7騎で1騎のサーヴァント   作:悪平等な人外

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疲れた。

オリジナル怪異あり、キャラ崩壊?ありかも。

誤字脱字は感想欄にお願い。


剣士の英雄譚

目を覚ました瞬間、僕は山にいた。

 

身構えた途端、頭に激しい痛みが走る。

 

「……っ!」

 

声にならない悲鳴が喉の奥で凍りつく。

 

息を吸うことすら苦痛で、視界が歪む。

 

しばらく痛みに悶絶していると、徐々に痛みが引いていく。

 

波のように押し寄せては引いていく痛みの中で、僕の意識の奥底に、記憶の奔流がとめどなく押し寄せてきた。

 

赤ん坊の自分を、捨てた見知らぬ人の顔。

 

山での生活の記憶。

 

この肉体に刻まれた記憶が、容赦なく脳を焼くように流れ込んでくる。

 

……いてて。

 

前回で痛覚無効に頼りすぎていたせいなのか、心なしかディンギルの時よりも痛い気がする。

 

今回は痛覚耐性をしっかりとつけておかないとね。

 

とりあえず、記憶の整理をしようか。

 

……ふむふむ、特に特筆することはないかな。

 

いつも通り、人との関わりななく、地理は理解できる。

 

ん?なんか見覚えのある植物の記憶があるんだけど。

 

これってどう見ても桜だよね?

 

他にも梅や藤とかもあるんだけど。

 

それに、鹿や猪もいるみたい。

 

……ということは、ここって……日本?

 

……いや、まだ決まったわけじゃないし、まずは都市や村を見つけよう。

 

都市に行けば大体のことはわかるだろうし。

 

とりあえず、山を出る準備をしよう。

 

ーー数日後。

 

山の獣や、植物を採ることである程度の食料が集まった。

 

とりあえず、川を辿っていこうかな?

 

都市や村って川辺に作られることが多いしね。

 

それじゃあ、行こうかな。

 

ーー数日後。

 

あれから数日経った。

 

川沿いを歩き続けて、幾つかの小さな支流を越え、歩き続けていると、遠くに都市が見えて来た。

 

城壁に囲まれ、日本家屋みたいな家が沢山並んでいる。

 

やっぱり日本か。

 

とりあえず、都市に入ろうかな。

 

ーー数十分後。

 

都市に入って、近くの人に話を聞いてみたところ、ここは出雲らしい。

 

ここら一帯は葦原中国といい、大国主神が治めてるらしい。

 

どうやらここは日本で間違いないようだ。

 

とりあえずこの都市を拠点にしようかな。

 

ーー数日後。

 

あれから数日経った。

 

都市で暮らす傍ら、剣と槍を扱ってみたら、剣が容易く扱えた。

 

どうやら、今世は剣で来世は槍のようだ。

 

適性も分かったし、修行でもしようかな。

 

あっ、そうだ。

 

名前を忘れてた。

 

でも、どうしよっかなぁ。

 

容姿は美小女だけど、THE日本人だし。

 

思いつかないなあ。

 

今世は剣だし、安直に御剣姫(みつるぎひめ)にしようかな?

 

姫って名前結構いるし。

 

キャラも作るの面倒だし、一人称私の敬語キャラで行こうかな。

 

この時代に侍言葉とかなさそうだし。

 

ん?待てよ、侍で思い出したけど、そういえばこの時代にまだ日本刀ってなかったよね。

 

どうしよう、僕、日本刀が使いたいんだけどなあ。

 

誰かに作ってもらおうかな?

 

いや、でも作り方は知らないし、材料とか作業手順は少し知ってるけど。

 

それに、頼むにしても、こんな少言うことことなんて聞いてくれないだろうし。

 

ひとまずは剣で我慢しよう。

 

とりあえず、あのNOUMINNでも見習って、YAMAで修業しようかな?

