噂の飛び交う学校へ転生した 作:ブラックホール
保健室に通います。
翌日の昼休み。話す相手もいない俺は再び保健室を訪れた。
この身体の持ち主の顔立ちは非常に整っていた。加えて運動神経抜群で成績も良いらしいが、近寄りがたい雰囲気を持ってる一匹狼気質だった為か、友達はいなかった。周りの評価は優秀だけど寡黙な人といった感じらしい。
(まあその方が気楽だけど…)
前世がFラン大学生の俺としては今更中学生の会話についていけないところがあるので有り難い。加えて大学でも1人ボッチだった。
保健室の扉を開ける。
「一之瀬さん、今来た」
ベッドのカーテンが開いた。
「今日も来てくれたんだ」
「教室だと1人だからな」
「私に会いに来たの?」
「…そうかもしれない」
「なあにそれ♪」
クスクスと笑う。一之瀬。可愛すぎる。
一之瀬の手元には教科書が置いてあった。
「自習してるんだな」
「授業出られないから」
「…俺でよければノート見せる」
「えっ、良いよ。長州君に悪いもん」
「今は学年1位だ。中間試験も殆ど満点」
「…その前に学年1位だったの誰だか分かる?」
「誰?」
「私だよ♪」
まじか。俺いらないじゃん。役に立てなかった。
「そ、そうか…」
「うん♪だから大丈夫」
「俺いらないのか…」
「えっ、」
「そうか…俺は役に立てないのか…結構ショックだな」
「えっ、ちょっとちょっと、冗談だよっ、借りるっ、借りるからっそんなにがっかりしないで〜」
少しがっくりとした雰囲気の俺を一之瀬が必死に慰める。
焦る一之瀬可愛い。
「ここはこの公式じゃなくて……以前これやったの覚えてるか?」
「あ、分かった〜、これだねっ」
「正解、後は計算だ」
「そうだったんだ〜、謎が解けたよ〜」
「後でもう1回やろう」
少しして、俺は今日習った事や一之瀬が自習で分からなかったところを教える事になった。
一之瀬も頭が良いから俺の教えたことをどんどん覚えるようになって授業を出てないハンデを感じさせないくらい学力を伸ばしていった。
俺は保険室に通うのが楽しくなっていた。
あれから俺は毎日保健室に通うようになった。
授業はちゃんと受けてる。昼休みに通っていた。
「今日も来たんだ」
「よっ、これな〜んだ」
「え、トランプ!?」
「正解」
俺は最近こっそりと遊び道具を持ってくるようになった。
「バレたら怒られるよ♪」
「バレなきゃ良い」
「もう、仕方無いな〜巻き込まれてあげるっ」
ちょっと駄目だぞ♪と言う表情の一之瀬だったが、俺がカードを切り始めると俺の方を向いた。
なんだかんだやってくれるみたいだ。
そんなこんなで一之瀬の使ってるベッドの上でトランプを始めたのだが
「また負けた〜」
一之瀬がカードの上に覆い被さった。なんというかポーカーフェイスができてるようで出来てない。
「また俺の勝ち。一之瀬さんババ抜き弱い」
「なんでだろ~、私分かりやすいのかな〜」
最後俺がカードを引き抜こうとしたら強く掴んで引き戻してもう1回シャッフルしていた。ズルいぞ。
「次はスピードで勝負だ」
「うにゃ〜、よしっ今度は負けないぞ〜」
「絶対俺が勝つ」
「もうっ、馬鹿にしてっ」
トランプで一之瀬に負ける気がしない。毎日のように俺は彼女をボコボコにした。
また次の日も…
「今日は何持ってきたの?」
「じゃ〜ん、なんだこれ」
「ミニオセロっ、もう、よくバレないね〜」
小さなオセロを持ってきた。一之瀬はそう言いながらも保険室に入る前から待ってましたとばかりにスタンバイしていた。
「今日は負けないからね」
「一之瀬さんに負ける気がしないのだが」
「うにゃ〜、舐めてるっ、絶対私が勝つからっ」
こうして対局が始まった。
20分後、ベッドに突っ伏している一之瀬がいた。俺の3戦3勝だった。
今のところトランプでも3回くらいしか負けてない。
弱いな〜
俺は毎日のように一之瀬に勉強を教えたり、ゲームをしたりと楽しんでいた。
一之瀬もそんな俺を待ってるようだった。
こうして楽しい時が続いた。
ある日。俺はいつも通り保健室に通っていた。
「一之瀬さん」
保険室に入るが一之瀬がでてこない。不思議に思って彼女のベッドのカーテンを開ける。
一之瀬はベッドで寝ていた。
退出すべきだと思った。
が、ふと美しい彼女の寝顔をつい見たくなってその顔を見る。
そして後悔した。
何かに苦しんでいた。
「んっ、んっ、…」
「………」
呻き声が聞こえる。
俺はそっと離れようとした。
その時だった。
