7騎で1騎のサーヴァント   作:悪平等な人外

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槍兵の英雄譚

目を覚ますと、そこは山だった。

 

周囲を見渡す前に、僕は反射的に身構える。

 

その瞬間、頭に激しい痛みが走った。

 

「っ……!」

 

少し痛みに耐えていると、すぐに痛みは治まった。

 

痛みが引くと同時に、記憶の奔流が容赦なく押し寄せてくる。

 

赤ん坊の頃、自分を捨てた見知らぬ人の顔。

 

山での生活の記憶。

 

この肉体に刻まれた記憶が、脳を焼くように流れ込んでくる。

 

……いってー。

 

7回経験しても、慣れないなあ、この痛みには。

 

まあでも、これで最後だと思えば、ちょっとは楽になるよ。

 

あれ?でも英霊召喚の時って記憶が植えつけられるし、痛いんじゃね?

 

もうこの痛みは勘弁してほしいんだけど。

 

……痛みがないといいなあ。

 

召喚された英霊に痛がってる人はいなかったし……大丈夫だよね?

 

とりあえず、今は記憶の整理に集中しよう。

 

……ふむふむ、特に特筆することはないかな。

 

いつも通り、人との関わりはなく、地理は理解できる。

 

とりあえず、都市を探そうかな。

 

その前に、山を出る準備をしないとね。

 

ーー数日後。

 

山の獣を狩ったり、植物を採取することで、ある程度の食料が集まった。

 

とりあえず、適当に進めば見つかるでしょ。

 

それじゃあ、探そうかな。

 

ーー数日後。

 

やっと都市を見つけた。

 

だけど、どこかおかしいのだ。

 

門の前に人が全くおらず、人の出入りがない。

 

それに門番なのか竜がいるし。

 

……とりあえず、近づいてみよう。

 

ーー数十分後。

 

よしよし、やっと着いた。

 

とりあえず、門に近づいてみるか。

 

山での生活の中で竜は殺しているし、攻撃してくるようなら、逃げればいいしね。

 

僕が門に近づこうとすると、突然、目の前に複数の紅い槍が降ってきた。

 

飛び退いて警戒していると、上空から女性が舞い降りてきた。

 

空から舞い降りた女性は、紅い槍を手に静かに着地した。

 

紫色の髪に、深紅の瞳。

 

極めつけに全身タイツに、紅い槍。

 

この人、スカサハじゃね?

 

え?ていうことは、ここ、影の国なの?

 

僕がそう考えていると、スカサハが口を開いた。

 

「……ふむ。その年でこれを難なく避けるか。お前、私の弟子になれ。」

 

……どうしようかな。

 

正直、スカサハの弟子になるのはありがたい。

 

史実でも数々の英雄を育成してるし、確実に強くなれるだろう。

 

だけど、クーフーリンやフェルグスと言ったケルトの戦士が恐れるほどのスパルタさがなあ。

 

強くなれるだろうけど、スパルタって所がなあ。

 

まあでも、槍を扱うならスカサハはうってつけだし、時期は分からないけど、他の戦士たちとも戦えるだろうし、弟子になろうかな。

 

答える前に、キャラと名前を決めておこう。

 

キャラは男っぽい感じで、名前は十中八九ケルト神話だろうし、ルアにしようかな?

 

間違ってたら偽名ってことにすればいいし、ルアなら赤毛と深紅の瞳を持った僕にも似合うだろうしね。

 

そう考えて僕は口を開いた。

 

「わかった。よろしく頼む、師匠。」

 

スカサハは微かに口角を上げると、紅い槍を肩に担ぎ、僕を見下ろした。

 

「よい返事だ。では付いて来るがいい。」

 

そう言って、スカサハは踵を返し、門の奥へと歩き出す。

 

竜はスカサハの気配に従うように静かに道を開けた。

 

「最初の試練だ。影の国の中心にある我が宮殿まで来い。お前の覚悟、しかと見せてもらうぞ。」

 

スカサハはそう言って、門が開くのと同時に瞬く間に姿を消した。

 

どうやら、最初の試練のようだ。

 

影の国に入ると、そこら中から死霊の気配がする。

 

どれもこれも、凄まじく強そうな気配だ。

 

わざわざ一体一体、相手をしていたら消耗して、殺されてしまうだろう。

 

