噂の飛び交う学校へ転生した 作:ブラックホール
次で高度育成学校に行きます。
「良かったら私と同じ高校行かない?」
そう言われて俺は直ぐには答えを出せずにいた。
一之瀬が行く高校は勿論、原作通り東京都高度育成学校。
東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の国立の名門校。
3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になる。しかし、希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校で、60万平米を超える敷地内は小さな街になっており、何1つ不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。
と、ここまで聞くと聞こえが良いが実際はそうじゃ無い。
正体は優秀な者だけが好待遇を受ける実力至上主義の学校。
入学試験を突破した優秀な生徒が入学出来るとの建前だが、実際は入学試験は形式的なものに過ぎず、全国の中学校からの推薦で入学者を選抜しているため、その生徒は入学試験の結果に関わらず入学が内定している。反面、推薦のない生徒は、試験の結果がどれだけ良くても、不合格が決定。
この中学校からの推薦というのは決して成績優秀者ばかりではなく、中学時代に問題を起こした者、いじめ等で不登校になっていた者、不良、成績不良者なども推薦されていることから、更生的な側面も持っている。
まずこの時点で気になる事、それは…
(この中学に推薦枠が2つもあるのか?)
可能性としては無いわけじゃない。実際堀北と櫛田の中学からは2人分以上の内定が決定していることになる。
早速学校に聞いて見る事にした。
「大丈夫だった…」
どうやら2人以上は確実に推薦で入れられるようだった。
受験資格が無いわけではないようだ。
後は俺が高育のお眼鏡に叶うかどうかだ。
「長州君なら大丈夫だよ、今の私よりも成績良いもん」
一之瀬の言葉に俺は少し安心した。
確かに今の俺は学年1位の成績を取っている。
身体能力も最高クラス。コミュニケーション能力は低い方だろう。
(引っかかるとしたらCクラスかDクラスかもしれない…)
少し想像したがAクラスやBクラスになれる未来が想像つかない。これは今の自分を見た結果では無く、前世の俺の体験によるものだが、どうも自信が無い。
また話しは戻るが、高度育成学校のクラス分けはクラスポイントというこの学校特有のシステムで分けられており、ポイントの多いクラスからA〜Dとなっている。これは普段の学校生活や試験などでクラスポイントの増減によってクラスが入れ替わる場合もある。
クラスの面子は入学時のクラス分けで優秀な生徒からAクラスとなり、下位のクラスになるほどレベルが低くなり、Dクラスは不良品と呼ばれている。
但し、堀北のように性格を考慮してもCかBクラスになりそうな存在もDクラスに配属されており、具体的にどのようにクラス分けをしているかは不明である。
一之瀬はこのまま行くと原作通りBクラスになる。俺も成績と身体能力だけ見ればAクラスだが、性格に問題が無く成績の良い椎名や先程の堀北の例を考えると下位のクラスに沈む可能性は高い。
また他クラスになった場合、俺は一之瀬とクラス間闘争で争う必要がある。初期は協力関係にあるDクラスは兎も角として、坂柳のいるAクラスや龍園のいるCクラスに入れられたら目も当てられない未来になりそうである。
(その時は彼、彼女と戦う必要があるな…)
龍園や坂柳と同じクラスになったら状況次第では俺はクラスのリーダーと戦わなければならないかもしれない。折角仲良くなった一之瀬との関係を崩すのは無理だ。
頭でそう考えながらも結局俺は高育を併願で受験することに決めた。理由は単純。一之瀬の未来を見て見たくなったからだ。
「一之瀬、俺も受けるよ」
「本当っ、嬉しいっ」
一之瀬に入試を受けると伝えると彼女は喜んでいた。
受験先は地方の就職専門の県立高校と高育にした。
早速受験勉強では無く試験勉強を始めた。何せ入学前から合否が決まっているのだ。内申点が重要なのは明らかだった。
一之瀬が何かの間違いで落ちても困るので、彼女にもしっかりと勉強を教えた。
結果、2学期の期末試験も無事1位と2位で突破した。
ここまで来たら後はほぼ結果待ちのようなものだ。
地元の県立は余裕なのでどう過ごすかを考えていると一之瀬からの提案があった。
「ね、ねえ」
「ん?」
「もし、良かったらなんだけどさ」
指を合わせながら頬を赤らめて上目遣いで俺を見上げる。
「今度2人で出かけない?」
金曜日の夜、俺はショッピングモール店の前でで待っていた。
初めての女子とのデートに待ち合わせの時間より大分早く来てしまった。容姿には自信があったがこの日の為に服を厳選した。
「お待たせっ」
振り返るとそこには女神がいた。ニット帽を被り冬服を来て微笑んでいる一之瀬に片手をあげて挨拶をする。
一之瀬は俺に近づいて「あっ」と声をあげた。
「一之瀬、凄く素敵だよ」
「あ、うん…」
何を言えば良いか分からなかったが取り敢えず褒めておいた。
一之瀬は俺に釘付けになっていた。服のチョイスミスったか?
