(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです   作:生徒会副長

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※!!!!注意!!!!※

魔王学院の不適合者第17巻のネタバレがあります!!!









 






ネタバレ回避用改行



 





 




第1話/願ってしまった。祈ってしまった。

 第一魔王アムルや正帝との戦いを終えて──。

 ミーシャは最期の力を振り絞り、転生の秩序が銀水聖海を循環し、どの世界にいようとも転生(シリカ)を使うことができるようにした──。

 

 だが、その代償はあまりに大きかった。

 死んで転生するだけでは済まなかったのだ。

 

 21世紀の春の日本。見滝原市の病院で、一人の少女がベッドに顔を埋めて泣いていた。金髪のツインテールをした、明日15歳になる少女だ。

 そのベッドには、白銀の短髪の少女が眠っている。

 金髪の少女──玄音(くろね)ゆうこは、嗚咽を漏らしながら、ベッドで眠る双子の妹に訴えた。

 

「ともり……! お願いよ……! 私を一人ぼっちにしないで……!」

 

 ミーシャ・ネクロンの転生体、玄音(くろね)ともりは眠ったままだ。10歳の頃から、重い心臓病に蝕まれていた。もはや一日のうち、起きている時間は3時間程度しかない。それ以上の負担は心臓が耐えられない。もはや残された余命も3ヶ月程度だろうと言われている。

 ゆうこの後ろから、彼女ら姉妹の母親が歩み寄って、ゆうこの背中を擦った。

 

「さ、ゆうこ。今日のお見舞いは終わりよ。帰りましょう」

 

 キッと母親を睨みつけながら、ゆうこは振り向いた。彼女の前世はサーシャ・ネクロンだが、その眼に破滅の魔眼は──ない。

 希輝星デュエルニーガとの戦いで無理をし過ぎた代償であった。運命を滅ぼし、暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴードと彼女を繋ぐ絆だった破滅の魔眼は、もう無いのだ。記憶だって無くしている。

 それでも彼女から、運命を見据えて滅ぼし尽くす闘志と、妹への想いは消えていなかった。

 

「お母様! 本当にどうにもならないの!? ピースメーカーとか! 手術とか!」

 

 しかし母親は、呆れながら無情に言う。

 

「何度も説明したでしょう。心臓移植以外では助からないの。そして都合のいいドナーも見つからないの。運命と思って諦めなさい」

 

 この世界において、死はあまりにも呆気なく訪れる。

 百年生きられる人間など極稀。五十年でも十分過ぎるほどのガタが来る。ともりの心臓病は、治癒(エント)なり蘇生(インガル)なりがあれば簡単に治せるのだが、そんな便利な魔法はない。世界中を探しても、火炎(グレカ)すら使える人間はいないのだ。

 ゆうこはここが病院であることにも遠慮せず母親に向かって叫んだ。

 

「だったら! だったら私の心臓をともりに移植してよ! 双子だもの! 私はともりでともりは私よ! ぴったり合うはずだわ!」

 

 母親は怒りすら滲ませ、溜息ついてから答えた。

 

「ゆうこ。バカなこと言ってるんじゃないわよ……。あなたは賢いし友達もたくさんいるでしょう? あなたはともりの分まで生きるの。法的にも許されないわ。聞き分けなさい」

 

 その後も何度かやり取りはしたが、話は平行線だ。

 出来もしないことを口にして、ともりを助けようとするゆうこ。

 現実を突きつけてともりを見捨てるつもりでいる母親。

 運命は残酷で、世界は優しくなんかなかった。結局はゆうこが屈して、母親に連れられて病院を去る。ともりを残したまま。

 

 ──その日の夜も、ゆうこは自室の机の上で泣いていた。

 本棚や机には、心臓病について調べたメモや本が散乱している。ゆうこは自分が医者になってともりを助けようとしたのだ。

 だがどう考えても間に合いそうになかった。

 

(……ギリギリ間に合った……気がするのに……。今じゃない……いつかは……何処かでは……)

 

 前世で、分離融合転生(ディノ・ジクセス)からミーシャを救う為に根源魔法の研究をした記憶を、ゆうこは失っている。想いだけが残っていた。

 

『本当の奇跡はここからだ』

 

 自信たっぷりにそう言いながら、絶大な魔法を操った史上最強の魔王の始祖は、ここにはいない。

 この世界には、奇跡も魔法もありはしない。

 

「諦めるしかないの……? こんな運命……ぶち壊してやりたいのに……!」

 

 ──ほんの僅かな、例外を除いて。

 

「その言葉は本当かい? 玄音ゆうこ」

 

