少女は誰が為に彼を想うのか。
気分転換に書いてみたやつです。
よって一話完結です。
所謂曇らせであることに最近気づきました。
アロナとプラナのキャラが掴めていないので(特にプラナ)崩壊してるかもしれません。
最近、心配事があります。
「お疲れ様です。先生」
[ありがとう、アロナ]
「……大丈夫ですか? かなり疲れているように見えますが」
[大丈夫だよ]
「……本当ですか?」
「最近の先生への負荷は今までの何十倍にもなっています。身体は既に限界のはずですが……」
隣にいたプラナちゃんも同じことを考えていたようです。
[大丈夫大丈夫]
「怪しいですね……」
「同意」
[そ、そうかな……?]
もうすぐ日が昇る時間です。
徹夜程度であれば日常茶飯事なんですが……いや、日常茶飯事であってはいけないんですけどね?
……でも、私から見て、ここまで明らかに疲れが見えているのは、初めてです。
「……先生、そろそろ纏まった休暇を取ったらどうですか?」
「最近の疲労を踏まえれば、すぐに許可が下りると思われます」
[でも、もし私が休んでしまったら、生徒に寄り添うことが出来なくなる。予定だってあるし]
「……私たちも知ってはいるのですが、一応聞いておきます。その予定というのはどの程度先まで決まっていますか?」
[うーん……向こう一ヶ月は全日程何かしらの予定があった、はず]
「……はぁ」
これが先生のいいところであって良くないところです。
生徒第一――一部、先生の対応に疑問が残る生徒もいましたが――このスタンスは先生が着任されたときから何ら変わっていません。
生徒のみなさんのためなら、自分は犠牲にできる。
それが、先生という人間。
そのせいで、もう私たちですら覚えていないくらい、先生はずっっっっっっっっっっっっっっっっと仕事をして、生徒に寄り添い続けています。
もちろん、連邦生徒会長が見込んだ通り、しっかりと生徒に寄り添ってくださっているという証拠でもあります。
ですが……
「ですが先生、もしこれ以上無理をして倒れてしまっては元も子もないです」
……プラナちゃんの言う通り、無理をしすぎては元も子もないのです。
[とはいえ、生徒との約束を反故にするわけにはいかないし、私は大丈夫だから]
誰しも、助ける優先順位というものを心の中に持っています。
もちろん先生もそれを持っているのですが……先生の中での先生自身の順位が圧倒的に下、というより生徒の(もしくは先生がそう認識している)みなさんが高すぎる。
「しかし……」
「プラナちゃん」
先生は、これ以上何を言っても聞かない。
仮に命を落としかけていたとしても、最後の最後まで生徒第一で行動する。
……
「……そうですね、アロナ先輩」
プラナちゃんを一旦止めた、その意図を、プラナちゃんも汲み取ってくれたみたいです。
「先生、わかっているとは思いますが、無理はしないでくださいね?」
[わかってる]
絶対に休む日を一日決めておく、というのも考えましたが……「あくまで個人的に」と言い張って生徒のみなさんに付き合うでしょう。
そうでなかったとしても生徒のみなさんの方からここにいらっしゃいます。
そうなれば、先生はきっと自らの休養を忘れて生徒の相手をするでしょうね。
[心配してくれてありがとう、アロナ、プラナ]
「いえいえ」
「先生を助けるのが私たちの役割ですから」
[じゃあ、そろそろ仕事に戻るね]
そうして、先生は“教室”から消えました。
「……本当に大丈夫でしょうか、アロナ先輩」
プラナちゃんが心配そうな目をしています。
「今日の予定はそこまでハードじゃない(はず)なので、多分大丈夫だと思いますよ。……多分」
「心配ですね」
「ですね〜……」
あそこで止めはしましたが、心配なものは心配です。
この先一ヶ月は予定で埋まっているそうですが……多分もたないでしょう。
そもそも、まず寝ないと……。
しかし、そんな私たちの心配をよそ目に、先生は次々と業務をこなしていきます。
先生とかなりの時間話したつもりでしたが、どうやらやっと日が昇ったようです。
[アロナ、これについてなんだけど……]
「……わかりました。少し時間がかかりますが、大丈夫ですか?」
[構わないよ。急を要するものじゃないからね]
「私も手伝います」
[ありがとう、プラナ]
「いえ。しかし、それでもそれなりに時間がかかります」
[大丈夫。お願いするよ]
「了解です!」「了解」
―数分後
「「先生、終わりました!」」
[……]
「……先生?」
調査から戻ってきて、報告をしようとしましたが、反応がありません。
「……多分、寝ちゃってますね。シッテムの箱の電源はついてますが何も反応がありません」
「……理解しました」
「……今日は、別にいいですよね」
「同意。当番の生徒の方が来るのもまだですから」
ここで少し寝て、疲れを回復してほしいところです。
……できれば、せめてソファで寝てほしいですが。
「……あっ」
呼び鈴が鳴りました。
いえ……状況的に鳴って“しまいました”の方が正しいでしょうか?
