7騎で1騎のサーヴァント   作:悪平等な人外

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文字数が結構多くなった。
これからも、文字数は安定しないだろうけど、許して。


王たちの狂宴

ーー数十分後。

 

帰る途中に、セイバーたちの様子を見てみたら、三つ巴での戦闘を躊躇ったのか、ランサーが撤退し、その後に、セイバーたちも解散した。

 

一人、家に帰ると雁夜おじさんが出迎えてくれた。

 

「おかえり、バーサーカー。それで、どうだった?」

 

「うーん、ぼちぼちかな?ギルには会えたけど、再会の宴を邪魔されちゃったし。

 まあ、まだまだ聖杯戦争は続くし、続きをする機会もあるかな。」

 

「そうか、あまり無理はするなよ。」

 

雁夜おじさんは心配そうにそう言った

 

「うん。……それで、雁夜、今夜は一緒に聖杯戦争を鑑賞しながらお菓子を食べようよ。」

 

「ああ、いいぞ。それで、何処の陣営を見るんだ?」

 

雁夜おじさんは少し興味を示したようだ。

 

「キャスター陣営と、セイバー陣営だよ。

 丁度今、セイバーとキャスターが対峙しているようだし、今、見せるね。」

 

僕はテレビぐらいの大きさの魔術礼装に動物たちの視界を映し出した。

 

聴覚も同調させているため、しっかりとその場の音も聞こえる。

 

画面にキャスターとセイバーの姿が映し出された。

 

キャスターがセイバーに臣下の礼を取って口を開いた。

 

「お迎えに上がりました。聖処女よ。」

 

「な……」

 

セイバーは困惑している。

 

困惑したセイバーとアイリスフィールが囁き合っていると、キャスターが血相を変えて口を開いた。

 

「……おおぉ、御無体な!この顔をお忘れになったと仰せですか!?」

 

セイバーは憮然として口を開いた。

 

「知るも何も、貴公とは初対面だ。――何を勘違いしているか知らぬが、人違いではないか?」

 

その言葉にキャスターは髪を掻き毟りながら叫んだ。

 

「おお、おおお……私です!あなたの忠実なる永遠の僕、ジル・ド・レェに御座います!

 あなたの復活だけを祈願し、いまいちど貴方と巡り会う奇跡だけを待ち望み、

 こうして時の果てにまではせ参じて来たのですぞ。ジャンヌ!」

 

セイバーはため息をつきながら言った。

 

「私は貴公の名を知らぬし、そのジャンヌなどという名にも心当たりがない。」

 

セイバーの言葉により一層取り乱してキャスターが口を開いた。

 

「そんな……まさか、お忘れなのか!?生前のご自身を!?」

 

その言葉に毅然としながらセイバーは言った。

 

「貴公が自ら名乗りを上げた以上は、私もまた騎士の礼に則って真名を告げよう。

 我が名はアルトリア。ウーサー・ペンドラゴンの嫡子たるブリテンの王だ。」

 

キャスターは地を叩きながら叫んだ。

 

「おおぉ!オオオオオォッ!なんと痛ましい!なんと嘆かわしい!

 記憶を失うのみならず、そこまで錯乱してしまうとは……

 おのれ……おのれぇぇッ!我が麗しの乙女に、神はどこまで残酷な仕打ちを!」

 

苛立ったセイバーが口を開こうとすると、アイリスフィールがセイバーを止めた。

 

「セイバー、その男には何を言っても無駄よ。

 狂気へと凋落し、聖なる怪物(モンストル・サクレ)と呼ばれた彼ならば

 バーサーカーで呼ばれたのも納得だわ。

 会話はできるようだけど、根本的な意味での意思疎通は不可能よ。」

 

セイバーはアイリスフィールの言葉に一瞬目を伏せ、深く息を吐いた。

 

そして、すぐに顔を上げ、キャスターを真っ直ぐに見据える。

 

「ならば、問答はここまでだ。貴公が私をジャンヌとやらと誤認しようが構わない。

 さあ、立って私と戦え。バーサーカー。」

 

そこまで鑑賞していた際、雁夜おじさんが口を開いた。

 

「あいつがバーサーカー?……バーサーカー、クラスを偽ったのか?」

 

驚いたように眉をひそめながら、雁夜おじさんが言った。

 

「うん、前々からキャスターの言動は知っていたし、

 キャスターって詐称してもバレないかなって。」

 

「……なるほどな。確かに、あの狂気じみた言動はバーサーカーのそれに近い。

 これならお前の嘘もバレないだろうな。」

 

納得したように、雁夜おじさんは頷いた。

 

