(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです 作:生徒会副長
魔法少女さやかのソウルジェムは砕け散り、人魚の魔女のグリーフシードとなった──。
その事実を ほむら の証言と共に突きつけられた少女達は泣いた。まどか も、ともり も、ゆうこ も。ゆうこ が咄嗟に持ち帰った、さやかの脱け殻の前で。
「さやかちゃん! 目を開けてよ……さやかちゃぁぁああああん!!」
まどか はずっとさやかの脱け殻に縋りついていた。
ゆうこ は途中から、ともり の胸を借りて泣いた。
「私が……私が殺したの……! 私が さやか を地獄に叩き落としたのよ……!」
「……そんなことない。ゆうこ は優しい」
自身も涙を浮かべながら、ともり はゆうこ の頭を撫でる。
理屈の上ではともり の方が真実に近いのだ。仁美と恭介が相思相愛で、その事実にさやか が絶望しただけ。ゆうこ が背を押したか否かは関係ない。
無論ゆうこ はそう割り切れない。錯乱する精神は、前世の記憶の断片すらも呼び醒ます。
「もう……嫌よ……! こんなの……! どうして私は滅ぼすことしかできないの!? 私の眼に映るのは、いつもいつも絶望と悲しみだけ! 私が見たかったのは、山とか、花とか、家とか、街とか、恋とか……。恋……。私が……私が……さやかを見たから……! うわぁぁああああん!!」
断片的に蘇ったアベルニユーの記憶と罪が、一層ゆうこ を苦しめる。しかし、そんな ゆうこ を ともりは優しく抱き締め続けた。
「ゆうこ……。大丈夫だから……。大丈夫……」
そんな凄惨な悲劇の現場を、ほむら は一歩離れて涙の一滴も流さず見ている。
暁美ほむらは時間遡行者だ。同じ秋の1カ月間を、何度も繰り返しループしている。魔法少女が魔女になる程度の悲劇はとっくに見飽きている。
しかし、ほむらをして、初めて見る光景が1つある。それは、ゆうこ と ともり だ。この双子は今までのループの中にいなかった。無論、抱き締め合いながら慰めあう光景も。
ほむらは昔を思い出していた。忘れもしない、3周目の世界。最も心通わせた『鹿目まどか』との記憶。
(あのときの まどか も……。今の ゆうこ のように、泣きじゃくっていた。あのときの私は……今の ともり のように、まどか の涙を受け止めていた……)
あのとき。魔法少女がいずれ魔女になる真実を知り、巴マミが発狂した。そのマミを まどか が殺した。
似たシチュエーションではあるが、今回のループは少し違う。
(美樹さやかは死んだけど、まだ巴マミは生きている。杏子も見滝原に顔を出さないだけで生存は確認できている。そしてイレギュラーながら申し分ない戦闘センスがある玄音ゆうこ と、未契約の玄音ともり……)
絶望に沈む三人の少女と さやかの死体とは裏腹に、ほむらは 仄かな希望を胸に夜闇へ去っていく。
(ここから上手く立ち回れば……。今度こそ奴を倒せるかもしれない……。ワルプルギスの夜を……! そして まどか……。今度こそ貴女を救ってみせる……!)
