入学試験でデルタアクセルするとどうなるのか!!   作:交響魔人

5 / 12
いったん未来の時間軸に飛びますが、次回からGXの時間軸に戻します。


この世界の不動遊星

「今日はよろしくお願いします、ジークさん」

 

 

 礼儀正しく一礼する不動遊星。彼はトップスで生まれ、育った少年だ。

 

 

「さぁ、乗ると良い。」

 

 D・ホイールのサイドカーに遊星は乗り込む。

 龍道ジークが運転する。父と母の親友であり、D・ホイーラーである彼を遊星は慕っている。

 

 

「風が気持ちいい…。」

「これが、D・ホイーラーの世界だ。いつかお前がこの世界に来たら、色々教えられるんだが。」

「少し先になりそうです。母さんは、俺がD・ホイーラーになるのを嫌がっている。」

「ハハハ!母親とはそういう物さ。俺もこの道に進みたい、と言ったらお優しい『お母さま』は相当ヒステリーを起こしたからな。」

 

 皮肉交じりに告げる中年の言葉を、遊星は受け止める。

 

「進むならちゃんと話し合うんだ。無事故という訳にはいかない世界。いくら操縦技術を高めても、相手のミスに巻き込まれてクラッシュ…というのがざらにある。」

 

 

 ハイウェイから、ジークはダイモンエリアへ向かってD・ホイールを走らせる。

 

「さて、遊星。ここからは社会勉強だ。」

「はい。よろしくお願いします。」

 

 

 遊星はトップスで育った。だからこそ、トップスと区別される『コモンズ』について何も知らなかった。

 先日、トップスのカードショップに押し入ってレアカードを強奪してセキュリティに取り押させられたマーカー付きのコモンズ。

 カード犯罪に手を染めた彼らが一体どんな生活を送っているのか、気になったのだ。

 両親には切り出せなかった話を、ジークは親身になって受け止めてくれた。

 

 

 

 

 

「この辺りなら見えるだろう…おっ、コモンズ同士のデュエルが始まるぞ。これで見ると言い。」

 

 集音器付きの高性能なカッコいい双眼鏡を手渡され、遊星はデュエルを見物する。

 ジークも同様の双眼鏡を手にする。それが女物だったことで、遊星は自分が使っているのがジークの持ち物で、今、ジークが持っているのがジークの奥さんの者だと推測する。

 

 

 ガラの悪い青年と、童顔の少年がデュエルディスクを構えている。

 

 

『『決闘!』』

 

 

大門A ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

『俺様の先攻、ドロー!よっしゃあ!俺様の場にモンスターが居ない事で、グランド・ドラゴンを通常召喚!』

 

 レベル4、攻撃力2000のドラゴン族が現れる。

 

 

「グランド・ドラゴン、場にモンスターが存在すれば通常召喚出来ず、自分の場に他にドラゴン族モンスターが居なければ攻撃宣言できないモンスター…。」

「よく覚えているな。それで遊星。あのモンスター、使いやすいか?」

「デス・デーモン・ドラゴンの融合素材だから、融合派兵でデッキから特殊召喚出来ます。」

「レベル4、光属性・ドラゴン族の通常モンスター、アレキサンドライドラゴンであれば、予想GUYでデッキから特殊召喚出来るぞ。」

「それ、は…。」

「『不必要なカードは存在しない』というお前の考えは正しい。だが、あれは『弱いカード』だ。そしてお前が言及した融合モンスターも、融合派兵もあの男は持っていない。」

「じゃあ、どうして…。」

「カードがないからだ。あの男に、アレキサンドライドラゴンを提示して、グランド・ドラゴンとのトレードを申し込めば、間違いなく応じるぞ。」

 

 

 

『装備魔法、突風の扇を装備!これで攻撃力400ポイントアップ!さらにドラゴンの秘宝!これで攻撃力300ポイントアップ!攻撃力は2700だ!1枚カードを伏せて、ターンエンド!』

 

 

 

大門A ライフ4000

手2 フィールド グランド・ドラゴン

    魔法・罠 突風の扇 ドラゴンの秘宝 伏せ1

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

『僕のターン、ドロー!モンスターをセット、ターンエンドだ。』

『このエンドフェイズに永続罠、竜の逆鱗!ドラゴン族に貫通能力を与える!』

 

