ホラゲーにハッピーエンドを作った男の末路   作:POTROT

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そら①

 7月6日。

 夏休み直前とも言えるその日も、『そら』にとっては何も変わらなかった。

 昨日とも同じ、おとといとも同じ。

 じりじりと太陽が照りつける中、たった6人しか生徒のいない学校へと通い、変わり映えのしない顔ぶれに囲まれる中で勉強をして、授業が終わればちょっと遊んで、暗くなって来たらただ家に帰る。

 

 たったそれだけ。

 何も変わりなんてしない。

 こんなド田舎なのだから、当然と言えば当然なのだけど。

 それでもやっぱり、刺激が足りない。

 

「都会、行ってみたいなぁ」

 

 何度も繰り返した台詞を、今日も今日とて口ずさむ。

 

「ははっ、まだまだ『そら』には早いさ」

「でもまぁ、いつか高校とかに行く時になったら、考えなきゃねぇ」

 

 それに対する両親の言葉も、いつも通り。

『そら』がこの村を好きでない事を知っているのに。

 学校では事あるごとによそ者と呼ばれ、ささやかで幼いストレス発散の捌け口になっている事を知っているはずなのに。

 

「つまんない」

 

 これもまたいつものように独りごちて。

『そら』は、ベッドの上で静かに目を閉じた。

 

 カレンダーが言うには、明日はどうやら七夕らしい。

 だからと言って、何をするでもないのだが。

 

 ■

 

 7月6.1日。

 夏休み直前とも言えるその日も、『そら』にとっては何も変わらなかった。

 昨日とも同じ、おとといとも同じ。

 じりじりと太陽が照りつける中、たった6人しか生徒のいない学校へと通い、変わり映えのしない顔ぶれに囲まれる中で勉強をして、授業が終わればちょっと遊んで、暗くなって来たらただ家に帰る。

 

 たったそれだけ。

 何も変わりなんてしない。

 こんなド田舎なのだから、当然と言えば当然なのだけど。

 それでもやっぱり、刺激が足りない。

 

「都会、行ってみたいなぁ」

 

 何度も繰り返した台詞を、今日も今日とて口ずさむ。

 

「ははっ、まだまだ『そら』には早いさ」

「でもまぁ、いつか高校とかに行く時になったら、考えなきゃねぇ」

 

 それに対する両親の言葉も、いつも通り。

『そら』がこの村を好きでない事を知っているのに。

 学校では事あるごとによそ者と呼ばれ、ささやかで幼いストレス発散の捌け口になっている事を知っているはずなのに。

 

「つまんない」

 

 これもまたいつものように独りごちて。

『そら』は、ベッドの上で静かに目を閉じた。

 

 カレンダーが言うには、明日はどうやら七夕らしい。

 だからと言って、何をするでもないのだが。

 

 ■

 

 7月6.9994日。

 夏休み直前とも言えるその日も、『そら』にとっては何も変わらなかった。

 昨日とも同じ、おとといとも同じ。

 じりじりと太陽が照りつける中、たった6人しか生徒のいない学校へと通い、変わり映えのしない顔ぶれに囲まれる中で勉強をして、授業が終わればちょっと遊んで、暗くなって来たらただ家に帰る。

 

 たったそれだけ。

 何も変わりなんてしない。

 こんなド田舎なのだから、当然と言えば当然なのだけど。

 それでもやっぱり、刺激が足りない。

 

「都会、行ってみたいなぁ」

 

 何度も繰り返した台詞を、今日も今日とて口ずさむ。

 

「ははっ、まだまだ『そら』には早いさ」

「でもまぁ、いつか高校とかに行く時になったら、考えなきゃねぇ」

 

 それに対する両親の言葉も、いつも通り。

『そら』がこの村を好きでない事を知っているのに。

 学校では事あるごとによそ者と呼ばれ、ささやかで幼いストレス発散の捌け口になっている事を知っているはずなのに。

 

「つまんない」

 