「ううっ、違うっ!!!本心でやったんじゃないのっ!!!」
ハッとして彼女の顔を見る。色んな感情が混じったような悲痛な表情をしていた。
「……」
俺はベッドに近づいた。
そして彼女の手を握る。
すると強い力で俺の腕に縋りついて来た。
「違うっ、違うのっ!!!」
俺は彼女を抱き止めた。その背中を優しくさする。
取り敢えず声をかけておく
「分かってる。分かってるから、一之瀬さんはいい娘だ」
その耳元で呟いた。
一之瀬の引っ付く力が強くなる。
もう一声かけておくか…
「私はっ、私はっ!!!」
「分かってる、一之瀬さんはそんな娘じゃない、だから大丈夫」
まだ悪夢が覚めないのか必死に縋りついて来る。
戻って来た保健室の先生が気付いてこちらに来る。俺達の様子を見て一之瀬の背中をトントンと軽く叩いた。
「一之瀬さん…」
俺はそのまま背中をさすり続けた。
彼女の動きが静かになっていく。
やがて発作は収まり、一之瀬は静かになった。
「…す君…」
すぅっ、すぅっと寝息を立てる。
俺はそれを見て溜息を吐いた。
もう少し早くこの身体を貰っていれば事件を未然に防げたのにと思いながら。
夢を見た。
妹が欲しがっていたヘアクリップを万引きをして、それが店員にバレた。
その店員は私を警察に通報した。
たちまちパトカーが店を取り囲んで警察が出てきた。私を手錠にかけるとそのまま外に連れ出した。外には色んな人がいた。皆、私を見ていた。
その中に見覚えのある顔が2つ。
よく知ってる私の最愛の2人。
私の母と妹だった。
「お母さんっ」とは言えなくてそのまま連れられた。
そんな中、じっと私を見ていた妹が口を開いた。
「ねえ、なんで万引きなんかしたの?」
「えっ」
私は耳を疑った。
「どうして?万引きは悪い事だよ。お姉ちゃんはそんなにまでして欲しいものがあったの?」
「ち…ちがう…」
そう言う私の声を聞いていないように妹が続ける。
「お姉ちゃん、それ犯罪だよ、駄目だよお姉ちゃんそんな事しちゃ」
「ち!違うっ、本心でやったんじゃないのっ!!!」
「どうして、お姉ちゃんは私達に迷惑をかけたいの?」
「違うっ、違うの!!!」
幾ら言っても誰も信じてくれなかった。警察が私を連れていこうとした。咄嗟に何かに掴まり抵抗する。警察が私を集団で抑えつけようとする。
「早く取り押さえろ!!!現行犯で逮捕だっ!!!」
「私はっ、私はっ!!!」
必死に何かに縋りつく。
捕まる。このまま警察に捕まって私は一生犯罪者として生きて行くんだ。
きっと誰も私を助けてくれない。
なんで…
どうして…
こんなに苦しい思いをしてきて、少しだけ妹の笑顔が欲しかっただけなのに…
そう思った時だった。
不意に掴んでいたものに私の身体が引き寄せられた。
不意に警察が消えた。周りにいた人も全て消える。
掴んでいたものを見る。
私は1人の人の手を握っていた。私の背中が擦られる。
「一之瀬さん…」
上から声が聞こえた。低くて優しい声だった。
その顔を見上げる。その顔は私が知ってる顔だった。
私を抱き寄せるようにして見ているその青少年。
「長州君…?」
「はっ」
私は目を覚ました。
「あら、起きたの」
保健室の先生が私の方を振り返る。
時計を見ると昼休憩の時間はとっくに過ぎていた。
長州君と遊びたかったのに…凄くがっかりする。
保健室の先生が近づいてきた。
「彼、今日も来てたよ。これ渡して置いてって」
そう言って私に4冊のノートを渡してきた。
午前中の教科のノートだった。
「大丈夫?悪い夢でも見てたのね、凄い発作だったわ」
「えっ」
「凄く辛そうだったよ。一之瀬さんのあんなに辛そうな声初めて聞いた」
「……」
先生の話を聞いて私は夢を思い出す。
「そう言えば彼にお礼を言っておくことね」
「えっ」
「彼、一之瀬さんの事をずっと心配してたわ。ついさっきまで枕元にいたの」
「長州…君が?」
「そう、貴方、彼に必死に縋りついていたわ」
えっと声をあげてしまった。
えっと、私が長州君に看病されて縋りついてた?
あ、確か夢でも、私は長州君に…
……………
……………
……………
「嘘〜っ!!!」
「あははははっ、青春してるね〜」
先生は笑うが笑い事では無い。
私は悶えた。
「長州君に抱きついて…どうしようもう顔見れない…」
私は暫くの間頬の熱が収まらなかった。
保険室に通う主人公。
主人公のクラスどこにしようかな。
Bクラスだとなんかつまらない気がする。
AクラスかCクラスにしようかな。