7騎で1騎のサーヴァント   作:悪平等な人外

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聖杯戦争終幕

 

ーー1日後

 

翌日の陽がだいぶ沈んできた頃。

 

僕はグレーンヴィの姿で桜ちゃんと雁夜おじさんと一緒にのんびりとした時間を過ごしていた。

 

すると、そんな穏やかな空気を切り裂くように突然、強大な魔力の持ち主が間桐邸に向かって飛来してきた。

 

気配的にどうやらギルのようだ。

 

何の用だろうか?

 

僕はギルを出迎えるために立ち上がり、ディンギルになった。

 

「どうしたの?ヴィーちゃん?」

 

「どうしたんだ?バーサーカー?」

 

突然立ち上がり、ディンギルになった僕を見て、桜ちゃんと雁夜おじさんが首をかしげる。

 

「ちょっとお客さんがね。雁夜は桜ちゃんと一緒に外に出ないようにね。」

 

そう告げると、二人は顔を見合わせ頷き、口を開いた。

 

「……うん、わかった。気を付けてね、ヴィーちゃん。」

 

「分かった。気をつけろよ、バーサーカー。」

 

桜ちゃんと雁夜おじさんは心配そうにそう言った。

 

「大丈夫。戦うつもりはないし、僕の友達だから。」

 

二人を安心させるように微笑み、僕は静かに外へ向かった。

 

「遅い、遅いぞ。ディンギル。(オレ)が来たというのに何を道草を食っているのだ。」

 

ギルは不機嫌そうにこちらを見つめそう言った。

 

「ごめんごめん、マスターと話してたらちょっとね。」

 

「ふん、(オレ)を差し置いて優先するほどのマスターとはどのような雑種か?

 真にお前のマスターに相応しいか(オレ)が見立ててやろう。」

 

僕の言葉に興味を引かれたのかギルはそう言った。

 

「いやいや、ギルが見立てるほどじゃないよ。

 だけど、手を出すのはやめてね。僕は案外マスターを気に入ってるんだよ。」

 

「お前のもの好きも変わらんな。」

 

「ギルだって暴君振りが再発してるじゃん。」

 

僕がそう言うとギルは肩をすくめ、どこか愉快そうに鼻で笑った。

 

「まったくだ。幼き日の我と出会えば、すぐさま殺し合いにでもなるだろうよ。」

 

「あはは、だろうね。……それで、ギル何の用なの?」

 

僕がそう言うとギルは楽し気に口を開いた。

 

「面白き男を見つけてな。

 その男――言峰綺礼の采配が織り成す笑劇、その舞台にお前も招いてやろうと思ってな。」

 

……ふむ、綺礼が動き出したということは、すでに時臣さんはアゾられてお亡くなりになっているだろう。

 

そう言えば、綺礼はどう行動するんだろう?

 

雁夜おじさんとは接触してないし。

 

とりあえずどう動くか知りたいし、やりたいこともあるから、綺礼の計画に参加しようかな。

 

「へえ、面白そうだね。僕も一枚噛もうかな?」

 

僕がそう言うと、ギルはにやりと笑って口を開いた。

 

「最初からそのつもりで誘っている。続きは綺礼のもとで話すとしよう。」

 

そう言ってギルが霊体化して遠坂邸の方へ向かって行ったので、僕もギルを追いかけて遠坂邸に向かった。

 

ーー数分後。

 

遠坂邸に着くと、ギルが口を開いた。

 

(オレ)が帰って来のだ、綺礼。出迎えくらいせよ。」

 

ギルが声を張ると、屋敷の奥からゆっくりと足音が響いてきた。

 

やがて綺礼が姿を現し、こちらを見て口を開いた。

 

「本当にキャスターを連れてくるとはな。

 それで、キャスター、おまえは私の計画に協力するということでいいのか?。」

 

「うん、でも協力する代わりにある程度僕の願望も取り入れてほしいな。」

 

「……願望、か。キャスターお前の望みは何だ?」

 

僕の言葉に綺礼は眉一つ動かさず問い返す。

 

「その時々の計画で僕のやりたいことをある程度させてほしいんだ。」

 

「……ふむ。つまり自由裁量を求めるというわけか。  

 ……いいだろう。計画の大筋から外れなければ構わん。」

 

そう言って綺礼は静かに頷いた。

 

