(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです 作:生徒会副長
秋になり、ワルプルギスの夜出現まで1ヶ月を切って以降──。
玄音ゆうこ と玄音ともり は見せつけられた。
運命は残酷で、世界は笑ってなどいないと──。
今まで観戦は ともり だけだったのだが、そこに美樹さやかと鹿目まどかが加わる。
さらに、“何故か”キュゥべえとまどかに因縁をつけてくる転入生の魔法少女、暁美ほむらにも注意を払う必要があった。
運命が味方だったなら、ほむらは新しい仲間になったはずなのに。
世界とマミと ゆうこ がもっと優しければ。
「ほむらちゃんと仲良く出来ないかな」
というまどかの言葉や、
「ほむらは悪い人じゃないと思う」
という ともり の声に、もっと耳を傾けていたはずだったのに。
お菓子の魔女・シャルロッテが張った結界の入り口付近で、ほむら と マミと ゆうこ は口論になった。
「今回の魔女は、巴マミじゃ勝てない。今回は手を退いて」
「はぁ? 何その上から目線?」
淡々と無表情で告げるほむらに対し、ゆうこ は機嫌を悪くする。マミだってほむらに疑念を抱いている。
「退く訳にはいかないわ。美樹さんとキュゥべえがグリーフシードの傍で待ってるし、貴女のこと信用してないから」
そこで ゆうこは折半案を出した。
「あー、マミ。それにほむら? じゃあこうしましょう。ほむらが余計なことしないか私が見張ってるから、その間にマミが1人で倒しちゃえばいいんじゃない? もちろんグリーフシードはマミのモノね」
渋々、ほむらはその案を呑んだ。
その結果──。
「ティロ・フィナーレ!」
マミが固定砲台から放った必殺の砲撃は、ぬいぐるみのように可愛らしいお菓子の魔女に当たらなかった。
リボンで拘束されていたはずのお菓子の魔女は、脱皮して大蛇のような姿となり、マミに襲いかかる。
絶体絶命の瞬間を救ったのは──暁美ほむらだった。
ゆうこ の見張りなど何の意味もなかったと言わんばかりに、瞬間移動したかのようにマミを腕に抱き、魔女の噛みつきからマミを逃がしたのだ。
「今回は間に合ったわね。下がってなさい、巴マミ」
ほむらは強かった。蝶のように舞ってお菓子の魔女の攻撃を避け、蜂が刺すように爆弾攻撃を当てていく。
あっという間にお菓子の魔女が倒され、結界が晴れる。巴マミに残ったのは罪悪感と無力感だ。
「仲間が出来たって、仲間が増えるんだって思って調子に乗って、みんなを危険に晒しそうになるなんて……。私、バカみたい……」
さやかが「私達は好きでついてきたんです!」とフォローするが、マミの心の傷は、それだけで癒えるものではなかった。
「足がすくんで、腰が抜けて……まだ立てないぐらいなの……。ゆうこ。見滝原を、しばらく任せてもいいかしら……。私は最前線を……少し離れようと思うの。暁美さんだって、そんなに悪い人じゃないって分かった今なら……」
ゆうこ は涙をうっすら浮かべながら、マミを抱いて言った。
「分かったわ、マミ……。私は一人でも戦える。私の傍には ともり だっているしね。少しぐらい休んだって、バチは当たらないわ……」
──※──
ゆうこが一人で戦う時間は、そう長くなかった。
美樹さやかが契約したのだ。幼馴染で想い人の、上条恭介を救うために。彼の重い腕のケガを治すために。
さやかと ゆうこ のコンビは順調に戦っていた。前衛のさやかと後衛のゆうこという相性の良さは、マミの戦線離脱の穴を十分に埋めた。
そんなある日、恋の三角関係問題が起こる。
「私ずっと前から、上条恭介くんのことをお慕いしてましたのよ」
さやかにそう告げたのは、さやかの友人で、容姿端麗で、たびたび男子にラブレターを貰うほどのお嬢様。その名を志筑仁美という。
仁美はさやかと自身の間にある友情と、さやかと恭介が幼馴染として重ねた時間に義理立てした。具体的には……。
「私、明日の放課後、上条くんに告白します。それまでに後悔なさらないよう決めてください。上条くんに気持ちを伝えるべきかどうか」
さやかは迷った。自身と仁美の間にある友情、恭介に告白することへの怯え、魔法少女としての使命との葛藤……。
「仁美に恭介を取られるのは嫌なんですけど……。魔法少女って、正義の為に戦ってるじゃないですか。そんな私が、一人の男の子にうつつを抜かすなんて、間違ってるんじゃないかなぁ……って。ゆうこさんは、どう思います?」
相談を受けたゆうこの脳裏には、謎のノイズが走った──。
──これが、最初で最後のキス──
あまりも安っぽい恋の、記憶と言えるほどはっきりしてはいない、朧げに残っている想い。
誰かが自分の目を、まっすぐ見てくれた。
誰かが運命をぶち壊すと、言ってくれた。
恋の続きを、見せてくれた──。
しかし、その恋の続きも、まだまだ安っぽいものだった。
その“誰か”は、髪飾りを変えようが、水着になろうが、儀式の為に裸で同じベッドで寝ようが、『愛しき配下』以上の目で見てくれないのだ。
そんなミクロな想いや感情は置き去りにして、マクロな宿命と戦いばかりが深淵に迫る。
自分の恋は、深淵に至ったのか?