 

 

大門A ライフ4000

手2 フィールド グランド・ドラゴン

    魔法・罠 突風の扇 ドラゴンの秘宝 竜の逆鱗

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド セットモンスター

    魔法・罠 

 

 

『俺のターン、ドロー!グレイ・ウィングを召喚!効果発動、手札の軍隊竜を捨てて、このターンのバトルフェイズ中、二回攻撃出来る!バトルだ、やれ、グランド・ドラゴン!そのセットモンスターを破壊しろ!』

 

 

「攻撃力2700の貫通効果を与えられたグランド・ドラゴンに、攻撃力1300で二回攻撃可能なグレイ・ウィング。あの守備モンスターが守備力1300以上でなければ、瞬殺だな。」

「ああ。伏せカードも無いからな。おっと?」

 

 

『僕のセットモンスターは…マジック・ランプ!裏側守備表示のこのカードが攻撃されたダメージ計算前!攻撃対象をその相手モンスターに移し替えてダメージ計算を行う!つまり、グランド・ドラゴンの相手は、グレイ・ウィングだ!』

『ぐああああああっ!』ライフ4000から2600

 

 

 

「これは珍しい。誰かが不必要と判断して捨てたカード。あるいは、4枚目だから要らないと言って捨てたか。いずれにせよ、彼の手に渡り、こうして一ターンを凌ぐのに貢献したわけだ。」

「拾ったカードで、デッキを組んだのか…。」

「まぁ、他に出せるモンスターが居なかった、というのもあるかもしれないが。」

 

 

 

『く、くそ!ターンエンドだ。』

 

 

大門A ライフ2600

手1 フィールド グランド・ドラゴン

    魔法・罠 突風の扇 ドラゴンの秘宝 竜の逆鱗

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド マジック・ランプ

    魔法・罠 

 

 

『僕のターン、ドロー!マジック・ランプを攻撃表示に変更!さらに魔法のランプを召喚!』

『攻撃力400と900のザコを攻撃表示だと!舐めてんのか!』

『このカードは、相手に直接攻撃出来る!』

 

 

「攻撃力400の直接攻撃…だが、次のターン、ドラゴン族を召喚されたらグランド・ドラゴンに攻撃されてライフを大きく削られてしまうぞ!」

「ああ、そうだな。それも織り込み済みか、あるいは決める手立てがあるのか…。」

 

 

『魔法カード、マジシャンズ・クロス!僕の場に攻撃表示の魔法使い族モンスターが2体以上存在する場合、その内の1体を対象として発動できる!そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで3000にする!ただし、ターン終了時までそのモンスター以外の魔法使い族モンスターは攻撃できなくなる。魔法のランプを選択!これで攻撃力3000のダイレクトアタックが出来る!』

『馬鹿なぁ!』

『いけ、魔法のランプ!ダイレクトアタックだぁ!』

『うぎゃああああああ!』ライフ0

 

 

 

『アンティ・ルールだ。お前のカードを貰うぞ。』

『けっ、儀式魔法がない儀式モンスターなんて、要らねぇよ!』

 

 それでも少年は、儀式モンスターとやらを受け取り、ほほ笑む。

 

 

「儀式魔法の方を持っていたが、儀式モンスターが無かった。それを今回、あの少年は手に入れたわけだ。」

「…これが、コモンズのデュエルか。」

「まぁ、少年の方は中々トリッキーな戦いでコモンズ出身らしくなかったが…。対戦相手の男の方は、コモンズならかなり上澄みだ。」

 

 

 あれが上澄み、と言われた遊星は他のデュエルを双眼鏡越しに見る。

 

『融合発動!手札のミスター・ボンバーと二頭を持つキング・レックスを墓地に送り、メカ・ザウルスを融合召喚!』

『儀式召喚!来なさい!スーパー・ウォー・ライオン!装備魔法、覚醒を装備!これで攻撃力が400ポイントアップよ!』

 

 

『どうだ!この漆黒の豹戦士パンサーウォリアーの前では凌ぐことしかできないだろう!ターンエンド!』

『エンドフェイズに永続罠発動!悪夢の迷宮!これでお前のモンスターの表示形式を変更!守備表示になった事で、罠発動!断頭台の惨劇!』

 

