ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます 作:そこの角にいる
「不死者を草原に押し戻せ!」
「どんどん数が増えるぞ!」
「冒険者の
「お前がやれ!」
「聖撃か炎で燃やすんだよ!」
「やばい!
「くそっ、硬さもスケルトンの比じゃねえ! 手に負えん! 誰か⁉︎」
「げっ、おいなんだこいつら⁉︎」
「おい、クソ今度はなんだッ⁉︎」
「
「魔道士がいるぞ気を付けろ!」
「もう無理だって」
「死ぬなよ! 死んだら
「ざけんな!」
「もう無理だってぇ──え⁉︎」
突然、不死者たちの首が落ちた。
もはや押し込まれそうだった冒険者たちは、目の前の不死者が揃って首を落とされたのを目の当たりにして呆気に取られた。
揃いの襟巻きをなびかせた一団が、横一列になって軍勢の前に居並んだ。
彼らがさらに一歩踏み込むと、突風が巻き起こり、不死者が一斉に吹っ飛ぶ。
一団がビシッとポーズを決め、光の粒子が中空に輝く盾の紋章を描き出す。
「
「マジか。ポーズキメてるのも含めて、マジか」
冒険者が毒気を抜かれたように、呆れを含んだ声音で呟いた。
「有名になったもんだ。誰だアレっつう声が聞こえないもんな。誰かさんのおかげで」
レムは鶴のポーズをとったまま声の主──リュードゥを睨んだ。
「なにか文句でも?」
「いいや?」
この『全ての人々の要塞』からスレーヴェンに至る各丘の施設には、狼煙台が設置されている。
シニグマ出現の急報は即座にスレーヴェンに届けられ、ギルドから冒険者にも周知された。
リュードゥは団の家族の護りを最低限残して、6人3パーティで駆け付けた。
戦術指導者が率いる1パーティが、若い準団員と子供連れを先導して避難に動き、残り2パーティが合流したレムたちと共にこうして防衛戦に加わった。
全体として、この要塞を放棄して撤退はあり得ない。
「にしても、ここの守将は何やってんだ?」
「ねー」
この時すでに殺されていて、その事実は秘匿されていた。
「とりあえず、戦線の秩序を取り戻そう。てことでよろしくね」
リュードゥは頷き大音声で発した。
「この場を護らんとする者どもよッ! 聞けッ‼︎」
レムが大声で指示しても聞く者は限られるだろうから、リュードゥに頼む。
死んだ者が敵として蘇る状況をなんとか抑制したい。
「実力に不安がある者は無理せず後方支援に回れ!」
空をゴーストが飛び交っていて、そのゴーストがゾンビを運んでくるため籠城は意味がない。
城門を閉めたせいで不死者の軍勢が後方のスレーヴェンに流れるようなことになったら元も子もない。
「領都から援軍が来るまで戦線の維持に努めろ!」
リュードゥの指示に応ずる声があちらこちらで響く。
「辺境伯さまの精鋭が来たとして、シニグマに対処できるかな?」
「さてな。どちらにしろ、こっからは悲惨な殲滅戦になる。シニグマがおとなしく巣に帰ることはないだろうからな。一度死ぬまで止まらなかった奴だ」
不死者と戦いながらそんな言葉を交わす。
「だからお前たちは時機を見て撤退しろ」
「うー……んー?」
「おい、聞いてんのか?」
「聞いてる──よっ!」
リュードゥから離れて不死者を打ち倒す。
それ以上の会話を拒否した。のに、そんなこっちの気持ちを無視してリュードゥが逃さんとばかりに真横にいた。
「何考えてる」
「……もちろん、伝説を終わらせることをだよ」
「お前が考えることじゃない」
「炎の魔法がいっぱい使われる流れを作っちゃったからなあ」
「そんなとこにお前の責任はねえよ」
「まー、そうなんだけどね」
「……」
戦闘中にも関わらず疑いの目で見つめてくるリュードゥに、レムは曖昧に笑って、すぃーっと目を逸らした。
「構えーッ、盾!」
「テイクアップシールド!」
「テイクアップシールド!」
「テイクアップシールド!」
「よしッ!」
「押し返せ!」
「押せ押せ押せ押せ!」
「スキル用意!」
「スキルよおーい!」
「今ッ!」
「
「
「
団の剣者たちが冒険者たちをまとめ上げている。
風の剣士団の古参はヴィントベルク男爵の剣士団である。つまり軍隊であった。