自分の恋に、後悔はなかったのか?
それらの朧げな想いは、ゆうこ にある決断を促した。
「ふざけないで、さやか」
彼女の恋を、応援したい。
自分のような後悔を抱いて、死んで欲しくない。
「魔法少女なんていつ死ぬか分からないのよ! 死ぬ前にファーストキスぐらい済ませたいって思わないの!? バカなのっ!?」
「うぇっ!? き……キス!? ちなみにゆうこさんはファーストキスって……」
「し……してないけど! 私もまだなんだけどね!」
そう即答する程度には、ゆうこ にサーシャとしての記憶は戻っていない。しかし、全く戻っていない訳でもなかったのだ。
「魔法少女だからとか、破壊神だからとか……そんな理不尽な理由で恋も出来ない世界だの運命だのなんて、ぶっ壊してやりたいぐらいよ!」
こうしてゆうこに背を押され、さやかは恭介に告白することを決意する。
それが──最悪の結果を招くとも知らずに……。
──※──
さやかが恭介に告白したであろう日の翌日。
さやかは学校を休み、家にも帰っていなかった。
まどかとゆうこは、必死にさやかを探した──。
すると、夜更けに駅のホームで、ゆうこ はさやかを見つけた。
ゆうこ は息を切らせながら、ホーム座席で項垂れるように座るさやかに声をかけた。
「さやか! どうしたのよ! 心配したわよっ!」
顔を上げないまま、さやかはポツリと呟く。
「……ゆうこ さん。本当に心配したんですか? あたしのこと……」
「あ、当たり前でしょ! どれだけ探し回ったか……」
するとさやかは顔を上げ、ゆうこを見た。
──絶望で真っ黒に染まった瞳で。
「じゃあなんであたしの恋を応援なんてしたんですか?」
「えっ……?」
「ものの見事にフラれたんです、あたし──。恭介はずっと前から仁美のことが好きだったんです。勝ち目なんてなかったんです」
「あ……」
言葉を失うゆうこの眼前に、さやかは自身のソウルジェムを突きつけた。彼女の眼と同じ、真っ黒に染まったソウルジェムを。
「あたしって何の為に魔法少女になったんですか? こんなことなら、恭介の腕なんて治さなきゃよかった。魔女に襲われた仁美なんて助けなきゃよかった。嫌い嫌い。恭介も嫌い。仁美も嫌い。こうなることも分からずに無責任に背中を押したアンタも嫌い。キュゥべえから聞きましたよ、まどか と ともりさん ってすっごい才能があるんでしょ? 魔力を持ってるんでしょ?」
呪いの歌は止まらない。ここに魔王聖歌隊はいないのだから。さやかは捲し立てた、呪いの歌を。
「嫌い嫌い。あたしよりずっと強いのに見てるだけで何にもしない まどかも ともりさんも マミさん も嫌い。何考えてるか分かんない ほむら もキュゥべえも嫌い。運命は残酷で、世界は優しくなんかないし笑ってもいない。こんな世界に守る価値なんてある訳ない。でも──」
さやかはその眼を閉じた。その拍子に、美しい涙が一粒流れた。
「こんな醜い、呪いの歌しか歌えなくなった、自分が一番、大嫌い……! あたしは……救いようがない……どうしようもない……孤独な化け物なんだ……!」
ゆうこの脳裏で、再びノイズが走った──。
弱みを滅多にあらわにしない“彼”が珍しく、寂しげな表情で、自分ではない誰かに頼み込んでいる姿──。
『最期にグラ■■が言っていてな。誰も俺のいる場所まで辿り着けはしない、と。多くの配下に囲まれながらも、この俺は孤独な化け物なのだそうだ。……俺を一人にしてくれるな。止めてくれ、友よ』
ピキッと、卵の殻がひび割れるような音がした。
美樹さやかのソウルジェムが、割れようとしている。その中から絶望を産み落とす為に。
「さやかっ!! しっかりして!! さやか!!」
ゆうこが肩を揺すっても、今更何の意味もない。美樹さやかの全てはもう、終わったのだから──。
「あたしって……ホント馬鹿……」
運命は残酷で、世界は優しくないし笑ってもいない。
世界が優しくて、笑っているのなら──。
美樹さやかが、人魚の魔女と化すことなど、なかったはずだから。
魔法少女が魔女になる様子を遥か遠くのビルから観察していたキュゥべえ──いや、インキュベーターは、こう呟いた。
「この国では成長途中の女性のことを、『少女』って呼ぶんだろう? だったら、やがて『魔女』になる君達のことは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
あらすじにも書きましたが、結末が一番書きたいので、中盤はダイジェストでお送りしました。
まだ書けてませんが、3話もダイジェスト気味、4話からは丁寧に書くかもです。
評価や感想お待ちしています。