ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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26 サドンアタック

 

 

 

 

 

 ザンパが訪ねて来た。

 

「雲行きが怪しくなってきやしたんで」

 

 情報を共有しておくべきかと、そう言って。

 

 訓練場の四阿(あずまや)に集まる。

 

「交渉団でやすが、やはりと言いやすか、中央からの横やりが入ったようで」

 

 一斉にため息が洩れる。

 

「余計なことしかしねえな、今んとこ」

 

 中央からの交渉団が派遣されて来たことで、辺境伯は即座に自身が送るはずだった人員を削減。たった2人にした。中央に好きにさせないための立場があり、かつどんな状況下でも生還が期待できる実力者。

 結果その判断は正しかったと言える。

 交渉の場がそもそも罠だったようだ。

 無事に返すつもりのなかった通商連の思惑に反して、辺境伯の特使2人は見事脱出してみせただけでなく、敵幹部も討ち取る活躍ぶりだったらしい。

 

「辺境伯のもとには知られた名がいくつかあるがどいつかな」

「アズマイラとオーリオックだそうで」

「守護者と辺境伯の甥か」

「親族を送るとは思い切ったな」

「2人が師弟だからだろう」

「昔は黄金守護者なんて呼ばれてたっけか」

 

 才気溢れる黄金のオーリオックと傅役である守護者アズマイラ。

 と言ってもオーリオックはすでに子がいる年齢だが。

 

 だが幹部を討ったといってもウォーフの混乱は加速している。

 

「その混乱、飛び火してきそうです」

 

 

 

 

 

 先日、一振りの片手半剣(サヒ)が完成した。

 刀身に魔法陣の回路が走り、刃紋が妖しく蠢く。

 鍔や柄にも、鞘にも魔法陣を仕込んである。

 

 思ったよりバランス良く出来たと、レムは満足気に何度も頷いた。

 

 異界の風(ウインディア)・シリーズ──南風(ロンバルト)

 

 ズンガが施す細かな調整を終えて受け取る。

 ちくちくと針仕事を始めた彼に挨拶し、工房を出た。

 

 黒い雲、ではなく煙がもくもくもくもく立ち昇っていた。

 どこか近くで火事でもあったか。

 街の空気がどこかおかしい。

 道ゆく人たちも不安そうに足早に歩く。

 

(飛び火……かー)

 

 いよいよここでも通商連の工作が表出し始めていた。

 通りを行き交う人を躱しながら、家路を急ぐ。

 まずは母と弟、お手伝いさんたちの無事を確かめるために。

 横合いの細い路地から飛び出してくる影があった。

 

「ウラミを晴らすぜ〈嘴穴(ペクアホル)〉っ!」

 

 魔力によって不思議に響く声。

 ナイフの射程伸長、刺突系スキル──。

 

 冷静に、携えていた片手半剣(サヒ)で対処。他に被害が行かないように。

 

 不意打ちを狙ってもあんなに()る気満々で来られたら、魔力の動きでわかってしまう。

 ただでさえグナトはそこを重要視して修練を積ませるのだから。

 

 誰だか知らないがとりあえず無力化しよう。

 片手半剣(サヒ)に魔力を通しつつ鞘に収めたまま〝(カイベラ)〟で向かい打つと、鞘に仕込んだ魔法が起動し、相手が吹っ飛んだ。

 

「ごはっ⁉︎」

「えーっ⁉︎」

 

 レムが風一陣と呼んだ暴風加速だった。

 レムが今この場で自分で構築した魔法陣だったならこうはならなかっただろう。自分のタイミングで自分が加速したはずだ。そう〝理解〟していたのだから。

 しかし今回、自分が作った物とはいえ、魔道具(マギア)である片手半剣(サヒ)を通したことで、相手をとりあえずぶっ飛ばすという意識がそのまま魔法を起動させ、相手を風によって加速した。

 

 建物の壁に叩きつけられた男がズルズルと倒れ込む。

 

 レムが本から見つけてきたこの魔法は、名前を見つけられなかったため風一陣と呼んでいたが、本来【突風】や【風槌】といって、相手を吹き飛ばすもので、レムが見つけた記述はかなり特殊な使用例であった。

 

「え、なんかごめん。誰だか知らないけど」

 

 意識のない男に謝り「急いでるから!」と微妙な注目が集まる中、逃げるようにその場を離れた。

 

 

 