「ありがとう、綺礼。話が早くて助かるよ。

 それで、計画って何をするの?」

 

僕が促すと、綺礼は淡々と語り始めた。

 

「――単純なことだ。衛宮切嗣と相対し、その真意を知る。

 私と似たあの男ならば、真に私が求め欲する答えを持っている筈だからな。」

 

綺礼の声音は淡々としているのに、どこか底の見えない熱を孕んでいた。

 

「中々に見ごたえのある男であろう?ディンギル。」

 

綺礼の言葉にギルは口角を上げそう言った。

 

「そうだね。……それで、どうやって切嗣と相対するの?」

 

僕が尋ねると、綺礼はわずかに目を細めた。

 

「あの男は徹底して矢面には立たぬし、私は警戒されているのでな。

 手始めにあのアインツベルンの女を攫い、おびき寄せることにした。」

 

やっぱり、アイリスフィール誘拐は確定事項か。

 

とりあえず詳しく聞いてみよう。

 

「……アイリスフィールを攫う?」

 

そう聞き返した僕に、綺礼は微動だにせず頷いた。

 

「そうだ。あの女は衛宮切嗣にとって最も守るべき存在だ。

 彼女を囮にすれば、あの男は必ず姿を現す。」

 

確かに、原作でもめっちゃ焦ってたしね。

 

「ふむ……まあ、確かに切嗣ならそう動くだろうね。」

 

僕がそう言うと、ギルが愉快そうに笑った。

 

「あの女は器であるからな。真に聖杯を欲するのであれば、

 血眼になって奪還に来るであろうよ。」

 

ギルは楽しげに肩を揺らした。

 

「……それに、あの女を確保することは聖杯戦争の趨勢にも関わる。

 聖杯には興味はないが、彼の願望機に願えば私の求める答えも分かるかもしれんしな。

 アインツベルンの切り札を奪うという意味でも、悪くない手だ。」

 

ギルの言葉に続けて、綺礼は淡々と言葉を連ねる。

 

「なるほどね。じゃあ、アイリスフィールを攫う役目は誰がやるの?

 可能なら、僕がやりたいんだけど。」

 

僕がそう言うと、綺礼は少し目を見開きそう言った。

 

「……キャスター、お前が自ら望むとは意外だな。理由を聞いてもいいか?」

 

「うん。単純に、僕が動いた方が確実だから。それにやりたいこともあるしね。」

 

「……ふむ、深くは問わんが、あまり計画を乱すような真似はするな。」

 

綺礼は念を押すように言った。

 

「大丈夫だよ。僕は僕の楽しみを優先するけど、綺礼の計画を壊す気はないから。」

 

そう返すと、綺礼は静かに頷いた。

 

「……では、キャスター。アイリスフィールの確保はお前に任せる。」

 

「了解。じゃあ、さっそく実行しようかな。」

 

僕がそう言って、遠坂邸から出た。

 

ーー数分後。

 

衛宮邸の土蔵へ向かった僕は早速アイリスフィールたちを襲撃した。

 

鉄扉を破壊し土蔵へ侵入すると、此方に向かって銃声と共に複数の銃弾が飛んできた。

 

それを弓で軽くいなしながら、銃を撃ってきた舞弥に近づき蹴り飛ばした。

 

「ぐッ……がはっ。」

 

土蔵の壁に勢いよく激突した舞弥はピクリとも動かない。

 

気絶したみたいだ。

 

舞弥が崩れ落ちるのを確認し、僕はゆっくりと視線をアイリスフィールへ向けた。

 

アイリスフィールはこちらをみて、後ずさっていた。

 

「……キャスター……あなた、なぜ……?」

 

恐怖と困惑が入り混じった声でアイリスフィールはそう言った。

 

「ごめんね、アイリスフィール。ちょっと君には来てもらいたい場所があるんだ。」

 

「来てもらいたい……? まさか、私を……攫うつもりなの……?」

 

アイリスフィールは身構えながらそう言った。

 

「うん。聖杯の器である君を攫えば、セイバーの本当のマスターが釣れるしね。」

 

そう言って僕が一歩踏み出すと、驚愕の表情を浮かべたアイリスフィールは反射的に魔術を発動しようとした。

 

僕は魔術が発動する前に距離を詰め、アイリスフィールの意識を落とした。

 

