ゴールデンOKITAさん   作:アイヌ文化保存係

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チタタプチタタプ

「ほれ、見ろ。リスが取れたぞ!リスの毛皮は売れるし、肉は旨いぞ!リスは果物や種しか食べないから旨い!」

 

翌日。再び合流した杉元、沖田さん、ヒンメル、アシリパの4人。合流して早々、アシリパさんが可愛らしいリスを捕まえていた。リスは令和の北海道でも元気に生息しており、国立公園はもちろんのこと農家さんの野菜や果物を食べて元気に過ごしているのか。そんなリスであるが、毛皮は売ることが出来るのだ。売ることが出来れば金になるし、なにより当時は令和のように化学繊維のマフラーとかはないので、これが衣類や防寒具の材料などに用いられたのだ。

 

「リス?可愛くて好きなんですけど」

「アシリパさん、リス食べるの?俺もリス好きなんだけど」

「そんな可愛いリスを食べるのアシリパちゃん?ヨーロッパにもそんな人は居なかったよ?」

 

上から沖田さん、杉元、ヒンメルの言葉である。と言うのも3人ともリスは好きであるが、好きな理由はアシリパさんのように食べ物としての好きではなく、可愛らしい愛玩動物としての好きである。

 

「脳ミソも旨いぞ!!今からこのリスをチタタプで食べよう。チタタプは新鮮な獲物でしか作れないからな!!」

 

先ほど仕留めたリスを掲げて、告げるアシリパさん。アシリパさんを含めて、アイヌの皆さんはリスなどの野生動物を良く食べてるのだ。なに、これ位なら肉食文化が広まった明治時代生まれの杉元、元から肉食文化のあるヨーロッパ出身のヒンメルは驚かない。

だが、沖田さんは違った。沖田さんの前世はあまり肉を食べなかった。江戸時代では肉食はタブーとされることがあり、馬肉は桜、猪肉はボタンなどなどの隠語が使われていた。因みに田舎の豪商出身の土方さんと勧められた永倉さんはおもいっきり豚肉を食べてたが…気にしてはいけない。

 

「豚肉ならタベレルケド、リスタベルノ?」

「沖田さん!?しっかりして!!カルチャーショックで片言になってるよ!!」

 

ではここでリスの調理を見てみよう。今日の調理スタッフはアシリパさん、サポートで杉元である。

 

「杉元の旦那、料理出来るの?」

「まあ、手伝いだし…一人暮らしが長いからな。任せておけ」

 

ではリスの調理を見ていこう。先ずは後で町で売ることになる、リスの毛皮を剥いでいく。リスの毛皮は切れ目を入れることで、衣類を脱がすようにするすると手で剥げるのだ。

 

「綺麗に脱げるんだな」

「次は内臓の処理だ。内臓も胆嚢以外は美味しく食べれるぞ」

 

にが玉こと胆嚢を取り出して、胃や腸の内容物を出して洗う。後はチチタプとやらの調理なのだが…ここでアシリパさん、なんとリスの頭蓋骨を切開したのだ。つまり、リスの新鮮な脳ミソが丸見えである。

 

「「「脳ミソって白いんだ」」」

 

初めて血抜きされた脳ミソを見た、3人であった。

 

「全部チタタプにするけど、脳ミソが旨いんだ。お前ら、食べてみろ。先ずは杉元だな」

 

アシリパさんはリスの脳ミソをスプーンですくい、杉元の前に持ってきた。つまり、生で脳ミソを食べろと言うことである。

 

「えっ…アシリパさん!?それ、生で食べるの!?」

「どういう意味だ?私達の食べ方に文句があるのか?」

「いや…そういう訳じゃ…」

「じゃあ、食え」

 

そして杉元の口にスプーンが入れられて…杉元は脳ミソを人生初めて食べた。凄く嫌そうな顔をしてるが、食べた感じはレバーのように油分豊富なホルモンだったとか。

 

「旨いか?」

「うっうん…」

「よし、次はヒンメルだな」

「えっ…俺も!?」

 

そして、ヒンメルの口の中にも脳ミソが入れられた。

 

「旨いか?」

「生で食べたレバーみたい…」

「最後は沖田だな」

 

だが、脳ミソを食べていない人物が居た。それは勿論、沖田さんである。完全に油断していた沖田さん、まさか自分が振られるとは思わず、その場から逃げ出したくなる。

 

「なんでなんですか!?」

 

沖田さんは前世での死因は結核だ。だが、当時は不治の病なんて言われていたが、ぶっちゃけそんなことはない。現代では普通に治るし、当時でも肉類をしっかり食べて抵抗力を強くしていれば結核菌が不活性化して普通に元気に過ごせる。事実、アメリカに渡った日本人が結核に感染したが…普通に長生きした記録もある。なんならその日本人は自分の体毛と爪を移植した彫刻を作って恋人に振られたとか←事実です。

 

「食べろ、旨いぞ」

 

近づいてくる脳ミソを乗せたスプーン。沖田さんは杉元とヒンメルに助けを求めるが、2人揃って上の空になっており、助けはこない。そして、沖田さんの口に脳ミソが運ばれて…10代の少女の悲鳴が森に響いた。

 

「リスは骨から身を剥がすのが面倒だ。だからチタタプにする」

 