ここは相手をせず、最短距離を突っ切ろう。

 

僕はスカサハの宮殿まで走り始めた。

 

走り抜ける途中、何体かの死霊に気づかれ追われたが、無視して走り続ける。

 

どうやら速さは僕の方が速いようだ。

 

ざっと見で30体ぐらい追いかけてきてるけど、僕より早い死霊はまだいないようだ。

 

ーー数時間後。

 

あれから数時間経った。

 

あれから何体か僕より早い死霊に追われ、同士討ちや地形を利用して逃げ、時には戦いながら、なんとか宮殿に辿り着くことができた。

 

宮殿の前にはスカサハがおり、僕を認識すると口を開いた。

 

「ふむ、試練を達成したか。ではついてくるがいい。」

 

そう言ってスカサハは宮殿に入って行った。

 

僕はその後について行った。

 

ーー数分後。

 

あれから数分経ち、修練場のような場所に着いた。

 

修練場に足を踏み入れた瞬間、空気が張り詰める。

 

スカサハは僕の前に立ち、紅い瞳でじっとこちらを見据え、口を開いた。

 

「今からお前の力量を図る。存分に力を示してみよ!」

 

その言葉が終わるや否や、スカサハは一切の容赦なく槍を振るってきた。

 

紅の槍が空気を裂き、雷鳴のような音を立てて僕に迫る。

 

「っ……!」

 

咄嗟に身を翻し、槍の軌道を外す。

 

だが、スカサハの動きは止まらない。

 

次の瞬間には僕の背後に回り込んでいた。

 

「遅い。」

 

冷たい声と共に、鋭い蹴りが僕の背中に突き刺さる。

 

「ぐっ……!」

 

息が詰まり、体が宙を舞う。

 

修練場の壁に向かって吹き飛ばされるが、寸前で受け身を取り、衝撃を殺す。

 

スカサハの瞳が細められ、僕を試すように見つめる。

 

「その程度か? もっと力を示して見せろ!」

 

挑発の言葉に、僕は地を蹴って突進する。

 

槍を振るうが、スカサハはそれを軽く受け流し、逆に槍の柄で僕の顎を狙う。

 

僕は体をひねってそれを避け、連続突きを繰り出す。

 

スカサハはそれを槍で相殺し、鋭く槍を振るってくる。

 

一回、二回と斬り合い、幾度となく槍を交差させる。

 

火花が散り、空気が震える。

 

「いい、いいぞ。ところどころ槍ではない技術が混じっているが、見事だ。  

 私も少し、滾ってきた。どれ、少し上げていくぞ!」

 

スカサハは満足げに笑い、攻撃の速度を一気に上げてきた。

 

その槍はまるで舞うように空を裂き、軌道はさらに予測不能となっていった。

 

ーー数時間後。

 

槍を交わす度にスカサハの槍は早く、鋭くなり、今では目視することもできないほどの速さになっている。

 

僕は早々に目視するのを諦め、本能と自分の直感に身を任せて戦っている。

 

数時間にわたる戦いの疲労で、一瞬意識が逸れたその隙を突き、スカサハが槍を振るってきた。

 

咄嗟に身をかわしたものの、完全には避けきれなかった。

 

「っ……!」

 

肩を浅く裂かれ、熱い痛みが走る。

 

だが、今はそれを感じている暇などない。

 

僕は槍を逆手に持ち替え、足元を狙って低く突く。

 

スカサハは跳躍でかわし、空中から槍を振り下ろす。

 

僕は地面を蹴って後方に跳び、着地と同時に槍を突き上げる。

 

空中で槍が激突し、火花が散る。

 

互いに距離を取り、息を整える。

 

僕の息は荒く、体力も限界に近い。

 

だが、スカサハは涼しい顔で立っていた。

 

息も上がっておらず、余裕そうだ。

 

僕が攻めあぐねていると、不意にスカサハが口を開いた。

 

「ふむ……そろそろ限界か。ならば、これで終わりにしてやろう。」

 

そう言って、スカサハは槍を上空へと蹴り上げ飛び上がった。

 

「耐えて、見せろ!蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)!」

 

紅い閃光が空を裂き、槍が一直線に僕を狙ってくる。

 

いや容赦ないな。

 

僕まだ6歳なんだけど?

 

流石に容赦なさすぎない?死ぬよ?

