ホラゲーにハッピーエンドを作った男の末路   作:POTROT

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そら(終)

 なんやかんやあって、『そら』は狂気に囚われずに明日を迎えることができた。

 これにて、『(ケガ)() 弐』はめでたくハッピーエンドを迎えたわけだ。

 

 いや、とんでもなく危ない綱渡りだった。

 ここまで走り切ることの出来た自分を褒めてやりたい。本当に。

 

 ……それはさておき、色々と種明かしをしよう。

 

 まず、ゲーム知識からわかっていた事から話すと……この(ケガ)()の主犯は村長で、賛同したのは村の老人連中だ。理由、と言うより動機は恐怖。

 考えられる思考回路は大雑把に二つ。

 

 元々村で行われていた生贄的な因習が、現代になって導入された価値観に基づいて考えるとあまりにもアウトすぎて、下手に霊的な存在を知ってしまっていた分、死んだ後のことが怖くなってしまった。

 現代医療が導入された事で寿命が伸び、認知症を患う者が出てきた事で、自分もそうなってしまうことを恐れた。

 

 十中八九このどちらかであろう。

 どっちであろうと、その両方であろうと、私利私欲の行動以外の何者でもなく、情状酌量は無いのだが。

 罪を軽くしたいのならば寺にでも寄進すればよかったのだ。

 それに流石の十王様方も、それを罪と知らずして起こした者の咎を責めたりはしない。

 ……逆に言えばほんの少しでも罪の意識があればアウトなのだが。

 

 何にせよ、どれだけ量刑が少なかろうが焦熱地獄は確定。

 場合によっちゃあそれ以上だって十分に有り得る、と言った具合か。

 転生に関しては……当分は無理だろう。幾多のループに耐えられず、もう魂がぐっちゃぐちゃになりすぎている。

 魂は不変だから、じっくり時間をかければ何とか浄化は出来るのだろうが……

 そうするにも、劫単位の時間を苦痛の中で耐えきらなければならない。無間地獄よりもキツイだろうな。

 いわゆる自業自得、と言うヤツだ。

 

 巻き込まれた村の連中や『そら』の両親、その他の虫やら動物やらの魂もそうならざるを得ない点で言えば、そこは流石に可哀想だが……不運だったと諦めて頂くしかない。

 俺とてどうしようもない事はあるのだ。……いや、出来なくはないがやるべきでない、と言ったところか。まぁどっちでもいい。

 溜まりに溜まった穢れだけはどうにかしておいたので、それで我慢してくれ、としか。

 

 で、ゲーム知識で語れる事と言えば、あとはどのようにしてこの(ケガ)()を起こしたか、その経緯と方法についてだろう。

 まぁ、ここについては俺の観測した事柄についても多分に含まれるので、純粋なゲーム知識とは言えないのだが。

 

 事の流れは以下の通りだ。

 まず最初に主犯……つまり、村長が目指したのは、不老不死である。

 死ぬのも老いるのも怖いのだから、老いず死なずを目指すのは、まぁ諸々を差し置けば理には適っていると言えた。

 ここでの不幸は、村長の一族が霊的知識をある程度とは言え備えていた事だ。

 因習的な村の儀式を行っていたのが、村長の一族であるが故だった。

 

 しかし、不老不死の企みは正攻法に頼るなら、はっきり言って無謀と言えた。

 理由は単純、間に合わないからである。

 世界には不老不死を題材とした神話やら伝承やらが山のようにあるが、しかしそのどれもが楽に成功するものではなく、また相当な幸運を必要とする。

 

 正攻法で不老不死を得るのならば、日本の漁村にいる以上、最も可能性の高いのは人魚に関する不老不死だろう。

 曰く、その血肉を喰らえば、不老不死を得られる。そう言う伝説だ。

 しかし既に還暦を越え、齢70に差し掛かる村長が本腰を入れて人魚を探そうにも、まず見つかる前に死ぬだろう。

 最も手っ取り早い人魚ですらそうなのだから、他の方法で間に合うわけもない。

 

 故に、外法に頼る事に決めた。

 その上で、最も確実に不老不死を得る方法を考え─────そこで辿り着いたのが変若水だ。

 日本においては月神様、つまりはツクヨミ様が持つとされる、不死の霊薬である。

 

 しかし当然ながらそんなもの、いくら外法であろうが尋常な方法で手に入るはずもない。

 どちらかと言えば同じような効果を持つとされる恐山の冷水のほうが、現世にあるとされている分、比較的現実的であろう。

 

 が。ことこの村に限ってはそうでなかった。

 村長は当然、知っていた。村の外れ、山の上に建てられた社には、月に関わる神が祀られている事を。

 そして強い穢れを用いれば、完全で無くても再現は十分に可能であることを。

 だから村長はまず、神主を殺して、埋めた。

 そうして社を壊し、呪いを満たして、神を穢した。

 

 ただ、村長はここで失敗した。

 村長は穢した神を利用して、ただ穢れの変若水を用意させるだけのつもりだったが、しかしそうはならなかった。

 理由は単純。穢れた月神に憑かれ、狂気に囚われたからである。

 この事は手記の様子からも把握できる。

 ゲームでは分からなかったが、この辺りから明らかに筆跡や内容が変化しているのだ。

 

