第4次聖杯戦争が終結してから数年が経った。
いつものようにギルと一緒にゲームをしていると、ギルが突然コントローラーを投げ出し、中を向いて叫んだ。
「つまらん!つまらんではないか!第五次までにまだ8年は残っておるというのに、
このままでは次の戦争が始まる前に
ギルは金色の髪を揺らしながら、まるで世界そのものが自分を退屈させていると言わんばかりに肩をすくめた。
2年でこれって、飽きるの早くね?
いや、ギルにしては長く持った方か。
第5次までほぼ常に子ギルでいたらしいし。
どっちにしろ後8年もあるのにこれじゃあ、持たないだろうし、そろそろ子ギルになるのかな?
僕はコントローラーを置きながら、ため息をつく。
「いや干からびないでしょ……。ていうか、ゲーム飽きたなら別のことをやればいいし、
これからも色んな面白いゲームが出てくるよ?」
「たわけ!そういう問題ではない!」
僕の言葉にギルは立ち上がり、口を開いた。
「この時代そのものが
それに、英雄王たるこの
「いや時代にキレないでよ。」
僕の突っ込みを無視して、ギルは唸り、考えこんでいる。
「………もはや、こうなればあの手を使うしかないか。………ええい、ままよ!」
そう言って、ギルは
もしかして、若返りの霊薬?
さっきの予感が当たったようで、子ギルになるみたいだ。
「え、ちょギル。何呑んだの?もしかして若返りのr………」
僕が言葉を遮って突然ギルの全身が輝きだした。
金色の粒子が舞い上がり、ギルの輪郭が揺らぐ。
光が収まった時、そこには変わり果てた姿のギルが立っていた。
身長は大きく縮み、130cmほど。
早着替えの宝具でも使ったのか、体に合ったサイズの服を着用している。
普段の、世界すべてを見下すような王の表情は消え、品行方正な少年のような柔らかい顔つき。
完全に、子ギルである。
僕が様子を窺っていると、ギルは唐突に眉をひそめ、深いため息をついた。
「はあ、退屈だからと僕に全てを押し付けるとは。本気で死んでくれませんかね、大人の僕。」
めっちゃ大人のギルに対して、毒舌だなあ。
これで、どうやって第5次までに、大人形態に戻ったんだろ?
それにしても、子ギルの姿も口調も懐かしいなあ。
今なら弱体化しているし、どさくさに紛れて仕返しでもしてしまうか。
「随分可愛らしくなったね、ギル。心まで若返っちゃうなんて、凄い薬だね。」
僕がそう言いながら、ギルの頭を撫でる。
ギルはにこやかに笑いながら口を開く。
「あはは、あまり子ども扱いしないでくれますか、
ディンギル。君も酷い目には合いたくないでしょう?」
表情はにこやかだが、目が笑っていない。
効果は抜群なようだ。
「あはは、別にいいじゃん。どっからどう見ても、立派な子供なんだからさ。」
僕がそう言って撫で続けていると、ギルは額に青筋を浮かべながら口を開いた。
「………そうですか。どうやら君も若返りがしたいみたいですね。
いいですよ。僕は優しいですから。君にも若返りの霊薬を飲ませてあげますよ。」
そう言ってギルは天の鎖を僕に伸ばしてきた。
「危なっ。別に僕は若返りたくないし、遠慮しておくよ。」
天の鎖を住んでのところで躱し、そう言うと、ギルは肩をすくめ、まるでやれやれとでも言いたげな顔をした。
「逃げ足だけは一丁前ですね。まあ、僕としても無理やり飲ませるのは趣味じゃありませんが……」
ギルはそう言いながらも、門の数を増やして天の鎖を射出してくる。
僕は部屋を飛び出し、そのまま逃亡する。
その後ろからは無数の天の鎖が僕を捕まえようと伸びてくる。
そろそろ、この狭い家の中じゃ逃げるのも難しくなってきたし逃げようかな。
ギルのことだから玄関とか、主要な逃亡経路はがっちりと包囲されてるだろうし、何処から逃げようか。
………いっそのこと玄関を正面突破しようかな。
本気で魔力放出して、宝具も使えば包囲も壊せるだろうし。
玄関に直行すると、予想通り天の鎖が此方を待ち構えていた。
僕は全力には程遠い、速攻版
外に出た瞬間、目の前には無数の天の鎖が展開されており、ギルが佇んでいた。
「君が考えていることなど手に取るようにわかりますよ。何度捕まえたと思っているんですか。」
………まずいっていうか、普通に詰んだわこれ。
ていうか、逃亡が上手く成功していたのは暴君時代にギルであって、子ギルや賢王時代のギルが相手だった場合は、逃亡成功率1割切ってたしね。
泳がされていた疑惑はあるけど、まあ、上手く逃げた方だよね、うん。
………まあ、現実逃避はさておき、どうしようか。
今更謝っても意味ないし、潔く薬を飲むしかないよね。
童心に帰れると思ってポジティブに考えよう。
子供になったらいいことって何だろうか。
まずは、そうだな。
子供料金が使えたり、周りの人に優しくしてもらえるよね。
でも逆に、子供だから悪い大人に狙われたり、平日に子供だけでいたら、警察の補導とか面倒だよなあ。
大人だから良いってことが子供になると駄目だって言われる場合もあるし。
まあ、抵抗は無意味だし、潔く諦めるか。
ギルは僕の目の前で、まるで処刑宣告でもするかのように小さく指を鳴らし、黄金の門から若返りの霊薬を取り出した。
「どうやら手が塞がっているようなので、僕が飲ませてあげますよ。ほら、口を開けてください。」
そう言ってギルはニコニコしながら薬を口元に寄せてくる。
僕が観念して口を開くとギルが薬を口に注ぎ込んでくる。
