ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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21 施療ですからもちろん無料です。【救済】一回につき600万のご寄付をお願いします。

 

 

 

 

 

 ギルド門を出ると草原の丘陵地帯が広がっている。

 その『原っぱ丘陵(グラスヒルズ)』の左右に連なる丘が、魔の領域へと導いている。

 小高い丘の上ごとに、防衛設備が配された戦闘者養成学校や各種の訓練場が建っていて、その先に魔の領域に対する最前線基地『全ての(ストロングホールド・)人々の要塞(フォー・オール・ピープル)』が聳えている。

 

 要塞では日々様々な素材が持ち込まれ、市が開かれている。

 魔物、植物、鉱物、過去の遺物。

 利に聡い商人や希少素材を求める職人が護衛を伴って訪れるのも日常の光景だ。

 

 もちろん危険はある。

 

 突然強力な魔物が街道に現れることも珍しくない。

 魔の領域の境界に防壁はないから。

 かつてはあったのだ。

 しかし、防壁があることで何かあればすぐわかるだろうという気の緩みが大惨事を招いたことで、今は瓦礫が名残りとしてあるのみだ。

 

「ついに手に入れてしまったー、灰銀(ミスリル)の金属糸」

「100mで1千万と少し」

「鍛冶場も完成した」

「出費が嵩むなあ……」

 

 レム、ズンガ、モジャが顔を見合わせた。

 すぐに三人は堪えきれずにまにまと口元が緩み、徐々に笑みを広げ、ついには歓声を上げた。

 楽しみでしょうがない。

 

 ついでに宝石も買った。

 2千万使って買えるだけ。

 

 この世界の宝石は魔力を貯め込む。

 今の時代、宝石は昔の資料に見られる記述よりずいぶんとお買い求めしやすくなっている。

 帝国の発展によって安価に手に入るようになったのだというデマが流れているが、宝石の魔道具化技術が失われたために価値が下がったに過ぎない。

 昔は指輪の魔道具で【火射】どころか【心火核】や【氷結する火炎】を操ったという。それらの魔法も魔道具ももはや意味がわからない。

 現状、【火射】の魔道具でも短剣の大きさは必要だ。

 

 ただ宝石を魔道具にはできないが、その特性は利用できる。

 赤い宝石なら火の魔法の魔力消費を抑え、威力を上げるなどといったものだ。

 人工魔石は魔力を貯めて、取り出すだけなので宝石のような効力は見込めない。

 天然魔石──正式名称を『魔勢器(モクシス)』──の価値が跳ね上がるのは、魔石自体が魔力を生むからだ。

 

 魔道具による魔法の行使は、想像と理解という重要な過程をすっ飛ばすことで、大きな優位性を確保できる。

 しかしレムはもう一歩先に行きたかった。

 想像と理解に魔力も加え、三要素すべてをスキップしたい。

 意志を持って振るだけの状態にしたい。

 魔力が不安定なレムには、この先冒険に出かけるためには必須の課題だった。いざ冒険に出かければ一戦二戦で終わるはずがないのだから。

 

 魔道具を作る。

 グナトの『片手半剣(サヒ)』を目指す。

 

 ちょくちょくアンディも見学に来ていた。

 

 火床や金床どころか、金床を濡らす水まで錬金術の薬液だ。

 刃紋を作る土、熱した刀を入れて冷やす湯船の水もモジャの研究範囲。

 鎚も魔道具に。

 刀装具の工夫もあーでもないこーでもないと話し合う。

 アンディのキラキラした目に癒される。

 魔法を込められるかもしれない方法を片っ端から試していく。

 

 ズンガが火の神に祈りを捧げ、炉に供物を投げ入れる。

 

「剣の精霊よ。いるんだか知らねえが力を貸してくれ」

 

 鎚を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 レムは魔道具に彫り込む魔法陣を考える。

 風の剣士団だから風の魔法にしたいけど、火の魔法が見た目にはわかり易い。

 悩む。

 

(あれ? いや、わかり易くもないか?)

