(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです 作:生徒会副長
「和睦……って……。何言ってるの、ともり さん……? こんなの、絶対おかしいよ!」
そう訴えるまどかを尻目に、ともり とインキュベーターは見つめあう。そしてインキュベーターが声を発した。
「ともり。和睦という言い方は語弊があるね。インキュベーターと人類は、理想的な共栄関係にあるというのが僕の認識だ」
「理想的!? 共栄!? ふざけないで!!」
まどかは声を張り上げて訴えた。ともりもインキュベーターも彼女を見る。
「あなたのせいで、さやかちゃんが死んで、ゆうこ さんも マミさんも杏子ちゃんもほむら ちゃんもいっぱい苦しんでるんだよ!? いずれ魔女になっちゃうかもしれないんだよ!? あたしからすれば、インキュベーターなんて詐欺師で殺人鬼で侵略者だよ!!」
しかし諭すように、ともりは淡々と言う。
「まどか。インキュベーターとの契約がなければ、私やマミは死んでいた。上条という人の腕の怪我は治らなかった。インキュベーターの全てが悪い訳じゃない」
「うっ……。でも……。うぅ……」
まどか は咄嗟に言い返せなかった。すかさずキュゥべえが言葉を重ねる。
「ともり は話が分かるから助かるよ。魔法少女を苦しめているのは僕達じゃない。不条理な願いを叶えた結果、自ら理不尽な歪みや災厄を招いているだけなのさ」
「……現状はそうだと、今の秩序は優しくないと認めた上で、聞きたいことがある」
まどかが目を潤ませる一方、再び ともり とインキュベーターは見つめ合った。
「答えられる範囲で答えるよ」
「あなた達の至上命題は、宇宙の寿命を伸ばすこと。宇宙の熱的死を回避すること」
「そうだね」
「それが達成できるなら、主導権を私やまどかが握っても、問題はない? 笑顔や優しさを元にした秩序やルールでも許容できる?」
数秒思考してから、インキュベーターは答えた。
「部分的に主導権を渡す程度ならいいけれど、制御できないのは困るね。欠陥が見つかったり暴走したりした場合に、困るじゃないか」
「笑顔と優しさは?」
「理解できないからどうでもいいよ。結果として宇宙の寿命が伸びるのなら、魔法少女が絶望しようと笑っていようと関係ない。魔女化させるのが一番効率がいいからそうしてるだけだ」
まどかが「ひどいよ……あんまりだよ……」と呟き、ともりは 悲しげに目を細める。しかしともりは戸惑いを払うように首を振って、次の質問をした。
「私が魔女化して、貴方達に莫大なエネルギーをもたらしたと仮定する。それで宇宙の熱的死は永遠に回避される? それとも将来的に、第二第三の鹿目まどかや、玄音ともりを、貴方達は必要とする?」
また数秒思考してから、インキュベーターは答えた。
「後者だね。遠い未来に、まだ抜本的な解決策が見つかっていなければ、僕達は第二第三の鹿目まどか や玄音ともり を追い求めるだろう」
ぎりっと歯軋りして、まどかはキュゥべえを睨んだ。
「また騙したんだね……。あたしに、『宇宙を救う為に死ぬ覚悟が出来たら契約してね』って言ってたクセに……!」
「例えばだが、15歳で死ぬはずの少女が20歳まで生きられたら、それは救済と言えるだろう? 15兆年後に滅びるはずの宇宙が20兆年後も続いていたら、それは立派な救済じゃないか」
「そんな言い方やめてよ!」
悪びれずに答えるインキュベーターに対し、まどか は怒りをぶつけた。しかしインキュベーターは怒りという感情が分からず喋り続けた。
「あぁ。ちなみにだが、君達の素質がいくら優れていても『宇宙の寿命を永遠にする』という願いは叶わないよ。具体的なメカニズムのイメージがあれば叶うかもしれないけれど。あとはまぁ、君達個人を不滅の存在にする願いなら叶うかもしれないね。最終的には生きたまま魔女化するかもしれないけど。前例がないからやってみないと分からない部分が多いね」
「……私達は、その場しのぎの、消耗品……?」
小さな声で、しかし咎めるように ともりは 問いかける。それに対しインキュベーターは「やれやれ」と呆れたような態度を見せてから言った。
「君達人間と、牛や豚などの家畜だって似たような関係だろう? 君達人間がいくら牛肉や豚肉を食べたって、不老不死にはならない。しかし牛や豚は、人類の繁栄に大きく貢献している。そして牛や豚は、生存競争から隔離されて繁殖できている。先程も言った通り、理想的な共栄関係なんだよ。人間と家畜も、インキュベーターと人間も」
インキュベーターは淡々としていた。まどか は怒りと悲しみで声を震わせながら呟いた。
「……信じられないよ。あなたさえいなければ、きっと地球は平和で……みんな、幸せに生きてたよ……」
「信じられないなら、見せてあげようか?」
インキュベーターの目が妖しく赤く光る。その光は、まどか と ともり の脳内に直接、あるイメージを叩きつけた。
