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弓兵の英雄譚
目が覚めた瞬間、僕は森の中にいた。
周囲を見回していると、突如として、尋常ではないほどの激しい痛みが頭を襲った。
「――ッぐあああああああああああッ!!」
思わず悲鳴を上げてしまった。
しばらく痛みに耐えていると痛みが治まってきた。
痛みの波が引いた瞬間、僕の意識の奥底に、まるで洪水のように記憶が流れ込んできた。
赤ん坊の自分を、捨てた見知らぬ人の顔、森での生活の記憶、森の主から命からがら逃げだした記憶。
ぐぅっ……いてて……あちゃぁ、やっちゃったな。完全に忘れてたよ。
転生体の記憶を消すか転生体の記憶を継承する時、痛みを取り除いておくべきだった。
そこまで考えが回らなかったなぁ。
にしても可笑しいな確か家族は無って記入したはずなのに……。
もしかして、転生時点での家族の有無ってことで、血縁者自体はいるってことか。
それにしても確かに強くなれる所、って言ったけど森だとは思わなかったよ。
今まであった人が僕を捨てた両親だけって……野生児してるなぁ転生前の僕。
にしても自分で選んだといえ……実際6歳児の少女の体って、色々と不便だなぁ。
視線は低いし、手は小さいし、声も高くて落ち着かないし……。
でも半神半人の野生児だから前世より身体能力は高いし、記憶を引き継いだからか、体に違和感はないし、体は動かしやすいんだよなぁ。
体の慣れと前世の認知のギャップで結構違和感すごいわ。
それにしてもこの姿……夜空のように輝くプラチナブロンドの長髪は、月明かりを受けて静かに揺れ、 宇宙のような深い闇に、押しの子の瞳のような星が浮かぶ煌めく眼差しは、 森の奥深くの闇さえも見通すような、神秘的な光を宿している。
まるで星空そのものが少女の姿を借りて歩いているようだ。
まあ自画自賛はさておき……とりあえず森を出て周囲の地理の確認と町とかがないか探そう。
ーー数日後
あれから数日経った。
記憶にある食べられる獣や植物を頼りにしながら、森の主に見つかり命からがら逃げ出したりして、森を進み続けた。
そして、ようやく森を抜けることができた。
あー、きつかったなぁ……いやぁ、記憶ありで本当によかったー。
なかったらマジで死んでたって。
食べられるものもわかんないし、体も動かせないで即ツミだよねー。
いやぁこれからどうしようかなぁ、森は出たけど町とか見えないし。
一応十日分の食料は持ってるけど大丈夫かな。
まあ一応7騎分の人生って記入したし、英雄譚が作れるぐらいには生きれるでしょ。
よし、探そうか。
ーー九日後
あれから九日経った。
直感に従って同じ方向に走り続けると、やがて遠くに都市の姿が見えてきた。
城壁に囲まれた巨大な建造物がそびえ立ち、門の周辺では人々が行き交っている。
門を見て僕はあることに気づいた。
あれ、この都市、見たことあるくね?と。
そう思った瞬間、記憶がよみがえった。
これは、かつて英雄王に魅せられ僕が少しだけ触れた『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』に登場した城塞都市、ウルクではないか。
画面越しに見たその都市が、今、目の前に広がっている。
ウルクかぁ……まあでも薄々わかってたよ?
半神半人の一番最初の転生で時代的にいえばギルガメシュ叙事詩かなぁって思ったよ?
ん?まてよ?
てことは僕が森であった森の主ってもしかしてフンババじゃね?杉いっぱい生えてたし、雰囲気的にもそれっぽかったし。
うわ、やべぇ……、僕あの森で散々獣殺したり杉伐ったりしてたけど恨まれてないかな?もしかして神の呪いで死ぬフラグ?
まぁ、でもいっか、どうせ後6回も人生あるし、記憶受け継げる英霊とかもはや不老不死だしね。
まずはどうやってウルクに入るかだよね。
時代的にも通貨が無いから、物々交換かな?