 その声がする方へ、ゆうこは眼を向けた。

 空いていた窓の桟に、猫ともウサギとも言えない白い生き物がちょこんと座っている。そいつは、ルビーのような眼で彼女を見つめていた。

 その生物は口を動かすことなく言葉を紡ぐ。

 

「君のその願いは、魂を懸けるに値する願いなのかな? 戦いの宿命を受け入れて祈りを捧げる覚悟があるかな? もしそうなら──僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

 その白い生物、キュゥべえは話した。魔法少女の契約について。

 願い事を叶えてもらい、祈りでソウルジェムを輝かせ、戦いの宿命を歩む魔法少女という存在。

 ゆうこには魔法少女になる資格があるのだという。

 その説明を信じ理解することに集中するあまり、ゆうこは脳裏によぎったノイズの存在に気づかなかった。

 願うなと、祈るなと、誰かが雄弁に語る光景だ。

 無理もない。言った本人──魔王アノスが傍にいないのだから……。

 故に彼女は、願ってしまった。祈ってしまった。

 

「私は……運命をぶち壊したい! 私が先に死ぬのも、ともりが先に死ぬのも嫌だわ! 鏡合わせみたいに、二人じゃなきゃ生きられないの! 私達の絆を裂くような運命も悲劇も理不尽も……滅ぼせる力をちょうだい!」

 

 そう願い、祈りを捧げると、ゆうこの身体から紅い魔力が迸って煌めいた。

 キュゥべえは告げた。表情などまるで変えずに。

 

「契約は成立だ。君の願いは叶う。君の祈りはエントロピーを凌駕した。解き放ってごらん、新しい力を」

 

 翌日。双子の姉妹の、15歳の誕生日。

 玄音ともりの心臓病が治った。奇跡か魔法が起こったかのように。

 ゆうこは嘘をつくのが下手だったし、ともりにも魔法少女の才能があったので、ゆうこは全ての真実を妹に話した。

 あの心臓病が治ったのは、姉から妹への、15歳の誕生日プレゼントなのだと。

 ともりを守るために、ゆうこは魔法少女として戦うから、ともりは一先ず契約せずに見守っていて欲しいと。

 

 ──そして春が過ぎ、夏の真っ只中。

 

 一面青空の背景という、ずいぶん爽やかな印象を受ける魔女の結界内部で、2人の魔法少女が戦っていた。ロープが渡され、そこに洗濯物のように無数のセーラー服がはためいている。ロープ上のあちこちでプリーツスカートを穿いた下半身のみの姿をした使い魔が踊っている。

 そして結界の中央部には、腕は6本あるが脚も首もない、黒いセーラー服を着た少女がモチーフの魔女がいる。

 委員長の魔女。その性質は傍観。

 蜘蛛のような糸を吐き、結界内の空に自分だけの学園を作って学生達と変わらぬ日常生活を繰り返しているのだ。

 対する魔法少女のうち片方は、金髪に縦ロールを2本下ろしている。白いぴっちりとしたブラウスと短めのスカートにコルセットという、女性として完成しつつある美貌を存分に見せつける服を身に纏っている。

 その名は巴マミ。魔法少女歴3年のベテランである。マスケット銃で使い魔を攻撃しつつ、ロープの上を走って魔女への接近を試みている。

 もう一人の魔法少女は、金髪をツインテールにまとめている。肩を大胆に見せる深紅のブラウスはセクシーだが、胸元の黒いリボンは可愛らしい。黒と金のグラデーションのミニスカートと、オレンジのケープが風に靡く。

 魔法少女歴3ヶ月の、玄音ゆうこだった。彼女は、縁に太陽の光条と歯車が交互に装飾された鏡を10個召喚し、使い魔10体に向けた。そして鏡から灼熱の黒い炎を放つ。

 

灼熱炎黒(グリアド)!」

 

 炎に呑まれた使い魔達は消滅していく。玄音ゆうこにサーシャ・ネクロンとして生きた記憶はないが、ネーミングセンスはミリティア世界のそれであった。

 十分魔女に接近できたところで、マミはゆうこに呼びかけた。

 

「ゆうこ! 一気に決めましょう!」

「分かったわ!」

 

 マミは黄色いリボンを束ね、バレル部分を超巨大化したような大砲サイズのハンドガンを創り上げる。

 その巨大ハンドガンの目の前に、巨大なゆうこの鏡が召喚され、巨大ハンドガンの砲身を呑み込んでいく。

 鏡の反対側から、燃える薔薇が咲き乱れる砲身が現れたところで、鏡の縁の部分が、歯車のように高速で回転する。

 ゆうこがニヤリと笑みを浮かべながら叫ぶ。

 