 ……と、そんなこんなで神が穢れた以上、いずれ起こるのは(ケガ)()であるが、しかしそこに待ったをかけたのが村の老人達であった。

 当初、計画を一人で行うつもりでいた村長は、できる限り他人に自らの企てを露見しないように立ち回っていたが、狂気に囚われてからはそうしなくなった。

 そうなればバレるのは時間の問題であり、実際にそうなったのだ。

 

 そうして村の老人達が集まり、狂気に堕ちた村長と、不老不死に魅了された老人どもが出した結論は、村を丸ごと永遠にする事。

 どうやらボケ老人どもは環境の変化を嫌ったらしい。

 そのために用意する事になったのが、偽の月と穢れた道祖神。

 そして、たった一人の観測者である。

 

 領域内を穢れで満たし、道祖神を用いて閉ざして、同じ夜を永遠に繰り返す。

 穢れの変若水を用いるのなら、手っ取り早く、かつ領域丸ごと永遠を得るにはそれが一番楽だった。

 それはいいだろう。いやまぁ全くよくはなかったのだが。

 恐らくだが自らの記憶までリセットされる事も、世界自体が劣化する事も想定内ではなかったように思われる。

 

 ……まぁ、そこは老人どものガバガバ計画の甘かった点だとして。

 その永遠を作るには、道祖神のみを用いた結界では弱かったのだ。それどころかむしろ、たちどころに村の存在自体が消えてしまう可能性まであった。

 理由は単純。人間が一人もいなくなるからだ。

 

 人間による観測は、世界を固定する力がある。

 逆に言えば、人間によって観測されていなければ、その領域は固定されていない事になる。

 外界からの観測を完全に遮断した上で、内側からも観測しないのなら、その中身がどうなっているかなど誰がわかるものか。

 

 それに、世界からしてみれば、体の一部が急にブラックボックスへ変化するようなものだ。

 中がどうなっているかを人はおろか世界すら永遠に観測できないのなら、それは何も無いと変わらない。

 だから、一人は生身の人間を残して、狂気と穢れに満ちた世界を『正常な世界』として認識させる必要があった。

 そしてその役割に、『そら』が選ばれた。

 

 何故『そら』が選ばれたのか、その理由は定かでない。

 しかし推測するに、『出来るだけ無垢である事』が求められた上で、村の人間と余所者の両方に候補がいる以上、余所者に永遠の恩恵をタダでくれてやるのも癪だから、とでも思ったのだろう。

 

 何にせよ、そうして必要な条件が揃って、ループは始まってしまった。

 あとはもうご存知の通りだ。

 老人達の失敗は、永遠など存在しないという前提を真っ向から無視してしまった事だろう。

 

 愚かも愚か。哀れとは、全く思わない。

 

 ……で、俺がこの(ケガ)()にどうやって侵入したかと言えば……まぁ、うん。

 都市伝説を利用した。

 

 いや、まぁ、何だ。自分で言うのも何だが、俺ってば都市伝説になってるのである。

 曰く。子供が真夜中に一人で困っているとどこからともなくタバコの煙が漂って来て、それを辿ると白い髪の男がいる。その人に助けを求めれば、無事に家まで帰ることができる。

 ……心当たりがありまくると言うか何と言うか。

 俺が日常的にやっている事であった。疑いようが無かった。

 

 俺としては別に子供だけを助けているわけではなく、大人も分け隔てなく助けているつもりなのだが……そもそも大人が困ってる事はほぼ無いし、仮に居たとしてそう言う大人は基本泥酔しているので、恐らく忘れられているだけである。

 

 だから俺の事をロリコンとか言いやがった野郎には文字通りの天罰を下しておいた。

 ヤツは今後一生、通りすがりの犬から必ず吠えられまくり、猫からはそっぽを向かれ、3日に1度の頻度で空から鳥のフンが降ってくるのだ。

 

 ……話を戻す。

 で、まぁとにかく、ある以上は有効に使ってやるということでそんな都市伝説を利用したわけだが、これも色々と無理矢理であった。

 真夜中に子供が困っているのだから、俺が現れてもべつに可笑しくなくね? をゴリ押しして道祖神の結界を突破。

 その時に、タバコって棒状に加工した植物だよな? だったらこれも棒状になった植物だから問題ないな? であの月桂樹と柊を持ち込んだのである。

 

 穢れた道祖神や、海坊主の攻撃を弾いたアレは、俺がいるのだから、子供は無事に家まで帰らねばならないという、俺という怪異を逆説的に利用したカウンターである。

 

 で、その後は正式な手順を踏んで、ちゃんとした俺を召喚したわけだ。

 これで侵入は完了。更にこの状態の俺は力をフル活用出来るのでやりたい放題。

 穢れを悉く洗い流して、スッキリさせたわけである。

 

 ……さて、次の話に移ろう。今回の事後処理だ。

 

 ただ……まぁ、今回は前回ほど面倒ではなかった。

 風水がクソということもなければ、そもそも『そら』を除いて全滅してしまったので、今後住む人も居らず、更には俺がよくないモノを綺麗さっぱり流してしまったので、特にすべき処理というものが無いのだ。