 これもまたいつものように独りごちて。

『そら』は、ベッドの上で静かに目を閉じた。

 

 カレンダーが言うには、明日はどうやら七夕らしい。

 だからと言って、何をするでもないのだが。

 

 

 ■

 

 

 7月6.99999999999999999999日。

 夏休み直前とも言えるその日も、『そら』にとっては何も変わらなかった。

 昨日とも同じ、おとといとも同じ。

 じりじりと太陽が照りつける中、たった6人しか生徒のいない学校へと通い、変わり映えのしない顔ぶれに囲まれる中で勉強をして、授業が終わればちょっと遊んで、暗くなって来たらただ家に帰る。

 

 たったそれだけ。

 何も変わりなんてしない。

 こんなド田舎なのだから、当然と言えば当然なのだけど。

 それでもやっぱり、刺激が足りない。

 

「都会、行ってみたいなぁ」

 

 何度も繰り返した台詞を、今日も今日とて口ずさむ。

 

「縺ッ縺ッ縺」縲√∪縺?縺セ縺?縲弱◎繧峨?上↓縺ッ譌ゥ縺?&」

「縺ァ繧ゅ∪縺√?√>縺、縺矩ォ俶?。縺ィ縺九↓陦後¥譎ゅ↓縺ェ縺」縺溘i縲∬??∴縺ェ縺阪c縺ュ縺」

 

 それに対する両親の言葉も、いつも通り。

 

「…………え?」

 

 ……いいや、違う。でも、何が違う?

 分からない。

 何も変わらないはずなのに。 

 両親は今日もいつも通り、食卓に座って、ご飯を、食べて……

 

「……ひっ!?」

 

 少し視点を下げて、『そら』が小さく悲鳴を上げる

 少なくとも、そこにあったのは『そら』の知る食卓の姿ではなかった。

 

 お茶碗に詰まっているべちゃべちゃとした感触のそれは、米と言うよりはヘドロとでも言うべき代物で。

 お椀に注がれていた味噌汁は、薄汚れた緑で濁った液体。

 漬物は腐った葉っぱをそのまま盛り付けたようで、魚だと思っていたそれは、魚というよりは、寧ろ─────

 

「うぁ、おえぇ……ッ」

 

 耐えきれず、吐き出す。

 強烈な酸味と一緒に口から飛び出てくるのは、ドス黒い粘着質な何か。

 それらは絶えずぐねぐねと蠢き、のたうちまわり、這いずり回る。

 生きている、というには、その形状はあまりにも冒涜的で、狂気的であった。

『そら』の中で、正気の削れる音がする。

 

「いやっ……なんで……? なにが……どうして……」

 

 助けを求めるように、両親を見る。

 だが、そこに居たのはもはや両親などでは無かった。

 

 それを形容するならば、影だろう。

 両親の輪郭を多少なりとも残しながら、しかしその姿は完全な闇に覆われている。

 

「縺昴i縺ォ縺ッ縺セ縺?譌ゥ縺?掠縺??繧??縺昴?繧?◎繧峨∪縺ッ繧?□」

「謌サ繧梧綾繧梧綾繧後b縺ゥ繧後b縺ゥ繧後b縺ゥ繧後b縺ゥ繧後b縺ゥ繧」

 

 ゆらり、と。物音も立てず、影が立ち上がる。

 というよりは、立ち上がったように見える動作をした、とでも表現すべきだろう。

 それは影などでは無かった。

 ぐねぐねと動き、人間に擬態した、不定形な粘液とでもいうべき存在だった。

 

 がりがり、がりがり。

 正気が削れる。正気が削れる。狂気が削れる。狂気が削れる。

 瞬間、『そら』を包んでいた家が、その現実を顕した。

 

「ぁ……ぇ……?」

 

 文明的な照明は既にその役割を果たし終えて久しく。

 綺麗に貼られていた壁紙は剥がれ落ちて腐り、ピカピカだったはずのフローリングにはカビと苔が繁茂している。

 窓ガラスは無惨に割れていて────そこから吹く風が、酷く寒い。

 