 

燕返しの真似事ができるまで、YAMAから出ないことにしよう。

 

ーー数年後。

 

あれから数年経った。

 

僕はYAMAの深奥にて、獣たちや怪異と幾度となく戦い、剣の道を窮め続けてきた。

 

その果てに、ついに燕返しを会得するに至った。

 

そして、その応用で三段突きや、三段斬りもできるようになった。

 

最初は剣を使っていたけど、刀のことを考えて、木刀を使っているうちに、木刀で、YAMAの動物や怪異たちを殺せるようになった。

 

また、YAMAには人型の怪異も多くいて、それらと戦うことで、人形との実戦経験も得ることができた。

 

まだまだ剣の技術を窮められそうだから、もう少し、YAMAで修業しようかな。

 

ーー数年後。

 

あれから数年経った。

 

YAMAで修業を続けるうちに、斬撃を一つ増やすことができた。

 

修行の合間にふと、縮地できるかな?と思って、縮地の練習をしていたら、縮地ができるようになった。

 

剣技も上達しているけど、成長が遅くなってきた。

 

そろそろ、成長も頭打ちになってきたし、YAMAを出ようかな。

 

ーー数か月後。

 

あれから数か月が経った。

 

都市に到着した僕は、自主稽古に励みながら、のんびりとした暮らしを送っていた。

 

生活の合間を縫って、鍛冶師に刀の製作を依頼してみたものの、残念ながら満足のいく出来にはならなかった。

 

これなら、木刀を使った方がまだましだろう。

 

やることがなく、暇なので僕は斐伊川へ修行しに向かうことにした。

 

斐伊川は、埋められた八岐大蛇の影響なのか、竜や蛇に類する魑魅魍魎が多く棲みついており、修行にはもってこいの場所だ。

 

あんな、特急呪物を埋める須佐之男の正気を疑うけど、修行に良いし、埋めてくれたことに感謝している。

 

ーー数日後。

 

斐伊川に着いて、いつものように怪異を狩ろうとしたら、強い気配がするのに気付いた。

 

その気配がするところに近づいてみると、七つの首を持つ竜が見えた。

 

大きさは大体50mはあるか?首一つ一つが直径1mぐらいはありそうだ。

 

便宜上、七岐大蛇と呼ぶことにしよう。

 

七岐大蛇をつぶさに観察していると、あることに気づいた。

 

七岐大蛇のいる所にすごく見覚えがあるのだ。

 

あれは確か、僕が狩った怪異を埋めていた場所。

 

……うん。

 

見なかったことにしよう。

 

そして、何がとは言わないけど、今度須佐之男に会う機会があったら心の中で謝っておこう。

 

とりあえず、自分で蒔いた種だし、七岐大蛇を退治しよう。

 

伝承通り、酒を用意しようかな?

 

いや、そんな時間はなさそうだ。

 

なんか都市の方に向かおうとしてるし、酒を用意している時間はなさそうだ。

 

今すぐ退治しよう。

 

まずは、不意打してみようかな。

 

そう思って僕はできる限り気配を薄くして、縮地で七岐大蛇の背後に跳んだ。

 

射程範囲に入っているのは3首。

 

僕は剣を構えて剣技を放った。

 

「秘剣・燕返し!」

 

秘剣・燕返しは七岐大蛇の首を少し斬るだけで終わった。

 

どうやら威力が足りないみたいだ。

 

ならば、重ねてみよう。

 

「秘剣・二重双閃!」

 

秘剣・二重双閃は、沖田さんの三段突きを参考にした二段斬りを、二つの場所に放つ技である。

 

斬撃を四つに増やせたときに、思いついた技だ。

 

ちなみに、突きバージョンは二重双穿だ。

 

剣技名を考えるのもだるいし、安直な名前にした。

 

放った秘剣・二重双閃は七岐大蛇の首を二つ斬り落とした。

 

どうやら、二段斬りなら通用するようだ。

 

この調子で斬っていこう。

 

そう思い、残った一つの首に剣技を放つ。

 

「秘剣・二重閃!」

 

秘剣・二重閃は普通にただの二段斬りである。

 

……いや、多重次元屈折現象起こしてるし、ただの二段斬りではないか。

 

分かりやすく言えば、さっきの二斬二連から二連を抜いた技である。

 

とりあえず、残りの首を斬り落とそう。

 

僕は縮地で他の首のところに跳んだ。

 

横目で斬った首を見ると、首が少しづつ再生していた。

 

ヒュドラのような性質を持っているかもしれないし、早めに首を斬り落とそう。

 

そう考えて僕は剣を構え、射程範囲に入った二つの首に剣技を放った。

 

「秘剣・二重双閃!」

 

放たれた秘剣・二重双閃は二つの首を容易く斬り落とした。

 

