カゲカゲの能力を持って生まれた件   作:カワンチャ

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第3話 戦闘訓練

 雄英生活2日目、マジで入学式やガイダンスもなく当たり前の様に1限目から授業が始まる。

 ヒーロー科と言っても専門学校ではないので午前中は普通科目を教わった。

 とはいえ、この授業を行う教師達ですらプロヒーローの面々なのだから雄英には驚かされる。

 

 そして昼は大食堂で一流の料理を安価で頂ける。

 これをコックヒーロー『ランチラッシュ』が1人で回していると言うのだから凄い。

 でも料理人までプロヒーローなのはどうかと思うんだよね。

 

 そんなこともありつつ午後、つまりはヒーロー基礎学が始まる。

 

「わ〜た〜し〜が〜、普通にドアから来た〜!!」

 

 教室に入ってきたのは、テレビで散々見てきた平和の象徴であるNo.1ヒーロー、オールマイトだ。

 

「オ、オールマイトだ……!」

 

「すげぇや、本当に先生やってるんだな!」

 

「あれは銀時代(シルバーエイジ)のコスチューム!」

 

「画風が違いすぎて鳥肌が……」

 

 生オールマイトの登場に生徒たちのテンションはマックスになる。

 もちろん俺も圧倒されていた。

 そのオールマイト先生が担当するのは『ヒーロー基礎学』だ。

 曰く、ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目であり単位数も多いとのこと。

 そんな第1回目で行うのは『戦闘訓練』らしい。

 なので更衣室で各々のコスチュームに着替えて演習場へと向かう。

 

「わぁ~! ゴシック系だ!」

 

 透が俺の事をジロジロと眺める。

 やはりゲッコー・モリアの力を持つ者として彼をリスペクトをするのは当然だろう。

 なのでコスチュームもそれっぽくした。

 

「というか透、お前のコスチュームって……」

 

「もちろん手袋とブーツだけだよ!」

 

 そういや、そんな感じだったな。

 ……女の子なのにソレはマズいだろ。

 

「あー、自分の髪からコスチュームを作れば透明化するスーツが製作できると思うぞ」

 

「そうなの!?」

 

「Mt.レディは巨大化しても衣装が破れてないだろ。たぶんアレは衣装が自分の毛髪で出来ているからだと思う」

 

 ソースはルミリオンのコスチューム。

 流石に冬場や砂利道だと悲惨なことになるから何かしらの対策はするべきだろう。

 それかアブサロムみたいに自分以外も透明になれるようにするしかないな。

 

「これじゃあ痴女みたいじゃん!」

 

「キシシシ! 完全に痴女だな」

 

「そんなこと言わないでよ~!」

 

 これは俺が事前にアドバイスしなかったのも悪いな。

 

「放課後、相澤先生に相談しような」

 

「うん!」

 

 まあ雄英の設備なら余裕で作れるだろう。

 

「おい月光ゥ……!!」

 

 誰かの声がしたので振り返るが、そこには誰もいない。

 透明化の個性は透しかいないはずだが?

 

「下だッ! 悪かったなチビでッ!」

 

 そう言われて視線を下げると特徴的な髪型の葡萄男子、峰田実がいた。

 彼は鬼気迫る様子で俺の事を凝視している。

 

「お前ェ……あの透明女子とはどういう関係なんだあ゙あ゙ん!?」

 

「幼馴染だ」

 

「異性の幼馴染と雄英まで来るとかリア充すぎだろぉ!」

 

 虚しい非モテの叫びが演習場に木霊する。

 チラリと周囲を見ると一部の生徒を除いてソワソワしている。

 まあ多感な年頃だし仕方ないね。

 

「それと女子に服を着させるんじゃねぇよぉ!」

 

「服を着ることによるエロさもあるんじゃないか?」

 

「……わかっているな!」

 

 というわけで俺と峰田は握手をする。

 周りの女子からはドン引きされるだろうが気にしてはいけない。

 そんなこともありつつ、オールマイト先生が演習場にやってくる。

 

