原作キャラなしと言っても過言ではない。
誤字脱字は感想欄にお願い
目を覚ました瞬間、僕は森の中にいた。
身構えた途端、頭に激しい痛みが走る。
「っ…!」
頭に走った衝撃に、全身が硬直した。
少しの間、痛みに耐えていると、痛みが治まってきた。
やがて、痛みが引いたその瞬間、意識の奥底から記憶が洪水のように押し寄せてきた。
赤ん坊の頃、見知らぬ誰かに捨てられた記憶。
森で動物たちと共に過ごした日々。
この身体に刻まれた記憶が、容赦なく脳を灼き尽くすように押し寄せてくる。
いてて、やっぱ痛いもんは痛いな。
でも、だいぶ慣れてきたかな?
これぐらいなら耐えられそうだ。
そう思って、周囲を見渡すと動物たちが自分を囲んでいるのに気付いた。
…そういえば、記憶の中に動物と過ごしていた記憶があったけ?
そう考えていると、動物たちの声が聞こえてきた。
『大丈夫?人間?』
!?
僕が驚いていると、さらに声が聞こえてきた。
『人間。俺たちの声に反応してる!』
『ほんとだ!今まで反応なかったのに。』
『僕達の声、聞こえる?』
これは、動物の声が聞こえる?
もしかして、今世はライダーか?
そう思いながら、僕はゆっくりと頷いた。
「……うん、聞こえるよ。みんなの声が。」
とりあえずキャラを作ってみた。
今世の一人称は自分の名前で、口調は……少しだけ子供っぽく喋ろう。
その瞬間、動物たちの目が一斉に輝いた。まるで長い間待ち望んでいた奇跡が起きたかのように。
『やった!ついに通じた!』
『人間と話せるなんて、信じられない!』
一匹のリスが僕の足元に駆け寄り、くるくると尻尾を振りながら言った。
「ねえ、君の名前は?どこから来たの?」
どうやら、喋れるらしい。
リスが喋れることに驚きつつも、僕は口を開いた。
「……名前なんて、ないの。どこから来たかも……わかんない。」
そう言うと、動物たちは悲しそうな顔をした。
「僕達で名前を付けてあげようよ!」
そう、さっきのリスが言い、動物たちは何やら話し始めた。
『ヴィズルは?ヴィズルなんていいんじゃない?』
『なってないなぁ、そこはホルトでしょ!』
『グレーンヴィがいいんじゃない?』
『グレーンヴィズルはどう?』
『ルンドリスは?』
『スコーガリナもよくない?』
ーー十数分後。
動物たちは話し合うがなかなか決まらない。
「こうなったら、あの子自身に決めてもらおうよ。」
そう、またさっきのリスが言った。
それを聞いて納得した動物たちが騒ぐのをやめ、じっと僕を見つめた。
どうやら名前を言うのを待っているらしい。
僕は少し考えてから、口を開いた。
「…グレーンヴィが、いいかな?」
森のように深い緑の髪と、翡翠のような眼を持つ僕には、きっと似合っているだろう。
その言葉を聞いた瞬間、動物たちはぴたりと静まり返った。
そして次の瞬間、まるで堰を切ったように、一斉に話し始めた。
『グレーンヴィ。うん、いいんじゃない?』
『響きが優しくて、君にぴったり!』
「グレーンヴィ、よろしくね!」
リスが嬉しそうに跳ねながら、私の手をちょこんと握った。
「えへへ……よろしくね、みんな!」
そう言うと、動物たちは歓声を上げて、森中がまるでお祭りのような雰囲気に包まれた。
ーー数か月後。
動物たちと話してから、数か月経った。
あれから動物たちから話を聞き、ここがユグドラシルのすぐ近くの森だということが分かった。
そして、あのリスの名前はラタトスクというらしい。
いつもはユグドラシルにいるそうだが、僕がこの森にいると聞き、見に来たようだ。
今は、ユグドラシルに帰っている。
……どうやら北欧神話らしい。
名前のヴァリエーションが古ノルド語だったから、もしかして…とは思っていたけど。
色々聞いてみたが、まだ、オーディンも健在のようだ。
正直、北欧神話にはあまり詳しくない。
ラグナロクがあることと、ジークフリートとシグルトの物語を少し知っているくらいだ。
サガはラグナロクの後だっけ?
まあ、考えても仕方ない。
今は、今後について考えよう。
今世はライダーだし、北欧神話の怪物や神獣を手懐けようかな?
