ーー数日後。
あれから数日経った。
共に寝食を共にすることで、桜ちゃんともだいぶ打ち解けて来た。
今では怯えられることはなくなった。
雁夜おじさんと桜ちゃんに7騎分の霊基を持っていることを伝えた。
今では間桐邸の中では霊基を自由に変えながら生活している。
霊基を変換していて気づいたのだが、どうやら霊基によって、それぞれで演じていた言動に行動が引っ張られるようだ。
エレクトラだと、女っぽく、グレーンヴィだと子供っぽくといった感じになる。
言動だけで、意識まで変わったりは特にないようだ。
桜ちゃんと接するときは、グレーンヴィになって接している。
グレーンヴィの時は互いに桜ちゃん、ヴィーちゃんと呼び合っている。
また、桜ちゃんと雁夜おじさんを守るために、間桐邸を魔術神殿にし、雁夜おじさんには八尺瓊勾玉を貸した。
さらに、
これなら、大抵のサーヴァント相手なら寄せ付けず、侵入されても時間を稼ぐことができるだろう。
動物の中には、気配察知A+以上の動物もいるので、百貌のハサン程度なら侵入すら不可能だ。
八尺瓊勾玉は、魔術や呪術だけでなく、ある程度の物理攻撃も防げる。
Cランク程度なら攻撃を受けても大丈夫だから、雁夜おじさんの安全は確実だろう。
桜ちゃんに関しても、召喚できる動物の中でも選りすぐりの動物たちに守護させているから、大丈夫だ。
アニマルセラピーで桜ちゃんの精神回復も見込めるだろう。
今も、動物たちに埋もれて気持ち良さそうにしている。
そんなこんなで、間桐邸の外には全く出ていなかったので、外出することにした。
現世の娯楽を楽しみたいしね。
漫画とか久しく読んでいないし、お菓子やジャンクフードだって食べていない。
それが現代人である僕にとって、どれだけ苦しいことだったか。
これまでの生も、現世に召喚されることを夢見て、ずっと苦行に耐えて来たしね。
正直、Fate原作より食べ物や娯楽の方をずっと考えていたからね。
……やっと救われる。
漫画が読める、ゲームができる、お菓子が食べれる。
とりあえず、ある程度原作を鑑賞しつつ、現世を楽しもう。
まあ、あまり原作通りにはならないだろうけど。
まずはディンギルになってと。
あまり7騎分の
言動的に
さて、どこにいこうかな?
そもそもお金は持ってないし……そうだ、臓硯のお金を貰おう。
確か、地主やらなんやらをしていて、お金は結構持っていたはず。
思い切って10万円ぐらい拝借しとくか。
ゲームとかはやってる時間ないだろうし、お菓子を買おう。
ポテチとポッキー、カントリーマウムetc……
前世は糖尿病とか虫歯を気にして、食べれなかったけど、
今夜はお菓子パーティーだ。
思う存分食べまくろう。
それじゃあ、近くのコンビニに行こう。
ーー数時間後。
近くのコンビニに行き、Lサイズ数袋分のジュースとお菓子を買い、ほくほく気分で帰路についていると、各地の監視として放っていた獣たちから、アサシンが脱落したという知らせを受けた。
てことは、今夜にはもう
急いで行かないと。
あれ?そう言えば
確か、港湾区域の倉庫が沢山あるところだっけ?
まあ、わざわざ探さないでも、気配をたどって行けばいいか。
グレーンヴィになればここら一帯のどこにい英霊がいるかなんて、手に取るようにわかるし。
とりあえず、間桐邸に帰って反応があるまで待とう。
ーー数時間後。
夜が更けていく中、間桐邸の一室で、僕はグレーンヴィの霊基になり、桜ちゃんと一緒に動物たちに囲まれて過ごしていた。
桜ちゃんは、ふわふわの白いウサギを抱きながら、微笑んでいる。
その様子をを見て、雁夜おじさんは微笑みながら見守っている。
「ヴィーちゃん、今日もありがとう。……動物たち、すごく優しいね。」
「うん、桜ちゃんが優しいから、みんな安心してるんだよ。」
そんな会話を交わしながら、僕は冬木全域の気配に意識を集中させていた。
ーーその時、港湾区域方面に1騎の
たぶん、ランサーだろう。
「来た……」
僕はそっと桜ちゃんの頭を撫でてから、立ち上がった。
「桜ちゃん、ヴィー、ちょっと出かけてくるね。すぐ戻るから、みんなと待ってて。」
「うん……気をつけてね、ヴィーちゃん。」
桜ちゃんが不安そうに答えた。
霊基をディンギルに切り替え、港湾区域に向かおうとすると、雁夜おじさんが真剣な様子で口を開いた。
「本当に……行くんだな?」
「うん、僕の旧知の友がいるからね。なーに大丈夫だよ。キャスターの僕の神殿は完璧だし、
ライダーの僕の獣たちもいるから、万が一にも君たちに危害が及ぶことはないよ。」
「……そうか、無事に帰って来いよ。お前が死んだら桜ちゃんが悲しむ。」
雁夜おじさんが静かにそう言った。
「安心しなよ、ただ顔合わせに行くだけだし、それに、君たちを守るって約束したしね。」
そう言って僕は間桐邸を出て、港湾区域に向かった。
ーー数十分後。
港湾区域に着いた僕は、ランサーを発見した。
今はランサーから数キロ離れたところから千里眼で監視している。
また、現場に隠れさせた気配遮断A持ちの獣と聴覚を同調し、音もリアルタイムで受け取っている。
しばらくの間ランサーを監視していると、1騎の
千里眼で見てみると、やはりセイバーだった。
ランサーと相対したセイバーは少し問答をし、それから戦い始めた。
そして、原作通りセイバーが手傷を負っていた。
おー、なんか、こう、感動するな。
アニメの1シーンを見ている、って思うと。
僕がそう思っていると、遠くから物凄い魔力反応が生じ、それがものすごい勢いでセイバーたちの方へ向かって言った。
ライダーだろう。
ライダーはランサーとセイバーの間に降り立ち、大声で叫んだ。
「双方、武器を収めよ。王の御前である!