幸い森で採ったものはあるし、それでいけるかも。
あっ、そうだ名前を忘れてた。英雄にはふさわしい名前が必要だよね。
そうだな……一時期、ぼくのかんがえたサーヴァントを本気で考えていた僕のネーミングセンスが唸るときだ。
……よし、僕の名前はディンギルにしよう。
シュメール語で星や神って意味があるし半神半人で夜空のような髪を持つ僕にぴったりだろう。
それじゃぁ名前を決まったしウルクに入ろうかな。
ーー数日後
ウルクに入り数日経った。
人々の話を聞く限り、今はギルガメッシュが生まれて6年目、つまり僕と同い年であることが分かった。
同い年ではあるが、関わる機会がないなぁ、と、日々悶々と過ごしていると、ある日、ギルガメッシュに話しかけられた。
「君、半神半人ですよね、僕、王族以外に初めて見ましたよ。君、何者なんですか?」
丁寧で楽しげな声だった。けれど、目元はまったく笑っていない。
……やばい。どうしよう。 半神半人って時点で気づくべきだった。
ていうか半神半人ってだけで面倒なことになるって分かってたのに。
なんで、あんなに嬉々として記入してしまったんだろう。
嘘はばれそうだし本音を入れつつごまかさないと。
「僕はディンギル、杉の森から来た。」
「そうなんですか。両親は?なぜウルクに来たんですか?」
「両親はいない。ウルクに来たのは豊かな暮らしをしたいから。」
「嘘はついていないようですね。でも、半神半人なんて危険因子、ほっておけませんよねぇ。
……そうだ、君、僕の側近になりませんか?拒否権はありません。逃がすつもりもないです。
半神半人を野放しにするなんて、ありえないでしょう? もし拒むなら殺しますから。」
有無を言わさぬ雰囲気だ。
でも、まぁ、最初から関わるつもりだったし、丁度いいかな?
「うん、わかった。」
「僕は王子なので、本来なら敬語を使うべきなのですが……
まあ、君には特別に許してあげましょう。
……あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
知っているとは思いますが、改めて言わせてもらいます。
僕はこのウルクの王子、ギルガメッシュです。よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。」
そしてギルガメッシュに連れられ、王宮に赴き、王宮に到着してから王に紹介され側近となった。
ーー数日後
側近になってから、もう数日が経った。
やってみて初めてわかったけど、正直、なる前はのんきに構えてた。
だけど……側近って、マジでヤバい。
任命された途端、礼儀作法に学問、武術まで、容赦なく詰め込まれる。
遊ぶ時間なんて皆無。
体に叩き込まれる礼儀作法、山のように積まれた粘土板、そして武術の訓練。授業の合間には、ギルガメッシュの悪戯が待っている。
あいつ、先生に気づかれないように、巧妙に僕の邪魔をしてくるんだ。
で、僕が失敗して叱られてるのを見て、ニタニタ笑う。
その顔を見るたびに、ああ、やっぱこいつ愉悦部だわ。
って思うんだよなぁ。
何度、あいつの顔面を殴ってやろうかと思ったことか。
でもさ。
時々、王の財宝の一部をくれたり、一緒に遊んだりすると、なんか憎めないんだよなぁ。ほんと、ずるい奴だ。
そして武術の訓練の中で、僕の適性が判明した。
剣、槍、素手――いろいろ試したけど、僕に一番合っていたのは弓だった。
だから今は、冠位の弓兵になれるように、全力で修業をしてる。
ギルガメッシュをぶちのめすためじゃないよ?ホントダヨ?
って誰に言ってるんだ僕は、とにかくフンババとかグガランナに勝てるぐらい強くなろう。
ーー十数年後
側近となって、長い時が過ぎた。
ギルとも親友と呼べるほど仲を深め、僕たちは心身共に、成長した……成長し……成長……成長したって言いたいけど、言えないんだよなぁ。
僕自身は、弓の腕を磨き続けて、宝具といえるような技も何個か開発できた。
今ではギルと互角以上に戦えるようになった。
王の財宝を弓で打ち落としながら懐に潜り込んで、近接戦闘に持ち込む。
そんな戦い方をしているせいか、ギルの近接戦闘能力も原作より上がってるかもしれない。
精神面では、痛みに強くなり、忍耐力もついた。
でも、劇的な変化はない。
もともと転生してきた時点で、ある程度成熟した精神を持っていたから、体に引っ張られるようなこともなかったし、まぁそれは仕方ないか。
って、僕のことはさておき、問題はギルだよ。慢心王にならないように、ずっと軌道修正してきたはずなのに……
まるで抑止力が働いたかのように、今じゃ完全に慢心王になっちゃったんだよね。
マジで、どうしてこうなったんだろう。
でもまあ、慢心王も嫌いってわけじゃないし、丁寧で謙虚な英雄王って、むしろ違和感があるから、これでよかったのかもしれない。
そういえば、最近ウルクの人々がギルのことを暴君って呼び始めてたし、そろそろエルキドゥも来るんじゃね?
