ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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18 攻撃スキルのみですが何かっ⁉︎

 

 

 

 

 

(ちん)の名は奴隷者(ドレイもん)主人(あるじ)はまだない──』

 

 レムは一行目でパタリと本を閉じた。

 

「ツッコミどころの混線が過ぎるよ……」

 

 

 

 あの決闘大会からしばらく経ち、季節が移り変わる。

 レムは9歳になった。

 

 弟とカーペットの上でごろごろする。

 近くにはお手伝いさんが見守っている。

 母は身体が鈍ってるからと、今日は裏庭で鍛錬している。矢が的に当たるスコーンッという小気味のよい音がかすかに響いてくる。

 

「坊っちゃま、お客様です」

 

 別のお手伝いさんに言われ、母を呼んでくるよう頼んだ。

 

 

 

 応接間に客を通し、レムは母と一緒に彼らに向かい合っていた。

 客は魔道士ギルドから来た魔道士だった。エリート二人。

 彼らはなぜレムが当然のように向かいに座っているのか不思議そうにしていたが、それを言うことなく本題に入った。

 

「話題のマッドハッター氏にお会いするためには、こちらに渡りをつけて頂かなければならないとお聞きし、罷り越しました次第であります」

「そうですか。ずいぶんと探されたようですね?」

「は……いえ」

 

 決闘大会から間が空いて訪ねてきたのはそういうことかと、レムは納得した。

 

(ぼくに辿り着かなかったのは、ザンパがうまくやってくれたんだな)

 

 後で聞いたが、最近ちょくちょくモジャ先生とズンガの所に魔道士ギルドの使いが現れては、マッドハッターに会わせろと言ってきていたようだ。

 

 注目を集めたので鍛冶場ができるまでは新たな魔道具作りはお休みし、それぞれで活動していたため、しばらくレムは二人に会っていなかった。

 

(すげなく断られ続けて、ついにウチに頼みにきたわけか。魔道士ギルドは冒険者を低く見ているというのはホントだったかー)

 

 ここに来るまでの空いた時間分だけ、ウチに頼むのが嫌だったってことかとレムが考えてる間にも話は進む。

 

「マッドハッター氏に直接お話ししたいと……」

「お仕事の依頼を受ける受けないも、会う会わないも、わたくしどもに一任されております。理由をお聞かせ願えないのであれば、お帰り頂くほかありません」

 

 なんだろう、けんもほろろな母こわい。

 

「……炎上と焦熱を魔道士ギルドにご教示いただきたいのです」

「…………」

 

 母が黙った。

 

(おぉー、大胆な要求をしてきたなぁ)

 

 魔道士たちは、魔法技術の発展を謳いながら、知識を秘匿している。魔法の流派なんてものが生まれていることからも明らかだ。

 

 その知識を教えろと言っているのだから、聞く者によっては喧嘩を売っているに等しいと感じるはず。

 

 母が一つ息を吐き出した。

 

「それで、そちらは何を差し出してくれるのですか?」

「……金銭を」

「〝炎上〟は1億2千……いや、1億3千万お支払いします。なんでもギルドには8千万でお売りになったとか、いかがでしょう」

 

 得意顔でそう言う彼らに、母メルティナは嫣然と返す。

 

「ふーん。では、炎上の剣を1億3千万で買うということでいいのね?」

「い、いえ、剣ではなく、マッドハッター氏には魔法陣を」

 

 炎の剣について、すぐに模倣されるだろうとレムは思っていたのだが、そうでもないことを知って驚いていた。

 もちろん馬鹿正直に魔法陣をそのまま剣に彫り込んだりしていないし、術式補助液(フォーミュラ・インク)をはじめ、剣自体の素材や工程の工夫により簡単に真似できないようになっているが、それでも劣化版がすぐにでも出回るだろうと思っていたのだ。

 

 だが違った。

 

 おそらく、その何よりの理由が、この世界の魔法使いたちは思った以上に逆火現象(バックファイア)を恐れているということだ。そしてその意識が魔法の三大要素である、想像・理解・魔力をより難しいものに変えている。

 

 ザンパのツテで匠合聯合会館の資料を当たったところ、魔法の発動を確かめる検証実験というのは長らく死刑囚が使われてきたらしい。

 無事に発動した場合は恩赦が得られるのだとか。

 魔法の開発・再発見というのはそれほど危険な研究課題というわけだ。

 さらに魔人や魔王の脅威が高まる昨今、囚人たちを戦場に送る方が圧倒的に多くなっているようで、そういった事情からも魔法の研究は停滞を余儀なくされている。

 