 

 

 コンボを繋げて勝利する者、一歩及ばず敗北する者。

 乏しいカードプールでも、彼らは真摯にデュエルモンスターズに向き合っている。

 

 

「ジークさん、俺、彼らとデュエルしたい。案内してほしい。」

「おいおい、モーメント研究開発機関『MIDS』の主任、不動博士の一人息子がダイモンエリアでコモンズ相手にストリートデュエルに勤しんだら一大スキャンダルだ。」

「どうして?ただデュエルするだけなら。」

「お前がデュエルしたら、おっと。」

 

 何かの音に気付いたジークが視線を向けると、数台のD・ホイールがダイモンエリアへ突入していく。

 

 

「あれは、トップス?」

「遊星。トップスとコモンズがデュエルしたらどうなるのか、見届けたいか?」

「はい。」

 

 

 

 

『おい!出てこい!雑魚杉 保(ざこすぎ たもつ)!トップスに勝っていい気になっているようだから、俺達が教えてやる!』

『カードに選ばれた、デュエル・エリートの本当の力を知らしめてやるわ!』

 

 

 ダイモンエリアの住民の眼が一人に向けられる。

 先ほど、マジック・ランプと魔法のランプを駆使したテクニカルなデッキ使い。

 

 

『僕はデュエルを挑まれたからデュエルしただけだ。負けてカードを奪われるのが嫌ならアンティ・デュエルをしなければいい。』

『ふざけるな!俺達トップスがお前達みたいな寄せ集めデッキしか持っていないコモンズに負けるわけが無い!イカサマをしたんだろう!だから制裁してやる!』

『言っておくけど、僕とのデュエルはアンティ・デュエルだ。』

『わかっている。俺が賭けるのはこれだ!ジオ・ジェネクス!』

『了承した。僕が賭けるのは』

『お前はデッキを賭けろ!』

『それでは釣り合わない。』

『寄せ集めのザコカードだらけのゴミ。40枚でも釣り合わないが、それで勘弁してやる!』

『…まぁいい。どうせ断ってもしつこく付き纏うんだろう。なら返り討ちにするまでだ。』

 

 

 

 

 

 

『『決闘!』』

 

 

高田 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

『僕の先攻、ドロー。カードを1枚伏せてターンエンド』

 

 

高田 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 伏せ1

 

 

『それで終わりかよ!俺のターン、ドロー!魔法カード、おろかな埋葬!デッキからモンスターカード、ガスタ・ガルドを墓地へ送る!ガスタの神裔 ピリカを召喚!効果発動、墓地からガルドを特殊召喚!レベル3のピリカに、レベル3のガルドをチューニング!S召喚!Lv6!ダイガスタ・スフィア―ド!』

 

 

「ガスタデッキか。あのSモンスターが場にいる限り、ガスタとの戦闘で発生するダメージは相手が受ける。」

 

 

『永続罠発動!調律師の陰謀!ダイガスタ・スフィア―ドのコントロールを得る!』

『な、何ィ?!く、くそが!スフィア―ドのS召喚を行った事で、墓地からピリカを手札に戻す!カードを2枚伏せてターンエンドだ!』

 

 

高田 ライフ4000

手3 フィールド 

    魔法・罠 伏せ2

雑魚杉 ライフ4000

手5 フィールド ダイガスタ・スフィア―ド

    魔法・罠 調律師の陰謀

 

 

『僕のターン、ドロー!魔法カード、撲滅の使徒!右の伏せカードを破壊して除外する!』

『さ、させん!カウンター罠、神の宣告!ライフを半分払って、撲滅の使徒の発動と効果を無効にして破壊する!』ライフ4000から2000

『速攻魔法、サイコロン。サイコロを振って出た目によって効果が決定する。出た目は3だ。右の伏せカードを破壊。』

『神風のバリア -エア・フォース-が!』

『バトル。ダイガスタ・スフィア―ドでダイレクトアタック。』

『うぎゃああああ!』ライフ0

 

 

 

「サイコロン、たしかギャンブルカードの一枚。」

「ああ。ギャンブルカードは運に依存するから、使えないとして捨てられることも多々あるな。まぁ、ギャンブルカードでもステータスが高いカードは捨てられたりしないが。」

 