「いっくわよーー!! 黒火輪壊(サージエルド・)──」

「──終幕射撃(ティロ・フィナーレ)!!」

 

 燃える薔薇の花弁を尾に引きながら、太陽を思わせるほど大きい黒炎の弾丸が発射される。

 ゆうこの鏡と炎で、マミの砲撃を強化した融合魔法。それが──黒火輪壊(サージエルド・)終幕射撃(ティロ・フィナーレ)

 ドゴォォオオオオンと激しい音を立てながら、委員長の魔女の全身が弾丸に押し潰され、爆発炎上した。

 同時に結界も晴れていく。そこは夕焼けに染まるビルの屋上だった。

 変身を解除したマミとゆうこは、ハイタッチを交わした。先に言葉を発したのはゆうこだった。

 

「バッチリ決まったわね、マミ!」

「えぇ! ゆうこの魔法も、強くて素敵ね! ネーミングセンスも最高!」

 

 するとゆうこの顔が赤く染まった。

 

「ね、ネーミングセンスは余計だわっ! ふと思いついた名前を魔法につけてるだけよっ! ちゅ、中二病じゃないんだからねっ!」

「あらあら。ふと思いついてそれなら天才じゃない? 私なんて、わざわざネット辞書で色々調べて名前付けてるもの」

 

 二人はクラスこそ違うが、通う学校も学年も同じだった。故に、魔法少女としてはマミの方が先輩で師匠にあたるが、ゆうこが十分戦えるようになっている今では呼び捨てのタメ口で話せる間柄になっていた。

 するとそこへ、パチパチという拍手が聞こえた。

 短い銀髪に青い眼をした少女。ゆうこの双子の妹であるともりだ。心臓病は治り、すっかり元気になっている。先ほどまで、ゆうこの鏡を足場に、マミのリボンに守られて結界内で観戦していたのだった。肩にはキュゥべえが乗っている。

 

「お疲れ様。かっこよかった」

 

 そう微笑むともりに対し、ゆうこが軽口を叩く。

 

「ともり。それって勿論、姉である私のことよね?」

「えー? 先輩で師匠である私のことじゃないかしら?」

「どっちも」

 

 マミやともりもそう続き、笑い合った。

 するとそこへキュゥべえが口を挟む。

 

「もし ともり が魔法少女になったら、マミや ゆうこ よりずっと強くなるよ。カッコ良さは分からないけどね」

 

 前世での銀水聖海の命運をかけた最終決戦では、転生(シリカ)の秩序が銀水聖海を循環し始める前にサーシャは滅びてしまった。だから、ミーシャの転生体であるともりの方が多く魔力を受け継いでおり、サーシャの転生体であるゆうこの方が相対的に魔力は少なかった。

 だが、魔力が多いからといって、マミも ゆうこ も、ともり をすぐ魔法少女にしたいとは思っていない。

 キュゥべえを睨みつつ、先にゆうこが言った。

 

「キュゥべえ? それにともりも。マミと私で十分魔女は倒せてるでしょ? 私はともりを危険に晒す気はないわ。よっぽどのことがない限り契約しないで欲しいわね」

 

 マミも深く頷いた。

 

「そうね。私も……選択の余地がある間は、きちんと考えて決めて欲しいと思うわ。私やゆうこに、選ぶ余地がなかった分ね」

 

 マミとゆうこは、互いにどういう経緯で魔法少女の契約を交わしたか知っている。家族を失っているマミは、双子の妹を救う為に魔法少女になったゆうこを責める気になれなかった。むしろ共感や敬意の方が近い。

 ともりは、少し俯き加減になってポツリと呟く。

 

「私は本当は……誰かの役に立ちたい。見てるだけなのは辛い」

 

 その呟きは、創造神ミリティアとして、7億年世界を見守ってきたときの想いの残滓だろうか。

 するとゆうこは、溜息をついてから言った。

 

「だったら、私を納得させるぐらい素敵な願いを考えなさい。くだらない願いのために契約したり、私に内緒で契約したりとかは、許さないわよ?」

「……うん」

 

 穏やかに微笑んで、ともりは頷いた。

 転生して魔法少女・玄音ゆうこになったサーシャと、その妹・玄音ともりに転生したミーシャにとっては──。

 この頃が一番、幸せだったのかもしれない……。

 歯車舞台装置の魔女・ワルプルギスの夜が現れるまで、あと4ヶ月を切っていた──。

 

 

 

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
あらすじにも書きましたが、結末が一番書きたいので、中盤はダイジェストでお送りします。

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