意識を失ったアイリスフィールを抱え、僕は土蔵を出て、ギルたちのところに向かう前に間桐邸によった。

 

ーー数分後。

 

間桐邸に着いた僕は桜ちゃんと雁夜おじさんに気づかれないようにそっと間桐邸に入り、蟲蔵へ向かった。

 

そして、アイリスフィールを地面に寝かせ、グレーンヴィへと変身し、アイリスフィールの左胸へと手を突き入れ、その心臓を抉り取った。

 

友を癒す森の祝福(スコガル・フリズル・ヴェンヘイル)。」

 

心臓を友を癒す森の祝福(スコガル・フリズル・ヴェンヘイル)で即座に再生し、エレクトラへと変身した僕は、アイリスフィールの肉体を聖杯の器から人間としての肉体へと作り替えた。

 

これなら、十数年から数十年は問題なく生きられるはずだ。

 

アイリスフィールそのものに特別な思い入れはない。

 

けれど、イリヤは僕の推しキャラだし、原作よりは少しでも幸せになってほしいと思っている。

 

小聖杯の分離とアイリスフィールの改造を終えた僕は、小聖杯を手に、遠坂邸へと向かった。

 

ーー数分後。

 

遠坂邸に到着し、屋敷の中に入ると、ギルと綺礼がすでに待ち構えていた。

 

綺礼は静かに目を細めて僕を見ている。

 

「随分と早かったな、キャスター。」

 

綺礼がそう言うと、僕は軽く肩をすくめて答えた。

 

「まあね。抵抗はあったけど、問題なく終わったよ。」

 

そう言って僕は手にしていた小聖杯を軽く放り投げ、綺礼へと渡した。

 

綺礼はそれを受け取り、しばし無言で観察した後、低く呟いた。

 

「……確かに。これはアインツベルンの小聖杯だ。

 だが、女はどうした?小聖杯だけ抉り取ってきたのか?」

 

そう問いかける声には興味と疑問が滲んでいた。

 

「うん。そうだけど。何か不都合でもあった?」

 

「いや、特にはないがな。どうせならあの女にあの男について聞こうと思っただけだ。

 小聖杯だけを取ってきたのであれば、それでも構わん。」

 

「ならいいけど。それで、この後はどうするの?」

 

綺礼は小聖杯を手の中で転がしながら、静かに息を吐いた。

 

「――今夜はあくまで布石に過ぎん。

 明日の深更、冬木市民会館にて狼煙を上げるとしよう。

 セイバー陣営も、ライダー陣営も……あの二組なら必ず応じてくるはずだ。

 そして、こちらへと歩を進めるサーヴァントは、お前とギルガメッシュが迎え撃てばよい。

 その混乱の只中に、衛宮切嗣は必ず姿を現す。」

 

綺礼の言葉が静かに空気へ溶けていく。

 

その内容は淡々としているのに、どこか熱を孕んでいた。

 

ギルは腕を組み、面白そうに口角を吊り上げる。

 

「ふん、ようやく舞台が整うというわけだ。雑種どもがどれほど足掻くか、見物ではないか。」

 

ギルは愉悦を隠そうともせずに言い放つ。

 

「そうだね。……あのさ、ギル。ちょっとだけお願いがあるんだけどね?

 これからセイバーが間桐邸に来るはずだから、ちょっとだけ戦ってもいい?」

 

そろそろ、舞弥が起きて、切嗣に連絡するだろうしね。

 

セイバーとはちょっとだけ戦ってみたいと思ってたから、自己強制証文(セルフギアス・スクロール)にも切嗣以外は縛らなかったわけだし。

 

「別に構わんが、殺してはくれるなよ?