でもまぁ、手出しはしないでおこうかな?
確か、あれってギルの慢心を諫めるために始まった戦いだったし、僕の出る幕ないでしょ。
とりあえず、そろそろ色々と始まりそうだから、準備を始めておこうかな
ーー数日後
エルキドゥはウルクの地に姿を現し、ギルとの壮絶な戦いが始まった。
まずギルが、
だけど、エルキドゥは
互いの射出数は加速度的に増し、空は煌めく宝具と大地で形成された武器で埋め尽くされた。
その光景はまるで星々の競演のように美しく、前世で見たstrange Fakeもこんな感じだった気がする。
そうこうしているうちに、痺れを切らしたギルが、蔵の剣を手に取って、距離を詰めて近接戦闘に持ち込んだ。
エルキドゥも応じて、鎖を自在に操り、ギルの剣撃を受け止める。
剣と鎖が激しくぶつかり合い、衝撃波がウルクの大地を揺るがした。
最初は慢心していたギルももう本気を出している。
それにお互いとても楽しそうだ。
そういえば、エルキドゥってバトルジャンキーな面があったっけ。
「フ、フハハ、フハハハハハハハハ!良い、良いではないか。我をここまで追い詰めるとはな。
褒美として貴様には天の理を見せてやろう。」
ギルはそう言って、乖離剣エアを取り出した。
「うん、熱くなってきたね。僕も、全力の一撃を披露しよう。」
エルキドゥも、全身を鎖に変形していく。
……ん?ヤバい、あいつら本気でエヌマろうとしてるな?
いつの間にかウルクのすぐ近くまで来ているし、もし、あいつらの全力のエヌマ・エリシュがぶつかり合ったら、ただじゃ済まない。
英霊となって弱体化し、宝具に制限がかかった状態でもstrange Fakeの、あの威力だ。
周囲にどれだけの被害が出るかわからない。
止めに行かなくては。
「
「
エヌマ・エリシュを放つ寸前、二人に矢を放った。どうやら、最悪は免れたようだ。
「ディンギル……貴様、この戦いに水を差すなど、いくら貴様でも、許さぬぞ?」
めっちゃ睨んできてる。やべぇ、ウルクの最悪は免れたけど、僕の最悪は免れなかった。このままでは僕の命が危ない、何とか言いくるめないと。
「いや、ほら……ウルクもこんなに近くにあるし、
君たちが全力でぶつかり合ったらウルクに甚大な被害が出るよ?
王様としてそれは避けたいでしょ。」
「……ふん、今回は貴様の諫言を聞き入れてやろう。だが、次はないぞ?」
ギルはそう言って、僕に鋭い視線を向けた。
「わかったよ。」
最悪を免れて、ほっとしていると、エルキドゥが話しかけてきた。
「ありがとう、止めてくれて。僕としても、彼らに被害が及ぶのは望ましくないからね。」
「どういたしまして、それで、君は?僕はディンギル、そして彼はギルガメッシュ。」
「僕はエルキドゥ。神々が造りし、泥人形。彼を止めるために生まれた存在だ。」
ギルの目が細まり、興味深げにエルキドゥを見つめる。
「ほう……神々が我を止めるために造っただと?面白い。ならば、貴様は我が敵であり、同時に我が鏡だ。」
エルキドゥは静かに頷く。
「君の力は確かに強大だ。でも、それだけじゃない。君の中には、
王としての誇りも、寛容さもある。僕はそれを見たい。」
ギルは一瞬、沈黙した後、口元に笑みを浮かべる。
「ならば、見せてやろう。我が王としての在り方を。そして、貴様が我に何をもたらすのか……
確かめさせてもらうぞ、エルキドゥ。我と共に来い。ウルクを見せてやる。」
そうしてギルはエルキドゥを連れだって王宮に帰っていった。
あれ?僕忘れられてね、仮にも親友だよね?