我が名は征服王イスカンダル。此度はライダーのクラスにて現界した!」
いきなり現れたライダーに、ランサーとセイバーは警戒している。
「何を――考えてやがりますかこの馬ッ鹿はあああ!」
錯乱したウェイバー君がライダーに掴みかかるが、ライダーにデコピンされて沈黙した。
このシーンも結構好きだったんだよなあ。
ウェイバー君とライダーの絡みって結構面白いし。
そう考えていると、ライダーがランサーとセイバーを配下に誘って断られていた。
ケイネスも出てきたし、そろそろかな?
僕がそう考えていると、ライダーが虚空に向かって叫びだした。
「おいこら!他にも居るだろうが。闇に紛れて覗き見をしておる連中は!」
そう叫んだあと、セイバーと少し話し、また叫び始めた。
「情けない。情けないのぅ!冬木に集った英雄豪傑どもよ。
このセイバーとランサーが見せつけた気概に、何も感じる所がないと抜かすか?
誇るべき身命を持ち合わせておきながら、こそこそと覗き見に徹するというのなら、
腰抜けだわな。英霊が効いてあきれるわなぁ。んん!?」
そう言ってひとしきり笑った後、ライダーは不敵に口を歪め口を開いた。
「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。
なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」
ライダーがそう言った直後、街灯のポールの頂上に黄金の光が現れた。
金色に輝く甲冑に金髪紅眼、我らがAUO、ギルだ。
懐かしいなあ、あれから数千年ぶりか。
早く会いたい気持ちを抑えてギルを見る。
ギルはライダーたちを侮蔑の眼で見下ろし、口を開いた。
「
その言葉にライダーが困惑した様子で口を開いた。
「難癖付けられたところでなあ……イスカンダルたる余は、
世に知れ渡る征服王にほかならぬのだが。」
「たわけ。真の王たる英雄は、天上天下に
ライダーの発言に対してギルはさらりとそう言った。
奴って僕だよね?
代理なんて他にいなかったし、ギルがそこまで思ってくれていたなんて。
僕の前では絶対に言わないだろうし、いいものが見れた。
あれ?これそのまま出て言ったらひどい目に合わない?
聞いてたって知られたら、どんな目に合うか。
とりあえず、聞いてない振りをしよう、そうしよう。
そう考えていたらギルがいつの間にか
「我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、
そんな蒙昧は生かしておく価値はない!」
よし、そろそろか。
僕はギルを狙って弓を引く。
すんでのところで矢に気づいたギルは、王の財宝で矢を相殺する。
重ねて矢を放ちながら、ギルたちの上空に移動する。
僕を見て、みんな驚いているようだ。
ギルはなぜか無言で佇んでいる。
僕を見て、ウェイバー君が動揺して叫んだ。
「なっ!アーチャーが二人!?」
それを、ライダーが窘める。
「いやどちらかがキャスターかバーサーカーであろう。
……むぅ、だとしたら、金色の方がキャスターか?
坊主、サーヴァントとしちゃどの程度のモンだ?あれは。」
僕を注視したウェイバー君が、さらに驚いて叫んだ。
「……はああああ!?ステータスが全部B以上!?」
ライダーが首を傾げながら問いかける。
「なんだ?それはすごいのか?坊主。」
「あ、ああ、ステータスでいうなら、セイバーやランサー、あの金ぴかにだって勝ってる。」
ウェイバー君が震える声で答えた。
「ほう、ということは金色がキャスターってところか?