「みんなカッコいいぜ! さぁ、始めようか! 有精卵どもっ!」

 

 戦闘訓練の内容としてはヒーロー組とヴィラン組で2対2ずつに別れての屋内戦だ。

 状況設定としては、ヴィランがビルのどこかに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。

 両チームには5分の準備タイムが与えられ、制限時間は15分だ。

 ヒーロー組は制限時間までに核兵器に体が触れるかヴィランを2人捕まえたら勝利。

 ヴィラン組は制限時間までに核兵器を守るかヒーローを2人捕まえたら勝利になる。

 そしてペアと対戦相手はクジで決めるそうだ。

 

「このクラスは21人なので1人あぶれるのでは?」

 

 八百万がそんな質問をする。

 当然の疑問だろうな。

 

「その場合は3対2になるぜ!」

 

「人数有利ってこと?」

 

「いや、勝利条件は2人を捕まえることだから完全に有利なわけじゃない」

 

「まあ実戦では人数不利とか普通にあるだろうしなぁ」

 

 とはいえ3人側が有利な事には変わりない。

 出来る事なら3人側になりたいものだ。

 

「ではクジを引いてくれ!」

 

 こうして俺達はクジを引きペアと対戦相手を決める。

 それによりペアは八百万に、対戦相手は轟&上鳴(ヒーロー側)となった。

 轟が対戦相手なのはヒロアカ二次創作のテンプレだな。

 だけど俺という異分子が入ったせいで組み合わせは少しだけ違う。

 まあ誤差だよ誤差。

 

「私は八百万と申しますわ。よろしくお願いしますわ」

 

「俺は月光だ。今後ともヨロシク」

 

 そう言って俺は八百万と握手をする。

 ちなみに峰田はソレを見て血涙を流した。

 器用万能な彼女と組めたのはデカいな。

 

「では第1試合を始めようか!」

 

 こうして戦闘訓練が始まる。

 最初はヒーロー組:緑谷&麗日 VS ヴィラン組:爆豪&飯田。

 この試合は原作通り爆豪が緑谷を狙って暴走、その隙をついて緑谷と連携した麗日が飯田を翻弄しヒーロー組の勝利。

 緑谷は腕のケガで医務室に運ばれた。

 

 そして次の試合はヒーロー組:轟&上鳴 VS ヴィラン組:俺&八百万だ。

 というわけで俺達はビルの中へと入り作戦を練ることにした。

 

「私の個性は『創造』ですわ。構造が分かる物なら何でも作れますわ。 月光さんの個性は実体化した影を自由に操るとのことですが……」

 

「大体あっているな。そして相手の個性は轟が氷炎系、上鳴が電気系だろうな」

 

「なんで知っていますの?」

 

「……名前で推測した。それに轟は個性把握テストで氷系の個性を見せていたしな」

 

 ヒロアカ世界は名は体を表すならぬ名は個性を表す世界だからな。

 コイツを原作知識に対するカバーストーリーにさせてもらう。

 

「それで1つ作戦があるんだが、どう思う?」

 

 というわけで俺は八百万に献策を行う。

 すると彼女は笑みを浮かべて、こう言った。

 

「いいですわね!」

 

 というわけで彼女の個性を活用して色々と準備を行った。

 

「配置についたか?」

 

『もちろんですわ!』

 

 インカムで八百万と連絡を取り合う。

 彼女は例の部屋で待機している。

 

『第2試合START!』

 

 ……始まったな。

 そして次の瞬間、ビル全体が凍り付いた。

 もちろん核兵器と俺の足首も同様だ。

 無理に動こうとすれば皮膚が剥がれてしまい戦闘どころではない。

 知っていたとはいえ半端じゃない出力だな。

 

『月光さん、大丈夫ですの?』

 

「こちらは大丈夫だ。八百万は大丈夫か?」

 

『ええ、ドライヤーとカイロを創造して溶かしてますわ』

 

「なら作戦は続行だ」

 