「人類とインキュベーターが歩んできた歴史をね──」
二人の少女の脳裏に、イメージが直接投影される。
ある少女がいた。「寒さや暗闇から村を救いたい。私たちが火を自由に使えるようにしてほしい」と願い、祈りを捧げた。彼女の祈りは、火を扱う技術を急速に広め、人類は調理や暖房、照明、そして工作の基礎を築くことができた。
「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきたんだ──」
しかし、火の技術が争いに使われ、敵対する村の放火で彼女の家族が焼き殺されたとき、彼女は絶望し、魔女と化した。魔女となった彼女は、自らの故郷も敵対する村も──全てを火の海に包み込んだ。
「数えきれないほど大勢の少女が、僕たちに願って、祈って──」
また、別の少女がいた。「私の国を飢えから救ってほしい。豊かな収穫が得られる大地が欲しい」と願い、祈りを捧げた。その祈りは土壌を改良し、国の農耕技術は飛躍的に向上、移住者も増えていった。
「希望を叶え、時に歴史に転機をもたらし──」
しかし、増えすぎた国民、豊穣な大地を求める他国の侵略など──人間の欲望は、彼女の才能と願いの限界を超えていった。人間の醜さに絶望した彼女は、魔女と化した。魔女は中毒性のある薬草を国中にばら撒く。それは一時的な幸福感と満腹感を与えるが、やがて人格を破壊し、耐え難い飢餓感をもたらす。呪いの薬草により、彼女が救いたかった国は滅びた。
「そして最後は皆、絶望に身を委ねていった──」
まどか と ともりは、歴代の魔法少女たちが絶望に飲み込まれていく姿を、まざまざと見せつけられた。何人も、何十人も、何百人も……。
──皇帝陛下と結婚して、陛下から愛されたい!
そんな社会的欲求の願いを叶えた魔法少女がいた。結果、かつて名君と呼ばれた皇帝は暴君となり、彼女への愛の為に国を傾けた。彼女は皇帝を正しい道へ戻そうとしたがそれは叶わず、皇帝は革命軍に討たれた。最愛の人を死なせ王朝を滅ぼした罪悪感に耐えきれず、彼女は魔女となった。
──私の歌声を、皆に認めさせたい。
そんな承認欲求の願いを叶えた魔法少女がいた。ある時、彼女は気づいてしまう。魔法で作り上げた喝采は虚構であり、自分がどんな曲をどんな風に歌っても評価されるという事実に。自分のことも、音楽のことも嫌いになった末、彼女は魔女になった。
──私の知性を、極限まで高めてくれ。
そんな自己実現の願いを叶えた魔法少女がいた。彼女はある時、魔法少女が魔女になる運命と、宇宙がいつか熱的死を迎えるという秩序に気づく。彼女は、己の知性をすべて費やしてその運命と秩序に挑戦する。最後は、自分にはこれらを覆せないことを論理的に証明してしまい、絶望に呑まれ、魔女になった。
「条理を超えた願いは、それに見合う絶望をもたらす。祈りから始まった物語は呪いで終わる。これまで数多の魔法少女が、このサイクルを、運命の歯車を回し続け、我々インキュベーターに感情エネルギーを、人類の歴史に恵みをもたらし続けてきたのさ」
まどか は我が身に絶望が降り注いだかのように泣き崩れ、ともり はポロポロと涙を零した。
まどかは嗚咽と共に糾弾した。インキュベーターを。
「ひどいよ……! ずっとあの子達を見守りながら、あなたは何も感じなかったの!? みんながどんなに辛かったか……なんで分かってあげようとしなかったの!?」
カクンと、インキュベーターは首を傾げた。
「それらを理解出来るだけの感情が僕達にあれば、最初からこんな星まで来る必要はなかったんだけどね?」
涙を拭い、ともりは小さな声で言った。
「……参考になった。……ありが、とう……」
「どういたしまして」
「契約については、また……検討する……」
それを聞いたインキュベーターは、二人に背を向けて言った。
「十分に検討するといい。ただ、ワルプルギスの夜を確実に倒したいなら、それより前に契約することをオススメしておくよ。じゃあね」
窓から飛び降りて、インキュベーターは去っていった。それを見届けた直後、まどか は ともりに泣きついた。娘が母に、妹が姉に泣きつくかのようだった。
「酷いっ! 酷過ぎるよぉ!!」
「うん……」
「許せないっ! 絶対……許せないのにっ! 全部全部ぶっ壊したいのに! あたし……何もできない……!」
「うん……」
可愛らしい、夢に溢れていたはずの部屋に、まどかの慟哭が響く。怒りと悲しみと憎しみがこもった涙を、ともりは優しく受け止めた。ともり自身も涙をポロポロ流しながら。
「うぅ……ひっぐ……」
何分経っただろうか。まどかは嗚咽を洩らしていたが、それも徐々に落ち着いていく。まともに話せるようになったとき、まどかは相談した。
「ともりさん」
「何?」
「和睦なんて出来っこないよ。全部をぶっ壊して──魔法少女を助けられる願い事、思いついたよ……」
「……聞かせて?」
ともりの静謐な眼に、まどかの力強い眼光がぶつけられた。