それか、アイツがキャスターってこともありうるか。」
ライダーが推測を口にすると、ウェイバー君が反論した。
「馬鹿言うなよ!あんなステータスのキャスターなんて聞いたことないぞ!?」
「いるかもしれんではないか。坊主は今回が初めてなのであろう?
実際に見ていないのに、いないと決めつけるのは良くないぞ。」
ライダーが諭すように言った。
「そ、それはそうだけど。」
ウェイバー君が悔しそうに呟いた。
喋っているのはウェイバー君とライダーだけで、他の面々は一言もしゃべらず、警戒している。
ウェイバー君とライダーの様子を見ながらギルの様子を見ていると、ギルが突然笑い始めた。
「ふふ、ふははははははははは!よもや、お前が呼ばれておるとはな、ディンギル。
此度の聖杯戦争も
お前がいるなら話は別だ。……この戦、
ギルがそう言って王の財宝を展開し、エアを取り出した。
どうやら再会して早々にエヌマろうとしてるみたいだ。
僕も展開しないとね。
「これをもって再会の宴を上げるとしよう。
エアよ、存分に謳うがいい。
……貴様ごときの諌言で、我が友との宴を妨げるか。大きく出たな、時臣……」
お互いに宝具を展開しようとしたら、ギルが突然宝具の展開を中断した。
憤懣甚だしいといった様子で、東南の方向を忌々しく見つめたギルは、エアを仕舞い、こちらを見て口を開いた。
「すまぬな、要らぬ横槍が入った。次相まみえる時に宴の続きをするとしよう。」
「いいよ、次は全力で楽しもう、ギル。」
僕がそう答えると、ギルは満足げに頷いた。
どうやら、聞いていたことはばれてないみたいだ。
「うむ。……雑種ども。
次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い。」
最後に他の英霊たちを睥睨したギルはそう言い放ち、姿を消した。
それにしても、時臣は大丈夫かな?
ギル結構怒ってたし、殺されてないといいけど。
まあ、時臣に思い入れなんてないし、別に死んでも構わないけどね。
ライダーが呆れた風に苦笑して言った。
「フムン。どうやらアレのマスターは、あの金色自身ほど剛毅な質ではなかったようだな。」
僕を見て警戒しながらランサーが言った。
「……なぁ征服王。アイツには誘いをかけんのか?」
「おお、そうであったな。アーチャーよ、我が軍門に降り、聖杯を世に譲る気はないか?」
ライダーが僕に問いかける。
「面白そうだけど、残念ながら無理かな?
代理とはいえ、僕も一応王をしていたし、誰かに傅くつもりはないよ。
それに、僕はアーチャーじゃなくて、キャスターだから。そこんとこ、よろしく。」
「む、キャスターであったか。……ほれ見ろ、小僧。キャスターであったではないか。んん?」
ライダーが得意げにウェイバー君を見やる。
ウェイバー君は悔しそうに唇を噛んだ。
「……でも、あんなキャスター、やっぱりおかしいだろ。魔術師って、もっとこう……」
まあ、ウェイバー君が最初言ってたことが正しいんだけどね。
このまま、クラス詐称しておこう。
キャスターはジル・ド・レェだけど、あの言動ならバーサーカーって言っても疑われないだろうし。
「貧弱で、工房に籠っているモンだとでも思っていたか?
坊主よ、それは偏見というものだ。英雄とは、時に常識を覆すものだ。なあ、キャスターよ?」
ライダーが話を振ってきた。
とりあえず、話を合わせよう。
「うん。僕はまあ、魔術師っていうか弓兵が本業だけど、
クラス詐欺の英霊なんてたくさんいるよ?魔術を使わないキャスターもいるし、
近接主体のアーチャーやアサシンだっているしね。」
玉藻とか紅茶とかじいじとかね。
「ほお、ずいぶんと詳しいのだな?キャスター。ますます余の軍門に加えたくなった。
……もう一度聞くが、本当に余の軍門に降る気はないな?」
ライダーが再び問いかける。
「うん、この意志は変わらないよ。」
「ならば、我らはそれぞれの道を進むとしよう。次に再び相まみえんことを願う!」
ライダーが力強くそう言い放つ。
「うん。僕も楽しみにしてるよ、ライダー。」
ウェイバー君はまだ納得いかない様子だったが、ライダーの言葉に押されて黙り込んだ。
その場の空気が少し和らいだところで、僕はふと空を見上げた。
「さて……そろそろ僕も行くよ。
あれからずっと桜ちゃんと遊んでいたため、お菓子パーティーをしていなかった。
出してはいたけど、遊ぶのに夢中で、あまり食べていない。
桜ちゃんももう寝ているだろうし、今日は一人でお菓子を楽しもう。
そう考えながら、僕は霊体化してその場を離れた。
原作主人公の性別
-
男
-
女