とりあえず、それでいこう。
その前に、騎乗するなら、体をある程度鍛えないとね。
ーー数年後。
あれから、数年の時が流れた。
最初はすぐに森を出ようと考えていたが、動物たちと共に暮らす日々の中で、しばらくは森に残ることも悪くないと思うようになった。
修行は続けていたものの、この身体には戦闘の才能がまるでなく、前回はある程度使えていた戦闘技術も、今ではまったく使えなくなっていた。
その代わりに、森の中の気配を感じ取ったり、植物を操ったり、動物や植物を癒したり、結界を張ったりといった能力が使えるようになった。
特に結界は、魔術師だった頃よりもはるかに強固なものを築けるようになった。
今では森の全体を結界で囲むことができるようになった。
どうやら、僕は支援に特化した存在になったようだ。
そろそろ森を出ようかな?
この体の成長は頭打ちのようで、数年前からまったく変化がない。
鍛えてはいるものの、筋肉もまったくつかず、これ以上森で修業をしても意味がないように思える。
とりあえず、神獣とかいそうだし、ユグドラシルに行ってみようかな。
ラタトスクにも誘われていたし、ちょうどいい機会かもしれない。
ーー数日後。
ユグドラシルに着いた。
出発の前に誰が僕についてくるか騒動があったが、仲の良かった数匹を連れていくことにした。
森を出てわかったが、森を出てから、気配察知や治癒、結界が使いにくくなった。
どうやら、僕の力は森に関連したもののようだ。
ユグドラシルに着いてからはラタトスクを探した。
ーー数十分後。
ラタトスクを呼びながらユグドラシルを探索していると、ラタトスクの声が聞こえた。
「グレーンヴィ!こっちだよ!」
高い枝の上から、ラタトスクが尻尾をふわりと揺らしながら顔を覗かせた。相変わらず、瞳は好奇心に満ちていて、どこかいたずらっぽい。
「ラタトスク!久しぶり!」
僕が手を振ると、ラタトスクは器用に枝を渡って降りてきた。
そして、僕の肩にぴょんと飛び乗ると、嬉しそうに言った。
「ほんとに来てくれたんだね!ずっと待ってたよ。
ユグドラシルの上も下も、君のことを話してるよ。君、森の女神って呼ばれてるんだ。」
「森の女神……?」
僕がそう聞くと、ラタトスクは頷いて言った。
「そう。動物たちの間では、君が森を癒しているって評判なんだ。
結界も治癒も、まるで女神みたいだって。」
「そうなんだ。」
どうやら、僕は森の女神と言われているらしい。
これ、英霊になった時、神性高くなるかな?
そんなことを考えているとラタトスクが話しかけて来た。
ラタトスクは僕の肩の上で尻尾を揺らしながら、目を輝かせて言った。
「グレーンヴィ!ユグドラシルを案内するね!」
ーー数日後。
あれから数日が経った。
ユグドラシルは広大で、一番足の速い動物に騎乗して見て回ったが、それでも数日かかった。
すべてを見終えた僕は、探索の途中で見つけたユグドラシルの最上部の枝に止まる、金色に輝く巨大な鶏、ヴィゾーヴニルを手懐けようと思い、向かうことにした。
ーー数時間後。
ヴィゾーヴニルの止まる枝に到着した。
ヴィゾーヴニルは炎のように羽ばたきながら、枝の先でこちらを見下ろしていた。
僕は静かに近づいた。
敵意を見せず、手に持っていた果実をそっと差し出す。
ヴィゾーヴニルは警戒しながらも興味を示したようで、ゆっくりと近づいてきた。
『果物か……何が狙いだ、人間よ。』
「あなたに会いに来たの。あなたとお友達になりたい。」
そう言うと、ヴィゾーヴニルは一瞬、僕の目をじっと見つめた。
僕が静かにその視線を受け止めていると、ヴィゾーヴニルは言った。
『どうやら、嘘はついていないようだな。』
やがてヴィゾーヴニルは一歩、枝の先から僕の差し出す手へと踏み出した。
鋭い爪が枝を離れ、空中に浮かぶようにして果実へと顔を近づける。
僕は息を殺し、じっと動かずにいた。
ヴィゾーヴニルは果実をそっとくちばしでつつき、ひと口かじると、満足げに目を細めた。
『うまい……なかなかにうまい果実だ。』
さらにもう一口かじると、くちばしを軽く鳴らしながら、僕の手元を見つめた。