 あの女はこの(オレ)が直々に愛でてやろうと思っているのでな。」

 

ギルは愉快そうに目を細めながら言った。

 

「うん。あとさ、明日はギルがセイバーを相手するだろうし、

 僕がライダーと戦うってことでいいよね?」

 

「好きにすると言い。奴は(オレ)自ら裁定を下してやるつもりであったがな。

 ……お前の愉しみを奪ってしまうのも悪いからな。」

 

ギルは肩をすくめながらそう答えた。

 

「わかった。それじゃあ僕も明日に備えようかな。じゃあね、ギル、綺礼。」

 

そうして、遠坂邸から出た僕は間桐邸へと向かった。

 

ーー十数分後。

 

間桐邸の玄関にて、セイバーを待ち構えていると、バイクに乗ったセイバーが猛スピードで此方へ来て、停車した。

 

バイクのエンジン音が止むと同時に、セイバーは跳ねるように地面へ降り立ち、鋭い眼光でこちらを睨みつけた。

 

「キャスター……! アイリスフィールはどこだ!」

 

「さあ?ギルなら知ってるんじゃない?色々準備してるしね。」

 

「何だと?アーチャーが。……最初から我々を嵌めるつもりだったということか。」

 

そう言ってバイクを起動し、この場から去ろうとしているセイバーに向けて弓を放った。

 

「ッ……どういうつもりだ、キャスター。」

 

飛びずさりこちらを睨みつけながらセイバーはそう言った。

 

「ちょっとだけ、君と遊んでみたいと思ってさ。」

 

「……キャスター。今は貴様に構っている時間はない。そこを通さなければ――」

 

セイバーの言葉を遮って僕は口を開いた

 

「通す気はないよ?少し戦ってくれればいいし、時間稼ぎのつもりはないから安心してよ。」

 

僕の言葉にセイバーは警戒を滲ませそう言った。

 

「……キャスター。貴様の目的は何だ。アイリスフィールを攫い、

 アーチャーと結託し、なお私と戦う理由がどこにある」

 

「理由なんて単純だよ。君と戦ってみたかった。それだけ」

 

「……そうか。だが今の私は、貴様の遊興に付き合うつもりはない!」

 

叫ぶと同時に、セイバーは地を蹴り、此方へと剣を振るう。

 

疾風のような踏み込みと共に剣閃がこちらへ迫る。

 

僕はそれを難なくかわし、セイバーへ弓を放つ。

 

セイバーは僕が放った矢を避け、または切り捨てながら、魔力放出でさらに速度を上げ距離を詰めて来た。

 

「はあッ!」

 

そして、剣の間合いまで距離を詰めてきたセイバーは裂帛の気合と共に突きを放ってきた。

 

僕はそれを魔力放出し、飛びずさることで回避し、お返しに弓を放つ。

 

セイバーは僕の放った矢を弾き飛ばしながら、さらに踏み込んでくる。

 

魔力放出で強化された脚力が地面を砕き、瞬きの間に距離を詰めてきた。

 

「キャスターッ!!」

 

鋭い斬撃が横薙ぎに迫る。

 

僕は身体をひねり、紙一重でそれを避けると、セイバーの背後へと回り込み、矢を放つ。

 

セイバーはまるで後ろに目がついているかのように矢を剣で捌き、そのまま反転しながら鋭い踏み込みで距離を詰めてきた。

 

「まだだッ!」

 

黄金の閃光が走る。

 

セイバーの剣が弧を描き、僕の首元を狙って振り抜かれる。

 

僕はその刃を紙一重で避け、地面を蹴って大きく後退した。

 

そのような攻防をしばらく繰り返していると、痺れを切らしたセイバーが約束された勝利の剣(エクスカリバー)の展開を始めた。

 

僕もセイバーの宝具に対抗して幾千に分かれし無数の流星(アロー・オブ・バビロン)の展開を始めた。

 

本来ならば無数に分裂した矢で敵を殲滅する宝具なのだが、応用として分裂させずそのまま放つこともできるのだ。

 

その威力は驚異のA++、河川敷での約束された勝利の剣(エクスカリバー)と比べた場合、貫通力でいうならば上回る。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

 

剣から放たれた巨大な光の波が此方へと迫る。

 

幾千に分かれし無数の流星(アロー・オブ・バビロン)!」

 

僕も星の魔力を凝縮した光の矢を放つ。

 

セイバーと僕、二つの宝具が衝突し、空気が震えた。

 

衝突した光と光が、夜の間桐邸を白昼のように照らし出した。

 

爆ぜるような轟音が響き、衝撃波が周囲の大地を割り、地面を抉り飛ばした。

 

互いの宝具が押し合い、削り合い、拮抗し、光の奔流が弾けた。

 

爆風が巻き起こり、僕もセイバーも後方へと大きく吹き飛ばされる。

 

地面を滑りながら体勢を立て直し、セイバーを見る。

 

セイバーも同じように体勢を立て直し、此方を睨んでいる。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)を相殺されたことを警戒してか、此方の隙を窺っている。

 

もういいかな?