「でしょ?まあ別にクラスがばれても支障はないけどね。」

 

「そうだな。……しかし、あれほどの妄執……。セイバーも災難だな。」 

 

そう言って雁夜おじさん画面を見た。

 

画面では丁度キャスターが去ろうとしているところだ。

 

「誓いますぞジャンヌ。この次に会う時は、

 必ずや……あなたの魂を神の呪いから解放して差し上げます。」

 

キャスターが静かに言い残す。

 

「聞く耳持たぬ。剣を執る覇気がないものは去れ。」

 

セイバーが冷たく言い放つと、キャスターはその場を後にした。

 

映像はキャスターを追うが霊体化しているため誰も映らない。

 

「……まだ見るのか?」

 

「うん。多分だけど、この後に面白いものが見れそうだしね。」

 

そうしてキャスターを追うこと十数分。

 

景色は夜の住宅街へと移動していた。

 

キャスターは霊体から実体化し、物陰から一人の幼い少女を見つめていた。

 

どうやら塾帰りか何かのようだ。

 

子供が夜に出歩くなんて、現代に比べて、本当に物騒な世の中だなあ。

 

僕がそう考えていると、キャスターが少女に近寄っていく。

 

「ふむ、我が麗しき聖処女に捧げる贄に最適でしょう。」

 

キャスターはそう言って背後から少女に手を伸ばした。

 

「なっ……!バーサーカー、今すぐ止めろ!あいつ、あの子を狙ってる!」

 

雁夜おじさんが立ち上がって叫んだ。

 

「大丈夫だよ。手は打ってるから。」

 

キャスターが手を伸ばす背後から、監視させているのとは別の動物たちが襲い掛かった。

 

キャスターは済んでのところでそれを避け、口を開いた。

 

「なっ……また貴様らか!この忌々しい獣どもめ!」

 

キャスターは顔をしかめ、ローブを振り払って動物たちを追い払おうとするが、動物たちは怯むことなく次々と襲いかかる。

 

少女はその隙にキャスターから逃げ出し、姿を消した。

 

「くっ……またしても、我が聖処女への献上を邪魔するか……!」

 

キャスターは苛立ちを隠せず、地面を踏み鳴らす。

 

「この獣どもが!何度我が神聖なる儀式を妨げれば気が済むのです……!

 おのれおのれおのれおのれおのれおのれェェェェェ!」

 

キャスターはそう言って頭を掻き毟りながら螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を取り出した。

 

キャスターが螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を掲げると、空間が歪み、異形の魔物たちが次々と召喚されていく。

 

「お前たち!我が聖処女を穢す獣どもを喰らい尽くしなさい!」

 

キャスターは動物たちを指さし魔物たちに命令する。

 

魔物たちはキャスターの号令に応じ、動物たちへと襲いかかった。

 

動物たちは怯むことなく、巧みに連携しながら魔物たちの攻撃をかわし、反撃を繰り出す。

 

そうしてある程度戦闘を続けたところで動物たちを撤退させた。

 

此方の動物たちに消耗はあれど、被害はないが、キャスターの召喚した魔物たちには大きな被害が出た。

 

キャスターは顔を歪め、怒りと悲嘆の混じった声で叫んだ。

 

「何故だ!何故こうも上手くいかないのです!何故何故何故何故何故何故ェェェェェl!」

 

キャスターは膝をつき、地面に拳を打ちつける。

 

そして地面に拳を打ちつけたまま、肩を震わせながら呻いた。

 

「申し訳ありません……ジャンヌ。」

 

キャスターは嗚咽混じりに言葉を続けた。

 

「……あなたの御心に届かぬ我が祈り、いかにして贖えばよいのか……。  

 この身を裂こうとも、魂を捧げようとも、あなたの微笑みを取り戻せぬのならば……」

 

キャスターはゆっくりと顔を上げ、夜空を見上げる。

 

「それでも、私は諦めません。ジャンヌ。  

 この命尽きるその瞬間まで、あなたの救済を願い続けましょう。  

 たとえこの身が地獄に堕ちようとも……!」

 

そう言ってキャスターは立ち上がり、霊体化して姿を消した。

 

キャスターが去ったところで僕は映像を消した。

 

「これで終わりかな。それで、どうだった?」

 

「……あいつ、本当に狂ってるな。いや、狂気というより、信仰の果てか……。

 それにしても、ここまで気づかれずに鑑賞できるとは……

 もしかして、他の陣営も全部見れるのか?」

 

雁夜おじさんは興味深げに顔をこちらへ向けた。

 