 

 

『アンティ・ルールだ。シンクロ・モンスターは貰っていく』

『よし、高田が負けたぞ!ならば俺がお前を倒せば、必然的に俺は高田より強いって事になる!デュエルだ!魔轟神獣クタベを賭ける!』

『なら僕はジオ・ジェネクスを』

『駄目だ!デッキとシンクロ・モンスターを賭けろ!アトミック・スクラップ・ドラゴンを追加だ!文句は無いだろ!』

 

 

 トップスの少年は、カラクリデッキを使い、カラクリ大将軍無零を3体シンクロ召喚し、カラクリ忍者九壱九を並べて圧倒しようとしたが。

 

『イタクァの暴風で1ターン凌いだところで、次のターンで終わりだ!俺のカラクリ大将軍無零はモンスターの表示形式を変更できるからな!』

『僕は装備魔法、流星の弓シールと閃光の双剣-トライスを秒殺の暗殺者に装備!これでダイレクトアタックを二回行える。』

『馬鹿が!手札を使い切って攻撃力2000に戻ったが、装備魔法のデメリット効果で攻撃力が1500ポイントもダウンしている!それで』

『罠発動。あまのじゃくの呪い。これで攻撃力は3500ポイントにアップ。バトルだ』

『あ、ありえない…トップスの俺が、こんなザコカードの寄せ集めデッキに、ぎゃあああああ!』ライフ0

 

 

 

『くっ、こ、コイツ…思ったより強いぞ。』

『ど、どうする?』

『だったら作戦変更だ!他の連中を襲うぞ!』

 

 

 

 トップスの若者、否、馬鹿者達は雑魚杉ではなく他のコモンズを襲う。

 

 

『墓地の終末の騎士を除外し、ダーク・アームド・ドラゴンの効果発動だ!伏せカードを破壊!なんだ、はさみ撃ちか!いけ、ダーク・アームド・ドラゴン!』

『いやああああああ!』

 

 

『ギガンテック・ファイターで攻撃!さらに罠発動、バスター・モード!ギガンテック・ファイターをリリースして、ギガンテック・ファイター/バスターを特殊召喚だ!』

『ぐおおおおお!やられたぁ!』

 

 

『行きなさい、蘇りし魔王ハ・デス!』

『ぎゃあああああ!』

 

 

 トップスのデュエリストはダイモンエリアのデュエリストを圧倒する。一方的なデュエルだった。

 

 

「…遊星。お前がダイモンエリアに入ってデュエルを申し込んだら、コモンズはお前にどんな印象を持つと思う?」

「ただ、弱い者いじめをしに来たデュエリスト。そう判断されてしまいます…。」

「そういう事だ。だが、コモンズにも時折、強いデュエリストが生まれる。いや、強くないと生き残れなかっただけかもしれない。」

 

 

 社会勉強をしている遊星とジークに、声がかけられる。

 

 

「僕が一番嫌いなのは、他人に戦わせて自分は高みの見物をする卑怯者だ。」

「?!」

 

 遊星はいつの間にか雑魚杉少年が接近していた事に驚く。

 

 

「おっと、勘違いしないでもらいたい。俺達と彼らは関係ない。」

「それを信じろと?」

「信じないのは結構。まぁ、グルだったとして…君は何をしに来た?」

「デュエルだ。」

「そうか。だったら俺が相手をしよう。そうそうアンティ・ルールだとしても、君が勝ってもカードを渡す必要はない。」

「俺のカードなんて、トップスサマは触りたくも無いって事か。」

「そうでは無い。先ほどのデュエルの見物料といったところだ。」

 

 

 

 デュエルが始まった。だが…

 

 

「乏しいカードプールで練り上げているのは、立派だ。とはいえセオリーを無視した寄せ集めデッキなら、個々のコンボに対処せず、まとめて封殺してしまえばいい。」

「くっ…」

 

 

 ナチュル・バンブーシュートをアドバンス召喚。そこに装備魔法、月鏡の盾を装備し、ナチュル・ランドオルスが並ぶ。

 魔法・罠を封じ、モンスター効果も魔法カードをコストにせねばならないとはいえ止められる状況に追い込まれた雑魚杉少年に、打つ手はない。

 

 