 さてと、この氷の拘束から抜け出すとしますかね。

 というわけで影法師(ドッペルマン)と自分の身体を入れ替える。

 これにより俺は自由の身になった。

 そして代わりに拘束された影法師(ドッペルマン)の氷を砕く。

 人間なら砕いた衝撃で傷を負うが影は不定形なのでその心配もない。

 

「キシシシシシ! 此方から攻めるか!」

 

 というわけで奇襲を選択することにした。

 相手は俺達が動けないと思って油断しているだろうからな。

 もちろん核兵器がフリーになってしまうわけだが、部屋の近くには八百万が創造したバリケードやトラップがあるので時間は稼げるだろう。

 そして俺は遂に接敵する。

 

欠片蝙蝠(ブリックバット)!」

 

「うわっ!?」

 

 挨拶代わりに蝙蝠の群れをプレゼントした。

 これによって轟と上鳴は分断される。

 

「どうやって抜け出した?」

 

「さァな」

 

 そして(実体)は轟を影法師(ドッペルマン)は上鳴の相手をする。

 轟は体の右側からしか氷を出せないので、最短で氷結されないように左から攻める。

 普段からフィジカルを鍛えているから時間稼ぎくらいならギリギリ可能だ。

 とはいえ影法師(ドッペルマン)を操作する必要もあるので集中力がゴリゴリと削られていく。

 つまり長期戦は不利だ。

 

「俺らを分断したのはプレミかもな!」

 

 すると上鳴は無差別に放電をする。

 轟と俺は離れているので被弾しないが、近くにいる影法師(ドッペルマン)は別だ。

 これはピンチ……と思うじゃん。

 

「これで2対1だ……ホベェッ!」

 

 影法師(ドッペルマン)は電撃に痺れる事なく上鳴にグーパンを叩きこむ。

 そして彼が動揺している隙をついてタコ殴りにし気絶させる。

 つまり残る敵は轟のみだ。

 

「効かないねェ、ゴムだから」

 

「あれはゴムなのか?」

 

「……違った。影だから効かない」

 

「そうか」

 

 生物が電撃で痺れるのは神経細胞の活動電位が乱れて筋肉の収縮や感覚異常を引き起こすからだ。

 つまり神経細胞なんてない無生物の影法師(ドッペルマン)には通用しない。

 これが常闇の黒影(ダークシャドウ)とは違う点である。

 まあ俺の場合はマニュアル操作だから集中力の消耗が激しいし、暗闇で強化されたりはしないわけだが。

 

「これで準備は完了だ。八百万、頼んだぜ!」

 

『分かりましたわ!』

 

 次の瞬間、戦場は闇に染まった。

 そして八百万が創造した暗視ゴーグルをつける。

 これで俺は相手を視認できるが、相手は俺を視認できない。

 つまり状況は圧倒的に此方が有利だ。

 

「……ブレーカーを落としたのか」

 

「キシシシ! ご明察!」

 

 八百万はブレーカーのある部屋に待機していたのだ。

 そして上鳴を倒したタイミングでソレを破壊して暗闇を作るというのが俺達の作戦だ。

 ちなみにアイデアは『ワールドトリガー』のB級ランク戦ROUND7からパクった。

 やはりジャンプ漫画は人生に必要なことを教えてくれる。

 

 この作戦を実行するにあたって上鳴はどうしても倒す必要があった。

 なぜなら電光で暗闇を照らしてしまうからな。

 もちろん轟の炎でも照らせるわけだが、彼は父への憎しみからソレを使うことは無い。

 つまり対処法は存在しないも同然だ。

 

「チッ!」

 

「逃げても無駄だぜ!」

 

 今の時刻は昼なので窓のある部屋ならば太陽光が差してくる……というわけではない。

 殆どの窓は八百万が創造した板で目張りされてあるし、されてない窓も轟の氷が張り付いているので太陽光は遮断されている。

 

「月光さん! 加勢しますわ!」

 

 八百万が援軍に来てくれたことにより数的優位になった。

 しかも相手の視界は制限されている。

 唯一の懸念点は広範囲に氷をブッパされることだが、流石にビル全体を凍らせた後にソレが出来るほどの余裕はないはず。

 故に轟の捕縛は簡単な作業であった。

 