もしかして、さっき水を差したことまだ怒ってるの?
僕はその場にぽつんと取り残された。
ギルとエルキドゥが並んで歩いていく背中を見送りながら、なんとも言えない気持ちが胸に広がる。
こりゃ、しばらくは口もきいてくれないなあ。
まぁ、エルキドゥいるし、機嫌を直すのも早くなるかな?
そう考えると、なんだか気持ちが軽くなってきた。それじゃあ、僕もそろそろ帰ろうかな。
ーー数か月後
あれから数か月が経ち、ギルとエルは親友と呼べるほど深い絆を築いていた。
僕自身もエルと親しくなり、互いに愛称をつけ合うほどの仲となった。
かつては暴君として知られていたギルも、あれほど言っても直らなかった横暴さを控えるようになり、最近ではウルクの人々にも慕われるようになってきている。
そんな折、最近、杉の木が必要とされ始めているという話を耳にした。
おっ、これはそろそろフンババ討伐の時期かも?
そう思っていた矢先、ギルが僕のもとへやって来て真剣な顔で口を開いた。
「ディンギル、お前、確か杉の森で暮らしていたと言っていたな?」
「うん、そうだけど……どうしたの?杉の森に行きたいの?」
「ああ、最近、民どもが杉を欲しているのは知っておろう?
杉など、杉の森くらいにしかあるまいからな。」
「でも、どうするの?杉の森にはフンババがいるよ?
一本や二本ならともかく、たくさん伐るならフンババを抑えないと……」
「ふん、抑える必要などあるまい。我とお前とでフンババを討伐すればよいのだ。
これまで口にされることはなかったが、杉は以前より人々に求められていた。
しかし、あのフンババのせいで伐採は叶わず、森に入ることすらできなかった。
あのような魔物は、いっそ討ち滅ぼしてしまったほうが、ウルクのためになろう。」
僕の言葉を鼻で笑ってギルはそう言った。
「それは……どういうことだい?ギル。」
話を聞いていたのか、エルがギルに詰め寄った。
「杉を伐るのはいい、だけど、討伐する必要はないんじゃないかい?」
そう言ったエルは悲しそうな顔をしていた。
「ウルクの民のためだ。このまま杉が伐れなければ、
ウルクは大打撃を受ける。民も困窮するであろう。
それに、フンババという魔物を放置しておくのは、人類のためにもなるまい。」
ギルは真剣な顔で、そう言った。
「そうだったんだね、ギル。君がそこまで人々のことを思っていたとは……。
ならば、僕も共に行こう。討伐の旅路に、君達と並んで。」
そう言ったエルの顔には、どこか覚悟が感じられた。
こうして、エルも討伐に加わることになった。
僕たちは遠征の準備を整え、杉の森へと旅立った。
ーー数日後
杉の森まで進むこと数日。森に到着した僕らはフンババ討伐の計画を練っていた。
「それで、どうするの?フンババを討伐するにしてもあまり杉に被害が出ないようにしないと。」
ギルは静かにうなずき、真剣な表情をして口を開いた。
「うむ、一つ案がある、エルキドゥが鎖でフンババを縛り、釣りあげ、
その後、我とディンギルが最大威力の攻撃で消し飛ばすのはどうだ?。」
エルは静かに頷き、慈しみに満ちた眼差しでそばの木を見つめた。
「うん、いいね。それなら、森の子たちにも被害は及ばないし、僕は賛成だよ。」
「いいね。それでいこう。合図は僕がするね。」
そういって僕は走り出した。
「たわけ。発案者の我を差し置いて合図をすると決め、
先走るとは……後で仕置きが必要なようだな?」
「やれやれだね。行こう、ギル。」
ーー数十分後
森を走ること数十分、ようやくフンババを見つけた。
どうやら眠っているようで、まだこちらには気づいていない。
僕はエルに目配せを送り、鎖を忍ばせるよう指示した。
彼は静かに動き、ある程度鎖を配置し終わったところで、僕は叫んだ。
「エル!!」
「吊し上げだねぇ、わかるとも!」