──※──
翌朝。ゆうこ、ともり、まどかの三人が集まっていた。さやか を取り戻す為に──。
「もう一度おさらいするわ……」
実際に戦闘が出来るのは ゆうこ 独りだ。自分を奮い立たせるように、拳を握りしめながら彼女は話す。
「まどか と ともり は私が守るから、二人はさやかに声を掛け続けて。きっと声は……想いは届くわ。あの魔女の中で苦しんでるさやかを救うの。奇跡を起こすことが出来ればきっと……あの人魚の魔女を倒したとき、さやかのソウルジェムが出てくるはずよ。絶望より希望が、憎しみより愛の方が強いって、私達が証明するのよ!」
強い決意を秘めた目で、まどか は「うん!」と頷いた。
しかし……ともり の眼と表情は、暗く沈んだままだ。
ゆうこはそんな妹に言った。
「どうしたの? ともり? やっぱり怖い?」
ともりは首をふるふる振ってから答えた。
「昨日、キュゥべえと──インキュベーターと話した。なんで魔法少女の契約をするのか。どうして魔法少女が魔女になってしまうのか」
「あ、それ、わたしも昨日の夜話したよ……」
まどかも控えめにその言葉に続いた。ゆうこ はまだ知らなかったので、主にともり が話す。
インキュベーターの目的は、宇宙の熱力学的死を回避すること。
本を燃やしたときに得られるエネルギーの質は、本を作る為に費やしたエネルギーの質を下回る。
しかし魔法少女が魔女になったとき得られるエネルギーの質は、魔法少女を育てるのに費やしたエネルギーの質を上回るとのこと。
それらを話してから、ともりは言った。
「ゆうこ がやろうとしていることは、燃えて灰になってしまった本を、元の本に戻すようなもの。インキュベーターが暖を取った後で。本の内容まで忠実に」
じっと、ともり は ゆうこ を見つめて訊ねた。
「あの魔女は……人魚の魔女はもう……。さやか が さやか として生きる為に必要なモノを、持っていないかもしれない。インキュベーターが既に、持ち去ってしまったのかもしれない。愛や想いや、根源や火露を」
まどか は目を丸くして、ぱちぱちさせてから 訊ねた。
「ともり さん。ホロ……って、何?」
今後は双子の姉妹が目をぱちぱちさせる番だった。
戻りかけた記憶が、無意識にミリティア世界の語彙を発していたのだ。
「たぶん、言い間違い……。気にしないで」
記憶が戻りきっていないので、ともり はそんな返事しか出来なかった。
「ともり……。じゃあ何?……諦めろってこと……?」
「……せめて」
哀しげな眼で姉を見つめて、ともりは訴えた。
「せめて……。ゆうこ だけは、生き延びてほしい。たとえ、さやか がもう、消えていたとしても。私とゆうこは、まだ生きてるから。私はゆうこ、ゆうこ は私だから」
「……頭の片隅には置いておくわ。でもね」
スッと眼を閉じて、ゆうこは再び拳を握った。
「ひとまず、諦めずにぶつかっていくわ! 私は……さやか に償わないといけない! 謝らなきゃいけない! 傍にいてあげなきゃいけない! もう さやか は消えたって、確信が持てるまでの間でいい! 二人とも……力を貸して!」
今度こそ、まどか と ともり は深く頷いた──。
──※──
廃工場の敷地内で、ゆうこ達一行は人魚の魔女の結界を見つけた。全体としては暗く、時としてライブハウス、時として水族館へと姿を変える結界内を、三人は歩いていく。
歩いていく最中に、まどか が話を切り出した。
「ほむらちゃんも、手伝ってくれないかな……」
「マミを助けてくれたし、魔女退治はちゃんとやってるから……悪人じゃないんだろうけどね」
ゆうこ はそう返事してから、逆にまどか に聞き返した。
「私は連絡先知らなくて……まどかも知らないのね? 昨日交換しとけばよかったかしら」
「ご……ごめんなさい。わたしが交換しとけば良かったですね。クラス一緒なんだし……」
「まぁしょうがないわ。ほむらって得体が知れないし」
未だに三人は、ほむらの真意を掴めずにいる。
悪人ではない点については、人を見る眼に優れた ともり からも太鼓判を押されている。今まではキュゥべえを殺そうとする行為は悪逆に見えていたが、今考えれば妥当な行為に思える。
しかし目的が分からない。まどか と ともり の才能は互角なのに、何故かほむら は まどか ばかり目の敵にする。魔法少女がいずれ魔女になる事実も知っていた。