 

まずい、本当にまずい。

 

蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)に因果逆転はないにしろ、必中効果があるから逃げても無駄だ。

 

幸運に祈るか、相殺、もしくは躱さないといけない。

 

手加減はされているだろうけど、どう対処しようか。

 

僕は一瞬、迷いを振り払った。

 

逃げることはできない。

 

ならば、迎え撃つしかない。

 

極限まで威力を相殺してから、躱せばいい。

 

僕は全力で大地に踏み込み蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)に槍をぶつける。

 

衝突の瞬間、空間が震え、凄まじい衝撃波が修練場を包む。

 

紅い閃光と共に、僕の槍とスカサハの蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が修練場を包む。

 

「ぐっ……!」

 

全身に響く衝撃。

 

腕が痺れ、足元が揺らぐ。

 

だが、僕は踏みとどまり、辛うじて槍の軌道を変え、槍を弾いた。

 

弾かれた槍は、瞬時にまた僕の方に向かってきたが、そのたびに軌道を変え、槍の威力を削いでいった。

 

そうして、力を失った槍がスカサハの手に戻っていく。

 

それを見届けて、僕の意識は遠くなっていった。

 

ーー数時間後。

 

目覚めたら何処かの部屋にいた。

 

体を起こして辺りを見渡していると、スカサハが部屋に入ってきた。

 

「目覚めたか。あの戦いでお前の力量が分かった。

 次からは本格的な修行を始める。存分に体を休めておけ。」

 

そう言って、スカサハは部屋を出て言った。

 

ーー数年後。

 

あれから数年経った。

 

僕は影の国で修練を重ね、幾度となく死線を越えてきた。

 

時にはスカサハと戦い、時には他の弟子と戦った。

 

呑まず食わずで数週間戦い続けたり、スカサハが抜き打ちと言って不意打ち気味で模擬戦をしたりした。

 

スカサハの修行は凄まじく厳しく、スパルタだった。

 

体がどれだけ消耗しても、すぐさまルーンで癒され、修行をさせられる。

 

そんな日々を過ごすことで、肉体は鍛え抜かれ、槍の技術はスカサハを上回るぐらいに高まった。

 

槍だけでなくルーン魔術も習った。

 

使えるルーン魔術には偏りがあり、自身の治癒はスカサハをも上回る効力を発揮できるが、そのほかは並みのドルイドの域を出ないものである。

 

スカサハも早々に他のルーン魔術の伝授は諦め、治癒魔術の向上に力を注いだ。

 

スカサハは嬉々として治癒魔術の教授を行い、

 

「お前とならば、回復する心配もないため長く戦えるな。」

 

と、さらに肉体を度外視した訓練を課せられ、そのせいか、欠損くらいなら1秒もかからず治癒できる精度に仕上がった。

 

そのため、心なしか他の弟子たちに比べ、スカサハと多く戦っている気がする。

 

戦っているうちにスカサハに認められ、ゲイボルクを授かった。

 

スカサハも使っている旧型のゲイボルクである。

 

ゲイボルクの扱い方も慣れ、今ではスカサハと同じく二槍流をし、貫き穿つ死翔の槍(ゲイボルク・オルタナティブ)も扱えるようになった。

 

さらに、狂ニキを参考に体の崩壊を度外視して放つ高威力技を編み出した。

 

放てば下半身が消滅するくらいの威力の蹴りボルクである。

 

スカサハにも

 

「これはおまえぐらいにしか扱えぬな。」

 

と言われ威力もお墨付きだ。

 

また、強くなるために誓約(ゲッシュ)を何個か誓った。

 

一つ目が男と付き合わない、二つ目が戦いから逃げない、三つ目が女子供を殺さないだ。

 

誓っては見たけど、特に恩恵を感じられなかったため、誓い損かな?と思っている。

 

そんな日々を過ごしていたある日、一人で修業をしていると、スカサハが新しい弟子を連れて来た。

 

スカサハが弟子を受け入れることはあまりなく、弟子となってもほとんどの弟子が修行中に命を落とすと言った厳しさだ。

 

スカサハの後ろに立つのは、鋭い眼光を持つ青年。

 

青い髪を風に揺らし紅い瞳を持っている。

 

まだ若いながらも只者ではない気配を纏っていた。

 

全身タイツではないとはいえ、見覚えのある容姿だ。

 

