×の×、空の瞳、××な×
「こんな存在、今まで見たことありませんよ」
調査結果を片手に猿部隊隊員は呟くしかなかった。
ガラスを一枚隔てた先にいる存在、人の姿をしていながら人ではないもの。
青い瞳を持つそれは怪異でも人でも神でもないもの。
空の落とし子と名付けられたその存在、ある隊員から名づけられた空という名前を気に入って使っているそれは、機関にとっては危険でありながら、有用にもなる存在であった。
空の落とし子を調べても分かることはそれが異質な存在だということだけ。
記憶が欠落している今の状態では安全だが、記憶を取り戻した際に危険な存在となる可能性もある。
ただ、空の落とし子から得られたものはどれも有用なものばかり。
空の落とし子の身体から得た情報を用いた技術の開発、精神へ影響を及ぼす怪異への新しい対処法の発見など。
記憶を取り戻していくうちに新しい発見も出てくるだろうという期待を機関の上層部は抱いていた。
名称:空の落とし子
発見地:S県S町
危険度:判定せず
君たちの書いているものを真似して私も作ってみたよ。
短いけど、まあ読んでみてね。
▼概要
空から落ちてきた何か、私のことだよ。
空から君たちを見に来たことは覚えてるんだけど、記憶のほとんどが無くてね。
君たちの望む情報は提供できないと思うよ。
ただ、思い出せたことは君たちに教えてあげる。
その代わり、私に君たちのことを一番近くで見せてほしいな。
▼発見経緯
私が落ちてきたところを君たちの一人、永嗣と名乗っていたかな?
彼が見つけてくれてね、ここに連れてこられたってわけさ。
私としても君たちが見つけてくれてよかったよ。
だって、こんなにも間近でたくさんの君たちのそれぞれが違う生き方を見ることができるんだから。
▼調査記録
ここに連れてこられてから体をつつかれたり、機械に入ったりしたよ。
私のことをいろいろ調べたみたいだね。
それで、調べた結果のうち、私に伝えて良い部分だけを聞かせてもらったから書くね。
私の体は空っぽなんだって。
中身が臓器がない状態、人形のように外側の殻で構成されているって聞いたよ。
一応、ものは食べれるけど、喉を通った後ににどこかへ消えるんだって。
それと髪かな。
私の髪は空を映し出すんだ。
朝なら朝焼けで赤く、夕暮れは赤から青、そして黒に。
夜になれば髪に星が瞬くし、雨が降れば髪は曇って少し濡れる。
あとは目かな?
私の目は青い色をしてるんだけど、この目をずうっと見ていると、君たちの頭はおかしくなるみたいだよ。
だから、私の目を長い間見ないでね。
君たちが自分で壊れるなんてつまらないし、私もなるべく見たくはないから。
それが私と君たちで違うところらしいよ。
君たちと同じようになったつもりなんだけど、まだまだ君たちを観察し足りないみたいだね。
▼
これからは私が満足するまで君たちのことを見させてもらうよ。
君たちの一番上の人と約束したから。
大丈夫、安心してよ。
君たちに何かしたりはしないよ。
君たちの生き方を近くで私は見るだけ。
なんで空から来たのか、目的は覚えているし、私のこともまだまだ思い出さないといけないからね。
君たちに危害は加えないし、君たちの手助けも多分しないよ。
長い付き合いになると思うけど、よろしくね。