もはや警戒心は感じられず、むしろ好奇心に満ちた眼差しだった。
僕は用意していた果物を、次々とヴィゾーヴニルに与えた。
ーー数十日後。
あれから、ヴィゾーヴニルの元に通い続けた。
ヴィゾーヴニルとも仲良くなり、お互いにヴニル、ヴィーと愛称で呼び合うようになり、背中に乗せてもらうことができるようになった。
ヴニルを手懐けた僕は、ユグドラシルの頂上にいるという、フリーズヴェルグという巨大な鷲と、その眉間にいる鷹、ヴィドフェルニルの元に向かうことにした。
ーー数時間後。
ヴニルに乗った僕はユグドラシルの頂上に来ていた。
「もうすぐだね、ヴニル。」
『ああ、ヴィー。だが気をつけろ……彼らは容易には心を開かぬぞ。』
そう言ったヴニルの声にはどこか緊張が混じっていた。
風が唸りを上げて吹き抜ける中、僕たちはユグドラシルの頂上に降り立った。
そこには、空を裂くような鋭い鳴き声とともに、フリーズヴェルグが翼を広げていた。
その羽ばたきは嵐を呼ぶほどの力強さで、フリーズヴェルグの眉間には、鋭い眼光を放つヴィドフェルニルが静かに佇んでいる。
『侵入者か……』
フリーズヴェルグの声は雷のように響き渡り、空気が震えた。
『我らの領域に踏み込むとは、お前がラタトスクの言っていたヴィーか。
……ヴィゾーヴニルを連れて何をしに来た。』
僕は一歩前に出て、言った。
「あなた達とお友達になりに来たの。」
フリーズヴェルグの瞳が細められ、嵐が一瞬止んだ。
空は張り詰めた沈黙に包まれ、ヴィドフェルニルの鋭い視線が僕を貫いた。
『友達、だと……?』
その言葉には、疑念とわずかな興味が混ざっていた。
ヴィドフェルニルがゆっくりとフリーズヴェルグの眉間から飛び立ち、僕の目の前に舞い降りる。
『人も神も我らを恐れ、牙をむいてきた。そんな我らと友になるだと?』
「うん。お友達になる。」
僕はじっと、ヴィドフェルニルを見つめた。
『ふむ……いいだろう。お前達がここに滞在することを許そう。
ヴィゾーヴニルが友と呼ぶお前を、我らも見定めよう。』
そうヴィドフェルニルが言った瞬間、風が治まり、ユグドラシルの頂上を静けさが包み込んだ。
ーー数十日後。
あれから、フリーズヴェルグとヴィドフェルニルの元に通い続けた。
警戒をしていた彼らも、通うごとに、少しずつ心を開いていった。
今では、互いにヴェル、フェル、ヴィーと呼び合う仲だ。
ヴェルの背にも乗せてもらえるようになったし、フェルは小柄なため騎乗はできないが、代わりに僕の肩に乗ってくるようになった。
そんな日々を過ごし、そろそろ、ユグドラシルの根に棲むというニーズヘッグに会いに行こうかな、と考えていた矢先のことだった。
空から、右眼に眼帯をしたお爺さんと、盾と槍を携えた少女たちが舞い降りてきた。
……あの格好と武具、間違いない。
……ワルキューレだ。
ていうことは、あのお爺さんはオーディンか。
オーディンは静かに地に降り立つと、僕たちをじっと見つめた。
片眼ながら、その視線には万象を見通すような重みがあった。
ワルキューレたちは彼の背後に整列し、無言のまま構えている。
「おぬしが、最近、森の女神じゃと言われておる娘か?」
そう言って、オーディンは僕を見つめてきた。
僕が静かに頷くと、オーディンは口を開いた。
「おぬし、何が目的じゃ?ヴィゾーヴニル、フリーズヴェルグ、ヴィドフェルニル
……いずれも強大な力を持つ獣じゃ。返答次第では、ただでは済まぬぞ。」
僕は一歩前に出て、オーディンの鋭い視線を真正面から受け止めた。
「ヴィーは、動物たちみんなと仲良くなりたいの。」
その言葉は、静かに、しかし確かに空気を震わせた。
オーディンはしばらく沈黙したまま、僕を見つめ続けていた。
片眼の奥に、何かを見極めようとする光が宿っている。
やがて、オーディンは低く、しかしどこか柔らかい声で言った。
「……欲にまみれた者ではないようじゃな。だが、その願いは容易ではないぞ。
獣たちは力を持ち、誇りを持ち、時に人を拒む。
おぬしはそれでも、彼らと心を通わせる覚悟があるのかの?」
僕は迷わず頷いた。