「終わりだ。ナチュル・ランドオルスでダイレクトアタック!」

「うわあああああ!」ライフ0

 

 

 

「くっ、くそっ…」

「…マーカーがついていないという事は、犯罪歴はないか。審査を受けて、ダイモンエリアから這い上がる気は無いか?」

「無い!」

 

 きっぱりと断言され、遊星は呆然とする。そこまで、根が深いのか、と。

 

「別に貧困ビジネスをしようって訳じゃない。」

「貧困ビジネス?」

「…ご両親には内緒だぞ?コモンズを救済するこの制度を悪用した事件があった。審査を受けさせた後、施設に監禁して補助金だけ受け取り、粗悪な生活をさせていたんだ。被害者は解放されたそうだが。」

 

「甘い言葉で誘い、引っかかったら絞りとるだけ搾り取る!」

「そういうトップスが居る事は認める。だが、俺もその手の輩に見えるか?」

 

 少しの間、少年は考えていたが結論を出す。

 

「…分かった。アンタを、信じる。」

 

 

 

 

 

 

 

 半年後。

 デュエルアカデミア、ネオドミノ校にて。

 

 

 遊星は、D・ホイールのサイドカーに乗っていた。運転しているのは、友人の雑魚杉だ。

 

 

「…遊星、さっきのデュエルだけどさ。シンクロキャンセルを三積みしてもいいんじゃないか?」

「三積みすると手札事故を起こす可能性がある。」

「メリットは大きい。ジャンク・デストロイヤーの効果を何度も使える。それに相手のシンクロモンスターにも使える。後は、調律師の陰謀で奪われてもシンクロキャンセルで回収できる。」

「光の援軍で墓地に送られた一枚が、大革命返しだった。コンボに依存するのは少し危険だ。」

「それもそうか…。」

 

 

 遊星は風を感じながら、ハイウェイから景色を眺める。

 自分が実際にD・ホイールを操縦するのは、もう少し先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 同時刻。

 ジャック・アトラスは母と向き合っていた。

 

「罠発動、バスター・モード!アーカナイト・マジシャンをリリース!アーカナイト・マジシャン/バスターにモードチェンジ!」

「ここだ!罠発動、トラップ・スタン!これでバスター・モードは無効!そしてコストとしてリリースされたアーカナイト・マジシャンは戻ってこない!」

「カウンター罠、ギャクタン!トラップ・スタンは無効!これでアーカナイト・マジシャン/バスターを特殊召喚!魔力カウンターを2つ置く!」

「今度こそ止める!永続罠、デモンズ・チェーン!」

「発動は通す。魔法カード、ミラクルシンクロフュージョンを発動!」

「げっ?!」

「アーカナイト・マジシャン/バスターとアーカナイト・マジシャンを除外して、覇魔導士アーカナイト・マジシャンを融合召喚!」

「…ダメだ、手の内が読まれている。」

「ジャック、同年代でライバルになれそうな子は居ないの?」

「居ない。デュエルをしても相手にならん。俺は満たされない。」

 

 息子の苦悩に、フワフワの金髪を揺らしながら母は空を仰ぐ。元プロだった彼女はママ友とデュエルをしても相手にならないので、息子の心境は凄く分かる。

 太い眉を顰めながら、彼女は考える。

 

 

 

 同時刻。

 クロウ・ホーガンは父と一緒に野球スタジアムで向き合っていた。

 

「クロウ!しっかりボールを見ろ!目を離すな!」

「そんな事言われてもよぉ。」

 

 クロウはバッターボックスでぼやく。

 

「集中しろ!気持ちはわかる。野球とお前が大好きなデュエルモンスターズは、全く関係無い!」

「だったらどうして!」

「だが、野球を通じて培った勝負強さと経験は、人生の節目でお前を支えてくれる精神的な支柱になる!父さん達がそうだったようにな!!」

 

 その真剣な眼差しに息をのむクロウ。何度も空振りするが、ようやくヒットする!

