入学試験でデルタアクセルするとどうなるのか!! 作:交響魔人
デュエルアカデミア本校。孤島では生徒達がある新入生を探し回っていた。
デルタアクセルシンクロを行った、シンクロ召喚使いを。
「なぁ、あのシンクロとかいうのを使う奴見なかったか?」
「こっちは見ていない。入学しているなら、ラーイエローに配属されていると思って今し方イエロー寮のリストを確認したんだが居なかった。」
「じゃ、じゃあ!オシリスレッドに…そんなわけないっスよね…」
「となると、特例でオベリスク・ブルーへ配属されたのかもしれないな。」
十代、三沢、翔は入学試験にいたシンクロ使いの同級生を探す。だが、影も形も無い。
そんな3人の生徒手帳である、PDAがなる。一斉送信されたメールだ。
『新入生は直ちに本校舎へ集合。今からプロリーグの中継を行います。』
「プロリーグの中継!早速行こうぜ、翔!三沢!」
「うん!」
「いきなり中継とは、何があったんだろう…。」
「新入生歓迎会の前-ニ、皆さんには新たな召喚法、シンクロ召喚を操るスーパールーキーのデュエルを見て頂きますーノ!」
クロノス教諭が宣言し、大きなスクリーンがデュエルワールドリーグの中継を行う。
『世界中のデュエルモンスターズファンの皆様!何とこのデュエルワールドリーグに、ルーキーが殴りこんできました!紹介しましょう!日本から来た少年、龍道 優一!』
白を基調とし、金の縁取りが施されたデュエルコートを纏い、龍道は歩く。
服装はともかく、見た目は童顔な事から観客から冷やかしが浴びせられるが、もはやなるようになれ、と開き直って指定の場所に立つ。
『対するは、トリア帝国の『白銀』、リナ・ヴィ・トリア第三皇女殿下!』
龍道に向かって歩いて来るのは、触り心地のよさそうな柔らかそうな銀髪を腰まで伸ばし、同年代と比較しても肉付きの良い美少女。
やや太めの足だが、それがかえって健康的な印象を与える。
切りそろえられた前髪から、誇りと知性を宿した蒼い瞳が龍道を見つめる。
「ようこそ、デュエルワールドリーグへ。フフッ。」
「何がおかしいのですか?皇女殿下。」
「私は1年前、そっちに立って居た。でも今はルーキーを迎え撃つ立場になった事で時の流れを感じちゃった。」
そういうと慣れた手つきで太もものデッキケースからデッキを取り出すと、デュエルディスクにセットする。
「私はイタリアの巨人、クロノス・デ・メディチを尊敬しているわ。そんな彼が推薦状を出したって事はそれなりに出来るんでしょ?だったら全力で来て。来ないと…潰しちゃうわよ?」
「では、本気で行きます。」
『さぁ、デュエル開始!先攻は、ルーキーからです!』
「俺の先攻、ドロー!魔法カード、調律を発動!デッキからジャンク・シンクロンを手札に加え、デッキの一番上のカードを墓地に送る。墓地に送られたのは…グローアップ・バルブ!」
「レベル1の植物族…攻撃力、守備力100をわざわざ入れているって事は何かあるのかな。」
「ジャンク・シンクロンを召喚!召喚成功時、墓地のレベル2以下のモンスターを特殊召喚!グローアップ・バルブを特殊召喚!墓地からモンスターが特殊召喚された事で、手札からドッペルウォリアーを特殊召喚!」
「ステータスが低いモンスターの大量展開。むむ、団結の力かな?」
「レベル2のドッペルウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!S召喚!Lv5!現れろ、TGハイパーライブラリアン!」
「え?な、何?何が起きたの?レベル2と3が居なくなってレベル5…。レベルの足し算?儀式召喚、じゃあ無いわよね?」
心の底から驚く皇女。
『こ、これは一体何が起きているのでしょう!』
『我々はきっとデュエルモンスターズの歴史の転換点に居ます!ただし、その他一切の事は分かりません!』