横目でまた、斬り落とした首を見てみたがまだ頭は再生していないようだ。

 

僕は縮地で残りの首の方に跳んだ。

 

そして、剣を構えて剣技を放った。

 

「秘剣・二重双閃!」

 

秘剣・二重双閃で残りの首を斬り落とした僕は、縮地で七岐大蛇から離れ、様子をうかがった。

 

頭を全て失った七岐大蛇はしばらくの間蠢き、やがて、地響きを立てながら倒れこんだ。

 

……どうやら、退治できたようだ。

 

生きているかもしれないので念のため切り刻んでおこう。

 

そうして、七岐大蛇を切り刻んでいると、強大な神格を持つ存在がものすごい勢いで近づいてきた。

 

主神クラスに近い神格だ。

 

状況的に見て、七岐大蛇に関係することだろうから、須佐之男だろう。

 

須佐之男と思われる神霊は僕のすぐ目の前に降り立った。

 

「八岐大蛇の野郎に似た気配の竜の気配を感じたから来てみたが……あれ、お前が倒したのか?」

 

そう言って、須佐之男らしき人物は七岐大蛇の残骸をちらりと見た。

 

八岐大蛇と関係が深そうだし、十中八九、須佐之男だろう。

 

とりあえず、心の中で謝っておこう。

 

正気を疑うって言ってゴメン!

 

そう、心の中で謝りながら、須佐之男の問いに答えた。

 

「ええ、自分の不始末だったので。……都市にも向かおうとしていましたし。」

 

僕がそう答えると、須佐之男は首をかしげて口を開いた。

 

「不始末ってのはどういうことだ?」

 

その言葉に、僕は目をそらして、少し間を置いてから答えた。

 

「いえ、ただ……ここで狩った怪異を、すべて同じ場所に埋めていたのですが、

 それらが融合して、あれになったようでして。」

 

「……なるほどな。俺が埋めた八岐大蛇の野郎の残滓によって生まれた怪異を、

 一か所に埋めたことによって、あれになったって所か。

 ……俺が言えた義理じゃねえが、あまり埋めたり、死骸を残すのはやめときな。」

 

須佐之男はそう言って、七岐大蛇の残骸を一瞥した後、静かに歩み寄る。

 

八岐大蛇を埋めたって言ってるし、どうやら、須佐之男で間違いないようだ。

 

「……それにしても、よく倒したな。あれは並の怪異じゃねえだろう。

 それなりの神性も持っていやがったし、神との交じり血とはいえ、

 その薄さじゃ、退治するのは厳しいはずだ。

 お前、磨けば光るものがありそうだし、いっちょ俺の弟子になってみねえか?」

 

僕の目の前に立った須佐之男はそう言った。

 

……弟子になろうかな?

 

最近、自主稽古も発展が無くなってきたし、戦い甲斐のある怪異もあまりいなかったからね。

 

須佐之男なら模擬戦するだけでも大きな糧になるだろうし、弟子になる利点は大きいだろう。

 

そう考えて僕は口を開いた。

 

「私は御剣姫(みつるぎひめ)と申します。これからよろしくお願いします。師匠。」

 

「師匠か。なんか照れくせえな。そういや自己紹介がまだだったな。

 俺の名は須佐之男命。須佐之男でも師匠でも好きに呼んでくれ。」

 

須佐之男は頭を掻いてそう言った。

 

「わかりました。では、師匠と。」

 

僕がそう言うと、須佐之男はにやりと笑い、七岐大蛇の残骸を見て肩を軽くすくめた。

 

「いいぜ。じゃあ、弟子一号の初仕事だ。まずはこの七岐大蛇の残骸をどうにかしよう。

 放っておくとまた厄介なことになるかもしれねえ。」

 

僕は頷き、残骸に目を向けた。

 

……どうしよっか。

 

切り刻んでも駄目そうだし……焼くか?

 

いや、ただの火じゃ効かなそうだし、それに灰はどうする?

 

封印するにしても、仕方も分からないし。

 

とりあえず、須佐之男に丸投げするか。

 

封印とかできそうだし、対処できる人物に伝手がありそうだしね。

 

「……より細かくするだけではいけませんよね?封印とかってできますか?」

 

「いや、俺は武闘派だからな封印とかはできねえな。」

 

須佐之男は腕を組み、眉間に皺を寄せながら残骸を見下ろした。

 

「……どうします?……これ。」

 

僕がそう言うと、須佐之男はしばらくの間考えて口を開いた。

 

「……俺が持っていって、伝手のあるやつに処理してもらう。

 だから、とりあえず、こいつ持って俺ん家に行くぞ。」

 

そう言って、須佐之男は飛んで行った。

 

ん?いや、ちょっと待ってよ。

 

僕、飛べないんだけど?

