名称:
発生地:D県K町
危険度:弐番
▼概要
D県K町に存在した鬼です。
この怪異はK町のK山に存在した、赤い肌に頭から伸びた二本の角を持つ鬼です。
この町に伝わる物語に登場する鬼そのものが現代まで生きていたのだと考えられます。
そのため、怪異とは似て異なるものです。
▼K山の鬼の物語
昔、K山には鬼の一家が住んでいた。
鬼には妻と子どもが一人いたが、妻は何があったのか死んでしまった。
鬼は残った子どもを大事に大事に育てた。
そんなある日、鬼は些細なことで子どもと喧嘩をした。
鬼は話し合いで仲直りをしようとしたが、子どもは住処を出ていき、鬼はそれを追いかけた。
子どもは逃げ続けたが大人の鬼にはかなわない。
すぐに鬼に捕まってしまった。
鬼は子どもを抱えて家に帰ろうとしたが、子どもが暴れたことで抱えていた手を放してしまった。
場所が悪かった。
子どもは崖から下へ真っ逆さまに落ちていった。
鬼は急いで山を下った。
鬼は人間よりもはるかに長生きで頑丈だが、崖から落ちて無事で済むことはない。
鬼は焦るあまり何度も転び、無理をして飛び降りたことで身体を痛めながら崖の下までたどり着いた。
そこにはひび割れた岩と血の跡が残っているだけだった。
鬼は一晩中我が子を探し続けた。
だが、子どもは見つからなかった。
子どもは山の外に出たのではないかと考えた鬼は、山を出て子どもを探しに行こうとしたができなかった。
人間との約束が鬼を縛り付けた。
鬼の生活に関わらない代わりに鬼は山から外に出てはいけないという契約が。
鬼はそれから数年間山の中をさまよい続けたが、子どもはいつまでたっても見つからなかった。
そのうち、鬼の姿は山から消えた。
だが、今でも我が子を思い泣き続ける鬼の声が聞こえるという。
▼発見経緯
K町にて夕方の下校中や夜に家で一人でいる子どもたちが突然姿を消すという事件が起こりました。
当初は身代金目的の誘拐かと考えられましたが、何の連絡もないこと、現場に犯人と思われる人物の痕跡が一切ないことからその目的も犯人の正体についても一切が不明となっていました。
そこで機関の方へ調査の協力願いがあり、現場を調べました。
現場には穢れが残されており、そのすべてが同じ物でした。
また、この町に伝わる物語などで事件に関わりそうなものが鬼についての物語しかなかったこと、外部から怪異が侵入した様子がありませんでした。
このことから今回の事件を起こしているのは物語に出てくる鬼だと断定、K山の調査が行われ、鬼が発見されました。
▼交戦記録
攫われた子どもたちに被害が及んではいけないため、一番安全に鬼を倒せる僕が鬼の討伐に向かいました。
鬼は住処をいくつか用意していました。そのすべてに攫われた子どもたちが居ました。
子どもたちは他の隊員さんたちが救助したので大丈夫です。
子どもたちは衰弱しているものの目立った怪我はなく、すぐに元気になるとのことでした。
山頂近くの住処、鬼はそこに居ました。
赤い大きな体に頭から伸びた大きな二本の角、僕たちのよく考える鬼と同じ姿が住処の中にありました。
一目見てわかりました。この鬼にそのまま挑んだら勝てないと。
僕が入り口で固まっていると、鬼は侵入者に気づいたようでした。
気がつくと僕は空を見上げていました。
遅れてやって来た痛みで自分が吹き飛ばされて地面に叩きつけられたのだと気が付きました。
隊服のおかげでかなり衝撃は緩和できましたが、それでも全身がずきずきと痛みました。
痛む体を起こすと鬼が住処から出てくるのが見えました。
表情は良く見えませんでしたが、きっと怒っていたんだと思います。
人間が契約を破って自分の生活に関わってきたから。
そこからは後ろへ後ろへ逃げ続けました。
鬼を住処から遠ざけるためです。鬼が離れれば他の隊員さんたちが中にいる子どもたちを救助できますから。
逃げる僕を鬼は追いかけてきました。
力を振り絞って走り続けましたが、鬼との距離はどんどん縮まっていき、僕は崖に追い詰められました。
そこで能力を使いました。
いつもなら相手に何が見えているのかはわかりませんが、今回はわかりました。
鬼には自分の子どもが見えていたんだと思います。それも、崖の先の方に。
鬼は僕の存在を忘れて子どもの見える方向に近づいていきました。
そして崖から真っ逆さまに落ちていきました。
▼事後処理
鬼は崖の下で死んでいました。
鬼も崖からそのまま落ちて無事でいられるほどは頑丈ではないようでした。
それに、子どもたちを攫う際に山から出たことで罰が与えられていたようで。全身が傷だらけでした。
でも、死んでいた鬼の顔は安らかでした。
最後に幻影とはいえ我が子と出会うことが出来たからだと思います。
救出された子どもたちの話から、今回の事件は鬼が自分の子のことを数百年も考え続けた結果、人間の子どもと自分の子どもを同じ存在と考えるようになったために起こったものだと推測されます。
子どもたちも多少衰弱はしていたものの、鬼によく世話をされたと言っていましたから。
鬼は子どもたちを攫うという事件を起こしました。
ですが、鬼を殺すまですべきだったのかと考えてしまいます。
僕は今回の件で自分の能力が少し嫌いになりました。
これまでは相手を無力化することのできる便利な能力だと考えていました。
ですが、今回の鬼のことを考えると相手の思い出を勝手に踏みにじってしまっているような気がしてしまいます。
他の隊員さんたちからは気にするなと言われますが、難しそうです。
自分の能力に向き合うのは簡単じゃないですね。