃てます」

「まじスかッ」

 

 的に向けた切っ先から炎が飛び出した。

 レムの工夫によって自然と威力が上がった炎は、藁を巻いた丸太をへし折って、激しく燃えた。

 

「すげえな。実用に耐える炎の剣なんて初めてみたぜ」

「切れ味の方も試していいスか?」

「どうぞ」

 

 喜び勇んで的に向かって駆け出した彼は、鎧を着たカカシに斬り付けてすぐ戻ってきた。

 

「普通っス!」

「じゃ、こっちを試してください」

「ってことは違いがあるんだな?」

「さっきのは売り物。こっちは決闘の景品として見せる用の、人寄せのエサです」

「こら8歳児、言い方」

「とりあえず試してみるス」

「なんでお前ばっかり」

「そうだずるいぞ」

「俺がやる」

「いやここは俺が」

「バカども、俺の出番だろ」

「俺が」

「俺が」

「俺が」

「まだ十分試せてないから爆発したらごめんね?」

 

『どうぞどうぞ』

 

「早い、変わり身が早いス」

 

 ボッというより、ヴゥゥー……ンと炎を纏う。

 炎の大きさ自体はさっきのより小さいくらいだ。

 

「行くス」

 

 的に向かって行って剣を横薙ぎに振るった。

 中の丸太とクッションごと斬り飛ばされた鎧の一部が、明後日の方へすっ飛びながら燃え上がる。

 

『おおおー……』

 

 さらに的に向けて【火射】を放つ。いや、それはもう【火射】ではなかった。

 人の背丈を超える炎の塊が地面を焦がしながら的を飲み込み、塀に到達してどちらも消し炭に変えた。

 

『うおおおおっ⁉︎ すげええっ‼︎』

 

 剣を持つ本人は振るう度にヴゥン、ヴゥゥーンと鳴るのが楽しいのか、踊るように剣を振り回していた。

 

「いやこんなん俺も欲しいわ」

「すごいな、若坊ちゃん」

「正直、期待してなかったんだが……」

「楽しみだなあ、片手半剣(サヒ)

 

 

 

 

 

 冒険者の宿(アドヴェンチュラーズ・イン)──ハイアカンの宿にも話を通そう、とバンが言った。

 

「興行に変えてしまえ」

 

 

 

 とんとん拍子に話が進む。

 決闘興行までの空いた日に、ギルド公会広場(フォーラム)で炎の剣のデモンストレーションを何度か行った。

 レムもお祭りのノリで、一度、マッドハッターに扮して立ち会った。

 

 

『さあさあお立ち会い! 今日はなんと炎の剣『炎上(アブレイズ)』と『焦熱(シヤー)』の制作者にして謎の魔道具士マッドハッター師にお越し頂いたぞ! すでに見た方もまだの方も新たな歴史に刻まれる魔道具(マギア)をその目に焼き付けろッ!』

 

 

 ザンパの商会員が場を大いに盛り上げる。

 

 

 

 ザンパはすでにギルド本部──匠合聯合会館(しょうごうれんごうかいかん)に直接『炎の剣・炎上』を一本持ち込み、その日の内に8000万で売ってきた。

 

 コリン魔導具店にも一本置く。

 ランチ一食分の金銭で炎の剣を試すことができるようになっている。

 コリンには整備費用だけ払ってもらい、受注を取り付けたら、いくらかお金が入る契約だ。

 

 

 

「あれが制作者?」

「なんだありゃ、怪しすぎだろ」

 

 シルクハットに亀裂のような笑みの仮面、ダボダボのマント。

 

「小さい……のか?」

「いやあ、座ってんじゃね? あれで立ってんならどんだけマント引きずって歩くつもりだよ」

「あの肩幅の狭さ、棒か?」

 

 そんな会話に耳を傾けていると、目の前に男が立ちはだかり、レムは仮面越しに男を見上げた。

 

「なあ、俺にぃえも、ほのおの剣くれよ、ほのおのけん」

 

 ただの酔っ払いだった。

 周りの注目が集まる中、マッドハッターが()()()()()()

 

「で、でけえ……」

 

 どよめく。

 マッドハッターは立ち上がると腰を曲げ覆い被さるかのように、酔っ払いを上から覗き込んだ。

 真上を向く酔っぱらいの顔の数cm上に無機質な仮面の顔がある。

 

「腰を曲げても2m超えてんぞ」

「なのにヒョロヒョロじゃねえか、棒か」

 

 ひぇぇ、と酔っぱらいが逃げていくのをマッドハッターは黙って見つめた。

 マントの中では【空歩】の要領で浮かべた魔道語印(アトン)に腕立て伏せ状態でレムはガンバっていた。

 さらに魔道語印を浮かべ、なんとか直立状態に戻ろうとする。

 

「おい何だよあのカクカクとした動きは。気味悪ぃ」

「ホントに人間か? 棒か?」

 

 マッドハッターはプルプルしていたかと思えば、急に上半身が落ちるかのようにその場に倒れ込んだ。

 

「うわっ⁉︎」

「なんだ⁉︎」

 

 マッドハッターは地面を転がると、元の位置で元の座った状態に戻る。

 

「いや怖えよ」

「マッドハッター怖え」

「狂ってやがる」

「棒か?」

 

 

 

 

『さあやってきたぜついにこの日が! 決闘大会! 賞品は実質、億越えともいわれる炎の剣! (チカラ)と金の亡者どもよ! 騒げ!』

 

 ドンっと爆発的な歓声が上がる。

 

『たった一勝で〝フレイムソード・アブレイズ〟か〝フレイムソード・シヤー〟がその手に! そんなお前らに立ちはだかるのはハイアカン・イン所属、対人戦にめっぽう強い、「冒険しろよ!」でお馴染みの〝風の剣士団(ウィンド・ソードクリーク)〟だっ‼︎』

 

 歓声とブーイングが入り乱れ、賭け札を求める怒号が上がる。

 

『そして今日も会場にはこのお人が駆けつけてくれた! 今回賞品の制作者! 謎の魔道具士ぃ! マッッッッド・ハッター師だあああっ!』

 

 歓声と太鼓と笛の音が盛り上げる。

 マッドハッターが立ち上がる。

 

「やっぱでけえ」

「つうより長え」

 

 マッドハッターが歓声に応え、おもむろに手を上げる。

 

「手ぇ短っ⁉︎」

「なんなんだあの人はっ⁉︎」

 

 

 昨日(さくじつ)帰ってきたばかりの父レイグと母は事情を知っているだけに、二人で一緒に離れたところで爆笑していた。

 

 

 決闘の結果、『炎の剣・炎上』を2本持っていかれたが、資金の調達には困らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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