 

いや、正確に言うなら魔力放出をすれば飛べるけど、直ぐガス欠になるよ?

 

僕は慌てて叫んだ。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!私、飛べませんよ!」

 

そう叫ぶと、須佐之男は戻ってきて、僕の前に来て、口を開いた。

 

「お、そうだったな。普通の人間は飛べねえか。どれ、俺が抱えてやろう。」

 

須佐之男はそう言って、流れるように僕を抱えて飛び立った。

 

「え?ちょっ。待っ。」

 

僕の制止も聞かず、飛び立った須佐之男はどんどん加速していく。

 

先程までいたところがみるみる小さくなっていった。

 

僕は、そのまま須佐之男に抱えられて、根の国へと向かった。

 

ーー数日後。

 

あれから数日経った。

 

根の国に着いてから、須佐之男は僕の住まいの手配を済ませ、それからすぐに七岐大蛇の残骸の処理に出向いた。

 

七岐大蛇の残骸は、須佐之男の伝手によって、処理できる人物に引き渡され、厳重に処理されたらしい。

 

戻ってきた須佐之男は、肩の荷が下りたような顔をしていた。

 

「ふう、これで厄介ごとは済んだな。それじゃあ、稽古と行くか?」

 

そう言って須佐之男はこちらを見た。

 

どうやら、さっそく稽古のようだ。

 

さて、須佐之男はどんな稽古をしてくれるのか。

 

「ええ、よろしくお願いします。」

 

「おう!じゃあ、お前の実力を図るために模擬戦でもしようじゃねえか。」

 

須佐之男はにやりと笑い、腰に差していた剣を軽く抜いた。

 

僕も構えを取る。

 

相手は神、しかも主神クラスだ。

 

今の僕の全力がどれほど届くのか試してみよう。

 

思えば、神性を持つ者と戦ったことは多くあるけど、神自体と戦ったことはなかったけ?

 

これはいい経験になるだろう。

 

「遠慮はいらねえぞ。全力で来い。」

 

「ええ、殺す気で行きます!」

 

言うと同時に、僕は縮地で須佐之男の懐に飛び込んだ。

 

須佐之男の目が一瞬、鋭く細まった。

 

だが、驚きの色はない。むしろ、僕の動きを見切っていたかのように、須佐之男は剣を横に払った。

 

僕はその一撃を紙一重で避け、縮地で須佐之男の背後に回り込み、剣を振るう。

 

「ほう、なかなか速いじゃねえか!」

 

須佐之男は振り返りざまに剣を受け止めた。

 

剣と剣がぶつかり合う音が辺りに響く。

 

しばし鍔迫り合いが続いたが、須佐之男に力に押されてきたので、すぐさま斬り合いに切り替えた。

 

須佐之男の剛剣は凄まじく、僕は防戦一方に追い込まれた。

 

「どうした御剣姫(みつるぎ)。お前の力はそんなもんか?」

 

須佐之男は剣を繰り出しながら挑発する。

 

「……」

 

どうしようかな?

 

須佐之男の剣は荒っぽく見えて、隙がない。

 

このままじゃじり貧だ。

 

何か突破口を開かないと。

 

秘剣を使えば意表をつけるけど、一度防がれたら次はないだろう。

 

だけど、他に手はない以上、これで決めるしかない。

 

僕は一瞬、呼吸を整えながら縮地で間合いを取った。

 

須佐之男は追ってこない。

 

こちらの出方を見ている。

 

僕は剣を剣を構え、足元に力を込めた。

 

そして、足が壊れるほどの力で須佐之男の前に縮地をし、秘剣を放つ。

 

「秘剣・四方葬!」

 

同時に放たれた首、足、左右脇腹を狙った斬撃が須佐之男を襲う。

 

斬撃は須佐之男が瞬時に地を蹴ることで間一髪でかわされた。

 

だが——

 

「……っ!」

 

首、足、左右脇腹を狙った斬撃のうち、首への一撃が、須佐之男の防御の隙を突いた。

 