「いいや、ギルのとこだけ見れないんだよね。

 ギルの眼は何でも見通せるし、動物たちもバレちゃうから。」

 

「ということは、お前が他の霊基に代われることもバレてるんじゃないか?」

 

雁夜おじさんが少し不安げに問いかけてきた。

 

「いや、そこは大丈夫だと思う。ギルは戯れに全てを見通すことはあるけど、

 面白みがないからってあまり見通そうとはしないから。」

 

「そうか。なら安心だな。」

 

雁夜おじさんはほっとしたように息をついた。

 

「そう言えば、キャスターがまたしてもって言っていたが、これまで何度も邪魔していたのか?」

 

雁夜おじさんは思い出したかのように聞いてきた。

 

「うん、そうだよ。監視を始めた最初から今日までずっと邪魔してるから、被害はゼロだと思うよ?」

 

「そうか。……一つ疑問なんだが、あの動物たちでキャスターを倒せたんじゃないか?

 なんでわざわざキャスターを生かすような真似を?」

 

雁夜おじさんは不思議そうにそう言った。

 

「いやあ、ちょっとキャスターの存在は必要だからね。」

 

あまり意味はないだろうけど、ある程度は原作に沿いたいし。

 

それに、キャスターの様子を見ていたら面白いからね。

 

雁夜おじさんは眉をひそめた。

 

「必要……?あんな危険な奴を生かしておく理由があるのか?」

 

「まあ、色々あるんだよ。被害は出さないし安心してよ。

 ……そう言えば、今日はもう遅いし、雁夜も寝たら?随分と眠そうに見えるけど?」

 

隈こそできていないけど、結構眠そうだ。

 

雁夜おじさんは静かに頷いて口を開いた。

 

「……ああ、そうだな……今日はもう十分楽しませてもらったし、そろそろ休むよ。」

 

雁夜おじさんは立ち上がり、ゆっくりと寝室へ向かっていった。

 

さてさて、僕は他の陣営を見終わってから寝ようかな。

 

ーー数時間後。

 

それぞれの陣営の戦いは原作通り終わった。

 

鑑賞を終えた僕は眠りについた。

 

ーー一日後。

 

日中は桜ちゃんと雁夜おじさんと共に過ごした。

 

夕方になってライダーが話しかけてくれるかも?

 

と思いながら、コンビニでお菓子を買い、街を歩いていると、ライダーが話しかけて来た。

 

「おお、キャスター!元気そうだな!壮健そうで何よりだ。」

 

そう言ったライダーは大きな酒だるを抱えていた。

 

「ライダーこそ、相変わらず威風堂々だね。……その酒樽どうしたの?」

 

僕の言葉にライダーは胸を張って答えた。

 

「今宵はアインツベルンの城にて宴を催す予定なのだ。キャスター、貴様も来るがよい!」

 

ライダーは狙い通り、宴に誘ってくれた。

 

「面白そうだしいいよ!それで、他に誰が参加するの?」

 

ライダーは頷いて口を開いた。

 

「うむ、まずは余と我がマスター、そして、セイバー陣営。

 ……アーチャーにも声をかけたが来るかはわからん。」

 

まあ、ギルは原作でも来てたし多分来るでしょ。

 

「確かに、ギルは気まぐれだもんね。

 それで、本題は?ただ宴をするだけってわけでもないでしょ?」

 

ライダーはにやりと笑い、声を潜めて言った。

 

「ふふふ、察しがいいなキャスター。実はな、この宴にて貴様らの王の器を量ろうというわけだ。

 何、余の器を量ってもらっても構わん。貴様も王だというならば必ず参加するがいい。」

 

「なるほど……王の器を量る宴、か。面白い趣向だね。

 ……でも、セイバーはともかく、ギルが来たら場が荒れそうだよね?」

 

「うむ、それもまた一興。王たる者、他の王と交わることで己を知るものだ。  

 争いになろうとも、それも器の一端よ。」

 

ライダーは豪快に笑いながらそう言った。

 

「なるほどね……それで、いつ宴を開始するの?」

 

僕がそう言うと、ライダーが空を仰ぎ見ながら言った。

 

「今宵、日が沈み、月が高く昇りし頃。アインツベルンの城にて待ってるぞ。」

 

そう言ってライダーは去って行った。

 

ーー数時間後。

 

ライダーの魔力反応を察知して僕はアインツベルンの城へ向かうため、森の中を歩いていた。

 

森は既にライダーによって切り開かれており道ができていた。

 

道をたどって進んでいると、大きな城が見えてきた。

 

城の中からはライダーとセイバーの気配がする。

 

ギルはまだ来ていないようだ。

 

