怪異調査報告書   作:狐憑

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今回は紅染の話


番外編
番外編 紅染の愛情たっぷりクッキング♡


 (わたくし)が烏部隊の一員となってからしばらく経ちましたわ。

 部隊に加入してからは、永嗣さまと一緒に任務に向かったり、デートをしたりして過ごしてまいりました。

 黒瀬さまが他の任務でいない日には、あの楓乃宮という女や他の人間と組まされることもありました。とても嫌ですが、永嗣さまの頼みですので、気乗りはしませんが従っていますわ。

 そんな風に過ごしていて、私まだ永嗣さまに手料理を召し上がっていただいていないことに気づきましたの。私と永嗣さまは既に愛し合う仲ですが、ここで私の手料理を召し上がっていただければ、さらにその愛が深まるはずですわ。

 

 私、これまで料理というものに挑戦したことはありませんでしたの。

 私たち怪異は自身についての人間の流す噂か人間の恐れなどの感情を喰らうことでしかお腹を満たすことが出来ませんから。

 ですが、私料理を一度もしたことがなくても自信はありますの。刃物を使うことには慣れていますから。

 それに、他の女が作った料理を永嗣さまが食べているのを見るのは胸がぎゅっとなる感覚に襲われて嫌な気分になるんですもの。

 

「さて、何を作りましょうか?」

 

 料理をするにあたって、まずは何を作るかを決めておかなければなりません。

 せっかく永嗣さまに召し上がっていただくのですから、手間のかかるものが良いのでしょうが、まずは切るだけでいいものから。

 

「りんごとはこのような味なのですね」

 

 まずはりんごという赤くて丸いものを切ってみました。人間の食べ物を食べるのは何年ぶりでしょうか?私には味はよくわかりません。

 まずは色々と人間の食べ物を食べてみるところからですね。

 この時のりんごは永嗣さまにも食べていただけました。甘くて美味しいと仰られましたわ。

 なるほど、これは甘いという味なのですね。

 

「焼くというのは難しいですわね…」

 

 次は肉を焼くことに挑戦してみました。肉の種類によって焼く時間が違っていたり、同じ肉でも中まで火が通っていなかったりと大変でしたわ。

 この時に焼いた肉も永嗣さまに召し上がっていただきました。ですが、味が足りないと仰られましたわ。素材の味もいいけど、調味料を使ってほしいとも仰られました。

 この肉を私も食べてみたのですが、りんごを食べた時に比べて満足感がありませんでしたわ。

 

「調味料はどのくらい入れればいいのでしょうか?」

 

 今回も肉を焼くことにいたしました。

 塩こしょうをかけるといいと永嗣さまは仰せでしたが、どのくらい使えばいいのかわかりません。なので、容れ物の半分ほどの量を使ってみましたわ。

 

「塩辛っ!」

 

 永嗣さまはその肉を食べた途端、椅子から飛び上がるように身悶えた後、地面に倒れて死んだようになってしまいました。

 私焦って焦って一体どうしたものかとおろおろしていましたら、永嗣さまが起き上がりました。

 

「調味料は欲しいって前に言ったけど、これはちょっとかけ過ぎかな。今度料理の本を買ってくるから、一緒に料理をしよう」

 

 私大変申し訳なくて…。永嗣さまに美味しいものを召し上がっていただくつもりが、美味しくないものを作ってしまって…。

 永嗣さまが一緒に料理をしようと提案してくださりましたが、今のままでは私の料理の腕が足りなさすぎて、恥ずかしいです。一緒に料理をするなどとても無理ですわ。

 この時の肉を私も食べてみたのですが、味というものはよくわかりません。

 ですが、りんごを食べたときとは違う、気分が悪くなった気がしましたわ。

 

 

 

「それで、私に料理を習いたいと?」

 

 そこで私は楓乃宮に料理を教えてもらうことにしましたの。

 他の女に料理を習うのは屈辱ですが、これも永嗣さまに美味しい料理を作るため。我慢しますわ。

 

「…怪異が料理をするなんて初めて聞くけど。まあいいです。料理を教えましょう」

 

 楓乃宮は私の申し出を了承しました。意外と話をすれば分かる人間でしたのね。

 

「きちんと分量を計るように。あなた、塩こしょうを半分も使ったと聞きましたよ。何をしてるんですか?」

「中火で5分は強火にしたら時間が短くなるわけじゃない!」

「包丁の使い方は上手いですね。そこは何も言うことはありません。他は駄目ですけど」

 

