ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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39 所長の日誌

 

 

 

 

 

2685 DAY 1

 

 今日から研究所暮らしになる。

 多元宇宙を渡り、世界を食い荒らす巨神の脅威を除くため、我々は生術師と錬金術師の観点から方途を模索する。

 

 

2685 DAY 99

 

 我々が開発した異常な再生能力を備えた多頭竜が巨神の創り出した怪物たちを蹂躙する。

 体高1111mはハリボテなんかではないぞ。いけーっヒュドラ3号!

 

 

2685 DAY 121

 

 なんということだ。

 この世界に降り立った巨神に対して、多頭竜(ヒュドラ)は時間稼ぎにもならなかった。

 しかもその巨神は本体ではないという。指の一本程度で造り出した分け身だと。

 

 

2685 DAY 140

 

 この世界は巨神を滅ぼすために、多次元の神々が集まって用意した舞台だ。

 長い月日の中で、多くのタダビトが暮らすようになり、多くの神々がこの地から生まれた。

 二級神といえど私も神の端くれ。守らねばならん。この世界を。

 

 

2685 DAY 143

 

 ヒュドラ細胞を利用し、二級神を対象に不死の超神(ちょうじん)化計画を進める。

 

 

2986 DAY 500

 

 配属されちょうど500日目の記念日に、私は部門の長となった。

 異常な再生能力を備えた我々のヒュドラ兵は、幾度かの巨神の分け身の破壊に成功するという戦果を上げた。

 しかし損失は著しい。

 神といえど、不死の超神化といえど、実際は不死ではないのだ。特に巨神との戦いにおいては。

 

 

2986 DAY 512

 

 廊下であった男に話しかけ、期待していると激励したが、どうやらその男は研究員ではなく掃除夫だったらしい。なぜ立ち入り禁止の区画に入り込めているのか。警備を呼んで外に放り出してもらった。危ないモノだらけだというのになんと危険な。彼にも研究にも、何事もなくてよかった。

 

 

2986 DAY 567

 

 私のヒュドラ兵は順調に運用が進んでいる。

 

 私は新たな研究・開発に着手した。

 高い戦闘能力を備え、潜在能力を秘めた新たな擬似生命体。ホムンクルスとゴーレム生成の技術を抽出し造り出す『戦闘魔神(マシン)』の開発だ。

 

 ところで、またあの掃除夫と出くわした。

 なんなんだ。

 私と同じようにあの男を研究員だと思っていた者が何人もいた。

 ものすごい目で睨まれたという話も聞いた。

 しかしなぜか私を慕っている様子である。ふむ。

 

 

2986 DAY 588

 

 再生能力使用の際の副作用により、体毛が抜けることにヒュドラ兵から不満の声が上がっていると報告を受けた。

 そんな場合ではないのでは、とそれとなく言ってみたが、後日、彼らが大挙して押しかけてきた。

「かわいい、かっこいいは正義なんですよ。偉い人にはそれがわからんのですよ!」

 と言われた。仕方ないので『魔昆布』と『黒きクラゲ』から抽出した成分で髪を生やしてあげたらたいそう喜ばれた。

 

 

2986 DAY 599

 

 せっせと魔昆布を作っていたら他部門の長に、そんな場合ではないのでは、とそれとなく言われた。

 他部門ではこの世界を丸ごと、巨神の檻に造り替える計画が持ち上がっているのだとか。

 

 

2987 DAY 782

 

 あの男だ。またあの掃除夫にあった。辞めさせたはずなのに。

 もしかしてあの方の縁者なのか、と頭をよぎり、その場は笑顔で切り抜けた。

 確かめねば。

 それにしても、気持ちの悪い男だ。

 

 

2987 DAY 848

 

 しばらく良いニュースというものを聞いた覚えがない。

 膠着状態との話だが本当だろうか。

 徐々に、だが確実に良くない方向へ向かっている。

 破滅の足音が聞こえる。

 

 

2988 DAY 1000

 

 実験はケース70を越えた。結果は芳しくない。

 〝檻〟や〝新術〟はどんどん先に進んでいる。

 もうじき学頭選挙だというのに。このままでは。

 

 

2989 DAY 1759

 

 5日前、突如リディキュラス様に呼ばれ、急いで現場に向かうと、上位神としても強大な神〈次元竜〉が殺されていた。まさか、これは……。

 他の神々に見つからない内に〈次元竜〉を巨大な穴に隠しそれを覆って施設を造った。

 私は今、その研究所の所長の椅子に座り、これを書いている。

 〝徒歩(かち)渡り〟の研究を申しつけられた。

 