その瞬間、忍ばせていた鎖が素早く動き出し、フンババを抵抗する間もなく吊し上げた。
フンババの巨体が宙に浮かび、枝葉がざわめいた。
眠りから覚めたフンババの目が見開かれたが、すでに遅かった。
鎖は容赦なく締まり、フンババの動きを完全に止めた。
なおも藻掻こうとするフンババに、ギルは冷ややかな目を向けて言い放った。
「無駄だ、その鎖は神性があるほど強度が高まる対神兵装……
貴様ほどの神性ならば罅一つ入るまい。
貴様には、我とディンギル手ずから引導をくれてやろう。起きよ、エア。」
そういってギルは、宝具の展開を始めた。僕も急がないと。
僕の最大威力の宝具はギルがくれた神造兵装の弓だ。
ある日、ギルが、
「これはお前ぐらいしか使いこなせないであろう。」
と言ってくれたものだ。
星の力を抽出し、矢を生み出す。放たれた矢は、世界を穿つ。
星の力を使えることから、単純に星の弓と呼んでいる。
「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。」
赤黒い雷風が乖離剣エアの周りを渦巻いていく。
「其は、星の雫、命の結晶、世界を穿つは、我が光陰の矢。」
抽出された膨大な星の力が光の矢となって凝縮されていく。
「死して拝せよ!」
ギルが乖離剣エアを構えた。
「穿ち貫け!」
僕も弓を構えた。
「
「
全く同じ瞬間に放たれた僕とギルの宝具に飲み込まれたフンババは、塵一つ残さず、この世から消滅した。
「終ったね、ギル、エル。」
「うむ、森の守護者と聞いて、どれほどの強さかと警戒していたが……いざ対峙してみれば、
あまりにもあっけない結末であった。いや、もはや戦いと呼べるものですらなかったな。」
ギルは頷きながらも、どこか実感の湧いていないような表情でそう言った。
「そうだね。せめて彼の討伐が意味のあるものになるよう、杉を伐り、急いでウルクへ届けよう」
そう言ったエルは、先ほどまでフンババが吊るされていた場所を静かに見つめていた。
そうして、僕らは杉を伐りウルクへの帰路へ就いた。
ーー数日後
あれから数日経った。
杉は隠れて持ち帰ったし、フンババは塵も残さず消したのになぜかフンババを殺したことがばれた。
ギルにもギルにもエルにも言うなって注意してたし、そもそもギルも僕達も他の人に討伐のことは話していない。
もしかして、僕達の後に入ったやつがいるってことかな?
まあ、抑止力があるからなぁって大体諦めていたからいいけど。
ていうか、そろそろイシュタルが来るんだよなぁ、イシュタリンならともかく、本来のイシュタルって気に食わないやつ即滅殺って感じだし、めんどくさそうだなぁ。
ま、狙われてるのはギルだし、全部ギルに押し付ければいいか。
まあ、ともかく、今はウルクに帰ろう。
ウルクの都に戻った僕たちは、英雄として盛大に凱旋した。
歓声、花束、踊り子まで出てきて、まるで祝祭の嵐。
凱旋自体は最高だったけど、問題はその後だ。
後始末とか、イシュタルとか、考えるだけで胃がキリキリする。
……あ、そうだ。全部ギルに押し付ければいいじゃん。
そう考えると気持ちも軽くなった。やらされそうになっても逃げればいいし、これまでも何回か逃げたけど最後は許してくれたしね。
ーー数日後
なんか普通に捕まって仕事させられた。
最近逃げてばっかりだからお前が働けと王の財宝を展開しながら言われたら、さすがに逃げれなかったよ、うん。
僕は、ギルから貰ったエナドリの上位互換のような飲み物を飲みながら、不眠不休で働いてるのに、あいつ、執務室でこれ見よがしに遊びまくるんだ。
それに、他の官僚全て休みにするし……殺意が沸いたよ。
慰めてくれるエルだけが唯一の救いだよ。
そんなこんなで、仕事を終わらせて、休んでたら……遂にね、来たよ、イシュタルが、金星の悪魔が、思わず顔が死んだね。
だって仕事終わってすぐだよ?
1時間も休んでないよ?
