(更新停止)【魔王学院17章×まどマギ】ネクロン姉妹は見滝原に転生して魔法少女になるようです 作:生徒会副長
(低評価でもよいので!)
ワルプルギスの夜の魔力は、たとえ完全顕現していなくとも、天を震わせ地を唸らせる。
何本かのビルが既に倒壊した見滝原の街を、4人の魔法少女が高台から見渡していた。
暁美ほむら と、玄音ゆうこ。巴マミと、佐倉杏子だ。
ゆうこ がほむらに話しかけた。
「ともり と まどかなら大丈夫よ、避難所で大人しくしてるから。私たちが戦ってる様子は、このカメラ越しに見えてるし」
ゆうこ はそう言って、首から吊り下げている超小型カメラを見せた。
一方通行かつ音声は入らないが、戦っている様子は ともり と まどか から見えている。
このワルプルギスの夜との戦いが、ともり の記憶を取り戻す鍵になっている可能性を考えてやったことである。
ほむらが言う。
「信頼できる人間が、まどかの傍にいてくれて助かるわ。今までのループでは、何度もまどかが軽率な契約をしたせいで、私の戦いが無駄になってしまったから……」
「ちなみにそれって、どんな契約なんだ?」
そう杏子が聞くと、ほむらは呆れながら話した。
「私が何もしなければ、猫を助ける為に魔法少女になるわ。あとは、美樹さやかを魔法少女から人間に戻してだの、誰それを生き返らせてだの、見滝原を守る力が欲しいだの……。まどかが魔女になったら何の意味もない願い事ばかりでしょう?」
「……私のせいで、契約してしまった時間軸もあったんでしょうね。ゆうこ と ともり がいなかったら、もっとしつこく鹿目さん達を勧誘していたはずだもの……」
マミは申し訳なさげに言ったが、ほむらは「もう過ぎたことよ」と涼しげに流した。
しかし ゆうこが顔をしかめて言う。
「ただ……。どんな契約をすればキュゥべえの企みを超えられるか、裏をかけるか、そんなことは未だに考えてるみたいね」
「そんな願いや祈りは存在しない」
ほむらは即座に断言した。
「あいつは、何万年も前から、人類史を影で操っていた。そんな奴と知恵比べをしても、勝ち目なんてない。ワルプルギスの夜を倒し、奴の言葉に耳を貸さない。それだけが唯一の道よ」
「それじゃ、知恵を絞ってる ともり には悪いけど……。このカメラには、ワルプルギスの夜が私達に倒される瞬間を映さないとね」
ゆうこが そう言うと、ほむらは 深く頷いた。
それからほむらは杏子に歩み寄った。
「杏子、これを……」
「ん? なんだこの紙切れ?」
紙切れには6桁の番号が書いてあった。
「私の家にある金庫の暗証番号よ。もし私が死んであなたが生き残ったら、その金庫から約束の参戦報酬を持っていけばいい。何なら生きて帰れる保証がない戦いよ。今から逃げたって、誰も責めないわ」
杏子はその紙をしばらく見つめていたが……突然ぱっとそれを手放した。紙はワルプルギスの夜の魔力が起こす風に煽られて遥か遠くへ飛んでいく。彼女は風に舞う紙切れを一瞥すると、静かに目を細めた
「……もう覚えたの?」
ほむらが聞くと、杏子は首を横に振る。口元には微かな笑みが浮かんでいた。
「いやぁ〜、うっかり手を離しっちまった。あーあ。これじゃあ参戦報酬受け取れねぇなぁ〜?」
わざとらしく肩をすくめてから、杏子はほむらに笑みを向けて言った。
「ほむら。てめぇが生き残って、ちゃんとあたしに手渡ししろよな」
「……絶対、という約束はできない」
それを聞くと、杏子はフッとクールな表情を見せた。
「ま、あんたがくたばったときは……正義の魔法少女がタダ働きしたってことにしてやるさ」
あまりにも粋な台詞の数々に、マミは思わず突っ込まずには居られなかった。
「もう。佐倉さんってば、素直じゃないんだから」
「正義の魔法少女一筋なマミと同じものを期待されても困るっつーの」
