ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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25 ひとつの刃・三一致ユニティ

 

 

 

 

 

 リュードゥとゼンキ。

 二人は兄弟のように一緒に育った親友だった。

 

 ある時、リュードゥはゼンキから今付き合っている女の話を聞いて驚いた。

 あまりにも若かったことと、別の男との間にできた子供を連れていること。

 さらには結婚したいと思っていると告げられたからだ。

 

「若いというより幼かったんだ。見た目以上に精神が。それはある意味、ゼンキにも言えた。いい歳して純情すぎた」

 

 ゼンキが死んで、リュードゥは約束通りゼンキの全財産をその女のところに届けに行った。

 そして集合住宅の廊下でイチャついてる若い男女の会話を聞いた。

 

『──ちょっと待っててよぉ。もうすぐ大金が入るんだからさぁ』

『ホントかよ』

『ぜったいぃ。アイツわたしにゾッコンなんだから。今だってわたしのお店の改装が進んでるんだからね』

『すごいじゃないか』

『でしょう?』

『それで、さ。今度の舞台、……どうしても欲しい役があるんだ』

『わかったぁ。いくらか包んで持っていくわ。妻としてね。ね、ジュリアス、あの子には会っていかないの?』

『俺は──いいよ』

 

 リュードゥは天を仰いだが、意を決して廊下の壁をゴンゴンとノックした。

 

『ゼンキのやつは死んだよ。……約束だから、これ。あいつから』

 

 律儀にもリュードゥは金を女に渡し、女の口元が笑みに象られていくのを尻目にそこから立ち去った。

 

 正直なところ子供のことは頭になかった。

 いや、正確には──。

 

「気にするのもバカらしいと思った。んで、頭から追いやった」

「ねえ。9歳の子供に、つまりぼくですが、に聞かせるには生々しいというか重い、とそう思いませんか?」

「なのにその子供が、10年も経ってゼンキの子を名乗り団に入ってきた。驚いたぜ。しかもグナトの基礎は出来ていたしな」

「聞いてます?」

「ああ。まあ、そんなとこだ。余計なやっかみや敵意を向けられたりして、若坊ちゃんも無関係とは言えないからな。一応、事情を話さしてもらったワケよ」

「それはありがとう。で、どうするの?」

「捜しちゃみるが……」

 

 リュードゥは難しい顔で唸った。

 スレーヴェンは広い。

 本人が出てくる気がなければ、見つけるのは容易ではないだろう。

 すでに都市を出ていたなら言わずもがな、だ。

 個人でできることといったら、日々の中で多少気にして周囲を見てやるくらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺境伯領第二の都ウォーフ港が燃えていた。

 火付けによりあちこちから火の手が上がり、規模の大小に関わらず商店からの略奪が相次ぐ。

 近海を『通商連合艦隊(トレード・フェデレーション・フリート)』が封鎖し、兵士たちが続々と上陸を果たす。

 

「帝国を切り獲るつもりか?」

 

 レイグたち風の剣士団の面々が、魔道語印(アトン)を足場に上空からウォーフの様子を観察していた。

 

()ったとして、後が続くか……?」

「ここを押さえるほど帝国は弱体化するだろ」

「そこまでの体力が通商連にあるって?」

「交渉団もなぁ、何やってんだか……」

 

 団員らのやり取りを聞きながら地上に降りる。

 視線の先にはスレーヴェン小領主の特務部隊が囲む大司教が、馬車の前で港を見詰めている。すでに救出を実行し、ウォーフを脱出した後だ。

 

「これで終わりとは思えん」

 

 サビラの小声にレイグは静かに頷いた。

 

「これより猊下を御聖所にお送りする。中に入りさえすればあちらが最も安全ゆえ」

 

 隊長の号令で移動を始めた。

 しばらくガタゴトと馬車が進む。

 部隊は馬に乗っているが、風の剣士団は徒歩(かち)だ。

 間を開け周囲に広がりつつ進んでいたが、レイグにサビラが近寄って来た。

 

「のんびりし過ぎだな」

「進言しよう」

 

 レイグは隊長の馬に近付いた。

 

「急ぎましょう。我々はお気になさらず。遅れずに付いて参りますので」

 

 レイグに合わせて馬を寄せてきた部隊員が割り込んだ。

 

「ウォーフはかなり混乱しているようです、追って来れますか?」

 

 度々こちらを見下すような発言をする者だった。

 レイグは気にすることなく、馬上から見下ろしてくる隊長を見据え頷いた。

 

「必ず」

 

 というか、来ないはずがない。

 情報を収集する中で、侵略を合法化するための条約に署名させるために大司教が必要だと判明している。白々しかろうとタテマエは必要ということだ。

 情報は彼らとも共有しているはずなのに。

 レイグは黙礼してサビラの所に下がる。

 サビラがボソリとボヤいた。

 