僕は城に入りライダーたちのところに向かった。

 

ライダーたちのところに着くと、こちらに気づいたライダーが声をかけて来た。

 

「来たか、キャスター!よくぞ参った!さあ、席に着くがよい。

 今宵は存分に語らい、飲み、そして王としての器を示すのだ!」

 

「うん。楽しみにしてたからね。」

 

セイバーは既に床に正座していた。

 

「こんばんは、セイバー。今夜はよろしくね。」

 

セイバーの隣に座りながら僕が声をかけると、セイバーは一瞬だけ視線を向けて、軽く頷いた。

 

「……ああ。王としての在り方を問う場ならば、私も誠意をもって応じよう。」

 

「よし、よし!それでこそだ!」

 

ライダーが大声で笑い、柄杓でワインを掬い始めた。

 

「いささか珍妙な形だが、これがこの国の由緒正しい酒器だそうだ。」

 

ライダーはそう言って掬い取ったワインを一息に飲み干した。

 

「聖杯は、ふさわしき者の手に渡る定めにあるという。

 それを見定めるための儀式が、この冬木における闘争だと言うが――

 なにも見極めをつけるだけならば、血を流すには及ばない。

 英霊同士、お互いの格に納得がいったなら、それで自ずと答えは出る。」

 

そう真剣な様子で言ったライダーは柄杓をセイバーに差し出した。

 

「……」

 

セイバーはワインを受け取った柄杓で掬い、一息に飲み干した。

 

「それで、まずは私と格を競おうというわけか?ライダー。」

 

ライダーは満足げに頷き、セイバーの杯を見届けると、次に僕の方へ柄杓を差し出した。

 

「うむ。……キャスターよ、貴様もまた王を名乗る者。ならば、この杯を受け、己の器を示すがよい!」

 

僕お酒はあまり好きじゃないんだけどなあ。

 

これまでの生でも何回も飲む機会はあったけど、一向になれることはなかったし。

 

まあでも、呑まないわけにもいかないだろうし、一思いに飲み干そう。

 

僕は柄杓を受け取り、ワインを掬い一息に飲み干した。

 

うぇっ、やっぱりお酒は慣れないなあ。

 

果実酒とかならある程度飲めるんだけどなあ。

 

ライダーに何を言われるかわからないし、顔に出さないようにしよう。

 

僕がそう考えていると、ライダーは満足げに笑い、腕を組んで言った。

 

「よし、三人の王が杯を交わした。ならば、今宵の宴は真の意味で始まるというものだ!」

 

そう言ってからライダーはふいに悪戯気に口元を歪め、口を開いた

 

「ああ、そう言えば、我らの他にも一人ばかり、王だと言い張る輩がおったっけな。」

 

「――戯れはそこまでにしておけ、雑種。」

 

ライダーの言葉に応じるようにギルが現れた。

 

その顔は不機嫌そうだ。

 

ギルはこちらを見据えるとにやりと笑って口を開いた。

 

「……ほお、やはりお前も来ていたか、ディンギル。

 このような雑種の集い、(オレ)が出向くまでもないと思っていたが、

 お前がいるならば……少しは興が湧くというものだ。」

 

そう言ってギルはあたりを見渡すと不機嫌そうに口を開いた。

 

「よもやこんな鬱陶しい場所を王の宴に選ぶとは。それだけでも底が知れるというものだ。

 (オレ)にわざわざ足を運ばせた非礼をどう詫びる?」

 

そう言ってギルはライダーを睨みつける。

 

「まぁ固いことを言うでない。ほれ、駆けつけ一杯。」

 

ライダーは笑いながらワインを掬った柄杓をギルに渡す。

 

柄杓を受け取って飲み干したギルは顔を歪めて口を開いた。

 

「――なんだこの安酒は?こんなもので本当に英雄の格が量れるとでも思ったか?」

 

「そうかぁ?この土地の市場で手に入れたうちじゃあ、こいつはなかなかの逸品だぞ。」

 

ライダーはそう言って肩をすくめた。

 

「そう思うのは、お前が本当の酒というものを知らぬからだ。雑種めが。」

 

ギルはそうライダーを嘲り、王の財宝を展開して酒瓶と酒器を取り出した。

 

「見るがいい。そして思い知れ。これが王の酒というものだ。」

 

「おお、これは重畳。……む?おい金ぴか、酒器が一つ足りんぞ?」

 

ライダーは首を傾げながらそう言った。

 

「ふん、間違いではない。此奴には、別の酒を振る舞うのでな。」

 

ギルはそう言って、僕がいつも愛飲していた果実酒を注いでくれた。

 