 

充分楽しめたし、これ以上は収拾がつかなくなりそうだしね。

 

僕はそう思って口を開いた。

 

「もう終わりにしない?ギルの楽しみを奪っちゃったら申し訳ないし、僕も充分楽しめたしね。」

 

僕の言葉にセイバーは何か言いかけるも口を閉ざし、そのままバイクに乗り、風のように間桐邸を飛び出していった。

 

去っていくセイバーを見届けた後、戦闘によってできた戦闘痕を隠蔽し、僕は間桐邸に帰った。

 

ーー1日後

 

翌日の深夜、冬木市民会館に行くと、既に綺礼とギルが到着していた。

 

綺礼はこちらを見ると口を開いた。

 

「では、始めるとするか。」

 

そう言って、綺礼は狼煙を上げた。

 

「ふん、ようやくか。退屈していた所だ。」

 

狼煙を見て不敵にギルが笑った。

 

「さて、始まるね。ライダーは僕が相手するってことでいいんだよね?」

 

「当然だ。セイバーは(オレ)が直々に裁定を下す。お前は好きに暴れるがいい」

 

ギルはそう言って愉悦に満ちた笑みを浮かべた。

 

「うん。じゃあ、行ってくるね。」

 

僕はそう言って、ライダーの方へと飛んで行った。

 

ーー数分後。

 

ライダーの元に到着した僕は神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)に乗ったライダーと、ウェイバー君と対峙した。

 

「よぉキャスター。余の進軍を前にしてこうして立ちはだかってきたということは、

 余と一戦交えるつもりであろう?」

 

ライダーは豪快に笑い、戦車の上で胸を張った。

 

「うん。ライダー、君とは一度ちゃんと戦ってみたかったんだ。

 ギルの相手はセイバーに任せて、僕は君と遊ぶよ。」

 

ライダーは満足そうに頷き口を開いた。

 

「うむ。お主が相手ならば此方も不足はない。

 ……では行くぞ、キャスター! 余の軍勢に挑む覚悟、しかと見せてもらおう!」

 

「うん。全力で来てよ、ライダー。」

 

僕がそう言った瞬間、ライダーの魔力が爆発的に膨れ上がった。

 

「集えよ、我が同胞!今宵、我らは最強の伝説に勇姿を印す!」

 

ライダーの叫びに応じて、砂嵐が吹き荒れ、周囲の風景が変わっていく。

 

蒼天の空と果てまでに地平線が見える大砂漠へと。

 

そして、1騎、1騎と兵たちが姿を現し、その軍勢が勢ぞろいした時、ライダーが口を開いた。

 

「敵は万夫不当の星律王──相手にとって不足なし! 

 いざ益荒男たちよ、原初の英霊に我らが覇道を示そうぞ!」

 

ライダーは雄たけびを上げると、軍勢たちの喝采を背に受けながら神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)で此方へと突貫してきた。

 

AAAALaLaLaLaLaie(アアアアララララライッ)!!」

 

僕はライダーの突貫を横目に、グレーンヴィへと変身し、宝具の展開を始める。

 

グレーンヴィへと変身した僕に対してライダーは驚きに目を見開くも、速度は落とさず突貫してくる。

 

「みんな集合!彼方より駆け付けしわが友たち(フラ・ランズエンド・ヴェンビョルン)!」

 

僕は彼方より駆け付けしわが友たち(フラ・ランズエンド・ヴェンビョルン)を展開し、ライダーの軍勢に負けない量の動物たちを召喚する。

 

動物たちが召喚されるごとに、こちら側の風景が歪み、世界が北欧の森へと塗り替えられた。

 

どうやら成功したみたいだ。

 

動物たちは高い知能を持っているから心象風景の具現化もできるかもと思ってやってみたらできたみたいだ。

 

森と砂漠がせめぎ合うように揺らぎ、二つ心象世界、軍勢がぶつかり合う。

 

北欧の深い森の香りと、果てなき砂漠の熱風が混ざり合い、世界は軋むように震えた。

 

すぐそこまで迫ってきてたライダーは目を見開き、豪快に笑った。

 

「ははははッ! 面白い! 

