ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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04 けーん!

 

 

 

 

 

「あー、タ、タ、タ、タ、タ、タ………………ホァタアッ!」

 

 集中力が切れ、親指で鼻を擦りつつ叫ぶ。

 シュシュシュシュっと言いながら宙に〝ひゃくれつ拳〟を叩き込んでいると、

 

「おーい! レムー!」

 

 外から太い声に呼ばれた。

 窓を開けて顔を覗かせると、父レイグが木剣を振っている。

 

「剣の練習でもするか」

「はーい!」

 

 レムは元気よく返事をすると外へと駆けた。

 

 

 

 並んで一緒に素振りをする。

 

「ホァタアッ!」

「なんだその掛け声」

「おっと、さっきの名残りが」

 

 悪いところを直してもらいながらヤットーヤットー。

 

 父レイグは中堅冒険者。

 繋がりのある三十人弱の冒険者らと、その時々に合わせてパーティを組み、依頼をこなす。

 中堅とはいえそれなりの稼ぎがあり、だからこそ庭付きの家に住み、使用人も雇えている。

 

 ヤットーヤットー。

 

 この地域は旧アッセロ王国の流れを汲む『トウキ流』が主とされる。

 盾持ちの剣技として共通する帝国式(インペリアルスタイル)は軍隊で運用され、横並びで盾を構えて突き入れる形が基本的な動きであるが、トウキ流はより剣に重きを置いていて、冒険者向きとしてこの帝国で広まった。

 

 そして、レイグの剣はそれらともまた違っている。

 かつて魔物に滅ぼされた男爵領において受け継がれていたもの。

 

 その剣式(ソード・スタイル)を『グナト』といった。

 

 盾は使わず、片手半剣(バスタードソード)を得物とする。

 グナトの剣士はその独特の形状の得物を〈片手半剣(サヒ)〉と呼んだ。

 レムから見ればそれは鉄刀だった。

 ただ打刀(うちがたな)より身幅がかなり広い。男性が拳を縦にしたくらいの幅がある。反りも浅いように見えるが、それでも初めて見せてもらった時、レムは思わず「欲しいっ!」と飛びかかったほどだった。

 当然却下された。

 顔を掴まれぺいっと床に捨てられた。

 そしてグナトを教えて欲しいと頼み込んだのだった。

 魔法も剣も頑張ることに決めた日だった。魔法が最優先ではあるけれど。

 

「ほい、剣に気をのせろー」

「あい!」

 

〝気〟とは概ね魔力のことだ。

 気をのせるとは、グナト流の言い回し。気合を乗せ、魔力を乗せて剣を打つ。

 剣においても魔法においても重要な魔力は、当然個人差があり、体調、感情、環境によっても変動するものだ。

 かつて大きな魔法を行使する際には、呪文の前に別の言葉に魔力をのせて詠唱したという。〝祝詞(チャント)〟という一つの技術であり、わずかな魔力を呼び水に、自身の魔力を高め、周囲から魔法陣へと魔力を導く流れを作る。レムに言わせれば魔力上昇のバフ効果かな、といったところ。

 しかし以前は魔技と呼ばれたスキルの存在に押され、それらの技術は衰退の道を辿っている。

 魔道士の数も減り、彼らの多くにとって縁遠いものとなってしまっていた。

 

 ヤットーヤットー。

 

 練習の最後にはレイグと打ち合う。

 カン、カン、カンと軽快な音が響く。

 レムはまだ七歳なので実戦形式ではなく、攻守を入れ替え交互に打ち合う。

 しかしレムは虎視眈々と一撃いれる時を毎回狙っていた。

 

「とや、は、や」

「ほれ遅い遅い」

「ふんっふんっこのっ、くのっ!」

「グナトは速さが肝要。ほれほれ」

 

(よし、じゃあ……!)

 

 その速さを見せてやると、後ろへ跳んで距離を取ると見せかけてすぐさま前に出ながら囁く。

 

【トゥーウィズエミル・グゥール・エミルアロス】

 

「風一陣」

 

 魔法による暴風加速。

 

「ッ!」

「まだ!」

 

 加速を利用して押し込む。

 連続する木剣の衝突音が重くなる。

 さらに──。

 

「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ!」

「なに⁉︎」

 

 レムの一音ごとに、レイグの周りにいくつも魔法陣の()()が浮かんだ。

 レムは地を踏み切ると周囲に散りばめられた『魔道語印(アトン)』を足場に飛び回り撹乱し、レイグの頭上から急襲──しようとして、失敗した。

 すっぽ抜けるように放物線を描いて飛んでいく。

 自分自身がスピードについて行けなかった。足場をすり抜け飛んでいく。

 

「……──ぁぁぁ~……」

 

 レイグはバンッと地面を抉って疾走する。

 息子が塀を越え、木々を越えて飛んでいくところで跳躍。

 スキルを発動。

 

「【空襲(エアリアル)】」

 

 レムに向かって一直線に飛び出した。

 それを見てレムが喜びの声を上げる。

 

「おおっ! 空中ダッシュ!」

 

 レイグがレムをキャッチして着地した。

 

「父様すげえ!」

「こら。お前はちょっと反省しろ」

「ごめんなさ~い」

 

 額をコツンとやられて謝った。

 レイグに下ろしてもらうと足元がフラつく。魔力を消費し過ぎた。

 

「大丈夫か?」

「だいじょぶ」

 

 フラつきながらも元気よく腕を振って歩き出す。

 

「そうか。で?」

「ん?」

「さっきのは何だ?」

「あ、気になる?」

 

 

 

 

 

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