 

「お話にならないわ」

 

 メルティナの反応に、まあそうだよねとレムは思う。

 前述の事情から、すでに8千万で買えると思ってる人なんて、あんまりいない。

 

「まずあなた方の魔法陣の情報を持ってきなさい」

「な⁉︎ なんと乱暴なっ」

「どの口が言いますか。そもそもこちらが切り出すまで対価を提示しない時点であり得ないのよ。どうぞお帰りください」

 

 

 

 彼らが帰り、メルティナが珍しくソファにダラけた姿でため息をついた。

 

「しばらく魔道士ギルドに注意しないとね。というより、ソドー子爵か」

「うん」

 

 ソドー子爵は自身も魔道士(メイジ)であり、魔道士ギルドの重鎮である。また、かつてザンパを脅し魔道具を奪った張本人でもあった。

 当時、双方に犠牲が出たが、子爵にとってはその犠牲もどうということはなかったのだろう。

 一家にとって彼は明確な──敵である。

 

 

 

 

 

 魔法という直接的に戦局を左右し得る技術が衰退の道を辿る背景には、魔法を特別にしたい、()いてはそれらを扱う自らが特別でありたいと思う者の思惑、さらにはその者たちを扱う者──組織、国家の思惑があり、そこに加えて『特技(スキル)』の存在がある。

 

『伝道の碑マギステル』によって習得できる魔法複合特殊技能──スキルは、碑に触れて〝至った〟と判断されれば、たった数時間で覚えることができる。

 習熟にはそれなりの時間が必要ではあるが、魔法と違いすぐにでも達人レベルの技能の一端を身につけられる。

 

 マギステルに触れ切り離された意識の中で、所定の様式による準備動作を覚えるのみ。

 現実に返ってそれを行えばその瞬間、魔法が構築され半自動で動作が発生し技が発動する。

 

 

 

 風の剣士団・訓練場。

 

「【一閃(リニアー)!】」

 

 まだ声変わり前の気合いの声と同時。

 ロアンが放たれた矢のように的に向かって一直線に刺突を繰り出した。

 たった一歩、助走もなく最初の一歩で5mを飛ぶように、的の板金鎧とすれ違う。

 金属質の擦過音が余韻として残る。

 一拍置いて、鎧の肩口から先が、離れた地面に落下した。

 

「おおー」

 

 パチパチとレムはロアンに拍手した。

 

 今日は訓練場で団のみんなの協力の元、スキルの見学をさせてもらうことになっていた。

 というのも、半自動で発動するスキルは魔法複合特殊技能、つまりなんらかの魔法が発生している。

 使用者も意識しない瞬間的な魔法陣の展開と発動。

 それが観測できるならそれは魔法の収集に他ならない。

 

 そんな話をしていたところ、先日ついに習得可能スキルが出たと喜んでいたロアンが、自分も協力するとはりきっていたので、じゃあお願い、と頼んだのだった。

 

 マギステルの碑に触れられるのは、12歳以上のギルド会員と決められている。

 

 拍手していると周りの大人たちも加わった。

 ロアンは息を切らせつつも、照れたように笑った。

 

 スキルは魔力をけっこう消費する。

 半自動とはいえ自らも意識的に動くことで速度や威力が増すことが知られている。

 そして戦闘スキル使用後には技後硬直という停滞の時間がある。

 肉体への負荷も激しいため、治癒魔法が発動し肉体を修復しているためだ。スキルに耐えられるよう身体を鍛えると硬直時間は短くなると聞いていた。

 

 しかし今日は速度を増すのではなく、できるだけゆっくりと、発動するかしないかのギリギリを見極めて使用してもらうことになっている。

 

 一閃(リニアー)

 回閃(ローテート)

 斜落とし(アスラント)

 重断(ヘヴィスマイト)

 早撃ち(クイックドロー)

 

「ぐぉおお、難しい」

「なんでできるだけゆっくりっつってんのに【早撃ち】だよバカ」

「防御系スキルの方がわかり易いかもな」

「おう、それだ…………俺覚えてねえや。誰か」

「……」

「……」

「……」

「……おい、この役立たず共」

「お前もだろうが!」

「補助系や回復系のみの単体スキルもあるなんつー噂を聞くがマジかな?」

「そこまでくるともう魔法複合ってより魔法だよな」

「魔道士いなくなるな」

「なー」

「……で? 誰か覚えてるヤツ」

「……」

「……」

「……」

「チッ、役立たず共が!」

「お前もだっつってんだろっ!」

 

「誰かサビラのおやっさん呼んでこいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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