「こちらへの対抗意識でバカになってやがる」

「まあ、でも。聞く耳までは失っていないようだ」

 

 走る馬に合わせてレイグたちもスピードを上げた。

 

 

 

 その頃。

 ウォーフを飛び出した一団があった。

 二足歩行で全長8m弱の小型竜種(ドレイク)に跨った者たちが気勢をあげる。

 地面を踏み鳴らす音が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風の剣士団の訓練場で、大人も子供も入り乱れて〝追いかけっこ〟をしていた。

 懐に潜り込まれて手刀を首、胸、腹のいずれかに当てられたら脱落。

 監督する戦術指導者が声を張る。

 

「基本の足運び〝飛行〟を意識して! 体、足と共に剣先が一瞬で標的を襲いますよ! 相対したらスススと小幅で歩み寄り、打ち出すときは大股で踏み込むっ。歩幅は三足で6m以上を飛行するが如くです! 剣者の皆さんは奥義(おくぎ)である〝紫電〟は禁止ですからね! 飛行に留めてください」

 

 子供たちはがむしゃらに突っ込んでいく。

 一方で大人たちは腕の振りなどはゆったりとしたものだ。それでも躱せない。

 大人同士でも一方が剣者になると同様の結果になる。見えているのに躱せない。

 

 イジワルな大人たちの魔の手によって、子供たちが続々と脱落していく。

 その中で食らいついているのが、レム、シェリン、イロアだった。

 

 イロアはグナトへの適性ゆえ、シェリンは魔力による身体の強化率が優れているためこういうわかり易いのは得意、レムは魔力量の不安から主にカウンターを狙って立ち回っている。

 人数が減ってきたところで、レムは剣者に狙いを定めた。剣者の誰かが誰かに突っ込んで行くタイミングで奇襲をかける。あるいは、誰かが剣者の誰かに突っ込んで行くところへ挟み撃ちになるよう仕掛ける。

 一人、二人と落としたが、レムはすぐに標的にされた。

 誘い込まれた上で、三人に三方から同時に狙われて脱落した。

 

「ぐぬぬ」

 

 ガハハと笑うリュードゥに迎えられる。

 

「小賢しい策を弄するから狙われるのさ」

「早々に脱落したニセ剣者は黙っててください」

「ぐぬぬ」

 

 

 

「では勢法(カタ)の訓練に移ります。剣者の方たちは邪魔なので退いてください」

「言い方」

「はいはい、場所を空けて」

 

 グナトには勢法(カタ)と呼ばれる三つの剣捌きがある。

雷刀(バリツ)

地斬り(エルゴン)

(カイベラ)

 

「簡単に言えば迅さと威力と柔軟さ。剣の振りと同時に魔力との融和、つまり気篭り──残気が重要です。どんな技もこの三つの発展形に過ぎません」

 

 それぞれ一つずつ練習を始め、刃の教官が見て回る。

 

「バリツっ、バリツっ」

 

 言いながら上段からの振り下ろし。

 

「無駄を省いた最少、最短、最速の動きで(せん)をとる」

 

「エルゴーン、エ、ル、ゴーンっ」

 

 先の〝飛行〟を合わせた踏み込みからの振り抜き。

 

「その気になれば地面をも斬割する勢いと、──」

 

「カイベーラカイベーラ」

 

 二人一組になって振り向きざまの横薙ぎ。

 

「相手が仕掛ける前の心の動きを見取ること。最初は目、足、肩などから。次いで気の揺らぎ。そしてその動きに対応すること」

 

 これらは必殺技ということではなく、剣者になると剣撃一つ一つにこの三つの要素を兼ね備えている。

 一振りが雷刀であり地斬りであり渦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほとんど無意識の内に身体が(わざ)に乗る。

 刀身が振り下ろされたとき、相手の剣は、鞘から10cmも抜けてなかった。

 早さに圧倒的な差があった。

 20mの距離を飛ぶように走る。

 呼吸と拍子、足運び、撃ち──……。

 

 人と小型竜種──掠奪蜥蜴(プランダラ・ドレイク)──の死体が合わせて20、転がっている。

 人とドレイクが同時に真っ二つにされたものもあれば、連続で首を飛ばされたのであろうものもある。

 風の剣士団は死体を回り何か情報がないか確かめる。

 3人生かしておいた男たちは、小領主の部隊に引き渡してある。

 剣士団が馬車に戻る途中、少し離れたところでは捕らえた男たちが首を切られて倒れ伏した。

 

 レイグが戻って来た隊長を見ていると、気付いた彼は首を横に振った。

 情報はなし。

 大司教がいるため、あまり無体なことはできないということだろう。

 大司教の安全確保が第一。道のりを急ぐ。

 

 レイグがふと気の揺らぎを感じてそちらを見ると、よく突っかかってきていた部隊員があからさまに視線を逸らした。

 部隊員は今回の任務を通して初めて剣士団の戦闘を目の当たりにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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