自分がもっと上手く立ち回っていれば、ほむらは味方になってくれていたかも……と、まどかは自分を責めた。だからこう ゆうこ に訊ねた。
「ねぇ、ゆうこ さん」
「んー?」
「いつも誰かにばっかり戦わせて、何もしない わたしって、卑怯なのかな……。どんくさいし、何の取り柄もないし、ともり さん や ゆうこ さん と違ってバカだし……。気が利かないから、ほむらちゃんとも仲良く出来ないし……」
「そんなことはない」
反論したのは ともりだった。静謐な眼で まどか を見つめて言う。
「見続けること、待つことだって、大切。動けば動くほど、蟻地獄のように状況が悪くなることもある」
「さやか のことだって、そうよね。私は、勝手にさやか を想って余計な応援をして、結果、勝手に苦しんで悲しんでる」
ゆうこが補足した後、一瞬考えてから、また ともりが話す。
「例えば、さやかの蘇生や時間の巻き戻しを、私か まどか がインキュベーターに願い祈ったとする」
天啓を得たように、まどかは表情を明るくする。
「そ、そんな凄い願いも叶うの!? じゃあ私が契約すれば……!」
「「それはダメ」」
双子の姉妹が、声を揃えて言う。ゆうこから先に理由を話した。
「そんなことしても、いずれ まどかが魔女になるだけよ。人魚の魔女より恐ろしい魔女にね」
「そっか……。そうだよね。ごめんなさい、キュゥべえからも、聞かされてたのに……」
さらにともりが補足した。
「希望と絶望、破壊と創造、悲劇と笑顔は、ある程度整合性が取れている。それが秩序。宇宙は熱的死に向かっているという意味では、この宇宙は破壊や絶望の方が少し強い。地球単位で見ても、インキュベーターに奪われている分、やっぱり絶望や悲劇の方が少し強い」
ゆうこ は 拳を握り締めて言った。
「じゃあ私が今からやろうとしてることは……。その摂理に歯向かう行動ってワケね。上等だわ……」
「……もしかしたら、あるかもしれない」
ともり が言った。
「私と まどか が、上手に願いを叶えることで、皆が幸せになれる方法が。世界を、秩序を、優しく創り直す方法が。……あのときみたいに」
「あのとき、ねぇ……」
まどか は訳も分からず、双子の姉妹を交互に見る。
歩いている内に、気づけば廊下の終わりにある扉の前まで来ていた。
人魚の魔女はおそらく——この向こうにいる。
扉を開ける前に、ゆうこ は振り返り、ともり を見つめて言った。
「ともり はどこまで思い出したの?」
ふるふると、ともりは首を振った。
「顔も名前も……思い出せない」
「じゃあ私と一緒ね」
我慢ならず、まどかは訊ねた。
「あの……お二人とも、何の話をしているんですか?」
双子の姉妹はまどかに顔を向ける。先にゆうこ から話した。
「多分なんだけどね。私と ともり には、前世の記憶があるの」
「……えぇっ?」
驚くまどか に対して、コクコクと、ともりが頷く。それから姉の話を引き継いで話した。。
「名前も顔も覚えてないけれど、とても強くて優しい人がいた。その人から、素敵なプレゼントを貰った気がする。その人は言ってた。願うな、祈るなって。ただ自分の後ろを歩いて来いって。だから私はまだ契約してない」
「私もその声聞いてたはずなんだけど……。ともり を助ける為に契約しちゃった。もし会ったら怒られるかしら。私ね、その人に恋をしていた気がするの。でも告白する前に死んじゃった。それもあって、さやかを応援しちゃった結果が、御覧の有様なんだけどね」
自嘲気味にゆうこ はそう話す。それに対し、まどか は微笑みながら言った。
「もしそんな強くて優しくて素敵な人がいたら……。きっと皆、幸せにしてくれたのに。さやか ちゃんも、マミさんも。ゆうこ さんも、ともり さんも。わたしも、ほむらちゃんも」
ふふっと、双子の姉妹は笑顔を浮かべた。顔も名前も忘れた誰かを懐かしむように。
しかしすぐ、ゆうこ は眼光を鋭く研ぎ澄まして、自分に言い聞かせるように言った。
「でもまぁ、せめて……。さやかぐらいは、私が助けなきゃ! さもないと、『あの人』に向ける顔がないわ!」
ゆうこは、ドアノブに手をかけた。
「二人とも、行くわよ!!」
まどか と ともり は、強く頷いた──。
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