[……]
……あれ、これでも起きないんですね。
ということはやはり、先生が隠していた、もしくは自覚していなかっただけで、疲れはかなり溜まっていたのでしょう。
「しかし、朝早くからどなたでしょうか?」
確かに、まだ日が昇ったばかりです。
こんな時間にどなたが……?
「先生! おはようございます!」
「この声は……」
「
来るのがかなり早いような気がしますが……。
[……]
……しかし、レイサさんのあの声量で起きないほどだとは思いませんでした。
「先生! 今日は何を……って、寝てる?」
[……]
「あっ、もしかして、声……大きく急に起こされて不機嫌になってたりしてます……?」
[……]
「す、すみません! 私はいないものとして考えてください!」
[……]
「……あれ、本当に寝てる……?」
[……]
「……ん? ……えっ、こんな仕事量を?! あっ、いけないいけない。起こしちゃったらすみません……」
[……]
そういえば、パソコンの横に予定表がありましたね。
今の驚いた声も結構大きかったですし、耳にも近かったと思うんですけど……。
「こんなにお仕事続きだったら、そりゃあ疲れますよね。私には到底無理です。……やっぱり、先生は凄いなぁ……」
独り言のつもりでしょうが、シッテムの箱の電源がつけっぱなしな以上、私たちにも聞こえちゃってるんですよね。
「そうだ!」
レイサさんは少し先生から離れて、また戻ってきました。
「……毛布、かけないと風邪ひいちゃいますからね。先生もたまには休まないと倒れちゃいますし、今日の午前はなにもないみたいなので、お昼ごろまで寝ててもらいましょう。あ、お昼ごはんでも買ってきましょうか」
そう言って、レイサさんはどこかへと行ってしまいました。
「……良かったですね、先生」
「これなら、少しは休めそうですね」
プラナちゃんはどこか嬉しそうです。
……しかし、私の感情は複雑でした。
先生がやっっっっっっっっっっっっっっっっと休んでくれた。
これは素直に喜ぶべきことです。
経緯は色々ありましたが、それでもあの先生が休んでくれたのですから。
喜ぶべきことです。
喜ぶべきことなんです。
喜ぶべきことのはずなんです。
ですが……私の心の奥底には、プラスの感情ではない……いえ、むしろのマイナス感情がありました。
悲願の状況といっても過言ではないのに、素直に嬉しいと感じていない。
なぜ? どうして?
(……ああ、そういうことなんですね)
彼女は何も悪くありません。
むしろ、
ですが……そう考えると納得がいきます。
……私は、先生と出会ってからずっと、先生のことを一番そばで支え続けていたつもりでした。
先生が自分の何を捧げてでも生徒を助けようとするように、私も全力で先生を支えてきました。
そしてそれは、これまでも、これからも変わらないと思っていました。
……ですが、今、私は、先生に毛布をかけられなかった。
先生に必要であろう手助けが、できなかった。
支えることができなかった。
それを、彼女がやってしまった。
起きたらきっと、先生は彼女に感謝することでしょう。
もちろん、仕方ないことなのは私も重々理解しています。
ですが……私の心の奥底には、その事実だけが突き刺さりました。
それだけが突き刺さって、そのマイナスの感情だけが湧き上がってきます。
その感情の矛先は、彼女、そして私自身にも向いています。
(これが、嫉妬なんでしょうか)
プラナちゃんがそれを感じているかどうかはわかりません。
いや、もしかすると感じていないほうがありがたいのかもしれません。
……プラナちゃんにまで、この感情を向けたくありませんから。
私は、ただ、先生に頼ってほしかった。
ここから出られないから、その気持ちはすごく強かった。
その気持ちが彼女によって歪んで、こうなったのでしょう。
……でも、先生には知られたくない。
いつも頼っている“アロナ”が、こんなトゲトゲした感情を持っているなんて、知られたくない。
先生の前では、いい子でいたい。
……ああ、私って、
(こんな女だったんですね……)
(アロナ先輩……)
アズサに毛布をかけてもらいたい人生だった。(アズサ推し)