 家に帰ってみんなが変わりないことを確かめる。

 ザンパの話は共有しているので、母がお手伝いさんたちに今日は出かけたりしないよう言ってあった。

 椅子に座り、弟を抱っこして、母に髪を結んでもらう。

 

「それじゃ、訓練場に行ってきます」

「忙しないのね」

「せっかくなので」

「せっかくの意味がわからないわ」

「あばば」

「え、危ないって? 母様、もうウチの弟は状況を完璧に理解しているよ。天才かな? 天才だね?」

「そんなわけないでしょ」

 

 そんなやり取りをして訓練場に向かった。

 

 

 

 

 

 訓練場に着くと、やっぱりザンパが来ていた。必要な情報はここに知らせに来てくれると思っていた。

 

「とりあえず〝這いずる宵闇(スリザリング・ダスク)〟と〝峨羅(ガラ)〟は通商連に呼応しているようで」

「おっ、ほおー、伝説じゃーん」

 

 陽気なあんちゃんが興奮して言った。

 

「伝説?」

 

 こそっと聞けば「歴史のある犯罪組織だ」と返ってきた。

 

「犯罪組織に歴史て。ずいぶんいい風に言うんだね」

 

 横の剣士が顔を寄せてきて言う。

 

「まあヘタしたら帝国より古いからなあ。その時々によって顔が変わるのさ。『ドレイもん』にも峨羅の義賊が出てくるぜ」

「ふーん」

 

 剣士が笑いながら続ける。

 

「悪党には違いないが」

 

 話は続く。

 

「で、どうするよ? 狩り出すか?」

「団長の指示は?」

「800km南だ。走って確認取ってこいバカ。明日までだぞ」

「バカ。おいバカ。どう考えても明後日の朝まではかかる」

 

 ザンパが空に薄く広がる煙を見上げた。

 

「そろそろギルドから緊急依頼が来るんじゃねえかと」

「え、治安回復と維持の?」

「それ冒険者に回す?」

「緊急依頼となれば〝冒険者の宿(イン)〟の代表各人がギルドの施設に詰めることになる。地区で幅を利かせてる犯罪組織は自前でインを構えてるし、大抵そういうのは組織内でも立場は上だ、ギルドの関連施設でカン詰めにされるのは嫌だろう。バカな下っ端のヘマで自分が捕まる可能性があるからな」

「なるほど、代表者が来ないインは、所属してるパーティごとまるまる黒ってことか」

「堂々と顔を出すようなトコもあるんだろうが、多少は炙り出せるだろう」

「にしても、デカ過ぎて実態の掴めない峨羅(ガラ)はともかく、宵闇(ダスク)は早々に通商連に乗っかったな。勝算があんのか?」

「おそらく……?」

 

 それぞれが難しい顔で考え込んだ。

 

「おーい、インから書簡だ!」

 

「さっそく来たな」

避難所(シェルター)は用意してありやすよ、若坊ちゃん」

 

 急に話を振られて顔を向けると全員に見返されていてレムは戸惑った。

 

「はい? ぼく?」

 

 見回すとどれもがニヤリとした笑みを浮かべる。

 ひとつ息を吐いてレムは言葉を発した。

 

「……ありがとうザンパ。みんな家族を避難させろ。半分は護衛に。輪番を組む。リュードゥ」

「了解」

「じゃ、行こうか」

 

『応!』

 

 動き出しながら、リュードゥに訊く。

 

「ロアンたちは?」

「外に出てるヤツらを呼び戻してくるってよ」

 

 全員がこの場に揃っていたわけじゃない。

 2パーティ若年の9人が街の外にいたようだ。

 

「全ての人々の要塞?」

「そう」

「じゃーぼくも行ってこようっと」

「おいおいこっちはどうすんだ? 号令かけただろ」

「9歳になにをやらそうってのさ。虐待で訴えるぞ」

「じき10歳だろ? おめでとう」

「ありがとう」

「ま、こっちはテキトーにやっておく」

「はいはいよろしく」

 

 東の空に突然、爆発の炎が膨らんだ。

 白煙がうねって高く高く立ち昇る。

 10秒を過ぎたあたりで砲撃のような音が轟いた。

 

 レムは握り込んだ宝石の魔力と同調・解放し【高速化(ヘイスト)】をかける。

 魔の領域に対する最前線基地に向け走り出した。

 

 

 

 

 

 

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