怪異調査報告書   作:狐憑

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27 若さへの執着とは恐ろしいものであるな 危険度弐番「ヨロウサマ」についての報告

 

 ここ最近やけに身体が重い気がする。

 まだ30だというのに体力が半分になってしまったかのような気分だ。

 それに肌もしわが増え、髪にも白髪が増えてきた。

 特にストレスを感じるような出来事はないはずなのにだ。

 最初はそこまで違和感は感じなかった。でも、今では一晩寝るごとに自分の年齢が急激に増えてしまっているかのように感じてしまう。

 そういえば近所の××さんは70代だというのにすごく若々しく見える。

 なにか秘訣でもあるのだろうか?今度聞きに行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

調査報告:ヨロウサマ

正常維持怪異収集機関

犬部隊隊長 犬上久(いぬがみひさし)

 

名称:ヨロウサマ

発見地:T都K区

危険度:弐番

 

▼概要

 ヨロウサマ、この地域に伝わる存在である。

 その名前はあまり知られておらず、詳しいことを知っている者は少ない。

 もっとも、少ないとは言っても力を十分に蓄えることが出来るほどの信者はいるようであるが。

 この怪異ははこの地域で神のように崇められていたようである。だが、社のようなものは存在しておらず、信者達の間で信仰されているようであった。

 おそらく、ヨロウサマが神などではないことは信者も理解していたのだろう。

 この怪異自体には害意はないが、信者たちによって被害者が出ていたのである。

 

▼発見経緯

 T都のK区、もとからこの地域に住む老人たちの中にはやけに若々しく見える者が多くいると評判であった。

 10月のはじめごろからこの地域にて若いにも関わらず、なぜか自分が急に老け始めた気がすると感じると述べる者が続出したのである。

 10月19日、派遣された鼠部隊がこの件に怪異が関わっているものと判断、犬部隊が調査のために派遣された。

 今回自分が老けたように感じている者たちは白髪が増えた、しわが増えたと述べているが、一般の人間にはその姿に変化があるようには見えないようであった。

 だが、我々の目にはその者たちに重なるように老けた姿が見えた。この姿を本人たちも見ていたのであろう。また、この者たちからは穢れが感知された。

 そして、K区を調査している際にこの地域に住む老人に遭遇。

 この老人は若々しく見えたが、よく目を凝らしてみると若々しい姿の下に老いた姿が見えた。この老人からも穢れを感知。

 このことから老人は怪異に関わっている人間と判断。

 我が隊員の一人の能力を使い、ヨロウサマと名付けられた怪異とそれを信仰する集団が存在することが判明したのである。

 情報を入手した後は老人を解放、その際に暗示をかけるともに発信機を取り付け、ヨロウサマの位置を特定するに至ったのである。

 

▼交戦記録

 ヨロウサマの位置の特定後に発信機の反応が消失したことから、信者に気づかれたものと判断。信者による抵抗も予想されるため、迅速に作戦を開始したのである。

 

 15時31分、発信機の反応が消失した区のはずれにある民家を襲撃。

 信者たちは農具などを手に抵抗してきたが、準備はほとんどできておらず、人数も少なかった。

 隊員4名のうち2名を信者の対処に、残りの2名には周囲の警戒をさせ、我輩が民家に侵入。ヨロウサマを発見したのであった。

 ヨロウサマは右半身が老人、左半身が若者の姿をした像であった。

 そして若者姿をしている側、像の左に信者が一人立っていた。信者は40代ほどの姿をしており、その手には短刀が握られていた。

 ヨロウサマの討伐のためにこの信者を制圧しなければならないことは明白であった。

 信者は短刀を片手に我輩の方へ突っ込んできたが、その動きは素人のもの。避けることなど容易であるはずだった。

 だが、身体が思うように動かなかったのである。

 その結果、皮一枚で済んだものの負傷をした。

 なぜ身体が思うように動かなかったのか。その理由はすぐにわかることとなった。

 切り裂かれた服の下、しわだらけの皮膚がそこにあったのだ。

 我輩が老い始めていたのである。

 ヨロウサマによるものだということはすぐにわかった。だが、どのような条件で老化が進んでいるのかは不明であった。

 老化の条件がヨロウサマの近くにいることであれば、目の前の信者が老化せず、むしろ若返っているようであることに説明がつかない。

 何が条件であるか不明であるためその条件について考える時間が必要であった。

 だが、老化は止まることなく進行しており、我輩に残された時間は少なかった。

 このままでは不利になっていくだけであると能力を使い未来を見るが、どの未来でも我輩は信者の攻撃により負傷していたのである。

 負傷するのであれば最も軽く済む未来と同じ行動をしようとしたところでその先の未来が見えた。

 それは最も深い傷を負うが我輩の勝利につながるものであった。

 

 我輩は信者の突き出した短刀をわざと腹で受け止め、そのまま信者をヨロウサマの右半身、老人の側へ押しやった。

 信者は抵抗していたが、我輩は信者を捕まえた手を決して離さなかったのである。

 そのまま我輩がヨロウサマの若者の側へ、信者が老人の側へ移動すると我輩の年齢が元に戻り始め、信者は急速に老いていった。

 そのまま信者が動けなくなるほど老いさせ、ヨロウサマを破壊。怪異の討伐に成功したのである。

 

▼事後処理

 ヨロウサマを破壊したところ、我輩と対峙していた信者はさらに老いていき、ついには乾燥した死体へと変化した。

 どうやら外にいた信者達も同じであったようで死にはしないものの老いた姿になったとのことであった。

 このヨロウサマから回収した根源札を調べたところ、この怪異の能力は老人の側で若さを吸い上げ、若者の側で他に与えるというもの。

 信者たちはこの能力を利用して信者でない者たちから若さを奪い、自分たちを若返らさせていたのである。

 この能力で若さを吸い上げられた側の変化は他人には分からぬが、与えられた側は他人にも分かるように変化をするというものであった。

 この地区の老人に若々しく見える者が多いというのはこれが理由であったのだろう。

 

 そして今回我輩と対峙した信者がヨロウサマ信者の中心人物であり、調べたところ120年ほど前の人物であった。

 若さを他人から奪うことで生きながらえていたのであろう。

 年老いることは恐ろしいことではあるが、そこまでして若さに執着するとは。

 怪異は恐ろしい存在であるが、真に恐ろしいのはそれすらも自分のために利用する人間であるな。

 

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