(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです   作:生徒会副長

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今まで杏子ポジをゆうこ(サーシャ)が取ってたので、杏子ちゃんやっと登場です。


第5話/杏マミはとっても嬉しいなって

 

 

 人魚の魔女になった さやか を倒した2日後──。

 ワルプルギスの夜の討伐会議は、ほむら の家で行われた。

 集まったのは、暁美ほむら、巴マミ、玄音ゆうこ、玄音ともり、鹿目まどかの5人と──もう一人。

 赤い髪をポニーテールにまとめ、ホットパンツを履いた快活そうな魔法少女、佐倉杏子だ。

 その杏子が、会議を主導するほむらに苦言を呈した。

 

「ほむら。さっきから言ってる統計って何だよ? この街にワルプルギスの夜が来たなんて話は聞いたことねぇぞ? なぁマミ」

 

 かつての師であり、今は袂を分かち縄張りも別であるマミに対し、杏子は気安い言葉でそう言う。

 

「そうね……。私も、キュゥべえから『来る』としか聞いてなかったわ。具体的な場所まで分かってるのは不思議ね……」

「一時の雇い主と傭兵の関係でしかないとはいえさ。主導してんなら根拠なり手の内なりもうちょっと教えてくれてもいいんじゃねぇの?」

 

 ほむら は溜息をついてから言った。

 

「余計な詮索をせずに、ワルプルギスの夜討伐に参加してもらいたかったわ。そのつもりであれだけの大金を積んだつもりよ」

 

 佐倉杏子の一家は離散している。衣食住の確保にしばしば魔法を使う場合があるのだ。

 ここに目をつけたほむらは、銃砲火器を集めるのと同じ要領で集めた現金で杏子を買収したのである。

 この試みは上手くいったかと思われたが……暗雲が立ち込め始めた。「奴」の登場によって。

 

「僕としても、情報の共有はきちんとしておくことをオススメするよ、暁美ほむら」

 

 白い生物キュゥべえ──インキュベーターは、全くの無表情でいけしゃあしゃあと言ってのけた。

 

「認識の相違から生じた判断ミスは、信頼関係を破壊してしまうようだからね」

 

 杏子以外の5人が、嫌悪感や憎悪の目を向ける。『お前が言うな』と訴えるように。

 杏子は1人だけ疑問を抱いた。

 

(なんでキュゥべえとコイツら仲悪いんだ? ましてマミまで……)

 

 ほむらが殺意を込めて言う。

 

「お前の指図は受けない。さっさと失せなさい」

「うーん。でもせっかく来たし、仕事だけ済まさせてよ」

 

 ほむらのことなど意に介さぬように、キュゥべえは まどか と ともり に言った。

 

「まどか。ともり。君たちの内どちらかが僕と契約してくれたら、ワルプルギスの夜なんて瞬殺出来るほどの魔法少女になれるよ? こんな会議に顔を出す必要は──」

「ふざけないで!!」

 

 落ち着いた様子のともり とは対称的に、まどか は激昂した。

 

「契約するわけないでしょ! 出てってよ!」

 

 キュゥべえは「きゅっぷい」と溜め息をついてから少女達に背を向けた。

 

「やれやれ。当日になってワルプルギスの夜の強さを目撃しないと、契約してくれなさそうかな。この場は引き下がろう。また会おうね」

 

 そう言い残し、キュゥべえは去っていった。

 極限まで空気が悪くなった中、杏子が訊ねた。

 

「てめぇら あたし に何か隠してるだろ。あたし もそこの……まどかだったか……が契約するのには反対だが、悩む様子もなくキュゥべえを追い出すのは流石におかしいだろ。マミにしたって、さっきキュゥべえに向けてた目線ヤバかったぞ? 喧嘩ってレベルじゃねぇ」

 

 杏子の目線がほむら に向けられた。

 

「ほむら。隠してること洗いざらい全部吐け。吐けないなら あたし はもう抜けさせてもらう。言っとくが前金は返さねぇぞ」

 

 マミが泣きそうになっている一方で、ほむらは思考した。過去のループと照らし合わせ、杏子の性格を分析しながら。

 

(さやかと面識がないこのループの杏子になら……話してもどうにかなるかしら……。このまま抜けられるよりは……)

 

 そう結論付けたほむらは、こう話を切り出した。

 

「とりあえず、なぜ皆がキュゥべえを蛇蝎の如く嫌っているのか。それについては話してあげるわ」

 

 ほむらは話を進めていった。ソウルジェムが魂を物質化したものであること。魔法少女はいずれ魔女になるということ。キュゥべえの正体はインキュベーターという地球外生命体で、その目的は宇宙の熱的死を回避することだということ……。

 マミと ゆうこ と まどか は、さやかの死を思い出して再び泣いていた。

 聞き終えた杏子は、顔を青褪めさせて、頭を抱えて言った。

 

「どういうことだオイ……。あたしらはキュゥべえの家畜か燃料だっていうのか……?」

 

 返事をする者はいない。その例えが合っていたとしても、認めたくはない。

 しばらくの沈黙を経て──杏子は言った。

 

