ザンキ99 転生して魔剣士目指しつつナゾの魔道具士やってみます   作:そこの角にいる

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08 冒険? に出かけよう

 

 

 

 

 

 とりあえず、片手半剣(サヒ)〝はにまる〟の祭文解読は先生の魔道具(マギア)を待つことにして、アプローチを変えることにした。

 祭文が重要なのではなく、そこにある魔法効果を知り、使いこなせるのかが重要。

 

 修復。

 身かわし。

 即死耐性あるいは無効。

 

 他に、剣者のために剣に記す魔法とは何かを考える。

 やはり切れ味を増すとか、ざっくり言えば攻撃力のアップだろうか。

 

 理屈で言えば祭文に記された魔道語印(アトン)の組み合わせで、何らかの魔法を発動できるはずだ。

 だからといって、片っ端から組み合わせて試したところで意味がないのが辛いところ。

 それが可能であったなら、世の中にはもっと魔法が溢れていただろうし、魔道士の数も多かったろう。

 魔法は使用者の力量によって左右され、失敗すると発動しないか、中途半端な理解では最悪の場合すべて跳ね返ってくるという。

 逆火(バックファイア)と呼ばれる逆流現象は、小さな魔法の失敗でも後遺症が残るような事態になりかねない。

 こんなんで昔の人はどうやって新しい魔法を作っていたのか。

 

 

「ぬあ~っ!」

 

 ぐしぐしと頭をかき混ぜる。

 レムは、がっ、と立ち上がると、だっ、と一階へ走った。

 

「父様! 冒険に連れて行ってくださーい!」

 

「じゃあ行くか?」

「え? マジ?」

 

 ちなみに「マジ」とは「魔法かよ」という意味の驚きを表す言葉を縮めた形の若者言葉である。

 レムは思わず母を見た。

 

「四人で冒険に行きましょうか」

 

 メルティナはまだ目立つほどではないお腹に手を添えて言った。

 

「やった!」

「お弁当持ってね。レムはこの小さいの、はい。レイグ、敷物忘れないで」

「冒け……冒険?」

 

 レムは荷物を受け取りながら首を傾げた。

 

 

 

 お弁当が出てきた時はピクニックじゃね? と思ったレムだったが、行き先が冒険者ギルドと聞けばもう楽しみで仕方がなかった。さらに帰りには魔道具のお店に寄ってくれるという。もう最高だ。

 

 

「おお~!」

 

 東へ続く大きな通りを眺め、今立っている巨大な広場を見渡した。

 

 街の東、魔の領域に向かう冒険者たちが主に使う大門をギルド門という。

 そこから真っ直ぐ、街の中央に向かい1.5kmのギルド門通りが伸びている。

 樹々が整然と連なる二本の並木路に挟まれた公有地には、冒険者がのんびり屋台で買い食いしたり、昼寝したり、パーティで訓練したり、他所の冒険者と喧嘩したり決闘したりする姿が見られる。

 通りの幅は約105m、その外側を重厚な建物の数々が立ち並ぶ。

 

 その大通りから至るはギルド公会広場。

 今いるところだ。

 巨大で完全に平坦な石のプレートが敷き詰められた広場。

 そこには忍耐と寛容と奉仕というギルドの大方針を示した記念碑が聳え、演壇が二つ、北と南に離れて置かれている。

 正面にこの街のギルド本部が城の如き威容を晒し、新人募集所を兼ねた酒場に宿屋。

 広場に厳つい冒険者の兄ちゃん姉ちゃんが行き交い、屋台や売り歩きの行商人が声を張り上げる。

 

 街のあらゆる者が集う活気溢れるギルド公会広場(フォーラム)

 

 一家はギルド門通りの公有地(プラザ)に移動する。

 芝生に敷物を広げ、バスケットからパンにチーズ。

 レイグが屋台に行き照り焼きチキンを買ってくる。

 照り焼きチキンはレムが先頭に立って再現した料理の一つだった。

 屋台は稼ぎ頭を失った家庭でグループを作り、街の各所で協力して生活費を稼いでいる。品質の管理と後ろ盾は貸本屋ザンパの商会が担っていた。

 レムがザンパにレシピや権利を丸ごと渡してしたお願い事がこれだった。

 

 軌道に乗っているようでよかったと思いつつ、レムはザンパとのやりとりを思い出す。

 

 

 

 

 この計画を立ち上げてからしばらく、提案者ということで報告会が開かれていた。と言っても、参加者はレムの家族とザンパ含めた商会の三人の六人だけ。場所も自宅だ。

 その報告会の時に、ふと、レムはもしかしてと思ったことを訊ねた。

 やっかみから偽善者などと侮蔑を向けてくる者たちがいるのじゃないかと。

 ザンパが言葉を濁したのでわかった。同時に気を遣ってくれていたんだと察して、レムは謝った。

 

「ごめんね? ごめんなさい」

「謝ることなんて何もありません」

 

 いつも淡々としているクールな商会のお姉さんが言った。

 

「偽善者などという言葉で人を非難する者ほど自ら誰かに何かを与えようとはしないものです。そんなクソの言葉などクソほどの価値もありません。クソ時間が勿体無いのでそんなクソに出会ったら一言だけ言ってやればいいのです。『クソ虫が』と」

 

 お姉さんはがーっと言って、スンとクールに戻った。

 レムは思った。このお姉さん実はアツい人なのかもしれないと。

 ザンパがやれやれと苦笑しながら言う。

 

「ま、そういうことなんで。気にすることありやせん若坊っちゃん」

 

 

 

 

 そんなことを思い出しながら、屋台で働く女性二人と少年一人に、今まさに絡んでいる男たちを、レムはじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

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