ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます 作:そこの角にいる
魔法の道具には
レイグの〈
鉄刀をじっくりとねぶるように見てから、レムの魔道具について知りたい欲がごりごりと増していた。ごりごり。
鉄刀は重いし危ないと触らせてもらえなかったので、何か代わりのマギアを触りたい撫でたい。
「…………!」
お店に行けば見れるんじゃん? と市街へ向けてゴーゴーゴー、と廊下をダッシュしたところで襟首掴まれて止められた。
「ぐえー」
「どこ行こうとしてるの」
「母様。あのー、魔道具のお店に」
「だめ」
ここ第三都市スレーヴェンは、拓くことのできない魔の領域にほど近い。
魔物を堰き止めるために造られた都市なので当然だ。
そのため各地から冒険者が集まってくるし集めている。
荒くれ者とそれを相手に商売する者。
スレーヴェンは他の都市より気性が荒いと評判だ。
酒は酔うために飲むものだという人間ばかり。酔っ払いは全員マナーがなってないとみて間違いない。
治安がいいとはとても言えず、七歳児の一人歩きが許されるわけもなかった。
「そんなー……でも母様、僕は歴史に埋もれた叡智の探究をですね」
「あきらめないわねー。また今度連れてってあげるから」
「本当ですか! 今度っていつですかっ? お昼食べたらですかっ?」
「そんなこと言ってると、彼には帰ってもらうわよ?」
「かれ?」
レムが振り向くと、ちょうど家の門に馬車が停まったところだった。
「あ! ザンパ!」
レムは御者台に座る貸本屋のザンパへ思いっきり手を振った。
貸本屋は契約した人の家を回り、その人の趣味に合った本を持ち込んでお薦めし、良きところで本を回収し、また新しい本をお薦めして、貸出し料で稼ぐ商売だ。
本はとんでもなく高価だが、貸本なら物にもよるが一週間借りて、屋台の串焼き一本分程度。
読み書きも七割の人ができるので、学術本だけでなく、滑稽、怪奇、活劇とジャンルが増えるにつれ貸し本の人気は高まった。
いかに客の好みに合った本を持ち込むかが貸本屋の腕の見せどころ。
「ホッホホーイ!」
受け取った三冊を頭に載っけて家の中に走っていくレムを見守って、メルティナは多めの代金をザンパに渡した。
「悪いわね」
「なんの」
あまり需要もないのにデタラメに高い魔法関連書物を、ザンパには無理言って優先的に探してもらっていた。
「損させることになってない?」
「大丈夫でさ。若坊っちゃんに本を届けるのは半分趣味みたいなもんです。商売全体で見りゃ、ちゃあんと儲けてやすよ」
ザンパは情報屋でもあった。そしてこの家族に恩があった。
ザンパが忘れることのない〝いつか〟が今も耳に蘇る。
『……すまねえ……すまねえ……!』
「……──ザンパてめえ! 今なにしようとしてやがったっ!」
「俺のせいだ! 俺のせいだ! 本当に、すまねえ!」
「ふざけんなッ! お前がいなくなるくらいならなあっ! 魔道具の一個や二個、なんでもねんだよッ! んなもん奴らにくれてやりゃいいんだ! そんなことよりてめえが馬鹿なことしようとすんじゃねえよ、ブッ殺すぞ!」
「ザンパ、ここからよ? こっからこっから、ガンガン行くよ。ね、レム?」
「あばば」
ザンパは中折れ帽を軽く浮かせ、
「それじゃあこれで。若坊っちゃんにまた相談に乗ってくださいと言っといてくだせぇ」
と言って帰っていった。
「ザンパがまた相談に乗ってくださいって」
床に本を広げて読んでいるレムにメルティナが声をかける。
レムが母を見上げて首を傾げた。
「相談? のってもらったのはぼくだけど……?」
メルティナが肩をすくめ、ヒラヒラと手を振って戻っていく。