「……ちょっと休憩しようぜ。あたしはマミと二人で話がしてぇ。んでもってほむら……」

 

 杏子は鋭い目で言った。

 

「キュゥべえの秘密は分かったが、あんたの秘密はまだ聞いてねぇぞ。あたしとマミが戻って来るまでに話す内容決めとけ」

「……善処はするわ」

 

 返事を聞くと、杏子はマミを連れて部屋を出た──。

 

──※──

 

 

 月明かりの下、ほむらの家の玄関前で、杏子とマミは壁に背を預けて隣り合わせに座った。

 

「マミは平気なのか」

 

 杏子に聞かれ、マミは力なく首を振る。

 

「……平気な訳ないわ」

「まぁ……そうだろうな。ずっと正義の味方をやってたマミには……キツイわな」

「そう言う佐倉さんは?」

 

 頭に手を当てながら、杏子は苦し紛れといった様子で答えた。

 

「そりゃあキツイけどよ……。あたしの場合は、勝手な願い事をして勝手に希望を与えた結果、それに見合うだけの絶望を家族に与えちまったからな。その規模がめちゃくちゃデカくなったと思えば……まぁ。これじゃあ希望と絶望でプラマイゼロどころか、絶望の方がデカい気がするけど」

 

 他人の為に祈り、他人の為に魔法を使った代償は、もう十分払ったと杏子は思っていた。払い過ぎた釣り銭を取り戻すため、私利私欲に魔法を使ってきた。

 しかし運命は、インキュベーターは、むしろ『もっと絶望を払え』と言ってきているようだった。杏子からすればうんざりする話だった。

 

「マミのことだから、こんな真実を知っちまったらすぐ死ぬかと思ったが……。まだ生きてるんだな?」

 

 杏子はマミにそう訊ねる。正義の魔法少女として誇りを持っていたマミが、いつか魔女になるという運命には耐えられないだろう……というのが、杏子の見立てだった。

 

「最初は……死んじゃおうかと思ったわ」

 

 マミがそう答えて、杏子の見立てが合っていたことを証明する。しかしマミはまだ生きている。

 

「でもね。ゆうこ と ともり のことを考えたらね。もうちょっとだけ、ワルプルギスの夜を倒すまでは、生きてみようかなって思ったの」

「ゆうこ と ともり……。あの金髪ツインテと、銀髪の未契約のヤツか」

「えぇ。2人とも、素敵な友達よ」

 

 そこからマミは明るく話し始めた。ゆうこ やともり と過ごした日常を。

 同じ学校の同じ学年ゆえに、昼食を一緒に食べたり、一緒に宿題をやったりしたこと。

 魔法少女としての ゆうこ が頼もしい仲間であること。

 天才としか言いようがないほど賢く記憶力が良い ともりのお陰で、勉強や必殺技の開発が捗ったこと。

 ゆうこ が魔法少女になった経緯と、その戦いぶり……。

 

「たとえソウルジェムを砕いて死ぬんだとしても、二人と過ごした日々は嘘じゃなかったんだって、意味のあるものだったんだって証が欲しくて……。私は、ワルプルギスの夜を倒すまでは、戦ってみようかと思ったの」

 

 マミはそう話を締め括った。

 

「どいつもコイツも、お人好しばっかりだな……」

 

 呆れながら、杏子はそう言葉を紡いでいく。

 

「ゆうこ って奴。双子の妹とはいえ、他人の為に魔法少女になっちまって。挙げ句、なった後は『世の中の悲劇と理不尽を滅ぼしてやる』って言いながら戦ってきたのか。マミの分までよ」

 

 コクンと、マミは頷く。シャルロッテに負けそうになって以降しばらく休んでいた負い目を噛み締めるように。

 杏子はどこか遠くの星を見ながら呟いた。

 

「『世の中の悲劇と理不尽を滅ぼす』か……。ちょっと……かっこいい言い回しだな」

 

 ぱちぱちと瞬きして、マミは杏子を見た。

 

「マミ、一旦戻ろうぜ。その ゆうこってヤツと、話がしてみたい」

「え? まぁ、いいけど……」

 

 月明かりを背に、2人はほむら達が待つ部屋と戻っていった──。

 

──※──

 

「あら、おかえりなさい。こっちは全て話す覚悟は出来たわ」

 

 戻ってきたマミと杏子を、ほむらはそう迎えた。それに対し、杏子が言った。

 

「……その前に、ゆうこ に聞きたいことがある」

「え? 私?」

 

 杏子はゆうこ を見据えて問いをぶつけた。

 

「あんた、そこに座ってる妹の為に契約したんだろ?」

「まぁ自分の為でもあるけど、そうね」

「そのせいで妹が悲劇に見舞われたり、絶望したりしたら、どうするのさ? あんたの祈りは、無駄に妹を苦しめただけだったとしたら?」

 

 ゆうこ は眼を閉じ、深呼吸して考えてから問い返した。

 

「そんな運命はぶち壊してやる──なんて答えじゃ、納得しないのよね?」

「……そうだな」

 