 姿を変えるだけではなく心象世界をぶつけてくるとはな、キャスター!

 それでこそ、余も燃えてくるというものよ!」

 

そう言いながら、突進してくるライダー。

 

動物たちが突撃を防ごうとするが、弾き飛ばされる。

 

「力を貸して、リル。」

 

『うむ。』

 

僕の前に出現し、軽く唸ったリルは神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)を大顎を開け噛み砕き、鼻先で弾き飛ばした。

 

咄嗟に回避したのか、ライダーはウェイバー君を抱えて戦車から飛び降り、砂と森が混ざり合う大地に着地した。

 

リルは砕け散った神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)の破片を踏み砕きながら、低く唸り声を上げた。

 

嚙み砕かれた神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)はそのまま、空気に霧散するように消えていった。

 

リルの圧倒的な存在感に、ライダーの軍勢が一瞬たじろぐ。

 

だが、ライダーは逆に目を輝かせ、豪快に笑った。

 

「はははははッ!! まさか、かの神狼を従えているとはな!

 キャスター、貴様……どれほどの伝説を抱えておるのだ!」

 

ライダーはそう言いながら召喚したブケファラスに跨った。

 

しかし、ウェイバー君と少し会話をすると、抱えていたウェイバー君を地面に降ろした。

 

そして静かに口を開いた。

 

「生きろ、ウェイバー。生き存えて語るのだ。貴様の王の在り方を。このイスカンダルの疾走を。」

 

ライダーが言葉を言い切るのと同時に、ウェイバー君の姿が消えた。

 

固有結界の外へと出されたようだ。

 

ライダーはこちらへ向き直ると雄たけびを上げながら突撃してきた。

 

AAAALaLaLaLaLaLaie(アアアアララララライッ)!!」

 

「やっちゃえ、リル。」

 

『まかせよ。』

 

僕の言葉に一吼えしたリルはライダーに突撃し、ブケファラスごとライダー噛み砕いた。

 

致命傷を負ったライダーはそのまま霧散していき、主を失った兵たちも消え、固有結界も崩壊し、こちら側の固有結界に塗り替えられた。

 

「ありがとう。お疲れ様リル。」

 

そう言って、リルを撫でると、眼を細め、口を開いた。

 

『うむ。中々に楽しめたぞ。』

 

そう言ってリルは座へと帰って行った。

 

動物たちを退去させ、固有結界を解除するとすでに、ウェイバー君はいなくなっていた。

 

僕はその場を離れて、冬木市民会館へ向かった。

 

ーー数分後。

 

冬木市民会館へと到着するとすでに戦いは終了していた。

 

ギルは天の鎖で縛り上げたセイバーの顎を指先で持ち上げ、愉悦に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「ふふ、どうした?セイバー恥じらうあまり言葉に詰まるか?

 だが許そう。(オレ)は器が広いのでな。お前が本音を言えるまでいくらでも待ってやろう。」

 

そう言い、周囲に多数の宝具を展開したギルはこちらに気づいたようで、目線を向けて来た。

 

「ふん、遅かったなディンギル。ライダーはどうした?」

 

僕は肩をすくめ、軽く手を振った。

 

「倒したよ。中々に楽しめたし、僕はもう満足したよ。」 

 

「ふっ、そうか。さて、ディンギル。(オレ)はもうしばらくセイバーの相手をするのでな。

 ここで見物をするか、綺礼の様子でも見てくるがいいさ。」

 

そう言ってギルはセイバーへと視線を向けた。

 

「うん、わかった。じゃあ、綺礼のところにでも行ってくるかな。」

 

そうギルと話していると、セイバーが突然魔力を開放した。

 

どうやら、原作通り切嗣が令呪を発動したみたいだ。

 

令呪によりブーストされた身体能力で天の鎖を引きちぎりながらセイバーは剣を頭上に構える。

 

「な、馬鹿な──何のつもりだ!?」

 

セイバーの行動にギルが瞠目して叫ぶ。

 

「……ッ……違うッ!!──何故だ!?切嗣──よりにもよって貴方が、何故ッ!?」

 

そう叫びながら剣を徐々に振り下ろしていくセイバー。

 

その並々ならぬ様子にようやく令呪の存在を察し、切嗣の存在に気づいたのか、ギルが憎々しげに叫ぶ。

 