須佐之男の首が浅く斬れ、血が滲んだ。

 

「……やるじゃねえか。まさか、俺に傷をつけるとは思わなかった。

 どうやらお前を見くびっていたらしいな。本当なら、このまま続けていくってとこなんだが、

 お前、もう限界だろ?今日はここで仕舞にしようじゃねえか。」

 

須佐之男は感心したように言った。

 

「……はい。……どうでしたか?私は。」

 

「そうだな、今まで見た人間の中で一番強えな。剣もある程度は完成してるし、

 俺が師事できることなんぞ、剣技の細かい調整と、模擬戦ぐらいだろうな。

 だから、これからの稽古は、剣技の調整と模擬戦を中心に進めていくぞ。」

 

そう言って、須佐之男は去って行った。

 

ーー数か月後。

 

あれから数か月経った。

 

須佐之男と稽古をするうちに剣技がより上達し、出せる斬撃が一つ増えた。

 

今では、須佐之男と戦って勝率3割は維持できるようになった。

 

そんな日々の中、ある日、須佐之男が不在のため一人で稽古に励んでいたところ、突如として空がまばゆい光に包まれた。

 

その光の中から現れたのは、神々しい輝きを纏った美しい女神。

 

周囲は神聖な空気に満ち、地面に降り立った女神は、ふと口を開いた。

 

「御用が無くても即参上!天照大御神降臨っ!です!」

 

……なんだろう。

 

さっきまでの神聖な雰囲気が、一瞬で吹き飛んだ気がする。

 

自由神だとは知っていたが、ここまで?

 

「えっと……天照様?」

 

と、僕が戸惑いながら声をかけると、天照は満面の笑みで頷いた。

 

「そう!太陽の神、天照でーす! ……はっ!なんていう美魂!

 つい見とれちゃいました!あなたが(スサ)が言ってた御剣姫(みつるぎひめ)さんですか?」

 

おい、なんで言うんだよ須佐之男。

 

ていうか、交流あったの?

 

よりによって、一番関わりたくない神に目をつけられるなんて…。

 

まあ、目を付けらちゃったものは、仕方ないか。

 

とりあえず、返事はしておこうか。

 

「……そうですが、いったい、何のご用件ですか?」

 

(スサ)があなたの話をよくするので、

 今日は丁度暇だったし、気になって見に来ちゃいました!」

 

彼女はまるでピクニックに来たかのような軽い口調で言う。

 

「……えっと、それだけですか?」

 

僕が眉をひそめると、天照は一瞬考える素振りを見せた後、ぱっと手を打った。

 

「はい!……でも、貴方を見てビビーンて来ちゃいました。ちょっと待っててください!」

 

そう言って、天照は天に昇っていった。

 

ーー数十分後。

 

再び空が輝き、眩い光が天から降り注いだ。

 

その中心に、天照が舞い降りてきた。

 

「お待たせしました〜!御剣姫(みつるぎひめ)さんに受け取ってもらいたいものがあるんです!」

 

……受け取ってもらいたいもの?どういうことだ?

 

「じゃじゃーん!これです!」

 

彼女の手には、神秘的な剣が握られていた。

 

それは、かつて見た、Fate/Samurai Remnantの天叢雲剣にそっくりだった。

 

「えっ……それは、あの……?」

 

は?どゆこと?

 

これってこんな簡単にもらえるもんだっけ?

 

「そうです!かつて、(スサ)が討った八岐大蛇から出て来た神剣、天叢雲剣!

 あなたに相応しいと思って持ってきちゃいました!」

 

天照は満面の笑みを浮かべながら、両手で天叢雲剣を差し出した。

 

「これを、私に?」

 

マジで?いいの?

 

貰えるのなら、貰っとくけど。

 

「はい!あなたなら扱いきれるだろうって(スサ)も言ってましたし!

 それと、これとは別にちょっとしたお願いがあるんです。」

 

天照は剣を差し出したまま言葉を続けた。

 

「お願い……ですか?」

 

やっぱり、貰えるだけのいい話じゃないか。

 

僕が眉をひそめると、天照は剣を差し出したまま言った。

 

「はい。御剣姫(みつるぎひめ)さんの活躍を、その魂の輝きを見せてほしいなあーって、思ったんです。

 だから、時々私のちょっとしたお願い事を聞いてくれませんか?

