ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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02 説明しろ、このやろう。まじで(泣

 

 

 

 

 

 とりあえず家に迎え入れられたアトは絨毯に胡座をかいた。

 すやすやと眠る赤子を隣の寝室に寝かせたメルティナが戻ってくると、レイグと共にアトに向き合った。

 

「珍妙な子かもしれんが頼む」

 

 アトはそう言った。

 

 

 

 

 

 もう12年も前になろうか。

 

「コマッテマース、コマッテマース」

 

 レイグがアトに初めて会った時、往来で誰彼かまわずそんな風に話しかけていた。

 言葉もままならないようであった。

 一見して細身の優男のようだが、その実、身長は三mに近いことに、もしや伝説にある巨神の末裔かと、思わず聞いたことを思い出す。

 しばらく面倒を見るつもりだったが、アトはひと月程度で言葉を覚えると、ふらりとどこかへ消え、またある時ふらりと会いに来た。

 大抵は共に飯を食い、酒を飲み、数日だらだらと過ごしてまたふらりといなくなる。

 ある日、突然やってきてお土産にと 魔道具(マギア)を渡されたり、レイグが冒険者仲間の一人を妻に迎えた日には、アトは黄金の酒を抱えて現れた。

 

 そんな関係が続き、この風が強い夜にアトはまた訪ねてきた。

 とびきり奇妙なお土産を携えて。

 

「あの子も、そうなのか?」

「おそらく。別の世界から流れ着いたのだろう」

「あんな小さな子が……」

 

 アトが異世界からの来訪者であることを、すでに夫婦は聞き及んでいた。

 

「お前が育てるって選択肢は? 同郷なんだろ?」

「同郷とは違うが。ふむ……それも考えないでもないが、やることができたでな」

「やること?」

「ルスルススネスを知っているか」

「知ってるも何も魔王の名じゃないか。最北の小国家群を喰い荒らし続け、帝国と戦端を開いてもう随分と経つだろう?」

 

 アトが肯定して頷く。

 

「あいつは邪魔だ」

 

 レイグはメルティナと顔を見合わせた。

 

「殺しに行ってくる」

「はあ?」

「聞け。〝魔技〟はわかるな?」

「もちろんだ」

 

 ──魔技(マギ)

 特技(スキル)とだけ言われることもある。習得していれば、呪文詠唱も不要で理論・法則の理解も無視して発動できる魔法複合特殊技能のことだ。

 

「その魔技だが、しばらく使うのをやめろ」

「どういうことだ?」

「魔技の仕組みにルスルススネスが介入している」

「な……」

「魔技を使えば僅かではあるものの、使用者は命を削る」

 

 絶句するレイグを置いてアトはなおも続ける。

 

「そして削られた命の幾ばくかがルスルススネスに向かう」

「じゃ、じゃあなんだ、俺たちは戦えば戦うほど魔王に命を与えていると?」

「そうだ」

「…………今この時も魔王軍に立ち向かっているであろう軍や北方の民は……一体なんのために──」

「だから、これからあいつを始末してくる」

「本気か?」

 

 レイグの顔が戦人のそれに切り替わっていた。

 

「相手は魔王だぞ」

「殺し切るには多少時間がかかるだろう。あいつらはしつこい故。排除したら魔技の仕組みを変える」

「……俺にできることは?」

「あの子を頼む」

 

 レイグはしばらく無言でアトを見つめ、息を吐いた。

 

「……わかった」

 

 アトは静かに立ち上った。

 

「仕組みを変えたらわかるようにしておく」

 

 しばらくの後に、魔技を得るための巻物(スクロール)を始めとした呪物の全てが効力を失った。そして『伝道の灯マギステル』なるスキル伝授の碑が各所に生えてくると、世界中で大騒ぎになるのだった。

 

 レイグ夫妻は知らぬ存ぜぬで通した。

 

 

    ◆

 

 

 ……7年後──。

 

 レムは玄関先で空を見上げて思った。

 

(異世界ファンタジーだったなぁ……)

 

「レムー、お皿運ぶの手伝ってー」

 

 母の声が聞こえる。

 

「はーいっ!」

 

 レムは元気よく返事をして、家の中へ駆け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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