 

2990 DAY 1999

 

 世界が砕かれた。

 世界が終わった。

 唐突に。

 世界とそこに生きた多くのものを犠牲にして、巨神は倒された。

 たったひとりの、二級神の蛮行によるものだったらしい。

 副所長にそれを言うと「果たして蛮行だったのか」などと洩らした。

 なにを言う! 思い出すに腹立たしい。

 隔壁を開き、副所長を外に放り出すと、いくらもしない内に〝巨神の末裔〟が群がってきて、副所長を貪り喰らった。

 ほら、まだ終わってない。

 

 

2990 DAY 2012

 

 世界は終わったが、我々はまだ生きている。

 砕かれた世界で、なにが作用したのか、浮島となって漂い、今のところ安定している。

 所員たちがこの島からの脱出を計画しているらしい。

 バカなことを。〝末裔〟を駆逐し、〝徒歩渡り〟を解明し、リディキュラス様をお迎えに上がるのが我々の使命だろうに。

 だが、所員の半分を解放してやった。

 

 

2990 DAY 2020

 

 素体の不足から、異常再生の神兵・型式『ヒュドラ』計画を一時凍結。

不滅の百頭竜(ラードーン)』計画に移行する。

 ホムンクルスでもゴーレムでもない。細胞を掛け合わせ、生誕槽で培養したラドン兵は、施設と連動し、死しても復活する。ただし、復活できる回数には個体差がある。

 

 

2990 DAY 2045

 

 ふらふらしてる所員を殴り、怒鳴りつけた。

 しかしその所員はあの男だった。なぜここにいる?

 いったい今までどこに……

 なぜ、なぜ、

 おぞましい

 

 

2990

 

 期待してると言ったくせに、コイツも俺を見下していやがった。

 ふざけやがって、俺にだってできるんだ。

 期待してるって言ったんだ。

 俺は、期待されてる。

 俺が、所長だ。

 

 

2990

 

 新しい所長としてアイサツしたら、やたら騒ぎ出した。

 試験管をムリやり口に詰め込んで殴ってる内に、やっとみんな静かになった。

 みんなが静かになるまで、6分かかりました。次はもっとがんばりましょう。

 痛いと思ったら俺の拳まで切れて血まみれじゃないか。ひどいことをする。

 

 

2990

 

 見上げるほど巨大な丸いガラスの鉢の中で、ばちばちとカミナリが弾けてる。

 遮光マスクを顔に当て見つめていたら1日が終わってた。

 

 

2990

 

 大きなガラス瓶がたくさん並んでいて、その中にいろんな変な生物が浮いている。

 大小の管が足の踏み場もないほど床を這っている。

 瓶の中に気を取られていたらつまずいて転んだ。くすくすと笑われた。

 後ろから近づいてコップ一杯の酸を頭からかけてやった。俺もくすくすと笑った。

 

 

2990

 

 仲良くしようとしただけなのに、そいつは自分で頭をふっ飛ばしやがった。

 なんて勝手な女なんだ!

 

 

2990

 

 待ち伏せされた。

 複数人から寄ってたかって殴られてめった刺し。

 俺じゃなきゃ死んでたね

 所長ってすごい。尊敬してますって言えよ。そしたら、私もキミには期待しているよって言えるのに。

 

 

2991

 

 日課の見回りをする。

 所長として所員に実験がんばってくれたまえと声をかける。

 これ以上ヒトを減らされたら実験が滞ると言われた。それはいけない。

 人員削減による人手不足は深刻だ。

 

 

2991

 

 所員は大切にしなければならない。壊してはいけない。

 私も所長としての自覚ができてきたんじゃないか。

 瓶の中に裸で浮かぶ女性がいた。獣の耳が生えている。

 瓶の中から出してやった。

 仲良くしようと思っただけなのに、両手脚を折られ、首を踏み砕かれた。

 ラドン兵は自我が封印されているのではなかったか。

 

 

2991

 

 なんか外が騒がしい。

 外壁が〝末裔〟に破壊されたようだ。

 〝末裔〟の中でも最も数が多い小型から中型の〈攻性体〉と〈回収者〉二種。

 すでに死人が出ている。

 〈回収者〉によって外壁と所員が連れ去られそうになっている。

 所員は大切にしなければならないのに。

 潰して回る。

 