 もちろん、無理な時は断ってくれてもいいですし、達成したらご褒美も上げちゃいますよ!」

 

……どうしようか。

 

お願い事とかめんどそうだしなあ。

 

でも、断ってもいいらしいし、達成したらご褒美がもらえるって言ってたしなあ。

 

そうだ、刀を作るために天目一箇神に会いたいし、高天原に入る許可とかもらえないかなあ。

 

そう思って、天照に聞いてみた。

 

「天照様、褒美として、高天原に入ることはできますか?」

 

天照は微笑みながら答えた。

 

「もちろんです!ですけど、ある程度の実績を積んでからでないと、

 他の神々がちょっと煩くてですね……。 ですから、それなりの功績を立ててからでないと、

 高天原には入れないんですよ。」

 

これは、結構お願いを聞かないといけない感じかな?

 

まあでも、刀のためだ。

 

何でもとは言わないけど大抵のことならしようかな。

 

「そうですか。わかりました。お願いをお受けします。」

 

「本当ですか!ありがとうございます!では、これを!  

 それでは、私はこれで!また来ますからね!」

 

そう言って、天照は天叢雲剣を僕に手渡し、天に昇っていった。

 

ーー数年後。

 

あれから数年経った。

 

僕は天照のお願いをたくさんこなした。

 

天照のお願いは多岐にわたった。

 

ただ話し相手になるだけのものもあれば、怪異を討伐するような危険な任務もあった。

 

その中でも、最も厄介だったのは話し相手になることだった。

 

天照は自由奔放で、気まぐれで、突拍子な行動を起こすのが多く抑えるのが大変だった。

 

彼女のお願いの半数以上は、話し相手になってというものだった。

 

断ろうとすると、彼女は悲しそうな顔をする。

 

その顔を見ると、どうしても無理とは言えなくなってしまうのだ。

 

そんな日々を重ねるうちに、僕は天照と仲良くなり、ついには突飛な行動をした天照をしばき倒して止めるほどの関係になった。

 

やがて、高天原への入場許可を得た僕は、天目一箇神に会い、刀の作成を依頼した。

 

そして、試行錯誤を重ねること数年、ついに、刀を完成させることができた。

 

そんなある日、いつものように修行に励んでいると、いつになく真剣な表情を浮かべた天照が現れた。

 

御剣姫(みつるぎひめ)さん……今日は、ちょっと大事なお話があるんです。」

 

その声には、いつもの柔らかさとは違う、重みがあった。

 

「……大事な話とは?」

 

天照は一瞬、言葉を選ぶように沈黙した後、静かに告げた。

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)を討伐してほしいんです。」

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)……?」

 

その名を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。

 

天照は静かに頷き、空を見上げながら言葉を続けた。

 

「最近、地上に突如として咲いた桜の木です。

 けれど、ただの桜じゃない……。その木は、人、怪異、そして神の魂までも喰らい、

 成長する、異形の存在なんです。」

 

「魂を……喰らう?」

 

魂を喰らうなんてそんな桜、東方ぐらいでしか聞いたことないけど?

 

日本神話にあったけ?そんな木。

 

「はい、その性質上、討伐が厳しくて、特に、神は近づくだけで、

 神性を大きく奪われて、桜の糧になってしまいます。

 だから、神々の中では誰も近づけないんです。けれど、あなたなら……」

 

天照は僕の目をじっと見つめた。

 

「あなたは限りなく神性が低い身でありながら、神剣を操り、神々と渡り合える力を持っている。

 御剣姫さん(みつるぎひめ)、あなたなら、咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)を討てるかもしれないって……そう思ったんです。」

 

「……わかりました。私が討ちます。」

 

天照の表情がぱっと明るくなった。

 

「ありがとうございます!これを着けていってください。  

 これは八尺瓊勾玉といって、あなたを守護してくれるものです。  

 ご武運を祈っています。どうか、ご無事に。」

 

八尺瓊勾玉を着け僕は咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)のところに向かった。

 

ーー数時間後。

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の近くに降り立った僕の目の前には、異様な光景が広がっていた。

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)は、まるで空を覆うかのように巨大で、幹は黒紫に染まり、

無数の魂のような光を放つ桜が咲いていた。

 

僕は刀を構え、ゆっくりと咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)に近づいた。

 

どうしよっかなあ、あれ。

 

でかすぎて斬るのは難しそうだし、やっぱり、天叢雲剣で消し飛ばそうかな?