「なにが……なんで……? どうして……?」

 

 幸せのマッチは既に燃え尽きてしまった。

『そら』自身が燃え尽きていることに気付いてしまった。

 となれば後に残るのは僅かばかりの燃え滓と、厳しくて寒い現実だけ。

 がたがたと、脚が震える。

 迫り来る両親の影から、一歩、また一歩と後ずさる。

 

「……あ」

 

 そうして後ろへ下がってゆけば、当然辿り着くのは腐った壁だ。

 にちゃり、嫌な感触が『そら』の皮膚を伝う。

 幾ら後ろへ進もうにも、これ以上後ろには下がれない。

 そして、前方から迫ってくるのは悍ましく不気味な影。

 

「…………ぃ」

 

 追い詰められた。

 その事実が、『そら』の恐怖をひどく煽った。

 辛うじて繋ぎ止められていた『そら』の理性が、遂に振り切れる。

 

「いやぁあああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 恐慌状態に陥った『そら』は、一目散に窓を目指した。

 そうして割れた窓にその身を躍らせ、ガラスを破りながら強引に外へ出て、走り出した。

 幸運だったのは、ガラスが『そら』の体に刺さらなかったこと、そして『そら』がスリッパを履いていたことだろう。

 だから『そら』は問題なく走ることができた。

 

 しかし、夜の寒さと不整備な道路を運動に適さない履き物で走る負担は、間違いなく『そら』の肉体を蝕んだ。

 理性のタガが外れ、リミッターとでも言うべき身体の制御装置が上手く作動していない今ならば、それは尚更だった。

 

「はぁ……っ! はぁ……っ!」

 

 誰かに助けを求めなくちゃ。

 その想いだけを胸に必死に走る『そら』は、このとき、気付くことができなかった。

 村の様相が大きく変わっていること────そして、どの家にも明かりがついていないこと。

 夜で暗かったと言うのもあるだろう。彼女自身が必死だったと言うのもあるだろう。

 だが────それに気付けずに村の中央付近にまで来てしまったせいで、彼女は地獄を見ることになった。

 

「……え?」

 

 そこに居たのは、黒い影だけだった。

 人の形を模した、不定形の粘液だけだった。

 自信を持って人間であると言える存在はもう、どこにも居ない。

 暗闇に紛れて、人の輪郭を残しただけのそれらが、まるで何かを求めるように彷徨うだけだ。

 

「……ぁ」

 

 絶望。

 正しくその二文字が相応しい。

 ぺたんと彼女が腰を抜かすと、ぐりんと影たちの首が『そら』を向く。

 そして、両親の影と同じように、音もなく『そら』へと襲いかかって来た。

 

「……あぁ」

 

 逃げなければならない。『そら』の本能とでも言うべき何かが叫ぶ。

 だが、『そら』はもう動けない。

 動くだけの気力は、もう彼女には残っていなかった。

 絶望に心を折られてしまった8歳の少女の諦念を、いったい誰が責められるだろう。

 

 ……ああ、しぬんだ。

 

 浅くなりすぎた呼吸によって朦朧としてゆく意識の中で、『そら』がそう思った瞬間。

 ふと、タバコの煙が香った。

 

「……成程、こういうカラクリだったのか。畜生め」

 

 全てに絶望した肉体が、自ら意識を封じようとしたその寸前。

 何か温かいものに包まれた事を、『そら』は薄れゆく意識の中で感じ取った。




はい、筆者です。
色々あって全部終わりました。
とりあえず、大学生にはなれそうです。
何にせよ俺ってば理系の工学系になるんですが、工学系ってなんか忙しいらしいじゃないですか。
小説……書く暇ありますかねぇ……
まぁ頑張りますけども……

主人公が『かな』ちゃんと式神作る話とか、後は忍野メメと戦ったりする話みたいなネタとして思いついた話は書き上がり次第ファンボックスに突っ込んどきます。
読みたかったら読んでみてネ。
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