その様子を見てライダーを酒を組み分け、ギルとセイバーに手渡す。

 

「ありがと、ギル。やっぱこれが一番だね。」

 

そう言って僕は果実酒を飲み干した。

 

やっぱうまいなあ、この果実酒。

 

いくら飲んでも飽きない味がする。

 

ギルは僕の言葉に満足げに頷き、口元にわずかな笑みを浮かべた。

 

「ふ、当然のことよ。(オレ)が見繕った酒なのだからな。」

 

ギルとそうやって話していると、酒を口にしていたライダーが目を丸くして口を開いた。

 

「むほォ、美味いっ!!」

 

ライダーが杯を置くと、目を輝かせて僕の方へ身を乗り出してきた。

 

「キャスターよ、その果実酒……余にも一杯、所望してもよいか?」

 

「もちろん、いいよ。ギルが選んでくれたものだし、きっと気に入ると思う。」

 

僕がそう言ってギルの方を向くと、ギルは鼻で笑いながらも、王の財宝から再び果実酒の瓶を取り出した。

 

「ふん、雑種に味が分かるとは思わぬが……まあ、余興として振る舞ってやろう。」

 

「むほォ、こいつも美味い!!しかし、ちと甘すぎんか?」

 

果実酒を口にしたライダーは眉をひそめながらそう言った。

 

ギルはライダーの言葉に眉をひそめ、冷ややかに言い放った。

 

「ふん、貴様に味が分からぬだけよ。これは果実の芳醇なる旨味を極限まで引き出した逸品。  

 粗野な舌には理解できぬかもしれぬが、これは選ばれし者のための酒よ。」

 

その言葉に、ライダーは杯を傾けて再び果実酒を口に含んだ。

 

「ふむ……確かに、ただ甘いだけではないな。深みがある。香りも良い。    

 なるほど、これは至高の酒と呼ぶに相応しいかもしれん。」

 

ライダーの言葉に、ギルは誇らしげに胸を張って言った。

 

「当然であろう。酒も剣も、我が宝物蔵には至高の財しか有り得ない。

 ――これで王としての格付けは決まったようなものだろう。」

 

その言葉にセイバーが口を開いた。

 

「ふざけるな、アーチャー。

 酒蔵自慢で語る王道なぞ聞いてあきれる。戯れごとは王ではなく道化の役儀だ。」

 

その言葉を鼻で笑ってギルは口を開いた。

 

「さもしいな。宴席に酒も供せぬような輩こそ、王には程遠いではないか。」

 

言い返そうとしたセイバーを遮ってライダーが口を開いた。

 

「こらこら。双方とも言い分がつまらんぞ。」

 

そう言ってライダーは杯を傾け、にやりと笑った。

 

「アーチャーよ、貴様の極上の酒はまさしく至宝の杯に注ぐに相応しい。

 ――が、あいにくと聖杯は酒器と違う。これは聖杯を摑む正当さを問うべき聖杯問答。

 まずは貴様がどれほどの大望を聖杯に託すのか、それを聞かせてもらわなければ始まらん。

 さて、アーチャー、貴様はひとかどの王として、

 ここにいる我ら三人をもろともに見せるほどの大言が吐けるのか?」

 

ギルは不快そうに眉をひそめ、吐き捨てるように言った。

 

「仕切るな雑種。第一、聖杯を奪い合うという前提からして理を外しているのだぞ。」

 

「ん?」

 

ライダーは首を傾ける。

 

ギルは冷ややかに言葉を続けた。

 

「そもそもにおいて、アレは(オレ)の所有物だ。世界の宝物はひとつ残らず、

 その起源を我が蔵に遡る。いささか時が経ちすぎて散財したきらいがあるが、

 それらすべての所有権は今も(オレ)にあるのだ。」

 

ライダーは興味深げに身を乗り出し、問いかけた。

 

「じゃあ貴様、むかし聖杯を持ってたことがあるのか?どんなもんか正体も知ってると?」

 

ギルは鼻で笑いながら答えた。

 

「知らぬ。――雑種の尺度で測るでない。(オレ)の財の総量は、とうに(オレ)の認識を超えている。

 だがそれが『宝』という時点で、我が材であるのは明白だ。

 それを勝手に持ち去ろうなど、盗人猛々しいにも程がある。」

 

「でもギル、原典はたくさん持ってたよね?願いを叶える杯なら、

 蔵に掃き捨てるほどあるよね?」

 

生前何個か見せてもらった記憶があるけど。

 

あの当時でも結構な数あったし、今となってはどれくらいあるか想像もできない。

 

僕がそう言うと、ギルは得意げに笑みを浮かべて言った。

 