「ヴィーはただ、みんなのお友達になりたいだけから。」
その瞬間、ヴェルが静かに僕の隣に歩み寄り、フェルが肩の上で小さく鳴いた。
オーディンはそれを見て、ふっと口元を緩めた。
「よかろう、おぬしを認めよう。じゃが、他の神々まで認めたわけではない。
その点、心得ておくのじゃ。……では、帰るとするかの。」
そう言って、オーディンが帰ろうとすると、ワルキューレが口を開いた。
「お待ちください、お父様。この方からは勇士の気配がします。
ヴァルハラへの勧誘を許可願います。」
それを聞いたオーディンは、再び僕を見つめた。
「む?確かにそうじゃな。こやつからは勇士の気配がする。
おぬし、一度ヴァルハラに来てみんか?」
それを聞いて、少し考えた僕は、ヴァルハラにも神獣がいるかもと思い、行くことにした。
ーー数か月後。
あれから数か月経った。
ヴァルハラについてから、ヴニルやヴェルに騎乗して、ヴァルハラの勇士達と戦った。
戦うことで騎乗技術と結界の技術が向上し、動物たちとの信頼関係も大きく深まった。
また、自分達や、勇士たちを治癒することで、治癒技術も向上した。
それらの技術は森の中で使ったものに匹敵するぐらいに向上した。
勇士達と戦う中で、オーディンとも親しくなり、騎乗する動物によって大きさを変える特別な鞍を貰った。
さらに、オーディンが飼っている二匹の狼、ゲリとフレキ、ヴァルハラに住む鶏、グリンカムビとも友好を築き、騎乗させてもらうぐらい仲良くなった。
オーディンが飼っているフギンとムニンという烏たちとも仲良くなりたかったが、彼らはいつも情報を集めに飛び回っており、オーディンに報告を終えると、すぐに次の情報を得るために飛び立ってしまうため、親しくなることを諦めた。
ワルキューレたちとも模擬戦を何度も行い、彼女たちの戦術や動きから多くを学んだ。
見た中ではブリュンヒルデはいなかったので、どうやらもう、地上に追放された後のようだ。
ということは……時間的にも、ファフニールを手懐けることはできないかあ。
まあでも、悪竜現象に心があるかは不明だし、あったとしても負の感情だけだろうから、手懐けるのは無理だろうなあ。
とりあえず、ヴァルハラですることは大体終わったし、ニーズヘッグのところに向かおうかな?
ーー数日後。
あれから数日経ち、ユグドラシルの根もとに着いた。
根の奥深くは、空気が重く、湿っていた。腐敗の匂いが漂い、時折、地鳴りのような音が響く。
ヴニルが羽をすぼめて僕の隣に降り立ち、ヴェルは静かに周囲を警戒している。フェルは肩の上で身を低くしていた。
『ここが……ニーズヘッグの棲み処か。』
ヴニルの声には、かすかな緊張が滲んでいた。
「うん……でも、ヴィーは怖くないよ。きっと、話せばわかってくれる。」
そう言って、僕は一歩、根の奥へと踏み出した。
その瞬間、地面が震え、ニーズヘッグが現れた。
『……誰だ。我が領域に踏み入る者は。』
その声は、地の底から響くような重低音で、空気を震わせた。
巨大な蛇のような影が、根の闇の中からゆっくりと姿を現す。
鱗は黒く、ところどころ腐食しており、目は深紅に輝いていた。
ヴニルが一歩前に出て、翼を広げる。
『ニーズヘッグ……我らは争いに来たのではない。ヴィーは、お前と話をしたいだけだ。』
ニーズヘッグの瞳が、僕に向けられる。
その瞳は敵意と警戒で満ちていた。
『ふん、嘘をつけ。……どうせフリースヴェルグと共に我を討ちに来たのだろう。』
僕は一歩、ヴニルの隣に進み出て、ニーズヘッグの深紅の瞳をまっすぐに見つめた。
「違うよ。ヴィーは、あなたに会いに来たんだ。お話がしたい。あなたとお友達になりたいの。」
その言葉に、ニーズヘッグの瞳がわずかに細められた。
敵意は消えないが、揺らぎが生まれたのがわかった。
『知りたい、だと……?我を恐れず、敵意を持たず話しかける者など、久しく見ていない。』
『ニーズヘッグよ、ヴィーの願いを聞いてやってほしい。
それに、我はもはやお前との敵対を望まぬ。』
ヴェルがそう言った。
『なんだと?あれ程までに我と敵対していた貴様がなぜ?そこの小娘の影響か?
