実験番号:五十三
被験者:雨宮卯花
担当者:×××
▼実験について
怪異は人間の噂や物語などから生まれる存在であり、怪異にも人間の姿に酷似したものが現れることがある。機関は日常を維持するために怪異を退治するが、怪異はどこにでも発生する可能性がある。人手が足りないというのが現状である。
そんな中で猿部隊隊長が考えついたのが怪異と人間の融合である。怪異の持つ力は人間の噂などが基になっている。それならばその力を人工的に人間に与えることが出来るのではないかというのが猿部隊隊長の考えである。
実験の被験者は身寄りのない子供や怪異に襲われてこのままでは死んでしまう人間を対象に行うものとする。
▼実験記録
第五十三回目の実験は雨宮卯花を被験者として行われた。彼女は両親を怪異に殺され、彼女自身も怪異に殺されかけていたところを保護された。彼女は保護された時点では助からないだろうと思われる負傷をしていたが、驚異的な回復力を見せ、現在では健康そのものである。彼女の回復力であれば実験に耐えられると見込み、怪異を彼女に融合させることとした。
彼女に驚異的な回復力があるとはいっても、穢れの塊である怪異を体に埋め込めば、拒絶反応が起き、彼女が死んでしまう可能性がある。
これまでの実験ではそのようなことが起こるのを避けるために、彼女の身体を少しずつ穢れに慣らしていった。現在の彼女はこれまでの施術で穢れにかなりの耐性を持った状態となっている。しかし、暴走の可能性などを考え、彼女に埋め込む怪異は壱番の唐傘とする。
彼女の胸を切り開き、根源札を彼女の心臓と融合させる。穢れへの耐性がついているはずだが、やはりわずかに拒絶反応が起きた。しかし、彼女の回復力はすさまじく、拒絶反応はすぐにおさまった。また、閉胸をしていないにもかかわらず、彼女の胸は元の状態に戻っていた。彼女の回復力が死の間際で爆発的な力を見せたのか、怪異と融合したためなのかは不明であるが、実験は成功した。
▼実験結果
実験を行った一週間後、雨の日に危険度壱番の怪異との実戦を被検者に行わせた。彼女が怪異と融合することで得た能力は、雨を自在に操る能力であった。怪異と思われる傘を武器とし、降り注ぐ雨を傘にまとわせることで盾とする、雨粒に霊力を籠めて射出するなどして戦闘をしていた。
危険度壱番の怪異でこれだけの力を持つことが出来るため、危険度の高い怪異と人間との融合を行えば、さらに強力な力を持った者を作り出せるのではないかと考えられる。今後の実験に期待したい。
▼実験の中止について
我々の実験は失敗した。人間と怪異との融合は成功したものと考えられていた。しかし、第九十五回目の実験の最中、被検体が暴走。施設に甚大な被害を与えて逃走した。この事態を重く見た上層部より実験の中止命令が下った。
研究を続けていけば機関の戦力増強につながるかもしれないというのに上層部は何を考えているのだ。幸い、実験のデータはこちらにある。実験材料もこれから探していけばいい。隊長は実験の責任を取って辞職されたが、私はまだ実験を続けたい。何としてもこのデータを隠し通し、実験を秘密裏に進めねば。