「ふ……確かに、願望器の原典など、我が蔵には数多ある。

 この聖杯戦争の聖杯は所詮、魔術師が作った模造品。真に願いを叶える聖杯とは、格が違う。

 雑種どもが争っているそれが、果たして願望機足り得るかどうか――それすら疑わしい。」

 

ライダーは興味深そうに頷きながら言った。

 

「ほう……それほどの聖杯が貴様の蔵にあるというならば、余も一つ、所望したいものだな。」

 

ギルは冷ややかに笑いながら言い放った。

 

「お前らの如き雑種に、(オレ)が褒賞を賜す理由はどこにもない。」

 

ライダーは肩をすくめ、冗談めかして言った。

 

「貴様、もしかしてケチか?」

 

ギルは鼻を鳴らして言い返した。

 

「たわけ。(オレ)の恩情に与るべきは(オレ)の臣下と民、そして友だけだ。

 故にライダー、お前が(オレ)の許に下るというのなら、

 杯の一つや二つ、いつでも下賜してやって良い。」

 

「……まぁ、そりゃできん相談だわなぁ……友にならなれるんだがなぁ。」

 

「たわけ。(オレ)の友はこの世において、ただ二人。

 貴様如き雑種が(オレ)の友だと?……あまり思い上がるなよ?ライダー。」

 

ライダーは肩をすくめ、苦笑しながら言った。

 

「ふむ、そうか。ならば余はその二人に敬意を表するとしよう。  

 だがな、アーチャー。王とは孤高であると同時に、民を導く灯火でもある。  

 友を持たぬ王など、裸の王に過ぎんぞ。」

 

ギルはその言葉に眉をひそめ、冷ややかに言い返す。

 

「灯火だと?くだらぬ幻想だな。真の民に導きは必要ない。

 (オレ)の時代の民は皆そうだった。……民は己の役割を理解し、己の立場を弁えていた。

 王とは、ただ在るだけでよい。(オレ)の存在こそが秩序であり、指針であり、絶対なのだ。」

  

ライダーはギルの言葉を聞き終えると、しばし沈黙した。

 

そして、ゆっくりと杯を置き、堂々と立ち上がる。

 

「……なるほどな。貴様の言葉、確かに王としての一つの在り方だ。  

 民に導きは不要、王はただ在るだけでよい……か。」

 

ライダーは天井を仰ぎ、語り始めた。

 

「だがな、アーチャー。余の時代の民は、夢を見ていた。  

 広大な大地を駆け、未知を求め、共に笑い、共に泣いた。  

 余はその先頭に立ち、我らの夢を現実に変えるために剣を振るった。」

 

ライダーは拳を握りしめ、力強く言葉を続ける。

 

「王とは、民の夢を背負う者だ。民に夢を与え、共に歩む者だ。

 孤高であることは誇りだが、孤独であることは誤りだ。  

 王が民を見捨てた時、民もまた王を見捨てる。」 

 

ライダーは静かに言葉を紡いだ。

 

「だからこそ、余は聖杯を求める。    

 それは、かつて果たせなかった夢の続きを、民と共に歩むためだ。    

 征服王としての誇りを胸に、再び世界を駆けるために。    

 民の歓声を背に、彼らの希望を余の剣に宿すために。」

 

ギルは微笑して口を開いた。

 

「……ふむ。征服王よ、貴様の語りは、雑種にしてはよく練られている。  

 その姿、滑稽ではあるが、その熱量、悪くはない。」

 

ギルの言葉に、ライダーは肩をすくめて笑った。

 

「滑稽でも構わん。余は余の在り方を誇るのみ。    

 ……さて、余と金ぴかは語り合ったとこであるし、

 キャスター貴様の懐の内を聞かせてもらおうか。」

 

いきなり僕にお鉢が回ってくるとは。

 

「僕には願いはないかな?わざわざ願望機で叶えたい願いはないしね。」

 

聖杯は汚染されてるし、別段聖杯で叶えたい願いなんて、娯楽ぐらいだしなあ。

 

ライダーは少し驚いたように目を見開き、そして興味深げに僕を見つめた。

 

「ほう……願いがない、とな?では、貴様の王の在り方を問おう。」

 

王の在り方かあ、そもそも代理だし、在り方なんて考えたことないんだけど。

 

とりあえず、適当にそれっぽく語っておくか。

 

「僕は……王じゃないよ。少なくとも、自分ではそう思ってない。」

 

その言葉に、ライダーは眉をひそめ、口を開いた。

 

