怪異調査報告書   作:狐憑

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33 危険度肆番 「忘れ去られた神」についての報告

 お父さんとお母さんが事故で死んだ後、おじいちゃんとおばあちゃんの家に住むことになった。

 もともと住んでいたところと違うところで生活することに最初はなれなかったけど、少しずつなじんでいった。

 学校でも最初は浮いていたけど、だんだんと同級生たちとも仲良くなることが出来た。

 いじめが始まったのはそれと同時だった。

 もともと違う地域から来たことで一部の同級生からは嫌われていた。

 それが学校になじむにつれてどんどん嫌われていき、いじめになった。

 ものを隠されたり、馬鹿にされるのは当たり前。

 学校から帰るときに追いかけられて殴られ、蹴られ、石を投げられ。

 いつも逃げるようにして学校から家まで走った。

 そして、家まで逃げるように走っていたある日、その日はいじめっ子が先回りしていたから竹藪の中へ逃げ込んだ。

 後ろから追いかけてくるいじめっ子が諦めるまで奥へ奥へ。

 だんだんいじめっ子の声が小さくなっていき、聞こえなくなった時。

 

 ――神様に出会った。

 

 

 

 

調査報告:さ?おす!も忘れ去られた神

正常維持怪異収集機関

烏部隊隊長 慈鳥八雲(じちょうやくも)

 

名称:さ?おす!も忘れ去られた神

発生地:Y県S村

危険度:肆番

 

▼概要

 Y県S村にて確認された存在である。

 本来の名前を知ることはこの存在を基とした怪異が発生することにつながるため、ここでは忘れ去られた神、もしくは神と呼ぶこととする。

 この存在についての情報はほとんど判明していない。

 本来であれば時間の経過とともに消滅していく存在、人々から忘れ去られた神であったためだ。

 神は人からの信仰を集めることでその存在を保っている。

 その信仰が無くなった場合、溜め込んだ信仰を消費していき消える、堕ちた神に変貌する、何かしらの存在(主に怪異)と融合することで存在を保とうとする、のどれかを神は選ぶ。

 おそらく今回の神も消えることを選んでいたものと思われる。

 それが一人の子どもに発見され、信仰を得たことで狂ったものと考えられる。

 この神の持つ力ははっきりとしていないが、戦闘時に見せたものから自分もしくは信者の受けた被害を上乗せして相手に与えるものであると考えられる。

 

▼発生経緯

 おそらく消えかかった神が子どもにより発見され、その子どもの助けてほしいという願いを聞き入れて信仰を得て、神自身も存在を保ちたいと考えたことでさ?おす!も忘れ去られた神となったと考えられる。

 

▼発見経緯

 S村から「見えない何かに人が殺されている」といった内容の通報があった。

 以前にもこの村からは「子どもの行方が分からない」などの通報があり、警察によって捜索が行われたが発見されなかったため、怪異が関わっているものと警戒されていた。

 今回、明らかに怪異が暴れているものと断定できたため、黒瀬永嗣が先に調査へと向かい、情報を集めていた。

 そして、私が合流した後でさ?おす!も忘れ去られた神を発見した。

 発見時、神はすでに神と呼べる状態ではなく、自身の存在を保つことに執着する怪異に近しい存在となっていた。

 ただし、人からの信仰をわずかながら得ているためか、姿はかろうじて人の形を保っていた。

 また、その体は3メートルほどの大きさであり、もとはかなりの人から信仰されていたものと分かる。

 

▼交戦記録

 黒瀬永嗣とは別行動をしており、先に神を発見したため、私一人で神との交戦を開始した。

 信仰をほとんど得ていない存在であるが、神は神。

 その力は確かなものであり、攻撃をすればするほど力を増すことから最初の内は苦戦をした。

 しかし、人から忘れ去られていたことで存在が不安定なものとなっており、自身の存在を保つことに力を使っているためか腕を振るうなどの攻撃手段しか持ち合わせておらず、それが判明した後は対処が楽となった。

 腕や足を鎖で縛ることで攻撃を封じ、一方的に神へ攻撃を仕掛けたが、忘れられた神とはいえ神は神、普通の怪異とは硬さも再生能力も桁違いであった

 しかし、多少時間がかかったがその頭を砕き、仕留めることに成功した。

 だが、神は頭を砕かれ消滅する直前に自身の一部を自分とは別の個体として切り離していた。

 神の頭を砕きその消滅と同時に追跡したものの、切り離された神は何かを目指すように素早く逃げていった。

 また、逃げる最中にも自身を分裂させてそれぞれが違う方向へ逃げることでどちらかを逃がそうという行動をとった。

 それが何度も繰り返され、そのたびに片方を潰していったため、神に距離を開けられた。

 私から距離を取ることに成功した神はそのまま目的の場所、自身の信者と黒瀬永嗣の居る場所に到達し、信者を喰った。

 

 神にとって力を得る手段は信仰を得る以外にも生贄を喰うという手段が存在している。

 今回の神は、自身の唯一の信者を喰うほどまでに追い詰められていたということとなる。

 

 信者を喰うことで力を得た神は、何度も分裂して小さくなった姿から、腕を4本持ち、ぼろぼろの衣服をまとった3メートルほどの姿へと変化した。

 一時的なものとはいえ、神は力を取り戻しており、能力によって神と過去の信者がこれまでに受けた攻撃による被害を上乗せしての拳は重く、私でも受け流さなければ危険なものとなっていた。

 また、神としての力を取り戻したことで我々の能力に対して耐性を得ており、こちらからの攻撃はほとんど意味をなさないものとなっていた。

 そのような状況であるため、黒瀬永嗣には防ぐことが出来ずに何度も死亡と復活を繰り返していた。

 そして、何度殺しても死ぬことのない黒瀬永嗣の持つ力を自身の力にしようと考えたのか、神は黒瀬永嗣を捕食した。

 しかし、黒瀬永嗣を捕食して数秒後に、神は内側から突き破って出てきた「牛の首」により全身を砕かれて消滅した。

 おそらく捕食後に黒瀬永嗣を自身の力へと変える過程で彼に封印されている「牛の首」に影響を与える行為、おそらく「牛の首」へ「死」を与えようとした。

 それに「牛の首」が自己防衛を行い、神を攻撃したものと考えられる。

 

 「牛の首」がそのまま活動し続けるようであれば私も命を捨てる覚悟をしなければならなかったが、「牛の首」は神を殺した後に封印状態へ戻った。

 自身に危害を加える存在が消えたこと、活動を続けるために必要なだけの力を取り戻せていなかったためだと考えられる。

 

▼事後処理

 神は怪異と違い、信仰を失ったうえで「死」を迎えるとその存在は完全に消滅する。

 今回の神も唯一の信者を自身で殺害しているため、その存在は完全に消滅した。

 今回の神によって殺害された民間人は村の人口の7割となっている。

 情報の統制や記憶の操作など時間はかかるが、神を基とした怪異が発生することを防ぐために地道に行っていく必要がある。

 

 黒瀬永嗣については今後一層注意をしていく必要がある。

 今回は「牛の首」の出現が少しの間で済んだものの、今後同じ状況となればどうなるか分からない。

 彼自身の訓練と「牛の首」が出現した際の対処法を決めておく必要がある。

 

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