……クー・フーリンじゃん。

 

へえ、弟弟子なんだ。

 

今までゲームでも兄貴って呼んでたから、弟弟子ってなると違和感があるな。

 

僕がそう考えていると、スカサハが口を開いた。

 

「紹介しよう。新たな弟子、クー・フーリンだ。

 そして、こやつがお前の姉弟子、ルアだ。クー・フーリン。」

 

スカサハがそう言うと、クー・フーリンは一歩前に出て、僕を真っ直ぐに見据えた。

 

「へえ……お前が姉弟子か。よろしく頼むぜ。」

 

その声には、挑戦的な響きがあった。

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

スカサハは満足げに笑う。

 

「さて、顔合わせだけでは味気ない。お前たち、手合わせだ。力を示せ。」

 

それを聞いてクー・フーリンは獰猛に笑って口を開いた。

 

「師匠もそう言ってやがるし、胸を借りる気で行くぜ、姉弟子!」

 

そう言って彼は槍を構え、僕に向かって突進してきた。

 

そして、僕とクー・フーリンの模擬戦が始まった。

 

クー・フーリンの槍は、荒々しくも洗練されていた。

 

まだ未熟ながらも、天性の戦闘勘と獣のような直感が光る。

 

槍が交差し、火花が散る。

 

互いに一歩も譲らず、修練場の空気が張り詰めていく。

 

彼が均衡を崩し、槍を突いてくる。

 

僕は槍の突きを紙一重で避け、逆に槍の柄で彼の脇腹を打つ。

 

「ぐッ、やるじゃねえか!」

 

彼は笑いながら距離を取ると、今度は跳躍して上段からの一撃を狙ってきた。

 

僕はそれを受け止め、槍を絡めて彼の体勢を崩す。

 

だが、彼は獣のような反射で地面に手をつき、即座に反撃してきた。

 

僕はそれを受け流し、間合いを詰める。

 

彼の動きは荒削りながらも鋭く、まるで獣のような勢いがあった。

 

彼の槍が唸りを上げて迫る。

 

僕は冷静に槍を操り、彼の攻撃を受け流す。

 

そして、足を滑らせるようにして彼の背後へと回り込む。

 

彼はすぐさま振り返り、槍を横薙ぎに振るうが、僕はそれをしゃがんで回避し、地を蹴って跳躍する。

 

空中で槍を構え、彼の肩を狙って突き出す。

 

彼は咄嗟に槍を立てて防御するが、衝撃で体勢が崩れる。

 

着地と同時に僕は連撃を仕掛ける。

 

槍の柄で彼の膝を狙い、次いで突きで胸元を狙う。

 

彼は膝を打たれてよろめきながらも、胸元の突きを槍の柄で弾き返し、飛び退いた。

 

「ははっ、やっぱりただ者じゃねえな、姉弟子!」

 

彼の瞳が獣のように輝き、口元には笑みが浮かぶ。

 

僕も無言で構え直す。

 

さて、そろそろ終わりにしようかな。

 

僕は彼の懐に飛び込み柄の部分で彼の胸を突く。

 

彼は咄嗟に槍で防いだようだったが衝撃を抑えきれず吹き飛び壁に激突した。

 

「ぐっ……! こりゃ、完敗だな……」

 

壁にもたれながら、クー・フーリンは苦笑いを浮かべて立ち上がる。

 

「姉弟子、強えな……。こりゃ、修行が楽しみになってきた。

 待ってろ、すぐに追いついてやるぜ!」

 

僕は槍を下ろしながら、答える。

 

「まだまだ荒削りだけど、素質はある。すぐに追いつかれるかもな。」

 

クー・フーリンはニヤリと笑い、拳を軽く突き出してきた。

 

「これからも模擬戦を頼むぜ。よろしくな、姉弟子。」

 

僕も拳を合わせる。

 

修練場の端で腕を組んでいたスカサハが、満足げに頷いた。

 

「ふむ、良い手合わせだった。お前たち、互いに良き刺激となるだろう。

 お前たち二人を見ていたら私も滾ってきた。お前たち二人がかりでかかってこい。」

 

そう言って飛びかかってきたスカサハに二人一緒にボコボコにされた。

 

ーー数年後。

 

あれからともに修行を重ね、時には戦い、時には共にスカサハにボコボコにされながら、僕たちは絆を深めていった。

 

