ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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05 空歩

 

 

 

 

 

 魔道語印(アトン)──そこには単純なものから、少し入り組んだカタチまで様々だ。

 それらの意味が通じるように並べることで、魔法陣を描き、魔力を通すと、現象が現実に導き出される。

 並べ方もまた色々と種類があり、縦、横、十字に、円に、四角、三角。時には複雑に組み合わさった立体に。

 

 さらに単体では意味をなさない補助記号が加わって魔法陣はできている。

 補助記号はいくつかの種類があり、魔法の強度や安定性を増したり、魔法陣を隠蔽するなどの効果を持たせることができる。

 大きな魔法陣を作る際には必ず打ち込むことになる。

 それらの記号を『符号(デコ)』という。

 

 宙に描き出すにも当然魔力を使うが、描き方にもまたまた色々ある。

 鮮明なイメージでスタンプを押すかのように、であったり。

 指先に点した魔力で書き付ける、であったり。

 あるいは印を結ぶ芸術的な身振りか。

 読みを連ねた発話によるか。

 それらを複合的にやってもいい。

 

 現在の魔道士たちは大抵、魔法の書に載ってる一番簡単で分かり易い魔法陣を丸暗記する。

 

 広く知られた魔法を集めた〈魔法の書〉ではなく、魔法の解説本である〈魔道書〉をレムは読み進めながらつらつらと物思いに耽る。

 

(ま、効率的だよね。少数使えればそれで良しってことなら)

 

 そっちの方針はないな、と考える。

 レムは多くの魔法が使いたいのだ。

 ただ困ったことがあった。

 

(あんまり魔力に恵まれてるって感じじゃないんだよなー。成長すれば伸びる……のか?)

 

 レイグやメルティナに比べ、魔力を消費してからの回復がかなり鈍いとレムは感じていた。

 魔力は失い過ぎれば命に障る。

 といっても大抵その前に気絶するが。

 休眠状態の方が魔力の回復が早いのは良く知られた事実だ。

 

 空中にいくつかの魔道語印を投影する。

 それらは本来、触れることなどできないが、いくつかの補助記号を書き足すことで物質化することをレムは発見していた。

 何冊かの魔道書を読んだがこれについての記述は見当たらなかった。

 

(誰も気づいてないってことはないと思うんだけど……)

 

 魔道語印の一つに〝目〟と呼ばれる補助記号を書き足す。

 爪で触れる──カチカチ。

 指で押し込むと簡単にパキッと割れて崩れて消えた。

 

(使い(みち)がないってことかなぁ…………でも)

 

 別の魔道語印に〝角〟と呼ばれる補助記号を二つ、ピョンピョンと書き足す。

 印は大きくはないので片足で乗る。そこで跳ねてみても割れることはない。

 部屋中に〝角〟を符号し(デコっ)た状態の魔道語印を浮かべる。

 魔道語印は一つでは所詮、魔法の構成要素でしかないので、魔法陣とは比べるべくもないほど簡単に投影できる。

 部屋中を上下左右にゆっくりと跳び回った。

 時間経過でスゥーと消えるに合わせて、床に着地した。

 

(イケると思うんだよね)

 

 

    ◆

 

 

「てことで、使ってみました。父様どう思う? 使える? その前にもうある?」

「んー……いや、俺は知らないな」

 

 レムはこくこくと頷く。

 

「使える?」

「ああ、そう思う」

「やった!」

 

 レムはピョンピョン飛び跳ねて言う。

 

「じゃあ仮に【空歩(エア・ステップ)】と名付けます。父様も使ってみてね」

「ああ。練習しよう」

 

 えっへっへ、とレムはうれしそうに笑った。

 

 

 

 それから。

 レムは父を検証に付き合わせることで、男性が思いっきり踏み切っても問題ない組み合わせを数種類見つけた。

 トトト、と父がジグザグに空へと駆け上がるのを見て考える。

 

(やっぱりステップを踏む瞬間に出して、踏み切った直後に消すのは難しいな。それができれば相手はかなり驚くと思うんだけど。この技術を盗まれ難くすることにも繋がるはず…………ま、相手がヒトの場合だけど)

 

 降りてきた父に駆け寄る。

 

「投影したステップに〝ひげ〟を付けることにしましょうか」

 

〝ひげ〟という符号(デコ)は、有効を保つ最小の大きさでも魔道語印(アトン)の二倍の長さがあった。

 

「目くらましか?」

「うん」

「確かに〝ひげ〟が目立つことで、ごまかしになるかもしれん。が、逆に補助記号が要であると気付かせることにもなるかもしれん」

「あー、んーそっかー。まー、バレたらバレたでしょうがないかな」

「有利が取れるならやる価値はある。ちょこちょこ変えていくしかないな。符号だけじゃなく、魔道語印を二つ重ねるとかな」

「うん。これで【空歩】は一応オッケーとしまーす。よっしっし」

 

 言いながらもう走り始めている忙しない息子の後ろ姿に、レイグは苦笑をこぼした。

 

「俺はこれから仲間んとこ行ってくるからな!」

「はーい!」

 

 

 

 家に入ると掃除中のお手伝いさんに声を掛けられる。

 

「おかえりなさいませ、坊っちゃま」

「うん、ただいまー」

 

 ふりふりと手を振って自分の部屋に向かった。

 

「ふぃー」

 

 簡素なソファに身体を預ける。肘掛けに靴を半分脱いだ足を乗っけた。

 ぼんやり天井を見上げてる内、いつの間にか意識を失った──……。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 ──……コポコポ……コポ……。

 

 

 ◆

 

 

 

 

「おっとー? ねむってしまったか」

 

 夢を見た気がするが覚えてなかった。

 

 レムは起き出すと伸びをして机に向かう。

 相変わらずの魔道語印の書き取り練習。

 顔を上げ、ふと思った。

 そういえば、とーちゃんのマジ戦闘見たことないな、と。

 

(見たい)

 

 レムは早速、父レイグが帰ってくるや「戦闘に連れてってくださーい!」と駆け寄った。

 当然却下された。

 

「や、違うんですよ、父様。僕は冒険者として活躍する父様が見たかったんです」

「え、そうか?」

 

 ニマニマしているレイグを見てレムは思う。しめしめもう一息だな、このチョロりんパパめ、と。

 

「父様のかぁっこいいとこ見たいなー」

「そんなに言うなら仕方──ダメだぞ」

 

 いきなり意見を翻された。

 振り向けば笑顔の母。

 レムは思わず早口になった。

 

「違うんですよ、母様。何も僕は戦闘に参加したいと言ってるわけではないんです」

「あたりまえです」

「…………だめ?」

 

 無言のまま笑顔で見つめられて、レムはがっくりと肩を落とした。

 

「じゃあ父様、鉄刀(サヒ)見せてください」

 

 

 

 

 

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