「そ、そうかしら……?」
戸惑うマミを見つめ、ほむらは告げた。
「巴マミ。いえ……巴さん」
「えっ? 暁美……さん?」
「時間遡行なんて禁じ手を使っている私を除けば、あなたこそ、見滝原で最強の魔法少女。魔法少女になりたての私に、全てを教えてくれた師でもある。自信と誇りを持って、戦って欲しい」
その言葉は、ほむらが時間遡行を繰り返してきた経験に裏付けされ、一層重みを増す。
マミはその重みをむしろバネとして、笑顔を咲かせた。
「そうね……。かわいい後輩や大切な友達の前で、かっこ悪いところ見せられないものね!」
眼下に広がる道路を見ると、ぬいぐるみとも人形とも言えない赤色や青色の小さい人影が、10匹ほど列を成してタッタッタと駆けていた。魔女の使い魔だ。
通常の魔女と違い、ワルプルギスの夜は、完全顕現する前に使い魔が現れるのである。
「みんな、行くわよ!」
マミの号令に合わせて、4人の魔法少女は駆け出した──。
──※──
色とりどりの国旗に象、それに荷馬車などが見滝原の道路上を行き交う。
サーカス団のようなそれは、ワルプルギスの夜の使い魔だ。
その使い魔達の内の一体に、ほむらと ゆうこは目を奪われた。
首無しの、液体金属で出来た人形のような姿の使い魔であった。
(あんな使い魔、今までのループで居たかしら……?)
(なんかあの使い魔、どっかで見た覚えがあるわね……?)
正反対の感想をほむらと ゆうこは抱くが、すぐに意識を空に向けた。
黒鉄の雲を突き破り、巨大な逆さのシルエットが現れる。その姿は、まるで壊れた舞台の操り人形のようだった。裾の広がったドレスには暗青色の炎が揺らめき、そこから突き出た巨大な歯車が軋みながら回転する
ワルプルギスの夜──史上最強にして最悪の魔女。彼女の笑い声が、風と混じり合い見滝原の街を震わせる。「アッハハハハ!」と響くその声は、希望を嘲笑い、絶望を撒き散らす。彼女の周囲には4つの歯車が衛星のように回りながら浮かんでいた。
(今までのワルプルギスの夜は、あんなモノを周囲に浮かばせていなかったはず……)
(なんかあの歯車……。私の魔法で出す歯車に……似てる……?)
再びほむらと ゆうこは違和感を覚えるが、すぐに気を取り直した。
「今度こそ……運命を切り拓いてやる!」
「今度こそ……運命をぶち壊してやるわ!」
その声を合図に、魔法少女達は動き出した。
第一波攻撃作戦の開始だ。
「行くわよ、佐倉さん!」
「おう!」
第一波攻撃作戦の主旨はこうだ。
『出現する位置と時間が分かっているなら、こちらが先制攻撃できる。その先制攻撃で主導権を握りつつ大ダメージを狙うべき』
そうともりが言って、立案された。
マミがクルクルとリボンを束ね、いつもの巨大銃──ではなく、ボウガンを組み立てた。その横幅は5mにも迫るほどだ。
杏子はそのボウガンに使う矢の代わりに、巨大な朱槍を魔法で召喚する。
ほむらは盾の中にある収納空間から、5mもの長さの対艦ミサイルを2発取り出す。うっかり地面に落とせば大爆発が起こりそうなものだが、ほむらはそれを魔法で浮かせている。
そこへゆうこが歯車をふわふわと飛ばし、杏子の槍とほむらのミサイルを合体させる。
歯車で合体させた巨大槍とミサイルを、ボウガンで射出しようというのだ。
「なぁ……。この技名……マジで言うのか?」
眉をピクピクさせながら、杏子は疑問を打ち明ける。
ゆうこが こめかみに指を当てながら答えた。
「作戦会議で ともりが話してた通り……。私と ともりの前世の記憶と関係してそうだから、協力して欲しいのよね。まぁ……自分で言っててちょっと恥ずかしいし……眉唾物なんだけど……」
「あぁ。胡散臭ぇ……」
溜息混じりになってしまう杏子とゆうこに対し、ほむらはあっけらかんと言った。
