ネタが無くなったので、この番外編を書き終えたら半月から一カ月ほど更新が無くなります。
私が生贄として捧げられる日が近づいてきた。
10月15日、私が15歳の誕生日の日に私は「くぐつさま」の生贄として捧げられる。
「くぐつさま」は私の住む村の神様だ。昔からこの村に居て、村が人形で栄えるようにしてくれている神様だって聞いている。
この神様は村を繁栄させる代わりに5年に一度の生贄を要求している。それ以外にも普通の人とは違う力を持つ人間が村で生まれたら、その人間も生贄として捧げるように言っているらしい。
私は人形を自分の思う通りに動かすことが出来る力を持って生まれた。村長からは人形に関わる能力だから「くぐつさま」も喜ぶだろうと言われてきた。
この村に住む人の半分は儀式のことを知っている。私の親もそうだった。彼らは自分の子どもが生贄に捧げられると知るとたいそう喜んでいた。
村に住む他の子どもたちは私を避けていた。私は特別で近づいてはいけないと教えられてきたらしい。
私も幼い頃は生贄として捧げられることは光栄なことだと教えられ、他の人と関わると生贄としての価値が落ちてしまうということにも納得していた。だけど、おばあちゃんが私を変えてくれた。
おばあちゃんは儀式のことを知っている人だったが、儀式のことはおかしいと思っていたらしい。
「昔仲良くした子がいてねぇ。その子が生贄に捧げられるのを嫌がっていたのを見てから考えが変わったんだよ」
そのきっかけについておばあちゃんはこう言っていた。
そんなおばあちゃんは私の考え方を変えた後、村の歴史や村の外のことについて教えてくれた。
私は村の外に出ることは許されなかったから、おばあちゃんの教えてくれる村の外の話はとても面白かった。
そんなおばあちゃんを村長は疎ましく思っていたようだ。
私が10歳になる日、おばあちゃんが山から転落して死んだと聞かされた。
私はおばあちゃんの姿を最後に見たいと言ったが、両親は許さなかった。転落した時の衝撃がひどくて見せられる状態ではないと。
すぐに嘘だとわかった。おばあちゃんは殺されたのだ。私に余計な知識を覚えさせないようにするために。そして、それを隠すために私に見せないようにしたのだと。
おばあちゃんが死んでから私は一人きりになってしまった。
両親ですら私との関りは最小限にしようとする。村の人たちはおばあちゃんのことがあってから私から更に距離を取り始めた。
私に残されたのはおばあちゃんの遺してくれた本だけだった。
村のすぐそばの森の中にある小屋の二階、本を読むのが好きだったおばあちゃんはそこにたくさんの本を置いていた。
おばあちゃんが死んでからその本の内、私に良くない影響を与えると村の人達が考えた本は捨てられた。だけど、おばあちゃんは死ぬ前に仕掛けを作っていた。
小屋の本棚の傍にある棚の引き出しを一定の手順で開けると隠された本が出てくるというものだ。
隠してあるのはこの村の歴史について古い言葉で書かれた本とおばあちゃんがその本を読んで書いた物語、それに村の外のことについて書かれた本だ。
私の毎日の楽しみは人形を使って遊ぶか、おばあちゃんの本を読むことだけになっていた。
おばあちゃんの本の中で私が一番好きなのは鎖を使う英雄の物語だ。この英雄はこの国の各地を旅して悪者を退治していく。
この村も英雄が悪者を退治して、その後に英雄が村長の先祖に連れてこさせた今の神様を祀るようになったとされている。
だけど、この村についての話は書き換えられたものだっておばあちゃんは言っていた。今の神様を英雄と関係ない、村長の先祖が連れてきた悪い神様で、いつか英雄が退治してくれるって。
英湯は物語の中の存在で存在しないことは分かっている。だけど、私はこの英雄が私を助けてくれれば良いのにと思うようになっていった。
そうして月日が流れ、私が生贄に捧げられる年がやって来た。
10月15日が近づいてくるのが怖くて仕方なかったが、表には出さないようにしていた。
儀式の日が近づくにつれて、私が秘密基地にいる時間も増えてきた。
村の人達は私が秘密基地に何かを隠していると考えて、秘密基地の中を探したみたいだけど、仕掛けには気が付かなかったみたいだった。
生贄の私は特別で、近づいてはいけないとされているのも私にとっては有利になった。
秘密基地にある本が私が見ても問題ないものだと判断した後は、監視されることもなかったから。
10月7日、村に観光客がやって来た。
この村の人形作りに興味を持ってやって来たらしい。
この村で作る人形には熱心なファンがいる。この人達もそうなんだろうと思った。どうせ私はこの人達と関わることはないから関係ない。
村が観光客でにぎわっている間、私は秘密基地で過ごすことにした。
残り少ない時間を本を読んで楽しもうと思ったからだ。それに、少しでも怖い気持ちを忘れたかった。
10月8日、今日も私は秘密基地に向かう。
村は私の気分と違って観光客でにぎわっている。私は静かに過ごしたいのに。
そうして憂鬱とした気分で森の中を歩いていた時、私はなにかの気配をかんじて近くの木を見上げた。
きっと鳥でもいるのだろう。私はそう思っていた。
だけど、そこにいたのは鳥ではなかった。
見知らぬ男性がそこにいた。私よりも少し年上だろうか。見たことのない服装をしていて、その肌には鎖のような模様がいくつもついている。
その姿は物語に出てきた英雄を思い浮かばせるものだった。
いや、きっと物語の英雄が私を助けに来てくれたのだろう。おばあちゃんの言っていたことは本当だったんだ。
男性は木から飛び降りると私の方に向かってきた。私に気づいたのだろう。
だから、私は彼にすべてを話して助けを求めることにした。
目の前の英雄に。