今では互いにクー、ルアと呼び合い、親友と呼べるほど仲が良くなった。

 

クーもめきめきと力をつけ、今では総合力で言えば僕に匹敵するほどの強さを誇る。

 

二人で戦えば、スカサハ相手にも互角に渡り合えるほどになった。

 

そんな日々を過ごしていたある日、影の国の隣国が攻めてきた。

 

その軍勢を率いていたのは、スカサハの宿敵アイフェだった。

 

僕とクーは戦争へ参加しようとしたが、修行中という理由でスカサハに断られた。

 

僕はすぐに承諾したが、クーは駄々をこねて猛反対。

 

結局スカサハにボコボコにされ、睡眠薬を飲まされる羽目になった。

 

しかし、クーには睡眠薬が効かず、最後にはスカサハが折れて、戦場への参加が認められた。

 

僕もクーに説得され、なし崩し的に参戦することになった。

 

その後はクーが原点通りに突貫し、アイフェを生け捕りにして、妻にしていた。

 

クーのとりなしによってスカサハとアイフェは和解し、力を認められたクーはゲイボルクをスカサハから貰っていた。

 

ゲイボルクを貰い、修行を終えたクーはアルスター王国に帰るようで、暇だった僕はクーについて行くことにした。

 

ーー数年後。

 

クーと共にアルスター王国に行き、僕は赤枝騎士団に加入した。

 

アルスターは戦士の国だった。

 

王コンホヴァルのもと、数多の勇士が集い、戦の匂いが常に漂っていた。

 

僕はクーの姉弟子として紹介されたが、最初は異邦人として警戒されていた。

 

それでも、クーが

 

「こいつは俺より強いぜ?」

 

と言ったことで、周囲の目は変わった。

 

模擬戦を重ねるうちに、実力を認められ、アルスター王国の一員として認められるようになった。

 

フェルグスとも会ったが、僕が幼い見た目をしているからか、誘ってくることはなく、優しく接してくる。

 

アルスター王国は周囲の国と頻繁に戦争をしており、頻繁に戦争に駆り出された。

 

そんなある日、王宮に緊急の報が届いた。

 

コノート王国の女王メイヴが、アルスターの至宝・クアルンゲの神牛を奪うため、軍を率いて侵攻してきたというのだ。

 

アルスターの戦士たちは、呪いによって一時的に戦えない状態に陥っていた。

 

その呪いは、かつてドルイドによってかけられたもので、戦士たちが一定期間、戦場に出られなくなるというものだった。

 

そのため、動けるのは呪いの効かないクーと僕だけだった。

 

「俺たちが行く。誰も来なくていい。」

 

クーはそう言って、槍を手に戦場へ向かった。

 

こうして、アルスターの守護者として、クーと僕は戦場に立つことになった。

 

戦況は結構厳しかった。

 

烏合の衆とはいえメイヴの軍勢は数千。

 

中にはそれなりの強さの勇士も混じっている。

 

対する僕たちは、たった二人。

 

だが、クーは獣のように戦った。

 

彼の槍は雷のように走り、敵を次々となぎ倒していく。

 

突き穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)の投擲も行い敵兵を消し飛ばしていく。

 

僕もまた、二槍流と回復魔術を駆使し、戦場を駆け抜けた。

 

蹴りボルクや投げボルクを連発したりした。

 

僕たちは互いに背中を預け合い、戦場の中心で嵐のように暴れた。

 

そんな戦いを数か月続け、その最中にクーは森の女神モリガンに求婚され、断った。

 

その結果激怒したモリガンによって幾度も戦の妨害をされたが、僕達はそれを跳ね除け戦い続けた。

 

だが、メイヴもただの女王(スーパーケルトビッチ)ではなかった。

 

彼女は戦術に長け、僕たちを疲弊させるため、毎日、複数の強者を送り込んできた。

 

その中には、かつての影の国の弟子たちもいた。

 

日々の戦いの中で、僕たちは限界を超えていった。

 

やがて、メイヴは、クーの親友フェルディアを送り込んできた。

 

フェルディアは、スカサハの弟子であり、クーと同格の勇士だ。

 

「一騎打ちだ。手は出すなよ、ルア。」

 

そう言ってクーはフェルディアに向かって行った。

 

三日三晩、二人は戦い続けた。

 