それほどまでに貴様にとってその小娘は大きい存在だというのか。』
それを聞いて、ニーズヘッグは動揺して言った。
ニーズヘッグはしばし沈黙した。
根の奥に響くその沈黙は、言葉以上に重く、場の空気を張り詰めさせた。
やがて、蛇のような巨体がゆっくりと動き、ヴィーの前へと身を乗り出す。
『……小娘、ヴィーとやら。貴様は何者だ。我に友を望むなど、何を以てその言葉を口にする。』
僕は一歩も引かず、まっすぐにニーズヘッグを見つめた。
「ヴィーはただの人間だよ。
……ヴィーはただ、あなたとお友達になりたいと思っただけだから。」
ニーズヘッグの瞳が、わずかに揺れた。
『純粋に我と友になりたい、と。……いいだろう。
そこのフリースヴェルグは気に入らぬが、貴様を友と認めよう。』
そうして、僕とニーズヘッグは友となった。
ーー数か月後。
あれからニーズヘッグの元で暮らすようになり、彼ともすっかり仲良くなり、騎乗させてくれるようになった。
最近では、愛称で呼び合うようになり、ニーズヘッグのことはニーズと呼ぶことにした。
また、ニーズヘッグとフリーズヴェルグは、最初こそ喧嘩ばかりしていたが、親交を深め、今では喧嘩するほど仲がいい、の関係になっている。
そんな日々を過ごしていた中で、そろそろフェンリルを手懐けに行こうか、と思った僕はヴェル達を連れてリングヴィ島に向かった。
ーー数日後。
リングヴィ島に入ろうとしていた瞬間に、オーディンが現れた。
「ヴィーよ……フェンリルに会いに行くのじゃな。」
僕は頷いた。
「ヴィーよ……もはや、フェンリルの憎悪を解き、心を通わせれるのはおぬししかおらん。
このことはわしが隠しておく。……じゃから、フェンリルのことを頼んだぞい。』
オーディンはそう言って去って行った。
オーディンが去った後、僕達はリングヴィ島に入った。
ーー数十分後。
島の奥へ進むにつれ、空気が張り詰めていくのを感じた。木々は沈黙し、風は止み、まるで島全体が息を潜めているようだった。
やがて、巨大な岩の裂け目の前にたどり着いた。そこから、低く唸るような呼吸音が聞こえてくる。
近づくとフェンリルの姿が見えた。
その巨体は鎖でがんじがらめにされ、足には重い枷がはめられている。
体は巨大な岩に固定され、口には一本の剣が無理やり押し込まれていた。
よだれが剣の刃を伝い、地面に滴り落ちている。
鋭い金色の瞳がこちらを見据えた。
その瞳は怒りと憎悪に満ちていた。
ヴニルが羽を広げ、僕の前に立とうとしたが、僕はそっと手を伸ばして制した。
「大丈夫。ヴィーが話す。」
僕がそう言って前に出るとフェンリルが唸った。
『人間か。我に何の用だ。』
フェンリルの声は低く、地を這うような響きだった。
その瞳は鋭く、僕の心の奥まで見透かそうとしているようだった。
僕は一歩、裂け目の前へと進み出た。足元の岩が軋む音が、静寂の中に響く。
「ヴィーは、あなたと友達になりに来たの。
ヴニルとも、ヴェル、フェルとも、ニーズとも、仲良くなれた。
だから、あなたとも……きっと、お友達になれると思ったの。」
フェンリルの瞳が、わずかに揺れた。
『……わかり合える、だと?我が憎しみを、貴様は理解しているのか?』
「ううん、全部はわからない。でも、知りたい。あなたが何を思って、何を感じているのか。
ヴィーは、あなたの話を聞いて、分かり合いたい。」
その言葉に、フェンリルはしばし沈黙した。風が再び吹き始め、木々がざわめく。
『……貴様のような者が、我に近づくとはな。だが、貴様の瞳に偽りはないようだ。』
そして、ゆっくりと頭を垂れた。
『……よかろう。貴様の言葉、聞いてやろう。だが、我の心に踏み込むならば、覚悟を持て。』
僕は微笑んで頷いた。
「もちろん。ヴィーは、あなたと友達になりたいから。」
その瞬間、フェンリルの瞳に、ほんのわずかに光が差したように見えた。