「ふむ、……代理であろうと、王として振る舞う以上、その在り方は問われる。

 貴様が何を守り、何を導こうとするのか、それが貴様の王道となる。」

 

「うーん。そうだね、僕の王道は補助することかな。

 元々ギルの補助として、代理をしていたしね。

 ただ手助けをするんじゃなくて、自立できるように、最低限だけど。

 まあ、ウルクの皆は強かったから、そこまで補助はいらなかったけどね。」

 

ライダーは僕の言葉を聞いて、しばし黙した後、静かに頷いた。

 

「……なるほどな。補佐の王か。民を導くのではなく、自立させることで王道を示すか。  

 それもまた、一つの在り方だ。余の王道に相まみえぬが、それもまた、王たり得る。

 ――さて、次はセイバー。貴様の懐の内を聞かせてもらおうか。」

 

お、なんだか納得してくれた。

 

セイバーへの反応みたいに、否定されたら面倒だったし、良かった。

 

僕が胸を撫で下ろしていると、セイバーが毅然として口を開いた。

 

「私は、我が故郷の救済を願う。万能の願望機をもってして、ブリテンの滅びの運命を変える。」

 

セイバーの言葉に場がしばし沈黙し、困惑した顔のライダーが口を開いた。

 

「――なぁ騎士王、もしかして余の聞き間違いかもしれないが。

 貴様はいま運命を変えると言ったか?それは過去の歴史を覆すということか?」

 

セイバーはライダーの問いに、静かに頷いた。

 

「そうだ。私は、かつての過ちを正し、民を救うために聖杯を求める。  

 ブリテンの滅びは、私の選択によって導かれたもの。

 ならば、王として、その責を果たすべきだ。」

 

その言葉にギルが笑い出す。

 

「ふふ、ふははははははは!」

 

笑われてムッとなったセイバーが口を開いた。

 

「……アーチャー、何が可笑しい。」

 

怒気を含んだ声で、セイバーは問いかける。

 

笑いすぎて、少し息切れになったギルが口を開く。

 

「いや、なに、お前の思わぬ道化っぷりにな。自ら王を名乗り、

 民に讃えられた――そんな輩の願いが過去の改変とはな。ハッ!これを笑わずにいられるか?

 この(オレ)を笑わせるとは、セイバー、お前はまさに最高の道化よなあ。」

 

「なっ、アー

 

セイバーが激昂し、言葉を発しかけたその瞬間、セイバーの言葉を遮って、ライダーが口を開いた。

 

「まあ待て――ちょっと待ちおれ騎士王。貴様、よりによって、

 自らが歴史に刻んだ行いを否定するのか?」

 

ライダーは静かに、しかし重みのある声でそう言った。

 

「否定ではない。償いだ。私は、王として選び取った道の果てに、民を滅びへと導いた。  

 その責を、私は逃れぬ。過去を変えることが、私の贖罪であり、救済なのだ。

 それに、王として身命を捧げた故国が滅んだのだ。それを悼むのがどうして可笑しい?」

 

セイバーは毅然とした口調でそう言い返す。

 

その言葉にギルが笑い転げる。

 

「ふはは、ははははは!はははははははははははははははははははははは!

 これはまずい、命がまずい!セイバー、我を笑い殺す気か!

 ふはっ、ふははははははははは。よもや、ここまで我を笑わせるとはな。

 認めよう、セイバー、お前こそが道化王であるとな。

 ふははははははははは!どれ、今なら聖杯の一つや二つでもくれてやろうではないか。」

 

ギルは腹を抱えて笑いながらそう言った。

 

「貴様……ッ!アーチャー!我が願いを侮辱するか!」

 

セイバーが立ち上がり剣を抜いた。

 

その次の瞬間、アサシンたちが姿を現した。

 

ウェイバー君たちは驚き、ライダーたちは警戒している。

 

僕も今気づきましたよ。って感じでアサシンたちを警戒している振りをしておく。

 

正直、百貌程度なら、不意打ちされても余裕で返り討ちに出来るけどね。

 

僕がそう考えていると、ライダーがギルを見て口を開いた。

 

「……これは貴様の計らいか?金ピカ。」

 

ライダーは疑念を込めて問いかける。

 

「さてな。雑種の考えることなど、いちいち知ったことではない。

 が、(オレ)の参加する宴に強襲を掛けるなど無粋な輩もいるものだな。」

 

ギルは冷ややかそう言い放ち、アサシンたちを睨みつけた。

 

「この程度の輩、(オレ)が相手するまでもない。お前たちで相手をしろ、ライダー。」

 

ギルは軽く手を振りながらそう言った。

 

「もとよりそのつもりだわい。さて、アサシンよ。

 いい加減、その剣呑な鬼気を放つのは控えてくれんか?

