ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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20 スレーヴェンは大河を背に平野部に広がっています

 

3章 剣

 

 

 

「おりゃー!」

 

 シェリンが笑いながら魔物に突撃していく。

 

「あーもう、勝手に行くな!」

 

 ロアンが怒鳴って追いかけ、さらにその後をトトト、とイロアがついて行く。

 

「よーし、ぼくらも行こー」

「おー」

 

 レムとアンディがゆるい掛け声で三人を追った。

 

 豚を追い立てて現れたゴブリンども。その数5。

 瞬く間に距離を詰めるシェリンだったが、炎塊が音を立てて追い抜いていった。

【火射】だ。

 アンディが向けた短剣の切っ先から連続して5発──ゴブリンを残らず吹っ飛ばした。

 短剣ではあるが、柄が湾曲していて、【火射】を放つために構えると銃っぽく見える。レムとアンディとで作った魔道具(マギア)──短剣・火射刀(ヒート)だった。

 

「なにすんのよっ⁉︎」

 

 振り向いたシェリンが遠くで文句を言ってる間に、ロアンが倒れたゴブリンにトドメを刺して回り、イロアが豚の首筋を撫で斬りにして仕留めた。

 

「あっ! なにすんのよぉっ⁉︎」

 

 シェリンがロアンとイロアに叫んだ。

 

「……」

 

 シェリンはきょろきょろしていたかと思うと、ずももももとレムの元に走ってきた。

 

「なんでよっ!」

「なにがよ」

「あたしだけ倒してない!」

「ぼくもいっしょだけど」

「……ならしょうがないか」

 

 妙な信頼のされ方をしている。

 

 同年代のみんなと冒険に出かける内に、レムには気づいたことがあった。

 

 みんなと自分の魔力についてだ。

 

 前から不安に思っていた魔力量そのものは劣るものではないことがわかって安心した。

 ──が、それも束の間。

 意識してみてなんとなく感じるのは、みんなと比べて自分の魔力消費が激しく、さらに回復量が少ない、ということだ。

 

 魔法やスキルを使わなくても、戦闘ともなれば激しく魔力を消費する。

 天意あるいは精霊の導きと云われる魔力の動きによって、自分の想像する理想に近づくためだ。

 身体能力、攻撃力、防御力、生命力、それらの高さに直結する働きだ。

 とは言え、大量に魔力を使えば際限なくそれらの能力を高められるわけではない。

 なぜなら急な大量消費は命に関わる。

 身体や精神を鍛え、安定したバランスを身につけるが望ましい。

 

 気持ちの昂りや、逆に落ち着いた精神状態によって魔力の回復は促進される。

 大抵の人は寝て起きればいっぱいまで魔力は回復するものだが、レムの場合、そういう感覚はなかった。しかしある日、気付くと突然全回復していることがある。

 レムにとって自分の魔力とはそういう不安定なものであった。

 

 いつの間にやらシェリンが仕留めた角兎を掲げて見せた。

 

「肉よ!」

 

 肉は豚で十分である。

 

「あ」

 

 ロアンが指差した方向を見る。

 肉の声に反応したわけではないだろうが、脇の林の陰から現れたゴブリンと不意の遭遇。

 

 ゴブリンは体長1mから1m半。概ね知能は低く、後先をあまり考えないため、通常他種族が踏み入れることを躊躇する場所も探検し、目新しい物や食べ物を盗む。

 ある意味、冒険者より冒険者なヤツら。

 人間が捨てたゴミなんかも誇らしげに掲げ、ゴブリン同士で奪い合い殺し合ったりしている。

 彼らは衝動と情熱に従って素早く行動に移る。

 

 三匹のゴブリンが動き出す──。

 

 ──その前に飛び込んだシェリンが笑顔で剣を振るっていた。

 刃筋が正確に立てられていない斬撃は、ゴブリンを切ることはできなかったが、ひしゃげたゴブリンは吹っ飛んだ先で木に激突して永遠の沈黙を強いられた。

 

「ゴボォッ⁉︎」

 