司会と解説役が置いてけぼりの中、龍道はプレイングを続ける。
「墓地へ送られたドッペルウォリアーの効果発動!ドッペルトークンを2体特殊召喚!レベル1のドッペルトークンに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!S召喚!Lv2、フォーミュラー・シンクロン!フォーミュラー・シンクロンがS召喚に成功した事で1枚ドロー、TGハイパーライブラリアンの効果、S召喚に成功した時、カードを1枚ドロー!」
「手札が6枚に…。」
「墓地の闇属性のジャンク・シンクロンを除外して輝白竜 ワイバースターを特殊召喚!墓地のチューナーモンスター、グローアップ・バルブの効果発動、デッキの一番上のカードを墓地に送り、墓地から特殊召喚!」
「またチューナー、と言う事は…」
「レベル4の輝白竜 ワイバースターにレベル1のグローアップ・バルブをチューニング!S召喚!Lv5!A・O・Jカタストル!ライブラリアンの効果で1枚ドロー!墓地へ送られた輝白竜 ワイバースターの効果でデッキから暗黒竜コラプサーペントを手札に加える!」
「…ふぅ。もうチューナーというのが居なくなったから、これでもう新たなシンクロモンスターは出てこれないね!」
「俺は、レベル5のA・O・Jカタストルとレベル5のTGハイパーライブラリアンに、レベル2のシンクロチューナー、フォーミュラー・シンクロンをチューニング!」
「はぁ?!し、シンクロチューナー?シンクロモンスターを使って、シンクロ召喚するの?!レベル5が2体とレベル2って事は…出てくるのは、レベル12?!」
「デルタアクセルシンクロォオ!来てくれ、コズミック・ブレイザー・ドラゴン!」
「…はぇ?」
ポカン、と口を開けて呆けるリナ皇女。プロデュエルの世界でしのぎを削って来た社会人としての表情が崩れ、年相応の少女の顔になる。
間抜けではあるが、美少女だからそれすら一枚の絵になる。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド。」
龍道 ライフ4000
手5 フィールド コズミック・ブレイザー・ドラゴン ドッペルトークン
魔法・罠 伏せ2
リナ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「ハッ、わ、私のターン…。ドロー!魔法カード、苦渋の選択!デッキからブリザード・ドラゴン3体、仮面竜2体を選択!」
「仮面竜を選択する。」
「残りは墓地へ送る…。墓地の水属性ブリザード・ドラゴン2体、炎属性の仮面竜を除外して、氷炎の双竜を特殊召喚!効果発動、手札の仮面竜を捨てて場のモンスターを破壊する!コズミック・ブレイザー・ドラゴンを破壊!」
「チェーンして永続罠、デモンズ・チェーン。氷炎の双竜の効果を無効にして、攻撃を封じる。」
「私は氷炎の双竜を生け贄に、ホルスの黒炎竜Lv6を召喚!魔法カード、レベルアップ!ホルスの黒炎竜Lv6を墓地に送り、デッキからホルスの黒炎竜Lv8を特殊召喚!」
『出ましたー!リナ皇女殿下のエースモンスター、ホルスの黒炎竜Lv8!』
『これで魔法カードの発動と効果を無効にして破壊出来ます。ただ、このままではシンクロ・モンスターに戦闘破壊されてしまいます…』
「魔法カード、龍の鏡!場のホルスの黒炎竜Lv8、墓地のLv6、氷炎の双竜、ブリザード・ドラゴン、仮面竜を除外!F・G・Dを特殊召喚!」
「F・G・D…。」
『こ、ここでリナ皇女殿下、最強のドラゴン族融合モンスターを繰り出した!』
『龍道選手の場には、攻撃力400のドッペルトークンが居ます。この一撃で終わらせるつもりでしょう。』
「バトル!F・G・Dで、ドッペルトークンを攻撃!」