やがて、クーのゲイボルクがフェルディアを貫き、戦いは終わった。

 

クーはフェルディアを丁寧に埋葬して、すぐさま戦場に戻った。

 

戦いは長く続いた。

 

やがて、呪いが解け、アルスターの戦士たちが戦場に復帰した。

 

消耗していた僕とクーは戦士たちの復帰と共に戦線を一時離脱した。

 

そして回復した僕とクーは戦いに戻った。

 

戻ったころには戦いはすでに最終局面に入っており、互いに総力戦となっていた。

 

戦況はメイヴ側が有利だった。

 

だけど、僕達が復帰し、敵側の勇士達を倒すことで、徐々に天平がこちら側に傾いてきた。

 

戦場の空気が変わり始めた頃、前線に異様な気配が立ち込めた。

 

重厚な足音と共に現れたのは、かつて赤枝騎士団であり、今はメイヴの側についたフェルグス。

 

フェルグスはこちらを見ると豪快に笑って口を開いた。

 

「クー・フーリン、ルア。久しいな、元気そうで何よりだ。」

 

クーは少し驚いて口を開いた。

 

「叔父貴、まさか、あんたがそっち側に付くなんてな。」

 

それを聞いてフェルグスは肩をすくめて言った。

 

「いや、なに。美しい女の為ならば、この命を懸けるのも惜しくあるまい。」

 

クーは苦笑して、槍を構えた。

 

「あんたは相変わらずかよ。……で、やるか?」

 

フェルグスは一歩下がり、手を振った。

 

「いや、前回お前と約束をした故、今回は引かせてもらおう。

 次、相まみえた時は、存分に戦り合おうではないか。」

 

そう言ってフェルグスは去って行った。

 

フェルグスが去った後、戦場の流れは一気にアルスター側へと傾いた。

 

僕たちはメイヴ軍を押し返し、ついにメイヴを生け捕りにすることができた。

 

しかし、クーが

 

「女は殺さねえ。」

 

と言い釈放することになった。

 

釈放する際、二人でメイヴに会いに行ったら、クーを見てメイヴが口を開いた。

 

「あなた、私のものになりなさい。クー・フーリン。」

 

……は?

 

ヤバい奴だと分かってたけど、まさか、こんな状況でもそんなことを言うなんて。

 

馬鹿なのかな?

 

あれ?おかしいな。

 

今、捕まってるんだよね?…何でそんな上から目線なんだろうか。

 

メイヴの言動に、クーも困惑しているようだ。

 

「はあ?何言ってんだお前。なるわきゃねえだろうが。頭沸いてんのか?」

 

その言葉にメイヴは言葉を失い、しばらくしてから口を開いた。

 

「……聞こえなかったわ。もう一度言うわ。あなた、私のものになりなさい。クー・フーリン。」

 

クーは面倒くさそうに口を開いた。

 

「ならねえって言ってんじゃねえか。状況分かってんのか?お前。」

 

メイヴは笑みを浮かべて口を開いた。

 

その笑みは引きつっているように見えた。

 

「状況?ええ、分かっているわ。だからこそ、あなたが必要なの。」

 

その言葉にクーは槍を地面に突き立て、苛立ちを隠さずに言い放った。

 

「だから、ならねえつってんじゃねえか。いい加減早く行っちまえ!」

 

その言葉に、遂にメイヴは怒りを爆発させた。

 

「……私がここまで誘ってると言うのに、なびかなかったどころか、その態度!

 覚えてなさいクー・フーリン! すべての男の恋人にして支配者であるメイヴの名にかけて!

 絶対、屈服させて見せるんだから!」

 

そう叫んでメイヴは去っていた。

 

「よかったのか?クー。あの女を逃がして。絶対、何かしてくると思うんのだが。」

 

僕がそう聞くとクーはげんなりした様子で口を開いた。

 

「……言うな。わかってる。今になってあの女を逃がしたことを後悔してきたぜ。

 まあ、やっちまったもんはしょうがねえ。なるようになんだろ。」

 

クーはそう言ってその場を去って行った。

 

ーー数年後。

 

あれから数年経った。

 

メイヴの音沙汰は特になく、クーの息子、コンラの死という悲しい出来事はあったが、比較的平和に暮らしていた。

 

ある時、いつものようにクーやアルスターの戦士たちと模擬戦をしていると、王宮に緊急の報が届いた。

 