知らせを聞いて本気で逃げ出したのに、直ぐにギルに捕まって連行されてしまった。
そしてある程度身なりを整えて、イシュタルに会いに行った。
イシュタルはギルガメッシュを一目みて、微笑みながら、口を開いた。
「あなた、最近フンババを討伐したそうね?その勇敢さ、見事だわ。
私と婚約しなさい。そうすれば、富も神々の恩恵も、惜しみなく与えてあげる。」
ギルは鼻で笑い、黄金の瞳を細めて答えた。
「ふん、女神風情が何をほざく。貴様のような気まぐれな女に、
我が王の座を汚される道理はない。
富?加護?くだらん。すべて我が物であり、貴様の施しなど不要だ。」
イシュタルの笑みが凍りつき、声を低くして囁いた。
「その口ぶり……私の怒りを買えば、どうなるか分かって言ってるの?」
ギルは堂々と腕を組み、嘲るように言い放った。
「フフ……フハハハハハ! 面白い。女神よ、我を脅すつもりか? だが忘れるな。
我の前に立つ者は、神であろうと例外なく蹂躙される運命にある。
貴様の怒りなど、我の力の前では塵に等しい。」
イシュタルの瞳が赤く燃え上がり、空気が震えた。
天の門が軋み、遠雷のような轟音が雲間から響く。
「もう許さないわ!、ギルガメッシュ!……その傲慢さ、天に知らしめてあげる。
私の父、アヌに願い出て、あなたの都ウルクを血で染めてあげるわ!」
そう言ってイシュタルはどこかに飛んで行った。
「どうするのギル、イシュタル1人だけならともかく、他の神々まで来たらウルクが滅ぶよ?」
ギルは少し、目を瞑り沈黙したあと、口を開いた。
「神々が来ようと、ウルクは我が王国だ。誰にも渡さん。
イシュタルが父アヌに泣きつこうが、神々が天より降りようが……我が奴らを迎え撃つのみ。」
ギルは目を開いて、僕とエルに言った。
「ディンギル、エルキドゥ。お前たちの力が必要だ。
神々の怒りがウルクに降りかかる前に、我らでその災厄を断ち切る。」
エルキドゥは静かに頷き、言葉を返した。
「分かったよ、ギル。僕はこの地で過ごすうちに思ったんだ。
君の姿を、そしてウルクの未来を……この目で見届けたいって。」
ギルはうなずき、エルの言葉に応える。
「その前に、できるだけ多くの民を避難させよう。
都市が滅びても、民が生きていれば国は死なない。
今なら多少の備えはできるはずだよ?」
「ふん、民の避難など些事に過ぎん。お前たちは我が命に従い、準備を怠るな。
王の威光に応えるがよい!」
ギルは鼻で笑い、真剣な顔でそう言った。。
「わかるとも。」
その言葉に、エルは、力強く頷いた。
「わかったよ。」
そして、僕達は、避難と準備を始めた。
ーー数時間後
準備を終えた僕たちは、襲撃を待ち構えていた。
すると、天から光とともに
イシュタルの姿は見えない、他の神々もいないようだ。
その様子を見て僕は弓を構え、ギルは
僕は
「今だ!」
「フハハハハハ、受けきってみるがいい!」
ギルは笑いながら、数えきれないほどの門を開き、宝物庫の財宝を射出する。
「滅多打ちだねぇ、わかるとも!」
エルも、ギルに負けないぐらいの数の、大地を変形した武器を、射出する。
三方からの猛攻に、
四方八方から飛来する宝具、大地でできた武器、星の矢がその巨体を傷つけ、赤い瞳が怒りに燃え上がる。
だが、神獣の力は凄まじい。
矢の嵐を受けながらも、その蹄はなおも地を踏みしめ、大地を揺るがす。
受けた傷も瞬く間に回復していった。
合間合間に鎖で縛ろうと試みるも、
そこで、しばらくの間、鎖で縛れるほどに消耗させるため、絨毯爆撃が続けられた。
ーー数時間後
激戦から数時間が経過し、
その様子を見て、僕はエルに合図を送る。
「縛り上げだねぇ、わかるとも!」
動きが鈍った
それを見て、ギルが心底面倒くさそうに呟く。
「ふん、ずいぶんとてこずらせてくれたものよなぁ。
さて、ディンギル、エルキドゥ……最後の仕上げと行くぞ?」
ギルは乖離剣エアを出しながらそう言った
「わかるとも。」