 

 そういや逆火か成功かわかりにくかったっけ、と思った。

 爆破の魔法なんか試したら見分けつかないかも、と。

 

(高速化はイケるとして、修復と風のいくつかを試して、あとは──)

 

「レム、神殿行ってきたに?」

「おかえりなさい、先生」

 

 モジャは溜め込んだ鬱憤を晴らすために叫んだ。

 

「一回の施療に600万! 施療って言ってんのに献金皿を持って横で待ってるんだにっ⁉︎」

「そうだね。僕も行ったから知ってますよ」

「しかも、特別診察室とか言っちゃって入室料! 部屋に入るだけで3万! ナメとるにアイツらッ‼︎」

「相変わらず神官のことになると暑苦しいです、先生」

「もう爆破するしかないよねえッ⁉︎ ボクぁ奴らを浄化しようと思います! 浄火で浄化! そうっ、対神官の切札(ジョーカー)とはボクぁのことだったのデス‼︎」

「落ち着いてください先生。10回の施療で6000万。でも、近くでよーく見ることができました」

 

 モジャから紙を受け取った。

 施療時に観察して覚えた〝魔法陣の一部〟だ。

 

「これで【継続治癒(リジェネレート)】が手に入りました。あ、彼らは違う言い方してましたね」

「そんなことはどーぅでもー、イイッ! ザマを見なさいっ神官どもッ!」

「あと一回、時間を置いて確認のために見に行ってきます」

「えー、まだ600万払うの~?」

「念のためです。【大治癒】の例もあります。身体に直接作用する魔法はコワイですから」

「まあ、そうだにぇ」

 

 金持ちのボンボンを装って通った甲斐があった。「はえ~きれいですねー」とか言いつつぼーっと魔法陣を見てるフリして必死に覚えて帰ってくるを繰り返した。

 

「それが終われば晴れて【継続治癒】もらっちゃおう作戦、完遂です」

 

 

 

 

 

「えー、では、えー、今日ここに、えー、初の風の攻撃魔法遠隔起動検証実験の第一回目を開始したいと思います。ええ」

「誰のマネ?」

「風、どころか攻撃魔法の実験が初だからな、さて」

 

 ズンガが髭を扱いた。

 

 炎上や焦熱は火力を上げることに焦点を置いていた。

 攻撃ではなく補助効果だったのだ。

 結果的に『炎の剣・焦熱』の方の【火射】は別の攻撃魔法になったがあれはあくまで偶然の産物だった。

焦熱砲(シヤキャノン)】の発見はとても幸運なことだった。

 火力が上がることはわかっていた。しかし別の魔法になっているとは思わなかった。理解が及んでいないのに無事起動ができたのは魔道具だったが故だ。

 

 刻印式で風の攻撃魔法陣を彫り込んだ長剣(ロングソード)を、切っ先を上に向けて固定する台に差し込んだ。

 

「さあ、ミスリル頼むぞ」

 

 灰銀(ミスリル)の金属糸を長剣に巻き付けて、伸ばしていく。50mほどの距離を空けた。

 

「じゃあ始めまーす」

 

 魔力が流れていかない。

 

「れ?」

 

 数cmで魔力が消える。

 

「どういうこと? 優秀な伝導体であるという評価は?」

 

 さらに魔力を流してみる。

 

「ぐ、ぐぐぐ……ぐ、ぅー…………ぶはあっ! どう?」

 

 激しく息をつきながら問う。

 

「んー? ちょっとここ、この魔力が消える辺り、先と比べて存在感が増している気がすんね」

「ええ?」

「フーム。なるほどな。ミスリルの武器は使い手の専用になるとはこういうことだな。魔力に馴染ませ、使い手に馴染ませ最適化されていく」

「つまり?」

「つまり魔力を滑らかに伝えるためには、あらかじめミスリルに魔力を充足させる必要があるんだろう。導火線に火をつけるにも仕込みが必要ってこった」

「むむむ……50mあるんですケド……?」

「……そうだな」

 

 使える状態にするのに何ヶ月もかかりそうだ。

 今日は帰る。

 

「あー……、疲れた。それにしても、蜘蛛糸って優秀だったんですね」

「そうだなあ」

 

 ただその場合でも魔石が必要だ。じゃらじゃらと細かい魔石がいっぱいあっても使えないので、容量の大きな人工魔石を用意するか、宝石に注ぐか、天然魔石を買うか、やはりそれなりの手間がかかる。費用もかかる。

 だからこそミスリルを手に入れたというのに結局手間はかかる。

 しばらく実験はお預けだ。

 

「あー……、くたびれた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見た。

 レムは水槽の中に浮かんでる。

 緑色の液体。

 赤色の光線。

 大きな空間、闇の中に林立する水槽の中の液体が、妖しく発光していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「坊っちゃま? 坊っっっちゃま!」

「ん? え? マレーネさん?」

「どうしたんです? 門の前でぼうっとして」

「あれ?」

「体調が悪いんですか?」

「ん? んー? いや、ぜんぜん。魔力もいっぱいまで回復しているし。なんか絶好調?」

 

 マレーネはふふふと笑った。

 

「なんですか、それ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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