「おのれ、我が婚儀を邪魔立てするかッ、雑種めが!」

 

ギルの叫びと共に展開されていた宝具が切嗣へと照準される。

 

だけど、宝具が射出される寸前、セイバーが宝具を発動し、ギルは回避を優先し、切嗣へと放たれることはなかった。

 

放たれた極大の光は聖杯を飲み込み、射線上のすべての物質を消し去った。

 

宝具を放ったセイバーはそのまま霧散して消えていった。

 

聖杯を呑み込み、光の奔流が収まった時、夜空には、ぽっかりと巨大な孔が空いていた。

 

巨大な孔からは勢いよく黒い泥が降り注いだ。

 

近くにいたギルは為す術なく呑み込まれ、泥に沈んでいった。

 

普段のギルなら避けれていたはずだけど、怒りと驚愕で注意力が散漫になっていたんだろう。

 

さて、どうしようか?

 

このまま英霊として居座るのもいいけど、受肉はしておかないと何かと不便だしなあ。

 

丁度良く受肉できる泥があるわけだけども、あれはギルだからこそ受肉できたようなものだし、失敗したら呑み込まれそうで嫌だしなあ。

 

まあ、でも大丈夫か。

 

魂七個分と言っていいほどの霊基だし、何とかなるでしょ。

 

駄目かと思ったら即自決すればいいし、何事も度胸しね。

 

そう考え、僕は勢いよく泥の中に飛び込んだ。

 

ーー数分後。

 

絶え間なく囁かれる呪詛を全てシカトしてたら泥から拒絶された。

 

泥の中から勢いよく吐き出された僕はそのまま、体の状態を確認する。

 

泥を体から払いながら体の状態を確認してみると、どうやらちゃんと受肉できたみたいだ。

 

泥に焼かれたのか、服がなくなってしまったので、そこら辺から布を拝借し、それを纏って、僕はギルたちの気配がするところへと向かった。

 

ーー数分後。

 

結構泥に流されていたみたいで、空をしばらく飛んでいるとやがて二人の姿を見つけた。

 

赤い布を纏ったギルはこちらを見つけると口角を上げ口を開いた。

 

「ふん……ディンギル。貴様も泥に呑まれたようだな。

 その様子だと、受肉は果たしたようだ。」

 

ギルはそう言って、面白がるように目を細めた。

 

「まあね。ちょっと気持ち悪かったけど、結果オーライかな。

 それで、ギル。このまま最後の戦いを始める?」

 

「ふっ、いや良い。我の見立だと、このまま十年待てば次の聖杯戦争が始まるだろう。

 それの裁定をせねばならぬし、綺礼の行く末を見ねばならんからな。

 それまでは、貴様と雌雄を決するのはお預けよ。」

 

ギルは綺礼を一瞥して、そう言った。

 

「そっか。ギルがそう言うなら僕もそれでいいよ。

 じゃあ、そろそろ帰ろうかな。じゃあね、ギル、綺礼。」

 

そう言って僕は間桐邸へと向かった。

 

ーー数日後。

 

聖杯戦争も集結し、僕と雁夜おじさんは色々と後始末やらに追われていた。

 

聖杯戦争も終わり、懸念事項だった蟲爺や優雅たれが死亡したため、桜ちゃんの処遇はどうするのかを、遠坂家とも話し合ったのだが、結局本人たっての希望で間桐家のままでいることに決まった。

 

間桐家のままでいることは決まったのだが、雁夜おじさんたっての希望で、少しずつ遠坂家との交流をしていくことに決まった。

 

そんなこんなで色々やっていた所、自己強制証文(セルフギアス・スクロール)の通りに、切嗣が現れたので、

ぼろぼろの身体を治癒し、聖杯を壊さないこと冬木を出ないことを契約させ、放逐した。

 

冬木を出ないようにしたのは、万が一にもイリヤを救出させないためだ。

 

なぜなら、もしイリヤが救出された場合、プリヤのイリヤみたいになる可能性があるからだ。

 

プリヤのイリヤも嫌いではないが、僕はSNのイリヤが好きなので切嗣に冬木を出ないように契約したのだ。

 

そうして、やるべきことをある程度終えた僕は、第五次聖杯戦争まで準備をしながら、のんびりと過ごした。

 

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