 楓乃宮の指導は料理の基本から叩き込むというものでした。

 

「基本もできないのに応用ができるわけないです」

 

 指導中このように楓乃宮は言っていました。気に食わないですけど、その通りですわ。戦いにおいても基本ができていなければ、いざという時に足元を掬われます。

 

「味を覚えるというのも大事です。あなたは人間の食べ物をほとんど食べたことがないでしょう?私が作ったものを食べて、甘い、辛い、苦い、酸っぱい、渋い、美味い、これらがどのようなものかを知ってください」

 

 楓乃宮は自分の作った料理を私に食べさせることもしました。最初は食べる気などなかったのですが、永嗣さまに美味しい料理を作るには欠かせないと言われ、食べることにしましたわ。

 …楓乃宮の作る料理は確かに見事なものでした。最初はいやいや食べていましたのに、だんだんと自分から手を伸ばしてしまって。私としたことが、はしたない。

 

「どうです?味がどんなものかわかってきましたか?」

 

 その私の様子を見ていた楓乃宮の顔ときたら、小動物を見るかのように笑っていまして。

 私恥ずかしくて顔を覆ってしまいましたわ。

 まあ、そのように毎日楓乃宮から指導を受け、私の料理の腕も上達いたしました。もう失敗などありえません!

 

 

 

「じゃあ今日はハンバーグを作ろうか」

 

 迎えた永嗣さまと一緒に料理をする日。今日はハンバーグを作るそうですわ。

 

「何か切るものがありましたら私に任せてください!」

「じゃあ、玉ねぎを切ってもらってもいい?俺は肉と卵の準備をしておくから」

 

 二人で作業を分担して料理を進めていきます。私の包丁さばきにかかれば玉ねぎもあっという間にみじん切りですわ。そうして切り終わった玉ねぎを肉と卵、塩コショウに牛乳と混ぜてこねていきます。

そうしてこね終わったら形を整えていきます。私と永嗣さまの愛のためにハートの形に♡

 

「じゃあ焼いていこう」

 

 そうして後は焼くだけ。私と黒瀬さまの愛情たっぷりこもった料理が出来ますわ。

 そうして焼きあがるのを待っていますと、私を殺意が襲いました。目の前にいる愛しい人を殺せ。誰かにとられる前に。殺した相手は永遠に自分のものになると。

 私なんとかそれを抑えようとしましたの。

 ですが、根源に刻まれているそれには逆らえません。体は勝手に紅糸を使って武器を作り始めていました。

 

「すぐに外に連れていくから我慢しろ!」

 

 私の異変に気付いた永嗣さまはすぐに私を抱えて部屋を飛び出しましたわ。私も必死に殺意を我慢しました。

 そして、外に出てすぐに永嗣さまに襲いかかりました。永嗣さまも武器を取り出し、私に応戦されましたわ。

 

「せっかくの料理が…私のせいで…」

 

 殺意は永嗣さまと戦い始めてすぐに消えました。ですが、そのために過ぎた時間はハンバーグが焦げてしまうには十分でしたの。

 私のせいで料理がめちゃくちゃに。せっかくの永嗣さまとの料理が…。

 気がつけば私涙を流していましたの。おかしいですわね、こうなったのは私のせいですのに。

 

「焦げているけど、十分美味しそうだよ。一緒に食べよう!」

 

 そんな私の様子を見た永嗣さまはハンバーグをお皿に盛りつけてくださいました。

 白いお皿に黒く焦げたハンバーグが目立ってしまっていて、私後悔で食べようとしませんでしたの。

 そうしていると、永嗣さまがハンバーグを切り、私の口の前に持ってきましたの。

 

「はい、口を開けて」

 

 その言葉で私は口を開けました。そこに黒瀬さまがハンバーグを入れます。

 

「二人で作ったから焦げていても美味しく感じないか?」

「はい、美味しいですわ」

 

 不思議でした。焦げているものは美味しいとは感じないはずですのに、このハンバーグは美味しく感じたのですもの。

 二人で作ったからと永嗣さまは仰っていましたが、その通りでした。

 

「料理に失敗はつきものだ。次はうまくいくように頑張ろうな」

 

 その永嗣さまの言葉に私は頷きました。次こそは二人で失敗しないように。

 そして、その次は私が永嗣さまに美味しい料理を振舞うことを目指してまいります!

 

 

 




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