噂の飛び交う学校へ転生した 作:ブラックホール
主にバスの中です。
4月。長い冬が終わり、暖かな日差しのもとで桜をはじめとする様々な花が咲き乱れる木々の見頃の時期。世間一般の人達にとって新生活が始まる。日本の多くの学校や企業が4月を新年度としており、入学・入社の式典が多くの場所で行われる。
かく言う俺も2度目の高校生活に向けて学校に向かうバスに乗っていた。景色の変わりゆく街の様子を横目で窓から眺めつつ過ごしている。
バスの搭乗席は少しずつ増えていった。新社会人と思わしき人間が腕時計を確認している。乗っている乗客の殆どは学生であり、皆俺と同じ制服を着用している。しまいにはいつ痴漢が起こってもおかしくないくらい車内は混雑していた。
隣の席に座ってる女子の髪、ストロベリーブロンドが靡いた。どうやら起きたようだバスの行き先の放送を聞くと俺の腕を軽く叩く。
「ねっ、あと停留所5つくらいで到着するよっ」
「そうだな、出る時出遅れないようにしないとな」
「うん、私について来てね。その時は手繋ごう。引っ張っていくから」
「分かった。頼む」
「うん、任せて♪」
隣りに座ってる女子生徒は笑った。
彼女の名は一之瀬帆波。
俺の中学の同級生であり、3年生の2学期以降は親しい友達だ。
俺と一之瀬は朝早く、待ち合わせをして電車に乗って東京まで行き、そこからこのバスに乗り換えたのだ。数回に渡る乗り換え、数時間の登校は流石の彼女も疲れたらしく少し眠そうにしている。座席を確保出来たのは幸運だった。このまま目的地まで座って行けたら良いなと思い俺もリラックスしたまま外を見ていると急に女性の声が響いた。
「席を譲ってあげようと思わないの?」
前方の方で女性の怒る声がした。俺は首を伸ばして、一之瀬は通路側に身を乗り出してそちらを見る。バスの座席は後ろの方が高くなっているので何とか前方が見えた。
そこには優先席にどっかりと座り込んだガタイの良い若い金髪の男。俺と同じ制服を来ているがとても高校生には見えない見た目だった。
その近くには年老いた老婆。その横にはOL風の女性が立っていた。
俺は原作1巻で描写されたバス内に来てしまったようだった。
そしてあそこに座っているのは俺が良く知ってるこの学校の登場人物の1人。
高円寺六助。日本有数の資産家である「高円寺コンツェルン」の跡取り息子である。
頭脳、運動能力、共に学校全体で数年に1人という高いレベルにあり、家柄も超名門。個人としてのポテンシャルは桁外れな反面、性格は唯我独尊で協調性が皆無である。Dクラスに配属されたことに対しても、「学園が自分の能力を測りきれなかっただけに過ぎない」と考える不遜さを持つ凄い人物だ。
「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」
席を譲って欲しいと思っているOL風の女性は良く通る声で高円寺に話し掛ける。
「実にクレイジーな質問だね、レディー」
高円寺は怒るでも無視するでも従うでも無く足を組み直して饒舌に語る。
「君が座ってる席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょう?」
「理解出来ないねえ。優先席は優先席であって法的な義務は存在しない。この場を動くかどうか、それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ」
「一之瀬、そろそろ到着するから、俺前の方行ってくる」
「私も行くよ」
席を譲る気のない高円寺の発言を聞きながら俺は立ち上がる。隣にいる一之瀬も動いた。俺一人なら譲ったか分からないが彼女もいるなら話しは別だ。
「お婆さん、私達の席に座ってください」
一之瀬の声にOLと老婆がこちらを見る。俺は手を振って場所を示した。そのまま2人で席まで誘導する。
「はあ、ありがとうね2人とも、そこの席の学生とは大違いだわ」
OLが高円寺を睨みながらそう言った。高円寺は気にも止めない。
前方に移動した一之瀬は吊り革に掴まろうとしたが生憎空いてる場所が通路の真ん中で場所が無かった。俺が近づくとガタンとバスが大きく揺れて彼女は転びそうになる。俺はさっと手を伸ばして一之瀬の身体を支えて抱き寄せる。
「にゃはは、ありがとね長州君」
「大丈夫。一之瀬は俺に掴まってろ」
「うん、そうする。けど良く転ばないね」
「…体幹はある方だから」
笑いながら一之瀬は俺の腕に掴まる。彼女の運動神経は意外にも普通だ。時々俺の顔をチラチラと見上げる。斜め下からの視線を感じたまま、俺は後ろを振り返る。