 見ての通り、連れが落ち着かなくて困る。

 まずはどうだ駆けつけ一杯。宴の客を遇するのも王たる度量だ。

 共に語ろうという者がいるのならば、ここに来て杯を受け取るがよい。

 この酒は貴様らの血と共にある。」

 

ライダーがそう言って、柄杓を差し出すた。

 

すると、アサシンの一人がナイフを投げ柄杓を切断した。

 

切断された柄杓を眺め、溜息をついたライダーは口を開いた。

 

「――余の言葉、聞き違えたとは言わさんぞ?この酒は貴様らの血と言った筈――そうか。

 敢えて地べたにブチ撒けたいというならば、是非もない……」

 

ライダーは静かにそう言い放つ。

 

「さて、セイバー、そしてアーチャー、キャスターよ。

 貴様らには、余の王道、真の王の姿を見せてやろう。」

 

ライダーは高らかに宣言した。

 

その言葉と同時に、熱風が吹き寄せ、辺り一面の景色が変わった。

 

晴れ渡る青空、灼熱の太陽、辺り一面の大砂漠。

 

まさしくライダーの王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)だ。

 

「固有結界――ですって!?そんな馬鹿な……

 心象風景の具現化なんて……あなた、魔術師でもないのに!?」

 

驚愕したアイリスフィールが叫ぶ。

 

その言葉にライダーが誇らしげに口を開いた。

 

「もちろん違う。余一人で出来ることではないさ。これはかつて、我が軍勢が駆け抜けた大地。

 余と苦楽を共にした勇者たちが、等しく心に焼き付けた景色だ。」

 

ライダーの言葉と共に、徐々に軍勢が姿を現してくる。

 

「この世界、この景観をカタチにできるのは、これが我ら全員の心象であるからさ。」

 

その言葉と共に軍勢が完全に実体化していく。

 

軍勢の実体化が終わった時、ライダーが誇らしげに口を開いた。

 

「見よ、我が無双の軍勢を!肉体は滅び、その魂は英霊として世界に召し上げられて、

 それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち。時空を超えて我が軍勢に応じる永遠の朋友たち。

 彼らとの絆こそ我が至宝!我が王道!

 イスカンダルたる余が誇る最強宝具――王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)なり!!」

 

ライダーは堂々とそう宣言した。

 

やっぱかっこいいなライダーは。

 

Fate/zeroでもギルに次いで、ライダーが好きだからなあ。

 

zeroのシーンでも特に好きなシーンだし。

 

そういえば、今のライダーの王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)を見て思ったけど、

もしかしたら、グレーンヴィの彼方より駆け付けしわが友たち(フラ・ランズエンド・ヴェンビョル)でも同じことできるんじゃね?

 

今度やってみようかな。

 

そう考えていると、ライダーが軍勢を率いて、アサシンに突撃していた。

 

アサシンたちは一瞬でライダーたちに消し飛ばされた。

 

勝鬨の声を上げた軍勢は徐々に姿を消していき、それに伴い、ライダーの固有結界も解除された。

 

「――幕切れは興醒めだったな。」

 

何事もなかったかのようにライダーが呟き、杯に残っていた酒を飲み干す。

 

「成る程な。いかに雑種ばかりでも、あれだけの数を束ねれば王と息巻くようにもなるか。

 ――ライダー、やはりお前という奴は目障りだ。」

 

ギルが不機嫌そうにそう言い放つ。

 

「言っておれ。どのみち余と貴様は直々に決着を羽目になろうて。

 ――さて、無粋な輩も去ったことだし、宴の続きをするとしよう。」

 

ライダーは笑みを浮かべながらそう言った。

 

おっと、どうやら宴を続けるみたいだ。

 

そう言えば、まだセイバーと全然話していなかったしね。

 

見たいものは見れたし、もう帰ろうと思ってたし、帰っちゃおうかな。

 

そう思って僕はライダーに話しかける。

 

「あ、ちょっと待ってライダー。

 僕、そろそろ帰らないといけないから。続きはギルとセイバーとやってくれない?」

 

ライダーは僕の言葉に少し残念そうにして、口を開いた。

 

「……そうか。そりゃあ残念だが、致し方あるまい。

 キャスターよ、今宵の語らい、余は楽しませてもらったぞ。」

 

ライダーは笑いながらそう言った。

 

「僕も楽しかったよ、ライダー。――それじゃあね、ライダー、セイバー、ギル。」

 

そう言って、僕は霊体化してその場を去った。

 

 

 

原作主人公の性別

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