 

「あ、当たったぁ~!」

 

 飛びっぷりから、クロウの父親は冷静に(精々センターフライってところか…)と感じつつも、息子を励ます。

 

「いいぞ、その調子だ!さぁ、もう一球!」

「おう!」

 

 ようやく楽しくなってきたクロウは、父親との時間を満喫するのであった。

 

 

 

 

 

 同時刻。

 鬼柳京介はアングラな地下デュエルに勤しんでいた。

 

「く、ククク…鬼柳君…、ちょっと、ちょっとだけワシの話を聞いてくれんかね?この闇のゲームを執り行うデュエルリング、『ダータルネス』は…ワシが9割詐欺だろうと思いながら出資した、オカルトにドップリ嵌った連中が作り上げた傑作でな…。肉体的な損傷を与えない代わりに敗者の精神にダメージを与える拷問器具なのだ。並みのデュエリストならその苦痛で発狂しかねん…。無論、ワシは凡人では無いので何の後遺症も無い…普段なら、な。」

「何が言いたい?」

「せ、精神状態だ。相剣大邪-七星龍淵、相剣大師-赤霄を並べ、ワンターンキル対策に和睦の使者まで入念に整えた圧倒的優勢な盤面…。それが、皆既日食の書で裏側守備表示にされ、三体の氷結界の龍トリシューラで場も手札も墓地も除外されるという絶望のどん底…そして今、逆転のカードを引けず、君になすすべなくターンを回さねばならない…。そんな時に、トリシューラの連続攻撃など受けてしまったら…ワシは。」

 

 

 かつて政界・財界に君臨した資産家、『金鶴』。老後の『趣味』として大金を餌に若者をおびき寄せて闇のデュエルを行い、破滅させる快楽に溺れる奇怪な老人。

 今回のデュエルも単なる狩りのつもりだったのだろう。確かに狩りだった。獲物が老人で、狩人が鬼柳だが。

 

 鷲鼻と太い眉が印象的な老人を見ながら、鬼柳の友人はポツリと呟く。

 

「泣き落としが通じる相手じゃねぇってわかんねぇかなぁ?」

 

 むしろ、鬼柳に泣き落としが通用する人物など居るだろうか?

 鬼柳は容赦なくライフを削り切る。同年代がアルバイトに2年間精を出せばようやく届くような額を、一度のデュエルで手に入れた鬼柳は、ショルダーバッグに詰め込む。

 

「なぁ、鬼柳。こんなに金を貯めて何がしたいんだ?社長にでもなりたいのか?」

「デュエルカフェなら興味がある。俺に勝てたら半額、負けたら料金5割増しなら客も集まるだろ。」

 

 その条件では二度目は無いだろう。こういったアングラ方面に鬼柳を誘ってしまった友人はため息をついて、サイドカーに乗り込む。青髪の少年は鬼柳がデュエルにのみ専念できるよう、マネージャーとしてのスケジュール調整、相手と交渉、事前の情報収集という形でサポートに徹している。

 

 友人が乗り込んだ事を確認した鬼柳は、D・ホイールを走らせる。友人を自宅へ送り届けても、門限には間に合うはずだ。

 




この世界線の不動遊星。
 ゼロ・リバースの惨劇が起きておらず、両親は健在。サテライトに落ちていないのでジャック、クロウ、鬼柳とも出会っておらず、マーサやラリー達との交流も無い。
 順当に両親から愛情を注がれ、周りの大人たちに支えられながらすくすくと成長している。友人やクラスメイトと交流しながら、青春を謳歌している。

 物質的、精神的に恵まれているが、好敵手に恵まれない日々を送っている。

この世界線の遊星に「やっぱり【シンクロン】か。拾ったカードで組んだデッキだな?」と聞くと、「な、何を言っているんだ…?シンクロンは世界的に有名なカテゴリーだから、捨てる人なんて居ないから拾えるわけが無いだろう…。」と返してきます。


Q:使えない、弱いとされるカードは捨てられるという設定だが、シンクロ環境で「調律師の陰謀」は捨てられないのでは?
A:これに関しては、シンクロが早期に実装された事でシンクロ対策の需要が高まった事で膨大な量が乱造されたからです。ただ、コモンズ同士ではシンクロ召喚がほぼ使われない事からコモンズのデッキに入っている事は稀です。

Q:ジャックとクロウは親と交流深めているのに、鬼柳さんはどうして…?
A:この御仁はどれだけ立派で穏やかなご両親が居る家庭で育てられても、そのうち刺激を求めてアングラ方面に行くにきまってる。(独断と偏見)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。