 驚愕するゴブリンにシェリンが襲いかかる。

 もう一匹のゴブリンが棍棒でシェリンの剣を横から弾いた。

 たぶん正面からぶつかっていたら叩き潰されていただろうが、仲間を庇うために横から攻撃したことで事なきを得た。

 2対1で睨み合い、動きが止まったゴブリンに向けて、レムは口笛をピュイッと吹いた。

 こちらを向いたゴブリンに指を上に指して示す。

 釣られて上を向いたゴブリンの額に──物質化した魔道語印(アトン)の滑り台に導かれ──加速した剣鉈が吸い込まれるように埋まった。

 

「ごっ⁉︎ ブ……」

「ゴバア──ッ⁉︎」

 

 最後にシェリンによってゴブリンの首がすっ飛んで終わりである。

 

「戦い方が強引すぎるし変則的すぎる。ゴブリンがかわいそうになるな」

 

 近づいてきたロアンが言う。

 

 ただ、ゴブリンは『ドレイク・フォダー』──小型竜種の餌という何とも言えない別名が付いていて、集まりすぎるとワイバーンに代表されるドレイクが寄って来る。なので、人里近くでは積極的に狩ることになっている。

 耳を持っていけば一杯酒が飲めるのもその一環だ。

 

「そーだね」

 

 レムは肯定して頷いた。

 

「シェリンはヒドイやつだ」

「なんでよッ⁉︎」

 

 

 

 シェリン、アンディ、イロアが歌いながら前を歩く。

 ちなみにシェリンは豚を担いでいる。

 後ろを行くレムとロアンの視界には豚の尻が揺れていた。

 

 シェリンの魔力による強化率はちょっと飛び抜けている。

 無理して強化しているのではなく、高水準で安定している。うらやましいバランスで成り立っているのだ。

 かと言って豚は重すぎるので、アンディが生活魔法で補助していた。レムが引っ越し魔法だよと教えた重量軽減の魔法だ。

 アンディの魔道具作りへの熱はこれまで失われることなく、きっと魔道具士になるだろう。そのためには魔道士(メイジ)にならねばならない。そのための勉強も少しずつ進めている。

 

 実は生活魔法はレムが当初思っていたよりいろいろとあり、開発・再発見もわりと容易であると気づいた。

 なんと言っても逆火現象(バックファイア)が大したことないのだ。

 それは痛いし、ヒドイ時は焼け爛れたりといったこともあるのだが、水薬(ポーション)で治る。中級グレードであれば確実に。逆に言えばその程度でしかない。

 これが知られていないのかと驚くような生活魔法もいくつも作った。

 重量軽減の生活魔法など、貴族の引っ越しを手伝った魔道士がさすがだと褒められて歓待されるレベルだ。

 

 生活魔法の開発まで躊躇する──どっかの誰かが啓蒙した逆火現象恐怖論が相当根深く浸透していると同時に、魔道流派によって魔道語印(アトン)そのものが秘匿されていると考えられた。

 

 レムとしては昔の書物の装丁や挿絵、中には明らかな暗号文というか謎かけが載っていたりと、いくつも魔道語印(アトン)を見つけてきたので、魔道士は普段なにしてんだと首を傾げるばかりだった。

 はっきり言ってそれらは当時、あたりまえに知られているものを作者が遊び心で入れたもので、そもそも隠す気すらないものだと思っている。

 レムがこの歳にして多くの魔道語印を集めることができている特筆すべき理由があるとすれば、ザンパの蒐集能力がとんでもなくすごい、という可能性がある。

 

「ぶた丼、ぶったー丼、どーんどーんどーん!」

「……どーん」

 

 イロアはグナト流に高い適性を見せている。

 

 魔力の節約を余儀なくされているレムと、万能型といえば聞こえはいいが突出したものがないロアン、二人は置いていかれないよう状況に適応するための知識の吸収と、小賢しい小細工の研鑽に余念なく、議論を重ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







おまけ解説

ノタ 原素 構成源素

 神様をはじめとした強大な存在が用いる古い言語。
 喋るだけで魔力(生命力)を消費し、勝手に現象が引き起こされたりする。

魔道語印 アトン

 ノタを転置法(アルメト)という技術を用いてヒトが使用できるよう調整された魔法言語。

F 道  フォールズ  フォー
A 待つ アロス    アー
T 天気 トゥーウィズ

トゥルーワード 真言 スペル 呪文

 アトンを重ね独立した表現として強力に定義付けされた魔法の熟語・成語。

FAT 火 フォアトゥーウィズ

短縮法ノタリクス

 略語。詠唱技術。

FAT フェイト ファト




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