薬が喉を通った瞬間、ひやりとした感覚が全身に広がった。
それと同じに、体が光を発し始める。
体の感覚が急速に変わっていく。
手足が軽くなり、服が少しずつ大きく感じられ始めた。
光が収まると、視界が一気に低くなり、目線はギルと同じくらいになった。
来ている服もぶかぶかになり、手を挙げてみると手のひらは子供サイズになっていた。
体の確認をしていると、ギルが満足げに頷いた。
「うん、成功ですね。身長は……まあ、僕と同じくらいでしょうか。
それで、気分はどうですか?ディンギル。童心に帰れて嬉しいでしょう。」
「うん。まあ、少しはその気持ちはあるけどさ。圧倒的に不便なんだけど。
君みたいに精神まで子供に若返れるならいいんだけどさ、僕には違和感しかないんだけど。」
「おや、霊薬には確かに精神の若返りも含まれているんですけどねぇ。
君は今も昔も全く精神の老成が感じられませんし、
心が子供だから薬が効かなかっのかもしれませんね。」
僕の言葉に、ギルはそう言ってニコニコと笑う。
「それって、僕が幼稚って言いたいの?ギル。」
僕はギルをジト目で見る。
「あははは、違いますよ。童心をずっと保てるって良いことだと思いますよ。僕は。」
ギルはより笑みを深めながらそう言った。
そのままギルと言い合いをしていると、誰かが近づいてくる。
「ふむ、久方ぶりに帰ってみれば、何やら騒がしいな。」
その声を聞いた瞬間、僕とギルは同時にそちらを向いた。
玄関の方からゆっくりと歩いてきたのは、黒いコートを翻した言峰綺礼だった。
「言峰はゆっくりと歩み寄りながら、こちらを見下ろすように視線を落とした。
「……ふむ。見覚えのない子どもが二人。
しかし、どこか奴らに似た雰囲気を持っている。」
まだ、僕達の正体に気づいていないようだ。
………いや、ほとんどもう気づいてそうだ。
なんか、どこか愉悦しているような雰囲気を感じる。
ギルは腕を組み、ため息をつきながら言峰を見上げた。
「もう分かっているんでしょう、言峰。
あなたの知っている僕が、少しばかり退屈しのぎをした結果です。」
「……なるほど。退屈しのぎ、か。
確かに、ギルガメッシュなら思いつきそうな行動ではあるな。
だが、ディンギル。お前は退屈しのぎで若返るような性格ではなかろう。
ギルガメッシュに巻き込まれたか。」
言峰はそう言って口角を上げながら此方を見る。
「お察しの通りだよ。ギルに無理やり飲まされてさ。」
僕がそう言うと、ギルがやれやれといった風に肩をすくめた。
「君が揶揄ってくるのが悪いんですよ。」
「お前も中々に、不憫だな、ディンギル。
………一つ気になるのだが、他の霊基はどうなっている?」
綺礼が愉悦しながら、僕に質問してくる。
なぜ、綺礼が僕が他の霊基に代われることを知っているのかは、ギルが原因だ。
「この
とのことで、大分前からばれていたようで、ギル経由で綺礼にも伝わったのだ。
何故代われるのかについては適当に誤魔化しているけど、二人とも特に興味がないのか追及してくることはない。
「それは僕も気になりますね。代わってみてください。」
そう言って、ギルが興味深げに此方を見る。
確かに、他の霊基も若返っているのか気になる。
「ん。とりあえず試してみるね。」
そう言って、僕はバトエルに代わってみる。
バトエルに代わってみたのだが、若返っていない。
どうやら、他の霊基に若返りは適応されないようだ。
「へぇ、若返りは他の霊基には適応されないんですね。」
「ふむ、それで、若返りをしてまで、一体何をするというのだ。」
「特に何もありませんよ。
大人の僕はただ精神的に引き籠りたくて、僕に押し付けただけですし。
まあ、気楽に現世を楽しみますよ。
中々に面白そうなものが沢山ありますからね。」
「そうか、ではディンギル。お前はどうだ?」
「僕も特にないよ。無理やり若返らされただけだし。今まで通りかなぁ。」
僕がそう言うとギルが良いことを思いついたかのように悪い笑みを浮かべる。
「そうだ、ディンギル。この際ですし、学校に行ってみたらいいんじゃありません?
童心に帰りたいって言ってたじゃないですか。」
は?いや冗談じゃないぞ?
学校なんて精神年齢的にきついし、絶対にこっちが合わせないといけなくなって、疲れるじゃん。
「いやいや、精神年齢の圧倒的な食い違いで絶対、居心地悪いって。」
僕の言葉にギルはニタニタしながら口を開く。
「実際に行ってみないと分かりませんよ。
それで、どうですか?綺礼。面白いと思うんですけどねぇ。」
ギルの言葉に言峰が静かに口を開いた。
「……学校、か。確かに面白い。戸籍の偽造、学校への入学は此方で行っておこう。」
綺礼は此方を見て愉悦を含んだ笑みを浮かべる。
「いやいやいやいや、僕は絶対に行かないよ!」
僕が反対するとギルがニコニコと笑いながら口を開く。
「あまり、ごねるようでしたら、今後も継続して若返りの霊薬を
服用してもらうことになるかもしれませんねぇ。」
「う………分かったよ。行けばいいんでしょ。」
こうして、僕は学校に通うことになった。
原作主人公の性別
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男
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女