どうやらメイヴがまた攻めて来たらしい。

 

僕とクーが急いで戦場に向かっていると、老婆が前に立ちふさがってきた。

 

その老婆が史実で犬の肉をクーに食わせた老婆だと直感でわかった僕は、老婆を気絶させようとしたが、近くに隠れていた女戦士たちに邪魔をされた。

 

そして、僕が相手に手古摺っているうちに、老婆はクーを食事に誘った。

 

クーは誓約(ゲッシュ)によって、目下の者の食事を断らないと誓っているため、食事に参加することになった。

 

老婆はクーの前に肉の入った皿を出した。

 

「てめえ、まさか……それは。」

 

クーはその肉が何なのか悟っているようで、震える手で苦悶の表情を浮かべそれを口に含んだ。

 

その瞬間、クーが持っていた皿を取り落とし、体を震わせた。

 

クーは膝をつき、額に冷や汗を浮かべながら呻いた。

 

その瞬間、何処からか戦士たちが現れ、クーに襲い掛かった。

 

僕は女戦士を蹴散らし、クーを庇って槍を構えた。

 

「下がっていろ、私がやる!」

 

「いや、俺も、戦う。」

 

そう言ってクーは呻きながらも槍を手に取り、立ち上がった。

 

だが、その動きにはいつもの鋭さがない。

 

犬の肉による誓約(ゲッシュ)の破れが、彼の力を蝕んでいるのは明らかだった。

 

しかし、衰えていてもクーはクーでしっかりと敵を倒していた。

 

それから、できるだけクーを援護しながら敵を倒した。

 

クーを撤退させようとしたが、クーが断固として拒否してきたので、一緒に戦うことになった。

 

ーー数時間後。

 

戦場に着くと、数万を超えるメイヴ軍が並んでいた。

 

僕とクーは一緒になり、敵軍を倒していった。

 

しかし、倒せど倒せど、メイヴの軍は減らず、むしろ戦う前より増えているぐらいだ。

 

戦場の喧騒の中、僕はクーの背を庇いながら敵を薙ぎ払っていた。

 

そんな中、敵兵の兵士を殺した際、突然、半身が麻痺した。

 

まさか、誓約(ゲッシュ)が?

 

僕は片足で敵兵から距離を取り、先ほど殺した兵士たちを観察した。

 

見たところ、女は一人もいない。

 

しかし、誓約(ゲッシュ)が破れたということは、この中に女が?

 

全員おっさんにしか見えないんだけど、中性っぽい疑わしい奴とかは抜いて、おっさんを狙って殺したのに、まさか、おっさん顔の女?

 

くっそ、やっぱ誓約(ゲッシュ)を誓わなければよかった。

 

恩恵らしい恩恵なんて感じたことないし、ただの自傷行為じゃん。

 

僕が弱体化した身体能力に戸惑っていると、クーと分断されてしまった。

 

……まずい。

 

万全ならともかく今の僕だと危ない。

 

敵兵の波に飲まれそうになりながら、僕は必死に槍を振るった。

 

だが、麻痺した半身は思うように動かず、槍の軌道も鈍る。

 

クーの姿はもう見えない。

 

叫んでも、戦場の轟音にかき消されるだけだった。

 

ーー数時間後。

 

僕は槍を振るうのを諦め、蹴りボルク主体の戦い方に切り替えた。

 

敵の兵もだいぶ減ってきたがまだまだ数がいる。

 

それでも諦めずに戦っていると、遠くで歓声が聞こえた。

 

飛び上がって見てみると、クーが討たれていた。

 

悲しみはなかった。

 

どうせ今世が終わったら、すぐに顔を合わせることになるからだ。

 

体力は限界で、クーも死んだ。

 

敵兵はまだ数万といる。

 

どうやらここまでらしい。

 

……どうせなら、最後に自爆まがいのゲイボルクでも放つか。

 

数千ならともかく、数万はもう無理だ。

 

戦士らしく華々しく散って終わろう。

 

僕は大きく飛び上がり、大気のマナと自身のマナをありったけ集め、ゲイボルクを蹴り放った。

 

穿ち消滅さる散華の槍(ゲイ・ボルク・サクリファイス)!」

 

放つと同時に僕の意識は一瞬で消え去った。

 

原作主人公の性別

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