 

2991

 

 外を徘徊する〝末裔〟の数が減ったように見えない。

 自我のないラドン兵たちを定期的に放ち、死ぬまで〝末裔〟を殺し続けているはず。

 どうやら〝末裔〟の中でも大型で他の〝末裔〟を生み出し続ける〈父獣〉がどこかにいるようだ。

 

 

2991

 

 瓶の中、生誕槽とかいうその大きな瓶の中に赤ん坊が浮いている。

 もうずっと赤ん坊だ。

 他の瓶の中身はすぐに戦闘ができる身体に成長してくのに。

 

 

2991

 

 所内に潜んでいた獣耳の女性を追いかけていたら縦穴の縁に着いた。

 穴の中でデカい竜が死んでいる。

 上を向いてぽっかり空いた口の中。奥の方がぼんやり光ってる。

 死骸はどうでもいいんだが、獣耳の女性がその口の中に身を投げてしまった。

 追いかけようと思ったが私はここの所長だから行くわけにはいかないと理性が、そう、理性が働いた。

 ふふ、所長らしくなってきたのではないか。

 

 

2991

 

 赤ん坊を瓶から出し、穴に放り込んでみた。

 すぐに瓶の中に元の赤ん坊が形成された。

 ほかにもたくさんたくさん落としてみた。

 やはり死骸の口の奥はだいたいが死んでしまうようだ。

 しかし獣耳の女性がいた瓶は空のまま。

 ほかにも戻ってこないのがいる。

 戻ってきたが、瓶から出してみてももう二度と動かないのもいる。

 どういうことだろう。

 

 

2991

 

 次の日も赤ん坊を放り込んでみた。

 すぐに瓶の中に赤ん坊が形成された。こうして形成されるところを見てみると赤ん坊も少しずつ成長しているのがわかった。遅すぎると思う。

 

 

2991

 

 瓶から出した赤ん坊を放置してみた。

 赤ん坊は一度も目覚めないまま瓶の中に戻ってしまった。

 ふむ。研究だな。所長として研究対象を見つけてしまったかもしれない。

 

 

2991?

 

 1日目、変化なし。

 

 

2991?

 

 2日目、変化なし。

 

 

2991?

 

 3日目、変化なし。

 見ているだけではダメみたいだ。

 腹が立ったので穴に放り込んだ。

 

 

2991?

 

 瓶に繋がる太い管の一部がパカリと開くことに気づいた。

 緑色に光る粘液が流れてる。

 赤ん坊が再生される直前に、その管に穴の死骸の一部やその辺の薬液をドボドボと入れてみた。うん、研究者っぽい。

 

 

2991?

 

 5日目、変化なし。

 

 

2991?

 

 6日目、変化なし。

 

 

2991?

 

 あきた。

 

 

2991?

 

 赤ん坊が目を開けた!

 赤子とは泣くものだと聞いていたが、この赤ん坊はまったく泣かない。

 ただじっとこちらを見てくる。気味の悪い赤ん坊だ。

 穴に捨てた。

 

 

2991?

 

 赤ん坊が帰ってこなくなった。

 そういえば所員も姿が見えない。

 肉の在庫が底をつきそうだ。どうしよう。

 

 

2991?

 

 廃棄区画が騒がしい。また〝末裔〟か。

 これ以上廃棄区画を増やすのもな。

 

 

2991?

 

 アブナかった。

 特殊個体の〈福音者〉まで発生していた。

 危険だ。

 再生速度が下がってきている。

 やはり肉が必要だ。

 

 

2991?

 

 ダメだ。

 〝末裔〟はとても食べられたもんじゃない。

 

 

2991?

 

 肉が足りない。

 なにもやる気が起きない。

 

 

2991?

 

 よく見れば、保存食の瓶がこんなに並んでるじゃないか! なにを見ていたんだ私は。

 ただあまりおいしそうなのがない。マア、多様な需要に応えるためには致し方がないか。赤ん坊はどこだ?

 

 

2991?

 

 いくつかの瓶を空にしたところで、操作を受け付けなくなった! どういうことだ⁉︎

 それどころか保存食の保管庫に入ることもできない! 誰だ! 誰がいる⁉︎

 私の肉はっ? 肉肉肉肉肉! にく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スゥ──、フゥ────。

 

 

 

 

 

 

 

「……時間の無駄だったー。もっとまともな資料どこ〜ぉ?」

 

 

 

 

 

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