エルは、頷いて宝具の展開を始めた。。
「うん。」
ギルに頷いて、僕も、宝具の展開を始めた。
「原子は混ざり、固まり、万象織りなす星を生む。」
ギルは詠唱とともに上昇し、赤黒い雷風が乖離剣エアの周りを渦巻いていく。
「呼び起こすは星の息吹、人とともに歩もう。」
大地から鎖が飛び出し、エルと一つになっていく。
「其は、星の雫、命の結晶、世界を穿つは、我が光陰の矢。」
抽出された膨大な星の力が、光の矢となって凝縮されていく。
「死して拝せよ!」
ギルが、これまでにないほどの雷風を纏う乖離剣を、上段に構えた。
「僕は、故に……!」
エルは完全に鎖となり、降下していく
「穿ち貫け!」
僕も星のごとき、眩き青光を発する弓を構えた。
「
「
「
三色の光が交わり、光に飲み込まれた
その後、僕たちはウルクに帰り
そしてウルクを凱旋した。
ーー数日後
やっぱり僕もなのね、と、思った。
正直なところエルの代わりに呪いを受けようとしたけど、そうは抑止力が許さない。
普通に二人ともかかりました。
医者の見立てでは、僕はあと数日、エルは一ヶ月の命だと言われた。
けれど史実では、エルは十日で亡くなっている。
だから、僕がある程度呪いを肩代わりできたのだと思うと、少し気持ちが楽になった。
僕たちの病が神の呪いだと知ったギルは激怒し、神々を滅ぼしに行こうとした。
そのとき、朦朧とする意識の中で、僕はエルと共に必死にギルを止めた。
宥めすかし、説き伏せて言った。
「ここで神の怒りを買っては、僕たちが命を懸けて守ったウルクはどうなる?」
ギルがようやく落ち着いたのを見て、僕は言った。
「ギル、最後に言いたいことがあるんだ。」
それを聞いたギルは、今までにないほどの悲しそうな顔をして、口を開いた。
「最後などというな!お前は、お前は最後まで、我とともに生き!、我とともに死ぬのだ!」
その言葉には、怒りとも悲しみともつかぬ感情が滲んでいた。
ギルの瞳は、燃えるような黄金の光を宿しながらも、どこか脆く揺れていた。
「いや、最後だよ。自分のことは自分でわかる。それに、もう、あと少ししか時間がないんだ。」
ギルは拳を固く握りしめ、歯を食いしばった。そして、しばらく沈黙の後、静かに口を開いた。
「わかった。最後まで聞き届けよう。」
そう、ギルは、深い悲しみを宿した眼差しで僕を見つめた。
「エルも聞いて?」
「うん、わかった。」
エルは静かに頷き、こちらを見つめた。その両目からは、止めどなく涙がこぼれていた。
「僕と親友でいてくれて、本当にありがとう。今までの時間は、かけがえのない宝物だった。
たわいもない話で笑い合った日々、くだらないことで喧嘩してはすぐに仲直りしたこと、
そして一緒に未知の冒険へと飛び込んだこと……そのすべてが、
僕にとってかけがえのない思い出だ。君たちと友達になれて、本当に良かった。
君たちと出会えたことが、僕の人生を豊かにしてくれた。僕は、本当に幸せだった。
そして、これから先、たとえそれぞれの道を歩むことになっても、
僕たちの絆は消えないと信じている。離れていても、心はいつもそばにある。
だから、笑っていてほしい。
……僕は、本当に幸せだった。」
そう言い切ったと同時に意識が遠くなってきた。ギルとエルが何か叫んでるみたいだ。
走馬灯なのか、非常に思考がゆっくりだ。
いやぁ、焦ったね。
なんか、いいこと言おうって長々と言ってたら、もう死にそうになるんだもん。
間に合ってよかったー。マジで、ぎりぎりだったよ。
それにしても、前世はそこまでだったけど、別れって、案外心に来るな、これを後6回か。
英霊として合うとわかってて、これだもん、来世は、あまり、英霊とわかる人物以外、関わらんどこ。
そろそろ、視界が明るくなってきたし、転生かな?
次は、どんな人生になるかな。楽しみだ。
徐々に光が強くなり、僕の意識は遠くなっていった。
次は暗かな。
原作主人公の性別
-
男
-
女