一方的に見知った顔が複数いる。
近くの吊り革には茶髪ショートの女子生徒。
奥の座席には黒髪ロングのつり目の美少女。そして通路を挟んで反対側の座席には無表情の整った顔立ちの男子生徒。
俺は彼、彼女を横目で見ながらバスが目的地に向かうのを待った。
一之瀬と共に一番先にバスを降りる。
そこには天然石作りの校門が待ち構えていた。
「行こうか」
「うん」
一之瀬と共に校門を通り抜ける。広大な敷地が広がった。
ここがこれから俺達が過ごす高度育成学校。クラス事に実力順で配属先が決まる完全実力至上主義の学校。
これから起こる事に少し緊張しながら俺は歩いた。
「ねえ、ちょっと良いかな?」
「ん?」
歩き出した俺達を後ろからの声が呼び止めた。
振り返るとそこにはバスの中にいた美少女が立っていた。
「急に声かけてごめんね。さっきのバス一緒に乗ってたんだ」
「ん?ああ、見覚えあるな」
「えっ、にゃはは、そうだったんだ〜、ごめん、私ぼーっとしてて気付かなかったよ〜」
「あははは、そんな事ないよ〜。お婆さんに席を譲ってたの私ちゃんと見てたよ♪」
一之瀬と笑いながら話す茶髪の女子生徒。俺はこの女子生徒を知っている。
「自己紹介がまだだったね。私の名前は櫛田桔梗って言います。桔梗って呼んで良いよ♪」
「桔梗ちゃんだねっ。私、一之瀬帆波です。私も名前で呼んで良いよ♪」
「帆波ちゃんだねっ。よろしく♪」
仲良い?2人の自己紹介を聞きながら俺は目の前の光景を感動の目で見ていた。
櫛田桔梗。
この後のクラス分けでDクラス配属の女子生徒であり、高校に入って直ぐ、男女の両方から絶大な人気を誇る。クラスのアイドル的存在であり学校中のみんなと友達になることを目標とし、クラス内だけでなく他クラスや他学年の生徒たちとも広く交流を持つようになる。
誰に対しても気配りが出来る天使のような美少女で当然クラスでも一番人気。場の雰囲気を察する能力も高く、彼女がいればどんなグループも笑顔で溢れる。あと一之瀬程では無いが胸が意外と大きい。
「ねえ、もしかして隣にいるかっこいい人って帆波ちゃんの彼氏?」
「えっ、ち、違うよ、まだそこまでは…」
チラチラと一之瀬が俺の方を見る。
そう言えば自己紹介してなかったな。
「俺は長州未音。一之瀬とは少し前からの友達だ。よろしく櫛田さん」
「あははは、そうだったんだ〜、よろしくね長州君。道理で帆波ちゃんと仲良いと思ったよ〜」
笑いながら俺に手を伸ばしてくる櫛田。俺も握手する。
これも演技なんだろうなと思いながら。
表向きには善人で完璧な人物を演じている彼女。
…その本性は一倍承認欲求が強く、傲慢かつ利己的な性格で周囲の人間を見下している。また中学時代の経験から極度の人間不信で基本的に誰のことも信用していない。
心理的に常に誰かのマウントを取りたくて他人の秘密を握ることに躍起になっており、その癖マウントを取られるのが大嫌いなので、自分の秘密を知ってる人間(堀北)が心底許せないでいる。 また他人の秘密が大好物で「自分にだけ打ち明けてくれる秘密を知ったときに、想像を超えた何かが自分に押し寄せてくる」と何巻かで語っていた。
ある意味櫛田は1年生時の一之瀬と対になる存在だ。
3人(俺はほぼ見てるだけ)で会話しながらクラス分けが貼り付けられている掲示板まで移動する。
掲示板の周りには大勢の1年生が押し寄せていた。
掲示板を見ていると後ろから1人の男子生徒と1人の女子生徒が歩いて来た。
…原作主人公ともう1人の主人公だった。
「私はDクラスだね」
原作通り櫛田はDクラスのようだ。Dクラスの掲示板を見るとそこには知ってる人物の名前が多く載っていた。
軽井沢恵、佐倉愛里、平田洋介、松下千秋。
「私はBクラス。桔梗ちゃんとは別のクラスになっちゃうね〜」
「あははは、残念だな〜。そう上手くは行かないか〜」
女子2人が会話する中俺は下位のDクラスから順に自分の名前を探していた。
Dクラスには俺の名前は無かった。
続いてCクラス。
石崎大地、伊吹澪、椎名ひより、山田アルベルト、そして…龍園翔…
ここにも無かった。
下位クラスには俺の名前が無かった。
上位クラスに目を向ける。
「あ、長州君の名前あったよ」
櫛田が俺の名前を見つけた。
指をさす方に目を向ける。
そのクラスは…
今回はここまで次で主人公のクラスが分かれます。
事情があってここまでしか書けませんでした。
アンケートの結果はBクラスがトップでAクラスが2位、そして大きく引き離されてCクラス、Dクラスの順番でした。
主人公はどうなるのか。