「な、長州君…」
「ん?」
一之瀬の頬が熱を帯びてる気がする。近寄ると慌てて目を逸らしてわちゃわちゃと手袋の手を動かした。
そのままチラッチラッと俺の方を見てる。目線が合わない。
……取り敢えず行くか。
「店に入ろう」
「は、はいっ」
手を差し出すとちゃんと取ってくれた。
何故か敬語になってるが知らないふりだ。
そのまま2人で店内に入る。
衣類を売っているコーナーに入った。
一之瀬は女性用のコートを見ていた。俺はそれを手に取り一之瀬に試着させて見た。
「ど、どうかな…」
「似合ってる、大人びて凄く綺麗だよ一之瀬」
「ほ、本当に?」
「ああ、下はこれが良いんじゃないか」
「じゃ、じゃあ履いてみるね」
再び試着部屋に籠もる一之瀬。そして出てきた。
おおっ…
「世界一綺麗…」
「えっ、にゃはははっ、褒めるの上手いねー」
嬉しそうにその場で回る一之瀬。
元が良いから何着ても似合ってるように見えてしまう。それ故、感想は単調だった。
「長州君はこれが良いかな?」
一之瀬が男性用の服を厳選してきた。
俺はそれを試着部屋で着ると外に出る。
「あっ…」
一之瀬は固まった。どう見ても息をしてない。大丈夫か?
「一之瀬?」
「な、長州君…」
「ん?」
「わ、私と…」
フラフラと俺の方に歩いてくる。そして俺の両腕にしがみついた。
そして…
「け、結婚してくださいっ」
「うう〜」
俺の前には真っ赤な顔を両手で覆っている一之瀬がいる。
俺は両手に荷物を持っていた。俺の服と彼女のものだ。
「一之瀬、前見ないと人にぶつかるぞ」
「だって、だって…」
あの後直ぐに正気に返った一之瀬は慌てて誤魔化そうとしたが俺の脳内には既に一之瀬の告白が復唱されており、時既に遅しだった。
いじめるのはこれくらいにしよう。
「一之瀬、俺は嬉しい」
「うにゃ〜、えっ…」
もう本音を言う事にした。
「本音かどうか分からないけど、一之瀬から告白されて俺は幸せだった」
「な、長州君…さっきのは…」
「だから…」
外に出た。とある場所の前で足を止める。一之瀬の方を向く。
「もし数年後にその気持ちがあったらまた言って欲しい」
「長州君…」
ツリーが輝く。美しいイルミネーションが見えた。
「私…」
「気持ちが変わらなかったらで良い。けど、俺はその為に自分を磨き続ける。だから俺をもっと見て欲しい」
「未音君…」
彼女の目に涙が浮かんだ。俺はそっと彼女の腰に手を添えてみた。一之瀬も俺に寄り添って来た。
その日は忘れられない夜になった。
それから俺は一之瀬の勉強に付き合った。彼女は内定を得たも同然なのだが一応入試で配属クラスが決まる為、手は抜かない方がよかった。俺も少しでも良いクラスに入れる為に勉強をやめなかった。Bクラスに入れる可能性は低いと思うが最後まで足掻いた。
受験になった。一之瀬とお互い頑張ろうとエールを送り合いそれぞれの場所についた。
「始めっ」
入試が始まる。腕時計を見ながら問題を解いて行く。
そして…遂にその日が来た。通知が来た朝俺は一之瀬の家に向かった。
「ご、合格したっ」
そう言うと一之瀬は微笑んだ。
「私もだよ」
「そ、それじゃ…」
言い淀む俺に一之瀬が手を差し出した。
「うん、これからもよろしくお願いします」
こうして俺は高育の切符を手にした。
これから先何が起きるか分からない。
けど、俺は頑張る。原作知識くらいしか武器が無くてもやるしかない。
目の前で微笑んでいる一之瀬を見ながらそう心に誓った。
というわけで高育に合格しました。
主人公は何クラスになるのか?