「私は別にいいと思うわよ。なにせ、敵は魔女と宇宙人なのよ。こっちにタイムトラベラーと異世界人ぐらい居てもいいじゃない」
勝てるなら猫の手でも異世界人の魔法だろうと借りてやるという──プライドを捨ててヤケクソ気味なほむらの心情が伺えた。
「私は単に、かっこいい技名だから、皆で言いたいわ」
マミはそう明るく答えて、逆に杏子に問い返した。
「佐倉さんはカッコいいと思わないかしら?」
「これさぁ。正義の魔法少女の技名じゃないんだよな……」
ハァ、と溜め息をついてから、彼女は続けて言った。
「どっちかと言えば、アレだろ。魔王が使う世界を滅ぼす魔法……みたいな感じのネーミングだと思うんだよな」
「魔王……? 魔王……。ははっ。アーッハハハハハハ!!」
ゆうこは心底愉しそうに、昔を懐かしむように笑った。
それをマミとほむらは不思議そうに眺め、杏子が咎めた。
「な、なんだ突然!? 正直な感想を言っただけだぞ!」
軽く首を振ってから、サーシャは答えた。
「いやいや。ありがとうね、杏子。あなたのお陰で、また1つ、顔も名前も思い出せないあの人のこと……思い出したわ!」
眼をキラキラと輝かせ、彼女は名も忘れた彼について話す。
「あの人は……魔王だったわ! 私の素敵な、大好きな魔王様よ! その魔王様が愛用した魔法と同じ名を付けたこの攻撃……絶対にワルプルギスの夜にも効くわ!」
そう話している内に、発射台には十分な魔力が充填され、赤と橙、金と紫の光が立ち昇る。
「皆、いっくわよーーーーっ!!」
ゆうこの声に応じ、マミは明るく、ほむらは静かに頷く。杏子は「やれやれ」と小さく呟いたが、その後すぐに口角を上げた。
そして4人の魔法少女は、声と魔力を揃えて、解き放つ。
それは、世界を滅ぼす終末の火と同じ名を冠する、究極の一撃──。
『『
絶大な魔力を帯びた光の筋が、空気を裂いてワルプルギスの夜へと向かって行く。
「アーッハハハハハ!!」
五月蝿い笑い声をあげるその魔女に確実に命中させる為、ゆうこは炎を操った。歯車から噴射する炎で軌道の微修正を行うのだ。
「あ・た・れぇぇぇぇえええええ!!」
願いではない。祈りでもない。
これが今、玄音ゆうこに、4人の魔法少女に出来る、最強の攻撃。
「アーッハハハハハ……ハッ!?」
ガギィィィィンと、見滝原中に響くような音だった。
まるで整然と運命を刻んでいた歯車に、異物が噛み込んでいくような。
幾重にも張り巡らされた複雑な歯車に、固い楔が打ち込まれ、軋んでいくような。
その直後に世界を揺らしたのは──魔法少女の希望が打ち上げた花火の如き大爆発と……。
「アギャァァアアアアアア!!?」
史上最強にして最悪の魔女の、惨めな悲鳴であった。
「よーし!! やってやったわ!!」
「うふふっ! やったぁ!!」
ゆうことマミが歓喜で飛び跳ねる中、ほむらは冷静にワルプルギスの夜の様子を観察する。
爆風と槍で吹き飛ばされたワルプルギスの夜が墜落した場所が最高の場所──罠を仕掛けたコンビナート地帯であったことを確認し、ほむらはニヤリと笑みを浮かべた。
「プランBの予定地に墜落。死になさい、ワルプルギスの夜」
カチッとほむらがリモコンを操作した、次の瞬間……。
一瞬の閃光の後、ドッゴォオオオオンと大地が震え、火柱が天まで昇る大爆発が、コンビナートとワルプルギスの夜を呑み込む。ほむらが事前に仕掛けていた対車両用地雷10万個による追撃であった。
猛火が見滝原の雲を紅く染めるのを3人が見つめていると、そこへ1台のタンクローリーが現れる。運転席の窓から杏子が顔を見せた。
「ここまでは完璧だな! 皆乗りこめ!!」
杏子がそう呼びかけると、マミとほむらは車両の上に飛び乗り、ゆうこが助手席に腰掛けた。
「しっかり掴まってろ!!」