 今度はこめかみに指を当て、ゆうこは数秒考えた。ともり が惨たらしい死を迎える光景と、その先に待つ未来を何とか無理やり想像し、ゆうこは答えた。

 

「魔女化……しそうだけど……。もし、しなかったら……。生き延びたら……。今まで通り、戦うかしら……」

「……なんでまた?」

「私は、ともりを救う為に魔法少女になったことを、後悔なんてしないし、してないわ。ともりの分まで生きて、戦って、悲劇や理不尽を滅ぼして、1人でも多くの人を笑顔にして、私自身だって笑ってやるって……。きっと、そう思うわ……」

 

 ポカンと口を開ける杏子を見つめ、ともり は言った。

 

「私も、ゆうこ と同じ」

「ん? あんたも?」

 

 杏子に目を向けられたともりは、コクリと頷いて、力強く言った。

 

「ゆうこ がもしワルプルギスの夜に負けてしまっても、『ゆうこ を生き返らせて』なんて単純な願いでは、契約しない。私のせいで ゆうこ が死んだなんて思わない。ゆうこ の人生や戦いは無意味なんかじゃなかったって、幸せな奇跡だったって、言い切ってみせる。私が契約するとしたら、全てを救って、本当に優しい世界が創れると、確信したときだけ」

「悲劇を、滅ぼす……。優しい、世界……」

 

 杏子の脳裏に過ぎったのは、亡き父親の姿だった。新聞を読む度に世の悲劇と絶望に涙していた。教典にない新しい信仰を興して、新しい世界を創ろうとした、優しすぎる人だった。

 

(私は今でも、親父は間違えちゃいなかったと思ってる。私の勝手な祈りで壊れちまっただけで……。こいつらが言ってることと、親父が言ってることに、それほど差があるとは思えない……)

 

 杏子はともりに訊ねた。

 

「ともり……だったか。あんたの言う、優しい世界って、どんな世界だ? 全知全能の神様がいて、大抵のことはソイツが何とかしてくれて、皆がその神様の言いなりなればいいのか?」

「……まだ考え中だけど、少なくともそんな世界じゃない」

 

 数秒考えてから、ともりは答えた。

 

「神様も人間も魔法少女も、間違えることはあると思う。やり直しが許される世界だと良いと思う」

「やり直し……? そう、か……。そうか……」

 

 自分に言い聞かせるように数回頷いてから、杏子はマミの方を向いて言った。

 

「決めたぜ、マミ。あたしは……ワルプルギスの夜と戦う」

 

 マミが「えっ……!」と驚くのにも構わず、杏子は強い決意がこもった口調で話した。

 

「一度限りのやり直しさ。ワルプルギスの夜を倒すときだけ、あたしは正義の魔法少女をやり直すし、マミとのタッグも復活だ。ワルプルギスの夜っていうラスボスをぶっ倒して、侵略宇宙人キュゥべえの陰謀を台無しにする。愛と勇気が勝つストーリーって、元々あたしが憧れてたのって、そういうのだと思ったのさ」

 

 にぃっと得意げな笑顔を見せた杏子に対し、マミは目を潤ませて抱きついた。

 

「うぉ!? なんだぁマミ!? みんなが見てる前で抱きつくヤツがいるかっ!」

「ありがとう……佐倉さん。ずっと心の残りだったの。あなたと仲違いしてしまったこと……。人生最後の瞬間に、仲直りして、また一緒に戦えるなんて、夢みたいね」

 

 杏子は「ははっ」と呆れ笑いをして、マミの抱擁を解いてから言った。

 

「気が早いなぁマミは。まだワルプルギスが来るまで5日あるし……。死んじまう前に、祝勝会ぐらいは出ろよな」

「えぇ……。そうね……」

 

 杏子との抱擁を解き、マミは涙を拭いつつ、微笑んで話した。それは夢のように、嘘のように。

 

「祝勝会で、美味しい紅茶とケーキを食べましょう? 昔は佐倉さんも、よく私の部屋で食べてたじゃない」

 

 それに合わせて杏子もニヤリと笑った。

 

「あぁ。ありゃ絶品だったさ。じゃあ約束だぞ。マミが淹れた紅茶じゃなきゃ、あたしは飲まねぇからな」

 

 ゆうこが微笑みながら言った。

 

「ともりのキノコグラタンもあった方がいいんじゃないかしら? 絶品だもの」

 

 ともりがコクリと頷いて、「……がんばる」と微笑んで応じた。

 

「ほむらちゃん。ワルプルギスの夜に勝って、きっと皆で、祝勝会、出来るよね……?」

 

 不安げにまどか が訊ねてきたのに対し、ほむら は淡々と答えた。

 

「まぁそうね。出来るに越したとはないわ」

 

 そして一呼吸置いてから、ほむらは言った。

 

「“巴さんの紅茶とケーキ”が美味しいのは、私もよく知ってるから」

「……え?」

 

 巴マミには、暁美ほむらにケーキを食べさせた記憶など、なかった──。

 

 

 




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