チタタプとはアイヌ語で我々が刻むという意味があり、アジのなめろうのように包丁などで叩きながら切り刻んで、焼く前のハンバーグのようにひき肉のように細かくするのだ。こうすることで、骨から軟骨もお肉と一緒に食べられる。

 

「チタタプチタタプと言いながら叩くんだ。ほれ、杉元、疲れたから交代しろ」

「チタタプチタタプ」

 

チタタプは全員で叩くのだ。アシリパさん→杉元→沖田さん→ヒンメルそしてアシリパさんに戻り順番に叩くようにしていく。

 

「なんだか、ハンバーグの焼く前とかタルタルステーキみたいですね」

「「「タルタルステーキ?」」」

 

ヒンメルが気になる単語を言った。それはタルタルステーキ、杉元や沖田さんが知らない食べ物である。ハンバーグも聞いたことはない*1人は居るが、タルタルステーキはもっと聞いたことはない。

 

「待て、私はハンバーグとやらも気になる」

「小樽の洋食屋に有りましたよ?タルタルステーキはこのチタタプに似てたな。チタタプチタタプ」

 

タルタルステーキとは欧州の料理であり、一言で言えば生ハンバーグである。牛や馬などの肉をチタタプのように叩きながら切り刻んでいき、香辛料やスパイスと混ぜて作る。一言で言えばミート100%のチタタプだろう。

 

「よし、この程度で良いだろう。ヒンメル、タルタルステーキとやらを知ってるならチタタプは食えるな」

 

チタタプは生で頂くのだ。タルタルステーキを知ってたのが仇となり、ヒンメルはアシリパさんの手でチタタプ試食一号に認定されて、口にチタタプが乗ったスプーンを入れられる。

 

「うん!美味しい!!」

「美味しい時はヒンナ感謝を言うんだ。次は杉元だな」

「アシリパさん、俺も~?」

 

そして杉元も生で食べたが、脳ミソよりいけたのか表情は明るい。

 

「うん!ヒンナヒンナだぜ!」

 

後は沖田さんだけだ。そして沖田さんの脳裏に浮かび上がる、新撰組肉食推進委員長こと鬼の副長 土方歳三と肉食に染まったガムシンこと筋肉こと永倉新八が豚の丸焼きをかじったり、上半身すっぽんぽんでニワトリを絞めて…生で鳥刺し*2を食べるのが思い浮かぶ。大丈夫、土方歳三と永倉新八は生で鶏肉を食べてもピンピンしてた。

 

「美味しい!!生肉ってこんなに美味しいんですか!?ヒンナヒンナ!!」

 

生肉は美味しい物が多い。だけど、良い子とカルデアのマスター達!!豚肉は寄生虫の都合で生食はしないでね?作者と土方爺さんとの約束だよ。

 

 

食後。沖田さん達は杉元からの提案で町に向かっていた。今現在、沖田さん達が居る森、アシリパさんの集落は北海道のとある栄えた町と近いのだ。その町は小樽、貿易で栄えた北のウォール街と呼ばれた金融街でもある。そして、新撰組の生き残り永倉新八が余生を過ごした町である。

 

「脱走した囚人が埋蔵金を諦めてないなら、本州や樺太、国外には逃げていない。この北海道の何処かに居るはずだ。それにアイヌの集落じゃ余所者は目立つし、森では知識がないと生きていけない。脱走者なら人に紛れたいだろう。それに…」

 

ビシッと杉元は沖田さんとヒンメルを指差した。

 

「自然の知識が豊富で弓矢や罠で戦うアシリパさんはともかく、沖田さんとヒンメルは武器が居る。俺だって銃弾の補給も必要だしな」

 

今の沖田さんは木刀が折れたため丸腰だ。戦うには武器が居る。ヒンメルだって黒鍵や他の武器は有るが、対吸血鬼特効の刀は折れた。それに杉元だって三十年式小銃の銃弾の補給も必要だ。

明治43年までは普通に鉄砲とか売られてたし、銃弾の補給は町で行えるだろう。

 

「刀の手配ならしたので、そろそろ届くんですけど……絶対、刀崎さん怒ってるな」

「私は刀の宛が有ります。もしかしたら、力を貸してくれるかもしれません」

 

ヒンメルは刀の手配を済ませたが、刀崎*3という刀鍛冶に怒られるのが確定のようだ。お陰で苦笑いを浮かべている。

 

しかし、沖田さんの宛とはなんだろうか?

 

「前世の知人…いえ試衛館時代からの家族の1人。新撰組最強の戦士、永倉新八です。永倉さん、小樽に居るようですので」

 

永倉新八。生ける伝説との邂逅が迫る。

*1
記録では明治15年にハンバーグが講演されたのが最古

*2
消費期限10分

*3
月姫の遠野家の分家の1つ。鍛冶職人だが、真の使い手には自身の骨から刀を作るとか




刀崎さん37歳児「良くも折ったな…俺の刀をぉぉぉぉ!!」
永倉爺さん「そこのお前、若い頃のトシさんに似てるな」

次回、小樽、囚人探しと武器の補充。

食べてみたい食事!!

  • チタタプ
  • オハウ
  • サッポロビールとライスカレー
  • ラッコ鍋
  • 杉元のオソマ
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