杏子は勢いよくエンジンを吹かす。彼女がゲームセンターで磨いたドライブテクニックの下、タンクローリーは荒廃した街へと走り出した。
『魔法でしか出来ないことにこそ魔力は使うべき。魔法以外で出来ることに魔力を使うのは最小限にした方が良い』
これも作戦立案の際にともりが指摘したことだった。
助手席にて、ゆうこは「はぁっ……はぁっ……」と荒い呼吸を繰り返す。
「もうへばったのかい? これだからルーキーは……」
杏子の煽りに対し、ゆうこは気丈な眼で答えた。
「ご心配どうも。でも……まだまだこれからよ……!」
魔法少女歴およそ6ヶ月のゆうこが、他のベテラン3人に比べてルーキーなのは事実。先程の
運転する杏子の目に、進行方向を塞ぐ使い魔達が映った。魔法少女の影絵のような使い魔と、例の液体金属のような使い魔だ。
「まだまだこれからってのは同感だな。マミ! ほむら! アイツらどかしてくれ!」
『オーケー、分かったわ!』
『そのまま突っ込みなさい、杏子ッ!』
テレパシーでマミとほむらが返事をする。その直後、車両の上から機関銃とマスケット銃の銃声が激しく響く。使い魔達は半死半生になりながら道を開けた。
そうして走っている内に、タンクローリーはワルプルギスの夜に近づいていく。倒れたビルの上を疾走し、危険物第四類を載せた大型車両は、超弩級の魔女の顔面に迫る。
ゆうこが告げた。
「杏子、私とマミは先に降りるわ!」
「おう!」
助手席からゆうこが、車両の上からマミが降車する。
倒れたビルのガタガタとした道を、マミのリボンが舗装し、タンクローリーは進んでいく。
ほむらがテレパシーで杏子に呼びかける。
『杏子、貴女も降りなさい』
「おう! ぶちかませ、ほむら!」
運転席の杏子が降りるが、アクセルは止まらない。ほむらの魔法による自動操縦に切り替わったのだ。
ほむらがワルプルギスの夜の眼前で激走する車両から飛び降りた。
「喰らいなさい、危険物第四類をッ!」
危険物第四類の正体は──2万リットルのガソリン。
白い閃光が、魔法少女4人の網膜とワルプルギスの夜を純白に染め上げる。
その直後には、紅い炎がガソリンの臭いを乗せた熱波を爆風に乗せながら広がる。ワルプルギスの夜は燃える炎と黒い煙に塗れる。
しかし、魔法少女の追撃はまだ終わらない。
その魔砲は、先に降車していたマミとゆうこが放った。
「
「
リボンの尾を引き、紅い薔薇を舞わせながら、巨大な火球の魔弾──
「アギャァアアアア────ッ!?」
再び悲鳴を上げるワルプルギスの夜。その後頭部に、駄目押しとばかりに杏子の槍が連続で薙ぎ払いを叩き込む。
「ほらほら! くたばりやがれ、ワルプルギス!」
十合、二十合と瞬時に杏子は攻撃を繰り出した。それを浴びている間、ワルプルギスの夜の笑い声にはノイズが混じっており、攻撃が効いているかに思えた。
だが三十合目の突きを繰り出そうとしたとき、ワルプルギスの夜の首が機械のようにぴったり180°グルっと回転し、杏子に狙いを定めた。
魔女の黒い火炎放射が、大蛇のようにうねりながら迫る──が。
次の瞬間には、杏子の座標が“ズレて”、傍にはほむらがいた。彼女の時間停止によって攻撃を避けたのだ。
「杏子、焦り過ぎよ。もっとヒットアンドアウェイを心がけて」
「わ、悪ぃ……。助かった……」
気まずそうに杏子はほむらに礼を言う。
「ワルプルギスの夜! 次は私の番よ!」
そう名乗り出て前に出たのはゆうこだ。その手には自身の魔法で出した歯車がある。
「はぁぁぁぁっ!!」
時に鈍器のように重く、時にフラフープのように軽やかに、ゆうこは歯車による打撃を繰り出す。
近距離戦は杏子が、遠距離戦はマミが主に担当する。ほむら と ゆうこは中距離戦を主にしつつ、状況に応じて柔軟に立ち回る。
ワルプルギスの夜と魔法少女4人は、激しい攻防を繰り広げていく──。