『ヴィランチーム、WIN!』

 

「やりましたわね!」

 

「キシシ! そうだなァ!」

 

 オールマイト先生のアナウンスがビル全体に響き渡る。

 というわけで俺達は轟と上鳴の拘束を解いてモニタールームに戻った。

 そして講評タイムになる。

 

「今回のMVPはヴィランチームの2人だな! しっかり作戦立案をしてソレを遂行できた。本当に見事だ!」

 

「キシシ!」

 

「光栄ですわ」

 

「ヒーローチームも見事な個性だったけど、周りの状況を観察するべきだったね。窓が目張りされているなどの違和感に気づければ勝てたかもしれないな」

 

「ウッス!」

 

「気を付けます」

 

 こうして第2試合は終わった。

 すると轟が此方に近づく。

 

「月光、八百万……」

 

「なんだ?」

 

「次は……負けねぇ」

 

「もちろんですわ!」

 

「そっちが本気を出さない限りは勝つぜ。さっきの試合も炎で周りを照らせば勝機はあったはずだしな」

 

「……」

 

 まあ、そうなったら罠のある部屋に誘い込んで袋叩きにするつもりだったんだけどね。

 マジで八百万の個性は反則級の強さだ。

 そんなことを思いつつも戦闘訓練は恙なく進んでいく。

 

 第3試合はヒーロー組:芦戸&耳郎&口田 VS ヴィラン組:峰田&瀬呂だ。

 峰田と瀬呂が各所に障害物を配置したが芦戸の酸で無効化されて、そのまま人数差を活かしたヒーロー組が勝利する。

 ちなみに峰田は試合中にセクハラを仕掛けようとしたので女性陣からボコボコにされた。

 

 第4試合はヒーロー組:青山&透 VS ヴィラン組:常闇&蛙吹だ。

 最初は身体能力に優れるヒーロー組が有利に立ち回っていたが、黒影(ダークシャドウ)の弱点は光だと気づかれたことで形勢が逆転。

 最終的には隠密中の透が核兵器にタッチしたことでヒーロー組が勝利した。

 彼女の個性はこういうシチュエーションだと強いな。

 

 第5試合はヒーロー組:砂藤&尾白 VS ヴィラン組:障子&切島だ。

 この試合は肉体派同士の壮絶な殴り合いが展開された。

 当初は全くの互角に思えたが、砂藤のドーピングが切れた隙にヴィラン組が猛攻を行い勝利した。

 防御力の高い切島がいたおかげで戦いが長引いたのが勝因だろう。

 

 そんな感じで戦闘訓練は終わり放課後となる。

 今はクラスメイト達と講評を行っている最中だ。

 なお爆豪は先に帰って、緑谷はそれを追いかけていった。

 青春だな!

 

「じゃあ、透。そろそろ行こうか」

 

「りょーかい!」

 

「2人でどこ行くの? もしかして……デート!?」

 

 俺達が教室を出て行こうとすると芦戸が目を輝かせながら問いかけてくる。

 

「コスチュームの変更を申請しにいくんだ」

 

「確か葉隠ちゃんの毛髪からコスチュームを作るんだよね。月光くんは何をするの?」

 

「影を具現化する為のライトと他者の影を切り取る為のハサミが欲しくてな」

 

 影切りは決まりさえすれば相手を確実に気絶させることが出来る。

 だけど相手の影がハッキリ見えている状態じゃないと使えない。

 故にライトとハサミをコスチュームに追加しようと思う。

 正直、申請段階で気づけたはずなんけど不注意で忘れてしまった。

 

「うんうん、それなら仕方ないねぇ~! いってらっしゃい~!」

 

 芦戸は態とらしい口調で俺達を見送る。

 たぶん、この後は恋バナに盛り上がるのだろう。

 ちなみに透は黙りこくっている。

 もちろん表情が見えないので何を思っているかは不明だ。

 ……そういう話はAFOを倒してからになるだろうな。

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