ーー数十日後。
フェンリルとの対話は、時に激しく、時に静かだった。
彼の過去、怒り、孤独を少しずつ知っていくうちに、僕たちの間に絆が芽生えていった。
ある日、フェンリルが僕を見て、静かに言った。
『……ヴィー。我は、貴様を友と認めよう。』
その言葉に、僕は心からの笑顔を浮かべた。
こうして、僕はフェンリルと友達となった。
ーー数か月後。
フェンリルと仲良くなった僕は、愛称を呼びあうようになり、フェンリルのことをリルと呼ぶようになった。
そして僕は、オーディンに頼んでリルの拘束を解いてもらうことにした。
最初、リルはオーディンに対して激しい敵意をむき出しにしていた。
しかし、僕の説得と、オーディンが恐れずに拘束を外した姿を見て、憎しみはまだ残っているようだったが、リルは怒りを抑えてくれた。
そうして、拘束を解いたリルに騎乗し、僕達は森へ帰った。
ーー数か月後。
僕達は森で静かに生活していた。
ある日、リル達と話していると、慌てた様子でオーディンが来た。
「まずいことになった。他の神々がこの森に攻め込もうとしておる。
フェンリルたちがここに集まっていることがばれたのじゃ。
彼らはフェンリル達の存在を危険視しておる。
おぬしが手懐けたことも、神々の均衡を崩すと考えているようじゃ。」
それを聞いて僕は言った。
「どうすれば、戦わなくて済むの?」
「フェンリル達を封印するか、おぬしが死ぬしかあるまい。
今、おぬしが死に、フェンリル達が各地に散っていったとすれば、収まるであろう。」
……どうやら死ぬしかないようだ。
リル達の封印なんて絶対嫌だし、神々と戦っても僕達の勝率は限りなく低い。
どうせ後、数回も人生があるし、宝具で、またみんなに会えるだろう。
ならば、僕は喜んで命を捨てよう。
そう決めて僕は森の皆の所へと向かった。
「……ねえ、みんな。ヴィー、ちょっとだけ、お願いがあるの。
……ヴィーがいなくなっても、復讐とかしないでね?
ヴィーはみんなに傷ついてほしくないから。」
誰もすぐには答えなかった。けれど、やがてリルが低く唸るように言った。
『……ヴィーが望むなら、我らは従う。だが、貴様がいなくなることを、我は望まぬ。』
「うん……ヴィーも、ほんとはずっとみんなといたい。
でも、みんなが傷つくのは、もっと嫌だから。」
その言葉に、ニーズが静かに首を垂れた。
『……ヴィー。お前の選択は、我らの誇りだ。だから、最後まで共にあろう。』
僕がオーディンのほうを向くと、オーディンは静かに僕を見つめていた。
「……決めたかの?」
僕は頷いた。
「うん。ヴィーは、みんなを守りたい。
だから、ヴィーが死ぬことで、みんなが守られるなら……それでいい。」
オーディンはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと歩み寄り、僕の肩に手を置いた。
「うむ、おぬしはわしが直々に介錯する。
苦しみも痛みも与えぬよう……静かに、眠るように命を絶ってやろう。」
その言葉に、森の空気が張り詰めた。
僕は微笑みながら、みんなの顔を一人ずつ見渡した。
「ありがとう、みんな。ヴィーは、みんなと出会えて、本当に幸せだったよ。」
リルは低く唸りながら、僕の足元に身を伏せた。
ヴニルは羽を広げ、空を覆うように僕を包み込む。
ヴェルとフェルは静かに寄り添い、ニーズはその巨体を低くして、僕の前に頭を垂れた。
「ヴィー……」
ラタトスクが枝の上から、涙を浮かべながら声を漏らした。
僕の周りには森の動物たちが集まり、まるで僕を見送るように、静かに僕を見つめていた。
オーディンは静かに槍を構え、僕の後ろに立った。
「……よいか?」
僕は頷いた。
「うん。ヴィーは、みんなのこと、大好きだから。」
そう言った瞬間、僕の意識は途絶えた。
次は狂かな?
原作主人公の性別
-
男
-
女