「コズミック・ブレイザー・ドラゴンの効果発動!相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをエンドフェイズまで除外する事で、その攻撃を無効にし、その後バトルフェイズを終了する。」
「何か効果があるだろうと思っていたけど、そういう守りの効果か…。でも、私のF・G・Dの攻撃力は5000!ご自慢のシンクロモンスターでも、これを超えるのは無理じゃない?」
腰に手を当てて胸を張り、少し顎を上げてお手本のようなドヤ顔でフフン、とするリナ皇女。
「コズミック・ブレイザー・ドラゴンが除外された事で罠発動、ゼロ・フォース。場の表側表示モンスターの攻撃力を0にする。」
「…はぇ?」
F・G・Dが力を失い、その場に座り込む。
ドッペルトークンもまた、その場に座り込む。
リナは気力を奮い立たせて、最後の手札を見つめる。
「私はカードを1枚伏せて…ターンエンド。」
「エンドフェイズに、コズミック・ブレイザー・ドラゴンは帰還する。」
龍道 ライフ4000
手5 フィールド コズミック・ブレイザー・ドラゴン ドッペルトークン
魔法・罠 伏せ1
リナ ライフ4000
手0 フィールド F・G・D
魔法・罠 伏せ1
「俺のターン、ドロー!バトルだ、コズミック・ブレイザー・ドラゴンで、F・G・Dに攻撃!」
リナは伏せカードを発動しようとしない。
王宮のお触れ。強力な永続罠であるが、この状況を覆せない。
「きゃあああああああ!」ライフ0
『き、決まったー!日本からのルーキー、未知なる召喚法、シンクロ召喚でリナ皇女殿下に圧勝!』
『こ、これは荒れますね…』
「す、スプレンディード!素晴らしいデュエルナノーネ!カンツオーネ!」
クロノス教諭は本心から大泣きする。
影丸理事長の入れ知恵で龍道の勝利に貯金をつぎ込んで賭けたら、倍率20倍だったことで大儲け。
これで家のローンは一括返済。今夜は祝杯だ。
他の教員も一人を除いて借金こそしていないが預貯金の一割を賭けており、この勝利と配当金を考え、心の底から満面の笑みを浮かべる。
佐藤先生のみ、借金して金を集めて今回賭けに出て大儲け。
影丸理事長は彼らに貸しを作ると同時に、実利を与えた。とはいえ、何度も飴を与えるつもりはない。癒着は海馬瀬人が嫌うからだ。
「す、すっげぇええええ!これが、世界のデュエルかよ!」
「あの皇女さん、可愛かったッス~。ちょっと足が太いけど。」
「炎属性と水属性のドラゴン族…今まで俺は一つの属性に拘っていたが、注目すべきは種族の方だったか?」
「ば、馬鹿な…あの、F・G・Dが、デュエルモンスターズ界最強のドラゴンが…、一枚の罠カードで。デュエルで大事なのはモンスターのステータスではなく、コンボだというのか?こうしてはおれん!」
「これが、シンクロ。これが、世界…。あの子、私と同年代なのに、あんな先に…。」
この試合を見たアカデミアの新入生の一部は大いに奮起。その後の歓迎会でも興奮は収まらず、その日のうちに、十代と三沢は寮を抜け出してデュエルを行った。
だが。
「な、何だよこれ…。こんなの、勝てるわけないじゃないか…。」
「無理だ…。プロになっても、あれが立ちはだかるなんて…」
多くの生徒は、世界の壁の高さを前に諦めきってしまった。
本来であれば落第生のオシリスレッドだけだったが、この一件で無気力の波はラーイエロー、オベリスク・ブルーにまで広まってしまうのであった…。
そしてこのデュエルは注目を集め、デュエルモンスターズ界の重鎮二人の耳に届いてしまった事で、ひと騒動が起きる事となる…。
同年代がプロリーグで活躍しつつあるのに、自分はプロになるための準備期間というのは焦燥感に苛まされますよね。
そこから「よし俺も目指す!」となるか、「才能が無いから無理だ」となるかは、その人によるでしょう。