 

いや、でも神性を吸い取るって言ってたしなあ。

 

天叢雲剣は最終手段にしておこうかな。

 

とりあえず、あの枝を全部斬り落としてみようかな?

 

そう考えて僕は咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の枝のところまで縮地で飛び剣をふるった。

 

「ふっ!」

 

鋭い音とともに、枝が断ち切られ、魂のような光が霧散する。だが、その光は桜へと吸収されていく。

 

そして、斬った枝はすぐに再生して、花が咲く。

 

……やっぱりか。

 

根本からどうにかしないといけないみたいだ。

 

こうなったら、天叢雲剣を使うしかないか。

 

木刀作ってみたいし、ちょっとだけ、心材を残す方向で使うか。

 

そう考えて僕は天叢雲剣を構えて、天叢雲剣の展開を始める。

 

(あめ)(つち)(わだつみ)(あらし)(ほむら)

 天変地異を宿しし神剣よ。その災いをもって、厄災を鎮めたまえ。 界剣・天叢雲剣!」

 

振り下ろした天叢雲剣から放たれた荒れ狂う魔力の奔流が、咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)を飲み込んだ。

 

魔力の奔流が治まった後、あれ程巨大だった咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)は一本の材木へと姿を変えていた。

 

材木となった咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)は、黒紫の輝きを発し、静かに地に横たわっていた。

 

僕はそれを手に取り、その地を後にした。

 

ーー数年後。

 

あれから数か月経った。

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)を討伐した僕はその褒美として、八尺瓊勾玉を貰うことにした。

 

他に思いつかなかったし、戦いの最中にその力を試し、有用性を実感したからだ。

 

僕が死ぬまで所持することを、認めてもらった。

 

その後、高天原へと赴き、天目一箇神に咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の心材を使った刀の製作を依頼した。

 

咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の加工にはその性質もあり、完成までに数年を要した。

 

そしてついに、その刀が完成した。

 

それは木刀でありながら、鋼を凌ぐ硬度と切れ味を持ち、咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の性質を受け継いでいた。

 

斬った相手の生命を奪う力を秘め、限定的ながら咲骸千魂桜(しょうがいせんごんざくら)の疑似復活をも可能とした。

 

さらに、神性を多く取り込んでいたため、神造兵装としての格を持った。

 

その性質と桜の由来から、僕はその刀を櫻喰刀(おうしょくとう)と名付けた。

 

自己修復機能も備えており、今では僕の主武装として常に腰に携えている。

 

ーー数十年後。

 

あれから数十年が経った。

 

僕はすっかり年老いてしまい、もはや満足に剣を振るうこともできなくなった。

 

かつて日課のように続けていた怪異狩りや、須佐之男との模擬戦も、数年前からやっていない。

 

やろうとしたけど、須佐之男と天照に止められた。

 

怪異狩りも、模擬戦もやらなくなったけど、櫻喰刀(おうしょくとう)は肌身欠かさず持っている。

 

今は、須佐之男と天照と共に団欒の時を過ごし、穏やかな日々を送っている。

 

ちなみに、嫁はできていない。

 

言い寄ってくる男は数多くいたが、すべて断った。

 

転生から数百年女をやっているけど、いまだに男はNGだ。

 

天照からも、適齢期を過ぎた頃に誘われたが、ヤンデレ気質があるのが怖くて断った。

 

そのため、これまでの人生で、一度も誰かと付き合ったことはない。

 

縁側に座ってそんなことを考えていると、気が遠くなってきた。

 

どうやら、もう寿命が来たみたいだ。

 

思えば寿命で死んだのは初めてだったんじゃないだろうか。

 

これまで、戦死やら、病死やら、処刑やらで寿命を迎える前に死んでいたしね。

 

そう考えると、これまでの生の中で一番充実していたのかもしれない。

 

光が強くなってきた。

 

そろそろか、次で最後だし、来世は全力を出すのもいいかもしれない。

 

悔いはないけど、最期に須佐之男と天照に看取ってもらえなかったことが残念だなあ。

 

光に身を任せ、僕の意識は遠くなっていった。

 




須佐之男のみつるぎ呼びは誤字じゃない

原作主人公の性別

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