「『
「応ッ」
「『
「よっしゃあああっ‼︎」
「おい、これいけんじゃねぇか?」
「ああ! いける、いけるぞ!」
しかし、冒険者らの笑みもこの時までだった。
始めに大地を割らんばかりの斬撃が連続した。盛大に上がる土煙が次の斬撃で吹き散らされる。
次に周囲の者たちが法則性なく次々斬られ、その被害は一瞬で20人にのぼった。
そして、敵軍の中でむくむくと巨人の如き男が立ち上がった。標準的な成人男性の3倍近い。
「なにあれ」
思わず立ち止まってレムは訊ねた。
「スキルだ。〝
巨人が吼えた。
「まじ?」
絶句してしまう。
「あれもスキル〝
巨人が両手を組んで高々と掲げると地面に打ち下ろした。
敵味方に関係なく軍勢を縦断して地面が砕けていく。
範囲内にいた者は、砕け隆起した大地に打たれて引き裂かれて呑み込まれていった。
「あれは、おそらく〝
「え?」
レムが知る〝
それがあの巨人が使うと広範囲殲滅スキルになってしまった。
ぽっかりと開いた空間の向こうに3人の
「自己支援スキル〝
3人ともが剣に拳に電撃を纏った。
「〝
『死んだ『
〝雄叫び〟の影響で呆然と立ち尽くしていた多くの者がその悲鳴で騒然となった。
さらに、シニグマが前進を始めたことで、戦意を完全に挫かれた者らが逃げ惑う。
「やれやれ」
最前列に襲いかかる『勇敢なる者』3人に、リュードゥたちがカチ込んだ。
「大丈夫なのっ? あたしたちも行く⁉︎」
今にも飛び出して行きそうなシェリンをロアンが引き留める。
「おれたちが行ってどうするのっ! 一等星だぞ!」
「でも勝てるワケ⁉︎ 一等星よ⁉︎」
シェリンとロアンが揃ってこっちを見てくるのでレムは考えつつ言った。
「腐屍者だからか致命傷が肉体に残っているからか知らないけれど、動きがぎこちない。それに、ほかの腐屍者を見ていると時間が経つほどスキルも使えなくなっていくようだから、最初の猛攻を凌げれば……まあ、リュードゥたちは大丈夫。この程度で折れることはないからね」
問題はほとんど戦意を失ってしまっている者らだ。
今はなんとか応戦しているが、すでに押せ押せの雰囲気は無く、逆に押し込まれて後退し始めている。
この状況が進めば、
レムは魔の領域から馬野川が流れ下りた扇状地の斜面を見上げた。
半円状に『
──あれがシニグマ。
所々に人の肉体が融合した灰色の毛皮の熊。紫色に発光する崩れた魔法陣のような模様が全身を這っている。
「……この襲撃はいくら不死者を叩いてもだめなんだ。シニグマただ一体ををやっつけられるかどうか。そこなんだと思う」
逆に言えばシニグマさえなんとかできれば終わるわけだ。
(シニグマは炎を憎んでいて、炎を使うと暴走しかねない危険はあるけど、同時に弱点でもある。構築だけはしてある魔法が意図した通りに発動するなら……)
シニグマの周囲から、
それは屍術版の【火射】と呼べるものだった。ただし軌道はデタラメで、標的を強打すると共に魔力を奪い、その魔力で術を維持し、二度、三度と襲い掛かる。
その魔法を【
数百に及ぶ【呪霊】の飛翔音はまるで空自体が咆哮を上げたかのように重なり合った。
シニグマの魔力によって塗り潰されて暗く歪んだ空間から【呪霊】が群がり
騎馬の指揮官に率いられた要塞の兵たちが、槍の穂先を揃えて肉薄した。
【呪霊】は構うことなく槍兵部隊に殺到した。
「げっ」
驚愕したのは指揮官である。前を駆けていた十人の槍兵ことごとくが
「くっ!」
指揮官は馬上から槍を繰り出すが、【呪霊】に群がられて見えなくなった。
そこからぽーんと高く飛ぶモノ──指揮官の首。
要塞の兵と冒険者の軍勢が止まった。
飛んできた首の落下地点の者たちは一斉に距離を取った。
首は勢い止まらず転がり、避けようとした先頭から雪崩を打って倒れ込んだ。
首の、苦悶の表情にさしもの彼らも怯んだ。
止まったどころか先鋒は乱れに乱れ、その乱れは瞬く間に伝播、恐怖が叫ばれた。
そしてさらに事態は悪い方へと加速する。
ズンと空気が重く、淀み、見渡す限りの地面に発光する巨大な魔法陣が現れた。