 

 とは言え流石に霊的守護の観点から放置というわけにもいかないので、神職の方を幾らかお招きして、どうするというわけでもないが取り敢えず一時的に保管しておく、という方針で決定した。

 俺としてもその意見には賛成である。

 こういう針の穴ほどの隙間であろうとも、悪いモノは容赦なく溜まるのだ。

 備えておくに越した事はない。

 

 それと解放された道祖神様方であるが、織姫彦星の姿は穢れで再現された、呪いと狂気を補強するための措置だったらしく、現在はそれぞれ元の姿に戻って職務に当たられている。

 何よりな事である。

 

 そして最後に、『そら』の事であるが……やはり人間は辞めていたのだが、ちょっと困った感じになっていた。

 というのも、存在が神に近づいてしまっているのだ。

 

 『かな』の場合は、肉体こそ人間であるが、その身に二つの巨大な神格による痕跡を得たことによって、いわばとんでもなく強固な神の加護を得たような状態になっているわけである。

 だから生命として活動し、老いて、死ぬ分には、まぁ、見た目が全盛期の状態で固定されたり、常人の3、4倍くらい生きる事はあるかも知れないが、問題はない。

 

 それに対して、『そら』はどうかと言うと、魂そのものが変質し、肉体までもが半ば霊的物質に置き換わってしまっているせいで、いわば半神半人とでも言うような存在になってしまっているのである。

 つまり、天皇陛下とほぼ同じ状態だ。それも割合的に2千年前くらいの。

 まぁ、その身に宿す神性には天と地ほどの差があるが、それでもだいぶヤバい。

 300年とか500年とか平気で生きても何ら不思議では無いし……そもそもまともな『死』が適応されるかどうかもわからない。

 

 だから当然、『そら』の扱いに関しては議論になる─────と思いきや、なんか大御神様が突然神託を下ろし、『かな』と同じ神社で面倒を見ればいいじゃないとか仰って来たので、そうなった。

 そうなってしまったらもう俺達に抗う術など無いのである。

 陛下ですら大御神の威光にはひれ伏さざるを得ないのだ。

 

 ……で、そんなわけで、一先ず神社に連れて来たわけであるが……

 

「ふぅん、へぇ。貴女も助けられたんだ」

 

「……そうだよ。一年間、お世話してもらったの。修行をつけてもらった事もあるんだよ」

 

「一緒に戦った事は? 私はあるよ。あと今度、お兄さんと一緒に全国旅行に行く事になったから、さっそくお留守番になっちゃうけど、ごめんね?」

 

「ふふっ、大丈夫だよ、謝らなくても。私とお兄さんは、ずっと繋がっているから」

 

「……絶対に私が手に入れる」

 

「ううん、私だよ。絶対に」

 

 引き合わせた瞬間バチバチになった。

 『そら』は腕を組んで、『かな』は俺があげた髪の入った小袋を握り締めて、睨み合っている。

 年齢差は3、4年ほどだが、この年頃なら顕著な差があると言うのに、互いに一歩も引こうとしないのは……まぁ、俺のせいなんだろうなぁ……

 好意を寄せられているのは自覚してるがねぇ……俺もいつまでこうしていられるか分からないんだよなぁ……

 

 ちなみに全国旅行云々に関してはマジである。

 ここ一年ほど俺がこの地に留まっていたので、ちょっと俺が手伝わなければならない案件が全国に散らばっており、それを知った『そら』に東京に行くついでだとせがまれ、一緒に連れて行く事になったのだ。

 

「どうすんですかこれ。私にどうしろって言うんですか。一触即発じゃないですか」

 

「知らん。……が、俺らがどうにかするしかない」

 

「元はと言えば貴方のせいでしょう。巻き込まないで下さいよ」

 

「文句があるならここと決めた大御神様にだ」

 

「……おお、天におわす御方よ。その神意は察するに余りありますが、この矮小なる身にはあまりにも……あまりにも……!」

 

「……セオリツヒメ様が頑張れと仰られている」

 

「私にだって聞こえてますよそんな事は!!」

 

 1番の被害者は間違いなく瀧さんだろう。

 非常に申し訳ないが我慢して欲しい。

 俺が出来る限り頑張るから。

 

 ……まぁ、何にせよ。

 先行きに不安こそありまくるものの、しかしこうして今回も何とかなった。

 次に訪れるのは、『(ケガ)() 参』だ。

 俺の予想が正しければ、今までで一番厄介な仕事になりそうだが……最善を尽くすだけだ。

 

 ただ、それが起こるのも暫く先。

 今は別のことに集中しなければ……




 はい、これで第二部はおしまいです。

 それと、沢山のお題、有難うございます。
 書いてみたいのが幾つかあったので、しばらくはそれを消化しつつ、こっちにも幕間という形で色々な小話やら何やらを突っ込もうと思います。
 これからまぁ……忙しくなるので、更新のペースは落ちるでしょうが、精一杯頑張らせていただきます。

 あ、勿論お題は常に募集しているので、何かあったら是非どうぞ。
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