ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます 作:そこの角にいる
「あー、タ、タ、タ、タ、タ、タ………………ホァタアッ!」
集中力が切れ、親指で鼻を擦りつつ叫ぶ。
シュシュシュシュっと言いながら宙に〝ひゃくれつ拳〟を叩き込んでいると、
「おーい! レムー!」
外から太い声に呼ばれた。
窓を開けて顔を覗かせると、父レイグが木剣を振っている。
「剣の練習でもするか」
「はーい!」
レムは元気よく返事をすると外へと駆けた。
並んで一緒に素振りをする。
「ホァタアッ!」
「なんだその掛け声」
「おっと、さっきの名残りが」
悪いところを直してもらいながらヤットーヤットー。
父レイグは中堅冒険者。
繋がりのある三十人弱の冒険者らと、その時々に合わせてパーティを組み、依頼をこなす。
中堅とはいえそれなりの稼ぎがあり、だからこそ庭付きの家に住み、使用人も雇えている。
ヤットーヤットー。
この地域は旧アッセロ王国の流れを汲む『トウキ流』が主とされる。
盾持ちの剣技として共通する
そして、レイグの剣はそれらともまた違っている。
かつて魔物に滅ぼされた男爵領において受け継がれていたもの。
その
盾は使わず、
グナトの剣士はその独特の形状の得物を〈
レムから見ればそれは鉄刀だった。
ただ
当然却下された。
顔を掴まれぺいっと床に捨てられた。
そしてグナトを教えて欲しいと頼み込んだのだった。
魔法も剣も頑張ることに決めた日だった。魔法が最優先ではあるけれど。
「ほい、剣に気をのせろー」
「あい!」
〝気〟とは概ね魔力のことだ。
気をのせるとは、グナト流の言い回し。気合を乗せ、魔力を乗せて剣を打つ。
剣においても魔法においても重要な魔力は、当然個人差があり、体調、感情、環境によっても変動するものだ。
かつて大きな魔法を行使する際には、呪文の前に別の言葉に魔力をのせて詠唱したという。〝
しかし以前は魔技と呼ばれたスキルの存在に押され、それらの技術は衰退の道を辿っている。
魔道士の数も減り、彼らの多くにとって縁遠いものとなってしまっていた。
ヤットーヤットー。
練習の最後にはレイグと打ち合う。
カン、カン、カンと軽快な音が響く。
レムはまだ七歳なので実戦形式ではなく、攻守を入れ替え交互に打ち合う。
しかしレムは虎視眈々と一撃いれる時を毎回狙っていた。
「とや、は、や」
「ほれ遅い遅い」
「ふんっふんっこのっ、くのっ!」
「グナトは速さが肝要。ほれほれ」
(よし、じゃあ……!)
その速さを見せてやると、後ろへ跳んで距離を取ると見せかけてすぐさま前に出ながら囁く。
【トゥーウィズエミル・グゥール・エミルアロス】
「風一陣」
魔法による暴風加速。
「ッ!」
「まだ!」
加速を利用して押し込む。
連続する木剣の衝突音が重くなる。
さらに──。
「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ!」
「なに⁉︎」
レムの一音ごとに、レイグの周りにいくつも魔法陣の
レムは地を踏み切ると周囲に散りばめられた『
すっぽ抜けるように放物線を描いて飛んでいく。
自分自身がスピードについて行けなかった。足場をすり抜け飛んでいく。
「……──ぁぁぁ~……」
レイグはバンッと地面を抉って疾走する。
息子が塀を越え、木々を越えて飛んでいくところで跳躍。
スキルを発動。
「【
レムに向かって一直線に飛び出した。
それを見てレムが喜びの声を上げる。
「おおっ! 空中ダッシュ!」
レイグがレムをキャッチして着地した。
「父様すげえ!」
「こら。お前はちょっと反省しろ」
「ごめんなさ~い」
額をコツンとやられて謝った。
レイグに下ろしてもらうと足元がフラつく。魔力を消費し過ぎた。
「大丈夫か?」
「だいじょぶ」
フラつきながらも元気よく腕を振って歩き出す。
「そうか。で?」
「ん?」
「さっきのは何だ?」
「あ、気になる?」