ホラゲーにハッピーエンドを作った男の末路   作:POTROT

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ゆう⑥

 歩く、歩く、歩く。

 黒い蛇の濁流の中、小さく短い脚を前に運び続ける。

 怖くはない。怖いわけがない。

 蛇は私に害を及ぼさない。決して。

 

 見据えるのは、目の前で佇むかいぶつ(お父様)。

 お兄さん(オオクニヌシ)は私に彼の体内を探るように命じた。

 なら、私はそれを遂行するのみ。

 

 歩く。歩く。歩く。

 濁流は次第に深く、激しくなる。

 しかしそれは私の脚が前に進むことの妨げにならない。

 蛇は私の体を避けるように進む。

 私に興味はないと言わんばかりに。

 そして私も、蛇なんかに興味はない。

 

 行かなきゃ。

 行くしかない。

 頼まれた。

 頼られた。

 成し遂げなきゃ。

 

 私がお兄さん(オオクニヌシ)を助けないといけない。

 私がお兄さん(オオクニヌシ)の支えにならないといけない。

 だって、そうでしょう?

 

 私たち、■■(■■■)だもんね?

 

 

 ■

 

 

『ゆう』が蛇を掻き分け、怪物の下へ向かうが、蛇は『ゆう』に対し何の反応も示さない。

 当然だ。スセリビメ様はスサノオ様の愛娘。大切に大切にと育てた娘に、スサノオ様が蛇をけしかけるわけもない。

 たとえそれがそういった『役割』を押し付けられただけの別人だったとしても、『そうである』とみなされる限り、効果はある。

 

 だから、スサノオ役たるアイツがどれだけ抵抗しようと、無駄だ。

 何故なら、スサノオはスセリビメを疑わない。疑えない。

 スセリビメの企みに、気付けない。

 スセリビメの謀略に、嵌らねばならない。

 たとえ策もクソもない正面突破だとしても、防げない。

 

 幾ら蛇を放出しようと、体を捩ってその場を脱出しようと試みても、アレがそれに成功することはない。

 

「互いに、妙なことに巻き込まれて苦労するな? そうでもなきゃ、こんな面倒なことをする必要も無かったんだが」

 

 ふぅと溜息を吐き、『ゆう』を離して空いた手で新たな煙草に火をつける。

 力強く吸い込めば灰が全身を廻り、俺という輪郭を補強してゆく。

 

「さて、見せて貰うぞ、その真っ黒な腹の中」

 

 俺の視界の先で、怪物が苦し気にもがく姿が見えた。

 

 

 ■

 

 歩き続ける。歩き続ける。歩き続ける。

 蛇の濁流は既に私の体をすっぽり包んで、吞み込んでいた。

 黒。黒。黒。黒。黒。

 闇夜よりも暗い黒が視界の先に広がっている。

 

 視覚はもはや機能していない。

 聴覚が捉えるのは、蛇同士が擦れ合う音だけ。

 上下左右、何処を見ても同じ。どこからも同じ音がする。

 方向感覚はもう機能していない。

 

 でもやっぱり、私は足を運び続ける。

 ずっと真っすぐ進んできたのだ。

 今更進む方向を間違えるわけもない。

 だから私は、ひたすらに進み続ける。

 

 そうしていれば、私の体はいつの間にか海水に浸っていた。

 

「………………ぁ」

 

 かいぶつ(お父様)の暴れる気配がする。

 けど、私の脚は止まらない。

 真っすぐ、真っすぐ、真っすぐ。

 何かに導かれるように進んでゆく。

 

 光だ。

 光が見える。

 黒い光が瞬いている。

 闇の奥底で、黒の中で、より黒くて悍ましい何かが、そこにある。

 

 ダメだ。

 それはきっと、触ってはならないものだ。

 それに触ったら、私は耐えられない。

 だから、触ってはいけない。

 触っては、いけない。

 

 消えてしまう。

 消えたくない。

 

 お願いだから。

 触らないで。

 お願い。

 

「───変なの。お祈りするのは、わたしたち(人間)のはずなのに」

 

 剣を掴む。

 瞬間、黒い光が爆ぜた。

 

 

 ■

 

 

「…………は」

 

 黒い光が、奴の体内から迸る。

 信じられない程に神々しく、悍ましく、恐ろしい、穢れの爆発だ。

 

「はは、はははははははは」

 

 あぁ、そうかよ。

 納得した。納得したぞオイ。

 おかしいと思ってたんだ。

 俺が全力で探しても見つからないとか。

 目を光らせてたのに、気が付いたら無くなってたんだもんな?

 気が付かなかった。

 

「ははははは、はははははははははははははは、はははははははははは!」

 

 しかし……ああ、納得した。

 色々なことに納得した。

 お前なんかがスサノオ役に選ばれる時点で、可笑しいとは思ってたんだ。

 俺がいくら探しても見つからなかったのも。

 俺との争いでこんなことが起こったのも。

 ソ(・)レ(・)があったからこそってわけだ。

 

「ははははは! はっはははははははははは!!」

 

 嗚呼、ずっとだ!

 ずっと探していたんだ!

 そこにあったか!

 そこにあったのか!

 

 道理で見つからないわけだ!

 道理で分からないわけだ!

 まんまと持ち去られて、穢されてたんだからな!!

 

「ようやく見つけたぞ、『草薙の剣』ィ!!」

 

 

 

 

 

 

 勝った。

 何もかも。




そろそろ完結させるか……
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