「過去、現在、未来から、全ての魔女を生まれる前に消し去る。私自身の手で」
ハッと、ともりは眼を見開いた。彼女の頭脳は、その願いの、希望の、途方も無さに気付いた。
「……発想としては、とても巧い……」
「どこが巧いか、わかる?」
「その願いなら……あなたのソウルジェムが生み出す魔女すら、消し去ることが出来る……」
「ウェヒヒ。スゴいでしょ」
しかしその後、ともりは悲しげに目を臥せてから問いかけた。
「……主に3つ、不安な点がある」
「うんっ。聞かせて、ともりさん」
「1つ目。魔女という概念がなくなった世界では、魔女を消し去る祈りを捧げた魔法少女のことを、きっと誰も覚えていない。あなたの願いと存在に矛盾が生じる。鹿目まどかという個体は、この世界から永遠に消えてしまう。未来永劫、魔法を滅ぼす秩序としてしか存在できなくなるかもしれない……」
少し目を閉じてから、にっこり微笑んで、まどかは答えた。
「それでもいいんです。そのつもりです。希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、そんなのは違うって、何度でも言い返せます。いくらでも戦えます。ほむらちゃんだってずっと、あたしの為に戦ってきたんだから」
「……2つ目の不安な点」
ともりは躊躇いつつも、静かに問う。
「宇宙の熱的死の問題が、解決できていない。最悪の場合、宇宙は熱的死を迎える。あなたは真っ暗で冷たい宇宙で孤独に、救うべき魔法少女も、滅ぼすべき魔女もいない中、永遠に彷徨い続けることになるかもしれない」
「うっ……」
滅ぼす相手すらいなくなる──そんな事態までは想定していなかったか、まどかはビクッと震えた。そこへ更に、ともりは指摘をする。
「そして3つ目。宇宙の熱的死の問題を解決できていないということは……」
「──キュゥべえと、戦うことになるかもしれないんだ……」
まどか と ともりは想像した。まどかの祈りによって全ての魔女が消えた後、遠い未来でインキュベーターが何をするか……。
『ソウルジェムが完全に濁り切ってくれれば、莫大な感情エネルギーが手に入るのになぁ。それより前に“何か”が介入してくるんだよね。このメカニズムは、もっと詳しく調べるべきだね』
魔女の存在を知らずとも、消えたはずのまどかの存在に気付くキュゥべえの姿を。
或いは遠い未来──。
『私の願いは、宇宙を熱的死から救うこと! この偉大なる正義の為なら、魔法少女のソウルジェムが濁り切ってしまっても仕方がないわ! そうよね、キュゥべえ!!』
キュゥべえが言葉巧みに第二第三の鹿目まどか や 玄音ともりを騙し、まどかを否定する願いで契約をさせてしまうかもしれない。
ストンと、まどかは肩を落とした。
「うーん。いい願いだと思ったんだけどなぁ……」
「……私が間に合わなかったら、その願いで契約してもいいと思う。私が挙げた不安点は、あくまで悲観的観測」
ぱちぱちと瞬きしてから、まどかは聞いた。
「間に合う……? それって、前にゆうこさん と ともりさんが話してた『前世の記憶』のこと?」
コクコクと頷いてから、ミーシャは話した。
「転生が……鍵を握っている気がする。あと、『玄音ともり』ではない、前世の、本当の、私の名前。もう少しで思い出せる気がする……」
「思い出したら、契約するの?」
「多分……」
ミーシャはまどかを真剣な眼で見つめて言った。
「私一人の契約では、力が足りないかもしれない。宇宙も、魔法少女も、全てを救うには、荷が重すぎるかもしれない。手伝ってくれると、嬉しい」
まどかは深く頷いた。
「わかった。あたしだって、みんなを助けたい。ほむら ちゃん達や ともりさん達と一緒に戦いたい。みんなを苦しめるルールをぶっ壊したい。頑張って考えよう! どんな契約を結べばいいか、どんな世界なら、みんなが希望を持てるか!」
──そして、人魚の魔女との戦いから数えて一週間後……。
午前7時。黒鉄のように重々しい雲が覆われた見滝原周辺は、竜巻などを伴う異常気象に見舞われた。ほとんどの人間にとって、それは異常気象としか認識できず、ただ避難するだけであった。
実際は違う。“奴”は、完全顕現していない内から、街を破壊するほどの魔力を放っている。
幾多の残酷な世界を超えて導いた『統計』に基づいて、4人の魔法少女は無人の街へ駆け出す。
史上最強にして最悪の魔女。ワルプルギスの夜が、来る──。
pixivは魔王学院の不適合者について色々他にも書いているので、今回はハーメルンに先にアップロード。ハーメルン勢はpixiv勢より1話先取りってことになります。やったね!
「pixivにアップロードしてる他の魔王学院の作品もハーメルンにアップロードして欲しい」とのことであれば感想欄にどうぞ
(規約に引っかかるかもですが)
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