一時期、前世で馴染みの料理を食べたくなって、本に載っていた料理を再現するという名目で、両親にも二人の冒険者仲間にも、そしてザンパにも手伝ってもらい、大騒ぎで試行錯誤したことがあった。
再現できたものも出来なかったものもある。
料理の完全再現がしたいわけじゃなく、最終的に見た目と味がそれっぽくなっていれば満足であると気付くのにずいぶんかかった。
その過程でザンパには無茶な頼みをたくさん聞いてもらったこともあり、いくつかの条件のもと、レシピと権利を丸ごと渡していた。
夕方、帰ってきたレイグに、レムは再び〈
全長は73.5cm。
祭文は象嵌されていて二十七文字。
いくつかの魔法効果を持つらしい
この鉄刀に何個の魔法が篭められているのかわかっていない。
祭文が鍵だろうと云われているが。
(…………かなり字体が崩されてる……? いや、これが正確なもので今は失われた
魔法陣の円形や四角形などの模様ではなく、縦書きの文章で、何文字かずつ区切られている。
魔道語印を横や縦に並べた魔法陣もある。
一つのまとまりであるはずの文字列も別に繋がってるわけではない。
(比較できる物が欲しい。魔道具としてこれが普通なのかがそもそもわからない)
「なんかわかったか?」
椅子に座って
「ちょっと紙に書き写させてね」
紙に書きながら既存の魔道語印と仮定して読んでみるが、訳すには祭文が簡潔すぎて情報が足りない。
意訳すると「デブの精が住まいに引きこもってる」と読み取ることもできてしまう。
さすがにそんなことはないだろう。
「なんだそれ?」
「意味わかんないよね。んー……まあ、いちおう、」
ナカゴも見せてもらい、切られた四文字も読んでみる。
「は、に……ま……る。よし。この剣は『はにまる』ってことで」
レイグはとても嫌そうな顔をした。
「父様」
「んあ?」
レムは剣を見つつ声をかける。
「はにまるは〝サヒ〟で間違いないんですよね」
グナト流が使う剣は片手半剣の魔道具──それだけが〝サヒ〟と呼ばれる。
「なあ、はにまるは決定なのか?」
「そう書いてあるからね」
「そうか……」
レイグはしょんぼりと肩を落としたが、気を取り直してレムの質問に答える。
「ああ……こいつはサヒだ」
「つまり、間違いなく魔法の力が篭められている?」
「そう。武具なんて消耗品だ。どんなに大切に扱っていようといずれダメになる。だがこいつは使い始めて十年近くなるが俺が自分でやる手入れ以上のことは何もしてない」
「おおー……」
ちなみに世の中には【修理】の魔法もある。しかしそれで直せるのは元の形を知っている製作者か、よほど腕のいい
「ほかにどんな魔法が篭められているのかわからないの?」
「んん、……おそらく〝身かわし〟はあると思ってる」
「身かわし」
「たとえば炎の波が目の前に迫ってきたとして、どこをどの瞬間に突っ切れば一番被害を軽減できるかがなんとなくわかるんだ。同じ効果のスキルがあって【
(ちゃんと常時発動する機能はあるんだ。魔法陣を描いてないのにどうやって……?)
レムはじっとはにまるの柄を見つめて言った。
「分解していい?」
「だめ」
「うー、ほかには何かある?」
「そうだなぁ、思い当たるとすれば……昔、探索に入った遺跡の奥で遭遇した魔物がいたんだ。象の亜人『
「え? 大丈夫なの? 今いきなり死んだりしない?」
「それは大丈夫だ調べてもらったからな」
「そう」
ほっと息をつく。
「しかし当時は確かに喰らった感覚があった。なのに何ともないから、後ろとか確認して首を傾げて見たら、マゾーニの奴も首を傾げてた」
(即死に耐性? 無効?)
レムは試しようがないなと思いつつ、レイグと会話を続ける。
「即死なんて怖いね。オゾウニ」
「マゾーニな」
「他にも怖い魔人に遭ったことある?」
亜人型で、魔法を使う
「ああ、あるぞ。こいつも象の亜人で『
(ゾマホン…………なんだこの世界)